【心理士監修】勉強嫌いを克服!学ぶ楽しさを引き出す秘訣とは #01

今回も、子どもの学びに関する具体的なお悩みについて質問にお答えしていきたいと思います。

「子ども達にどんな学びの場を提供すれば良いのか」

「場は提供しているのだけれど子どもがうまく取り組んでくれない」

「周囲の子どもや家族と比べてしまってしんどい」

などさまざまなお悩みがあることを痛感します。

この場で紹介させていただく質問に関しては、私が現場でよくお聞きするものをまとめて再構成したもので、どなたか特定の方からいただいたものではないということをお伝えさせていただきます。

なお、こちらでも学びに関するQ&Aをご紹介しておりますので合わせてご覧ください。

この記事を書いた専門家

杉野

杉野 亮介


公認心理師、臨床心理士

教育支援センター、スクールカウンセラーとして教育分野で不登校支援等に携わった後、児童福祉施設で心理士として20年間以上従事。児童虐待を受けた子どもや発達凸凹のある子どもたちへの心理的支援、生活のケアを行う。


回答:「やってみようかな」と思えることが大切

よくよく話を聞いていくと、集中できている時もある、とか、集中できる対象はあるということが分かります。

どんな時、どんな対象にでも、安定して集中力を発揮できないと、大人は「この子は、集中力がない」と言ってしまいがちです。

ただ、嫌いなことや苦手なことには集中できないというのは、人として自然な姿です。

好き嫌いと同様に、まずは集中できている時があるということを評価してあげましょう。

まずは、集中して頑張っているのは良いことなんだ、ということを子どもに伝えていく必要があります。

まず、「あなたは集中力がない」ではなく、「(本当は)集中できる子」と伝えてあげてください

その次のステップとして、集中できない対象に対して、どのように子どもに興味を持ってもらうかを考えていきます。

大人が無理やり「やりなさい」と言ってやらせても、それは長続きしないので、子どもが「やってみようかな」と思えるような取組みが必要です。

そう言われてもすぐに何をしたら良いのか分からないとは思いますが、例えば学習に関するものであれば、とにかく簡単で、すぐにできるような教材を用意してあげると良いでしょう。

簡単なものをどんどんやっていくことに対しては、ほとんどの子どもが嫌がりません。

「すごいね」「よくできてる」と褒めてもらえれば、ますますやる気も出るでしょう。


回答:「やってみたい」を待ちましょう

教育に関する情報を見ていると、「今やらないと一生身につかないのではないか」と不安になってしまうことがありますよね。

小さい年齢から取り組むことに一定のメリットがあるものもあるでしょう。

しかし、取り返しがつかないほどのものでしょうか。

大人が「今やらないと取り返しがつかないから、やっておきなさい」「あなたのためなんだから」と子どもがやりたくない習い事を無理やりさせるのと、子どもが「やってみたい」と言ってからやらせてあげるのでは、どちらが身につくのでしょうか。

「これを今のうちにやっておかないと命にかかわります」みたいなことは存在しないと思って、まずは子どもの「やってみたい」を待ってみましょう


回答:できていることを評価しましょう

親子で家庭学習していると、親も子もイライラしてきて、子どももそのうち親に見てもらうのは嫌がるというのは、とてもよく聞く話です。

家庭での学習に関しては、「よく頑張ってるね」「やればできる」「すごい」と評価してあげるのが大切です。

そのためには、(これは何度も触れてきていますが、)まずはできていることを評価することです。

家に帰って宿題をすることは当たり前かもしれませんが、宿題をしているのを見れば「偉い」「頑張ってるね」とまずは評価してあげましょう。

ここからは、私の経験によるものですが、苦手な教科等で分からないことがあったら、積極的にヒントを出してあげたり、算数であれば、親が解き方をいくつか見せてあげたりして、「やればできる」ことが経験できるようなサポートが有効です。

こうすれば、子どもとしても親と勉強するのはそれほど苦痛ではありません。

一方で、「こんなことも分からないの?」「自分で考えなさい」と突っぱねてしまうと、子どもはますます焦ったり気持ちが乱れたりして、親と勉強するのは嫌だとなってしまいます。

せっかく一緒にやるのであれば、穏やかな時間を過ごせるに越したことは無いですよね。

また、明らかに間違っている時は、さっさと指摘して修正してあげた方が子どもにも分かりやすいことが多いです。

「どこか違うけど」「もっと考えて」とじらしてしまうと、子どものイライラも高まって、考えることもできなくなってしまいます。

もちろん、どこが間違っているのかをじっくり考えたり、どう修正すれば良いのかを考えることも必要なことですが、そういう負荷がかかるものは学校での活動に任せて、家では親子ともにそれほど負担がかからない形で学習を進めてみてください。

当たり前のことですが、親は先生ではないので、家庭でも学校と同じような形で学習する必要はないです。


回答:大人は批判的なことを言わないようにしましょう

保護者であれば、学校や園に対して、一つや二つの不満を持っているのは自然なことだと思います。

もちろん、子どもたちも年齢が上がれば上がるほど、不満はたくさん持っていますし、どこにぶつけたら良いか分からない不満を保護者に聞いてもらうというのは、健康的な表現方法とも言えます。

一方で、学校や園は、子どもが所属しているところであり、自分を構成している大事な要素の一つなので、学校や園を大人から批判されると、自分自身が否定されたような気持ちになることがあります。

子どもからの不満は聞きつつも、大人側から積極的に批判的なことを言うのは避けましょう。(保護者自身のためにも、保護者が子どもに対して、学校や園の先生を悪く言うのは避けた方が良いですよね。)

保護者の中には「あんな先生の言うこと、聞かなくていいから」と子どもに言ってしまう方もいます。

それぐらい怒ることがあったということには理解を示せますが、「あの先生の言うことなんて聞かなくても良い」というのは、「何らかの理由があれば、子どもも大人の言うことを聞かなくても良い」というメッセージになります。

自分が腹を立てた相手のことは聞かなくても良いとか、自分にとって都合の悪いことは聞かなくても良い、と発展した場合、保護者が困ることになります。

「あの先生の言うことは、聞かなくていいから」というスタンスを示すことは、親子関係においても、非常にリスクのあることだと思ってください。

もちろん、保護者が学校や先生への不満を持ってはいけないということではありません。

子どもがいないところで、大人同士で話して息抜きをするのが、大人としての適切な方法です。

子どもの学びについて考える時、「将来のために」という言葉を出される方がいらっしゃいます。

「将来苦労しないために、今は嫌でも頑張って欲しい」という感じで、子どもはやりたいとは言っていないけれど、子どもに勉強をさせたり、習い事をさせたりすることがあります。

将来的に何か良いことがあるから、そのためには、今は嫌なことも我慢して取り組むべきだという考え方自体は特別おかしなものではありませんが、子どもの立場に立って考えると、そういう考え方はリスクが高いのです。

我々大人にとって、子ども時代は、もう過去のことです。

「もっとあれをやっておけば良かったな」と思うのは自然なことですし、それを子どもに伝えてあげることも悪いことではありません。

しかし、子どもにとっては、子ども時代は、「今ここ」にあるものです。

確かに将来のことも大切ですが、どんな未来が待っているのかは誰にもわかりません。

将来のために今を犠牲にしなさいと言われてしまうと、子どもにとっては、自分の生活、あるいは自分自身を大切に思ってもらえないという思いが生まれます。

学びに限ったことではありませんが、「何かの目的を達成するために今を犠牲にする」という考え方は、少なくとも子育てにおいてはやめましょう。

もちろん、子どもが自分で「自分は将来、~になりたいから、今はこれを頑張る」というのは子ども自身が自分の「今、ここ」を生きているので素晴らしいことです。

大人が一方的に、「将来のために、今は嫌でも、これをやりなさい」と押しつけることはやめたほうがいい、ということです。

大人も子どもも「今ここ」をまずは充実させることから始めてみてください。