発達障害の女の子が生理で悩むこと5選!感覚過敏との関連はあるの?

女の子の発達障害は、男の子と比べて特性がわかりにくい子が多く、今回紹介する悩みも【我慢してしまう子】が多いといわれています。

本人も困ったり、悩んだりしますが、ご家族など周りの人もどのように対応したらいいかわからないと思ったことはありませんか?

そこで今回の記事では、発達障害の女の子とご家族へ、生理でよくあるお悩みや感覚過敏との関係を紹介します。

この記事を書いた専門家

いけや さき


公認心理師、臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。

生理は多くの女性や女の子が、さまざまな悩みを抱えやすいといわれています。

なかでも発達障害の女の子は特性の影響から、戸惑ったり、困ったりする場面がより多くなるでしょう。

たとえば次のような悩みがあるといわれています。

①経血の感覚が気持ち悪い

②PMSやPMDDになりやすい

③ナプキンがうまくつけられない

④下着や服を汚しやすい

⑤体調不良を我慢しやすいor気づかない

それぞれ詳しく解説します。


生理は経血の影響で、かゆみや蒸れなどの不快感があるといわれています。

発達障害の女の子のなかには、感覚過敏のある子もいるため、生理特有の不快感のほかにナプキンや生理用下着も不快に感じる子もいるようです。

気になる場合は、布ナプキンや月経カップなど、子どもが不快にならない生理用品などで工夫しましょう。

また、子どものころは経血量が安定しにくいですが、漏れるほどの出血やめまいなどの不調がある場合は早めに婦人科へ相談してください。


発達障害の女性は、本来特性として持っている“過敏”なところが月経前に顕著になる場合があります。

また、ADHDの女性の場合は衝動性という特性が増大して、イライラしやすくなるといわれています。

過敏性もイライラする感覚も、両方ともPMSやPMDDの症状であるため、発達障害の人はそうではない人と比較して発症しやすくなるのです。


生理が始まると、女性はナプキンを付ける人が多いですよね。

今はほかにもさまざまな選択肢がありますが、主流はナプキンの着用だと思われます。

発達障害の子が全員というわけではありませんが、不器用さや感覚過敏の関係から「ナプキンがうまくつけられない」「ナプキンがズレやすい」という話は結構あるのです。

うまくつけられないことで、服や下着に血が付く、肌が荒れる、においがしてくるなどの状態になりかねません。

服に血がついたり、イスに血がついてしまうことでショックを受けて生理が怖くなる子もいるでしょう。

また、汚れていることを注意されたり、からかわれたりすると余計に生理がストレスとなってしまいます。


悩み③で紹介したとおり、ナプキンがうまくつけられないことによって、服や下着に血がついてしまうことがあります。

ほかにも、ナプキンを替えるタイミングがわからず何時間もつけっぱなしにすることで、ナプキンが経血を受け止めきれず漏れてしまうこともあるでしょう。

ナプキンを替える頻度は、経血量の多い日は「2~3時間」、少ない日は「4〜5時間」が目安です。

ただし、子どもには不快感があれば2時間より前に替えても問題ないと伝えてあげましょう。


発達障害の子どものなかには、体調の変化に気づきやすい子と、気づきにくい子がいます。

変化に気づきやすい子は、感覚過敏が原因で小さなことに対しても敏感に反応する子が多く、言えれば周りもすぐ助けてあげられるでしょう。

しかし、怒られた経験などがあると体調不良を我慢しやすいのです。

怒られた経験がなくても、きょうだいや周りの人の姿を見て我慢する子もいます。

一方、感覚鈍麻な場合は、体調不調に全く気付かない子もいます。

気づく子と気づかない子がいることを理解し、周りの大人が状態の変化に気づくことと同時に、子どもに対して伝え方や気づき方を教えられるといいでしょう。

生理に関する基本的な知識を保護者が理解しておくだけでも、発達障害の子どもへの説明や対応がしやすくなりますよ。


日本産婦人科医会によれば、初経はおよそ10~14歳までに来るそうです。

個人差がある理由として、体重やBMIとの関連があるといわれ、比較的体格のいい女の子の方が早い傾向があるそうです。

体格以外には、女性ホルモンの分泌などの影響もあるといわれています。

生理以外に、小柄なままで身長が止まり、女性らしい発育を10歳より前に迎えた子の場合は「思春期早発症」という場合も考えられるようです。


日本における初経の平均年齢は12歳程度といわれ、遅くても17歳までには初経を迎えるといわれています。

しかし、15歳以降に自然なかたちで初経を迎えることはまれであるため、15歳になっても始まらない場合は産婦人科や婦人科へ受診しましょう。

女性にとって産婦人科や婦人科は、小児科以上に長く関わる診療科と言われています。「産婦人科=妊娠」のイメージが定着していますが、産婦人科は「産科(妊娠や出産に関わる)」+「婦人科(女性特有の疾患の治療や検査を行う)」の両方を兼ね備えている診療科です。

早めに受診することで、体調不良の際に相談できる場所を作っておくことも発達障害を持つ子にとって、大切なことでしょう。

前半の「発達障害の女の子が生理で悩むこと5選」で紹介した悩みは、感覚過敏との関連があるといわれています。


感覚過敏とは、感覚器官が敏感になっている状態のことを指します。

私たちは生活している中で、何か突然音が聞こえたり、ぶつかったり、触れたりすることで一瞬びっくりすることはあるでしょう。

しかし、感覚過敏のある人は過剰に驚いたり、周りが気づいていないことにも敏感だったり、気になってほかのことに集中できなくなったりします。


生理中の女性の心身は非常に繊細です。

生理に直接関係なくても、生理前から些細なことが気になるなど神経過敏になったお母さま方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もともと感覚過敏の特性を持つ発達障害の子どもが、生理になった場合はより一層特性の度合いが増してしまうのです。

特に子どもは自分の感情のコントロールが難しく、ストレスが心身に影響をきたしやすいでしょう。

発達障害ではない子ども以上に、生理中の蒸れやかぶれにも不快さを感じやすいです。

大人になってから本人も対処できるよう、周囲がサポートしていきましょう。

次月以降、発達障害の子どもへの生理の教え方は詳しく解説しますので、今回は紹介した悩みに沿って2つの対応策を解説します。


まずは学校に行っている間、自分でやる必要のある「ナプキンのつけ方と替えるタイミング」は必ず教えてあげてください。

たとえば、実際に着ける練習を一緒にする、お母さんがつける姿を見せる、イラストや絵を用いて説明するなどがおすすめ。

生理用ポーチのなかにイラスト付きの付け方を書いた紙を一緒に入れておくのもいいですね。

付け替えのタイミングは、可能な範囲でルーティン化しましょう。

登校前にナプキンを替えて、2時間目が終わったら替える、給食の後に替えるなど時間割に合わせたルールを決めるとわかりやすいかもしれません。


悩み⑤で紹介した通り、気づけない子もいれば言えない子もいます。

困ったときの言語化が少しでもできるよう、家庭で練習するのも大切です。

また、保健室の先生や女性の教員など、生理のことで頼れる先生を見つけておくのも発達障害の子にとって、安心につながるでしょう。

今回は、発達障害の女の子の生理・月経についてお話ししました。

決して恥ずかしいことではないのに、発達障害の子ではなくても、このような話題はしにくい傾向があります。

お子さんの心と身体のために、必要な知識を伝えて安心のできる環境づくりと、本人も工夫していけるようなサポートを周りと協力しながらしていきましょう。

Gifted Gazeでは、子育ての悩みや発達障害に関する相談を専門家が受け付けています。お気軽にご相談ください。