「うちの子は、なぜこんなに物事を深く考えるの?」
「普通の子どもと何が違うのだろう?」
ギフテッド傾向のあるお子さんを育てている親御さんや学校の先生からは、このような質問がよく寄せられます。
ギフテッド・チルドレンと呼ばれる子どもたちは、類まれなる才能と好奇心を持ち、「天才」や「スーパー脳」というイメージも持たれがちです。
しかし、ギフテッドの子どもは通常の学級では他の子どもたちと知能や発達状況に違いがあるため、強い正義感や倫理観が周囲に誤解されたり、敵対的な態度をとってしまうなど多様な社会性を持つことがあります。
この記事では、「天才」と捉えられがちなギフテッドの子どもたちが学校で直面する困難と、その背景にある脳の発達の違いについて解説します。
ギフテッド・チルドレンの脳の特徴による困りごと4選
ギフテッド・チルドレンは、知能が高いからこそ、さまざまな困りごとを抱えています。
ここでは、特に代表的な4つの困りごとを紹介します:
1. 高知能が故の無気力
雑誌「インテリジェンス」によると、IQ130を超える人々は、うつ病などの二次障害を抱える割合が一般よりも高いことが示されています。一般的なIQの平均スコアは100程度であるため、ギフテッド・チルドレンは周囲と約30ポイントの知能差がある状況に置かれていることになります。
ギフテッドの子どもたちは、標準的なカリキュラムでは退屈してしまい、学習に対する意欲を失うことがあります。
知識や、複雑な理論を素早く理解する力を持っているため、学校の教材が簡単すぎると感じることも少なくありません。例えば、数学や科学の分野で高度な知識を持つ子どもが、クラスの進度に合わせることに苦痛を感じるケースがあります。また、テストで毎回満点を取ることをよくないことだと思い周囲に合わせてわざと70点を取るようになったケースもあります。
2. 社交性と同調の課題
同年代の友人と興味の対象が異なることがあり、孤立しやすくなります。例えば、他の子どもたちがスポーツやアイドルなどに関心を持つ中、ギフテッドの子どもは古典文学や宇宙科学、自然科学などの専門分野に興味を持つことが多いです。
この違いが原因で、クラスでの会話に入れず、あるいは会話を無理に合わせることがあり疎外感を覚えることがあります。
3. 感受性が高い
ギフテッドの子どもは、周囲の感情を敏感に察知しやすく、その影響を受けやすいという特徴があります。他者の気持ちを深く理解できる反面、自分自身の感情を適切に表現することが難しく、ストレスを抱えることがあります。
4. 完璧主義
自分自身に対して要求が非常に高く、ミスを極端に嫌うなどの傾向があります。強い正義感を持つことも多く、自分の考えが理解されないとフラストレーションを感じ、お友だちとのトラブルにつながることもあります。
こうした困難に対処するためには、家庭や学校での支援が重要です。特に、学校の先生や保護者がギフテッド・チルドレンの特性を理解し、正しい知識を持ち、適切な学習環境を提供することが求められます。
「【インタビュー】ギフテッド・チルドレンを持つ親として〜家庭で育む未来の天才たち〜」では、ギフテッド・チルドレンのお子さんを持つ親御さんへのインタビューを通して、具体的な困りごとの場面も一例として紹介しておりますので合わせてご覧ください。
ギフテッド・チルドレンの脳:3つの秘密
ギフテッド・チルドレンの脳は、一般的な発達パターンとは異なる特徴を持っています。
知能が高いからといって、すべての面で発達が早いわけではありません。むしろ、知能の発達が先行する一方で、社会的スキルや感情のコントロールが未発達なことが多いのです。これは、脳の成熟スピードが通常とは異なるためです。
特に、社会的スキルを司る前頭前皮質の発達が、定型発達の子どもとは異なるペースで進むことが分かっています。
1. 一般的な脳との違い
前頭前皮質は、感情のコントロールや意思決定、倫理観、他者の気持ちを理解する機能を担う部分です。
通常の発達では、前頭前皮質の厚みが7〜8歳でピークに達し、その後、徐々に成熟していきます。しかし、ギフテッド・チルドレンの場合、このピークが12歳頃に遅れて訪れることが分かっています。
つまり、ギフテッドの子どもは、知識を吸収する力は非常に高いものの、社会性を身につけるスピードは周囲よりも遅い傾向があります。このアンバランスさが、学校生活での問題につながることがあります。
2. MRI研究から分かるギフテッドの子どもの脳構造
MRIや脳波の研究によると、ギフテッドの子どもは前頭前野(創造性や計画性を司る部分)や側頭葉(言語理解や記憶に関与する部分)が非常に活発に働いていることがわかっています。
特に、以下の点が注目されています。
このような脳の特性が、ギフテッド・チルドレンの独特な思考パターンを生み出しています。
こうした特性が、複雑なパズルや難解な問題を短時間で解くなど、未来を予測し複雑な問題解決に長けていたり、物語を作ったり創造的な絵を描くことが得意など、言語を駆使し高度な語彙力を持つといった特徴に繋がっています。
3. 感情処理を担う脳領域も敏感
ギフテッド・チルドレンの脳は、扁桃体(感情を処理する部分)や前帯状皮質(共感や自己意識に関与)も活発であることが報告されています。
その影響で、感情の起伏が激しく、ささいなことでも深く傷ついたり他人の気持ちに過剰に共感し、感情移入しすぎるなどのケースもあります。
周囲からは、「繊細すぎる」「大げさだ」と誤解されがちですが、これは脳の敏感さが影響しているのです。
ギフテッドの子どもに適した学習環境とは
ギフテッドの子どもが能力を最大限に発揮するためには、個別化された学習環境が必要です。
特に日本では、ギフテッド教育の選択肢が限られているため、家庭やオンライン学習を活用することも一つの方法です。
関連記事:ギフテッド傾向の子どもが活用できる学びの場・学び方8選
創造性を伸ばすためのサポート方法
ギフテッドの子どもは、天才的な発想力を持っていますが、その才能や得意を伸ばすには以下のような支援の方法が有用です。
理由が理解できないままただ指示をされたり、決まった方法で進めることに嫌悪感も抱くため、ある程度自由な時間を与えるといいでしょう。
ギフテッドの脳を活かす方法(保護者向け)
家庭でできるサポートとして、以下の方法が有効です。
ギフテッドの子どもが持つ才能を最大限に活かすには、教育者や保護者の理解が欠かせません。
まとめ
こうした背景について周りの理解が得られないと、ただでさえ彼らが難しいはずの感情表現にさらに難しさを抱えることになります。
幼いながらにも、疎外感や孤独感を感じてしまい、自信も失ってしまうことになります。
まずは、このようなギフテッド・チルドレンが直面している状況とその理由を理解することが、ギフテッド・チルドレンだけではなく全ての子どもたちの才能の芽を紡がずに、彼らが特性や得意を活かして幸せに生きていく環境を作っていく土台となると期待しています。
日本のギフテッド教育は世界の教育先進国に大幅に遅れをとっています。
2022年から文部科学省も本格的に動き出し、2024年は日本の「ギフテッド教育元年」と言われています。正しい知識でギフテッドの子どもたちを支援するヒントになれば嬉しいです。