子育てのなかで、子どもの心の状態、とくに「自己肯定感」はとても気になるテーマではないでしょうか。
今回は、保護者の方からよく寄せられる4つの具体的な場面を取り上げ、自己肯定感を損なわずに対応するための考え方と実践のヒントを専門的な視点からお伝えします。
自己肯定感とは何か?
自己肯定感(Self-Esteem)とは、「自分自身の価値を無条件に受け入れられる感覚」のことです。
自己肯定感とは、「どんな自分でも、存在するだけで価値がある」と思える気持ち。
うまくいっても、失敗しても、できてもできなくても、「自分は大事な存在だ」と思える力です。
たとえば、
このような気持ちが、自己肯定感です。自分を“丸ごと”認める感覚ですね。
子どもの自己肯定感#01 |「自分を信じる力」はなぜ大切なの?専門家が詳しく解説
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1. ”習い事や受験をやめる”|自己肯定感への影響は?
習い事や受験勉強をしているお子さんから「やめたい」と言われたとき、保護者の方にとっては戸惑いや焦り、そして様々な感情が湧いてくるものです。
「ここまで頑張ったのにもったいない」「せっかく才能があるのに」「すぐに諦める子にはなってほしくない」—そんな思いが頭をよぎることもあるでしょう。
しかし、子どもの自己肯定感を大切にするためには、まずは「やめたい」という気持ちを受け止めてあげることが大切です。
頭ごなしに否定したり、「情けない」「根性がない」など人格に関わる否定的な言葉を使うのは避けましょう。
まずは「どうしてそう思ったの?」と、落ち着いてお子さんの気持ちを聞くことから始めてください。
気持ちを受け止めてもらえる経験は、「自分の感じたことには意味がある」「わかってもらえた」という安心感につながり、自己肯定感を支えます。
そして、その上で「じゃあ、いつまで頑張ってみようか」といった話し合いの機会を持つことも有効です。
たとえば「次の発表会まで」「この模試が終わったら」など、本人が納得できる目標や期間を一緒に決められるとよいでしょう。
自分で決めた区切りまでやりきった経験は、「自分にはやり遂げる力がある」と感じる土台となり、自己肯定感を高めてくれます。
やめたいという子どもの言葉に過敏に反応するのではなく、まずは静かに気持ちを聞いてあげること。それが、子どもの心を育てる第一歩です。
2. 叱らないといけない時|自己肯定感が下がらない方法
子どもが人を傷つけてしまった、物を壊してしまった——そんな時、しっかりと叱る必要はあります。ただし、叱り方次第では、子どもの自己肯定感を大きく損なってしまうこともあります。
大切なのは「行動」と「人格」を切り分けて伝えること。これは、心理学でも「行為の否定はOK、人格の否定はNG」とされる重要な原則です。
たとえば、「人をたたいたことはいけないよ」「ものを壊すのはよくないことだよ」と、問題となる行為そのものを具体的に注意します。
ただし、その際に「なんてダメな子なの」「あなたって本当に酷い子ね」といった人格を否定するような言葉は絶対に避けましょう。
こした言葉が、「自分は存在そのものが悪いのだ」と子どもに誤解させ、自己肯定感を大きく損なうリスクがあります。
また、「もう遊びには連れていかないよ」「そんな子の面倒は見られません」など、恐怖を与えるような脅しや見捨てる言い方も不安を強め、心の安定を揺るがします。
叱るときは、「あなたは大切な存在だけれど、今の行動は正しくなかった」と、愛情と境界線を同時に伝えることが理想です。
子どもは叱られながらも、「それでも自分は大事にされている」と感じられることで、自己肯定感を保つことができます。
3. お友達から否定的な言葉を言われたら
「お前なんてダメだ」と友達から言われた、仲間外れにされた—そんな経験をして帰ってきた我が子を見て、親が強く心を揺さぶられるのは自然なことです。
ですが、このようなときこそ、大人の対応が子どもの心に大きな影響を与えるタイミングです。
まず大切なのは、「どんなことがあっても、あなたには回復する力があるよ」「家はあなたにとって安心できる場所だよ」というメッセージを伝えることです。
これは、自己肯定感を下支えする“心の安全基地”をつくることにつながります。
子どもが「今日はこんなことがあった」と話してくれるのは信頼の証です。
ここで親が過剰に反応しすぎてしまい、「その子とはもう遊ばないで!」などと介入しすぎると、子どもが次から話をしにくくなってしまうことがあります。
友達との関係に一喜一憂しすぎず、子ども自身が状況をどう感じているかを丁寧に聞き取ってあげてください。
もちろん、悪口やいじめが継続的に行われ、明らかに子どもの心が傷ついている場合は、適切な大人の介入が必要です。
学校や関係機関と連携しながら、お子さんの安心と安全を守る対応を考えていきましょう。
親の関わり方によって、子どもは「傷ついたとき、自分はどう立ち直ればいいのか」を学んでいきます。
焦らず、じっくりと、子どもの気持ちに寄り添う姿勢を大切にしてあげてください。
おわりに:親のまなざしで子どもの心を育てよう
どんな場面でも、親が「子どもを信じる」気持ちをもって向き合うことが、自己肯定感を育てる土壌になります。
子どもはまだ発展途上の存在です。だからこそ、間違えたり、やめたくなったり、悩んだりすることがあるのです。
その時に「あなたの気持ちは大切だよ」「どんなあなたでも大切だよ」と伝え続けてあげることが、子どもの人生にとって一生の宝物になります。
少しずつ、ていねいに、子どもの心に寄り添っていきましょう。子育ては、完璧じゃなくて大丈夫です。
温かいまなざしと、小さな対話の積み重ねが、子どもの自己肯定感をしっかり育んでくれますよ。
こちらの動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。