子どもの様子がいつもと違う…こんな違和感を感じたことはありませんか?
大人だけでなく子どももストレスを感じその影響を受けることがあります。
また子どもは自分のストレスに気付きにくかったり、状況や気持ちをうまく言葉で説明できず、自分から助けを求めるのが難しいことも多いものです。
今回はそんな子どものストレスに保護者の方が気付くためのポイントや、気付いた時にどのようなサポートをするとよいかなど、お話しできればと思います。
この記事を書いた専門家
山崎 日菜乃
公認心理師、臨床心理士
心理士としてメールカウンセリングに3年半従事し、家族関係の悩み、心身の不調、仕事の悩みなど、様々な困り事へのサポートを行う。アメリカ合衆国在住。
目次
ストレッサーとストレス反応
ストレスには2つの要素があり、外部からの刺激によって心や体に生じる反応を「ストレス反応」、その反応を生じさせる原因のことを「ストレッサー」と言います。
こちらの記事で詳しく解説しています。
例えば、明日のテストが不安でお腹が痛いという状況の時、明日のテストというストレッサーによって、不安や腹痛というストレス反応が起きているといえます。
子どものストレッサー
では具体的にどのようなことが子どもにとってストレッサーになり得るのでしょうか。
以下に例を挙げてみようと思います。中には大人と共通するものもたくさんありますね。
ストレッサーの分類方法は様々ありますが、今回は心理的・社会的ストレッサーに着目して、①〜③の体験に分けてご紹介します。
①人生の節目となるような変化を伴う出来事(ライフイベント)
・入学、卒業、クラス替え
・きょうだいが生まれる、きょうだいが家を出る
・部活や習い事を始める
・引っ越しや転校、仲のいい友達の転校
・受験やそれに向けての準備
・保護者の生活スタイルの変化(復職、退職、単身赴任、入院、祖父母との同居開始など)
・ペットとの別れ など
②普段の生活におけるイライラする出来事(デイリーハッスルズ)
・友達や家族とのケンカ
・勉強や部活などが上手くいかない
・やりたいことができない、遊びに行けない
・言われたくないことを言われる、保護者や教師に怒られる
・体調が優れない
・嫌な話やニュースを耳にする
・暑さや寒さ、騒音、運動不足 など
③心身の安全が脅かされる圧倒的な体験(トラウマティックな体験)
・虐待、いじめ
・災害、交通事故、犯罪被害
・大切な人の死や離別
・大きな病気や怪我
・発達的に不相応な性的体験 など
上記は、自分が体験した場合に限らずそうした体験を見聞きした場合も含まれます。
ここで付け加えておきたいのは、これらの出来事が必ずしもストレッサーになるわけではないということ、また、ストレッサーがあるからこそ頑張れたり成長できることもあるということです。
そのため、ストレッサーを恐れたりゼロにしようとする必要はありません。
その一方で、例に挙げたような出来事が連続して起こったり、お子さまの様子が普段と違う時にはお子さまの心身に大きな負荷がかかっていることが考えられます。
そうした場合にはストレッサーの存在や影響を念頭に置いて、お子さまのことを気にかけてあげられるといいですね。
子どものストレス反応
ストレス反応は、【①思考、②感情、③身体、④行動】の4側面に様々に表れます。
大人も子どもも起こりうるストレス反応の種類は似ていますが、特に小学校低学年~中学年頃までの子どもは、自分の状況をうまく説明できなかったり、気持ちや考えが言葉にならなかったりして、身体や行動のストレス反応が目立つことも多いです。
以下にストレス反応の例を挙げますが、これらに当てはまるからといってすべてがストレス反応というわけではありません。
例えば、いつもおしゃべりな子の口数が減る、一人で過ごすのを怖がらなかった子が親から離れなくなるなど、もともとのお子さまの特徴からの変化があるかどうかがポイントです。
そのため、お子さまの様子が「なんだかいつもと違う」という違和感は、ストレス反応に気付く上でとても重要です。
思考に表れるストレス反応
悲観的な考えやイメージが頭に浮かぶ、自分のせいだとばかり考える/他者のせいだとばかり考えるなど認知の歪みが強まる、同じことをぐるぐると考え込む、考えがまとまらない、など
こちらの記事では認知の歪みについて詳しくご紹介しています。
感情に表れるストレス反応
イライラする、憂うつになる、悲しくなる、寂しくなる、好きなことを楽しめなくなる、やる気がなくなる、ぼんやりする、など
身体に表れるストレス反応
腹痛、頭痛、微熱、よく眠れない、起きられない、怖い夢を見る、食欲がなくなる、食べ過ぎる、おねしょやおもらし、体重の増減、疲れやすい、など
行動に表れるストレス反応
怒りっぽくなる、泣く、一人で過ごすことが増える、好きだった遊びをしなくなる、親のそばから離れなくなる、落ち着きがなくなる、友達やきょうだいをいじめる、ものに当たる、いつもよりよくしゃべる、口数が減る、爪を噛む、な
大人もですが子どもも、人によってよく出るストレス反応があることも多いです。
例えば、ストレスが溜まると夕飯を残すようになってきょうだいとのケンカが増える、とか、あちこちが痛いと言って怒りっぽくなるなどのように、お子さまのストレス反応にパターンがないか観察してみるのもいいですね。
お子さまによく出るストレス反応(サイン)を知っておくことで、落ち着いて対応しやすくなると思います。
子どものストレス反応に気付いたら
以下では、お子さまがストレスを感じている場合に保護者としてできる対応をご紹介します。
いつも通りの生活を続け、まずは体をケアする
お子さまを元気付けようとして特別なことやいつもと違うことをすると、生活の変化という新たなストレッサーが増えて、かえってお子さまを疲れさせてしまうことも考えられます。
そのため、基本的にはいつも通りの生活リズムや接し方を続けることが大切です。
いつもしていることのうち、お子さまがしたいことやお子さまが自分でできそうなことはいつも通りさせてあげましょう。
生活リズムや保護者の方の接し方がいつもと変わらず、ここにいれば安心だと思えるとお子さまの心も休まると思います。
また、心の元気を取り戻すには体のコンディションもとても大切ですので、まずは体をケアする視点で、必要に応じて病院で痛いところを診てもらったり、消化のよいメニューにしたり、早めに寝かせてあげたりするのもいいですね。
保護者自身の不安やストレスをケアする
周りの大人が不安がったり慌てたりしていると子どもも落ち着かない気持ちになってしまいます。
とはいえ、お子さまの様子がいつもと違う時は心配になったりイライラしたりしますよね。
まずは大人がゆったり構えるためにも、ご自分の不安やストレスをケアすることが大切です。
できる範囲でリラックスタイムを作ったり、他の大人や専門家(医師や心理士など)に相談したり、園や学校と現状を共有するのもいいですね。
ご状況によっては、お子さまと離れて一人になることでやっと心が休まる場合もあると思います。
そうした場合も含めて、ご家族や親戚に協力を仰いだり、家事や育児のサービスを活用したりしながら、ご自分なりのホッとできる時間を作れるといいなと思います。
休んだり誰かの力を借りたりしてご自分をケアすることは保護者の方自身の健康に繋がるだけでなく、そうした姿を見ることがお子さまにとって勇気や学びに繋がることもあると思います。
子どもと過ごす時間を作り、子どもが話したそうなら話を聞く
保護者の方自身が落ち着けたら、お子さまと過ごす時間を作ってお子さまが話したそうな時にゆっくり話を聞きましょう。
その際、お子さまの気持ちを決めつけたり非難したりしないで、そのまま受け止められるといいですね。
なかなか言葉が出てこない時はじっくり待って、何が嫌か、何をしたいか、お子さまの気持ちを一緒に確認してあげられると、お子さまも自分の気持ちに気付けるのではないかと思います。
こちらの記事では自己理解について詳しくご紹介しています。
また、お子さまの年齢に応じた易しい言葉で、ストレスがある時にストレス反応が表れるのは普通のことで、ケアをすればだんだん和らいでいくものだということを説明してあげると、お子さまも見通しが持てて安心できるかもしれません。
「話すのが難しそう」、「話したくなさそう」という場合は、①のように体のケアやいつも通りの生活を続けるなかで、一緒にのんびり過ごしたりお子さまがしたいことを一緒にするのもいいですね。
自分のペースを尊重してくれる人、自分のことを気にかけ力になろうとしてくれる人がいること自体が心の支えになるはずです。
おわりに
生きていればストレスを避けて通ることはできないため、ストレスにどう対処するかを練習し身に付けることはとても大切です。
周りの大人のサポートを受けながら、子どもの頃からストレスに気付き対処できた経験を積むことで、自分なら何とかできると自信がついたり、周りの人は力になってくれるという信頼感を持つことができるでしょう。
お子さまのサポートをするには保護者の方の心の余裕も必要です。
不安な時や困った時はお一人で抱え込まず、専門家も含めていつでも周りの人に相談していただけたらと思います。
参考文献
池田貴子・中原梓・辻仁美・岩瀬信夫(2006) 前思春期におけるライフイベントとストレスに関する研究 高知女子大学紀要 看護学部編 55, 23-38.
嘉数朝子・中澤潤・井上厚・富山りえ・島袋恒男(1997) 児童の心理的ストレスとライフイベント ―ストレスフル・ライフイべント尺度の地域比較分析を中心にー 琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要(5), 73-80.
日本小児科医会(2012) 「もしものときに…子どもの心のケアのために」
早稲田大学(2020) 「家庭ですごす期間の子どものストレスとその対応 ―保護者・教職員向けー」
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