子どものふとした言葉に対し「なるほど!」と感心したり、子どもの思わぬ行動に「へぇ!」と驚いたり。
子どもの言動に素直に感心する場面ってありませんか?
実は、そのように親が感心する声掛けや言葉を子どもにかけてあげることが、子どもの才能をぐんぐん伸ばしてくれているのです。
今回は、子どもに対して「感心する」声掛けを増やすことが大事な理由や、感心を伝える具体的方法についてお伝えします。
この記事を書いた専門家
相楽 まり子
公認心理師、臨床心理士
小中学校のスクールカウンセラーとして教育現場で経験を積む。現場で子どものケアには周りの大人へのサポートが欠かせないことを痛感し、産業領域でのカウンセリングも開始。子育てと仕事を両立する働き世代へのカウンセリングを得意とする。2児の母。
目次
親子のコミュニケーションでまず大事なこと
親子関係において、親が子どもと同じ目線で物事を見られるよう、ヨコの関係を築くことは非常に重要です。
なぜなら、ヨコの関係で対等な立場として扱ってもらうことは、子どもの自己肯定感の成長・発達に欠かせない関わりだからです。
成長するのは自己肯定感だけではありません。
自立的に考え、行動する力(主体性)もぐんぐん育ちます。
一方、親が上から子どもを評価するようなタテの関係の声掛けばかりに偏ると、自己肯定感は育ちにくくなります。
親に評価されるかどうかが判断基準になり、自分で考える、自立して行動する力も成長しません。
更には、子どもの年齢が上がり自我や個性がしっかりしてくるとともに、親の言葉に過剰に反発し、激しい衝突が起こるかもしれません。
「感心する」ことの効果と必要性
では、タテの関係ではなく同じ目線で物事を見られるヨコの関係を子どもと築くためにはどうしたらいいのでしょうか。
実は、親子の間にある上下関係をあっという間に変える声掛けがあります。
それは「感心する」声掛けです。
子どもの言動に対し「感心する」声掛けをしていくと、親は自分の言動に大きな関心を寄せてくれているのだということが、ストレートに子どもに伝わります。
この「感心する」親の声掛けや反応は、幼児から思春期まであらゆる年代の子どもにとって、とても嬉しい体験になるでしょう。
親子をヨコの関係に変えてくれる
親子関係はどうしても「上下関係」や「タテの関係」が生まれやすいです。
なぜかというと、親は常日頃から子どもの言動に対し、良し悪しを評価しがちだからです。
すると、自然に親は“評価する側の人”になり、子どもは“評価される側の人”という構図が固まってしまいます。
社会のルールや家庭でのルールを伝えるために、親としてどうしても良し悪しを伝えなくてはならない時もあるため、ある意味仕方がない面もあります。
だからこそ、親が意識的に「ヨコの関係」を作ってあげることが重要なのです。
ヨコの関係にするためには、同じ目線に立っているよ、ということを明確に伝えられる言葉が必要です。
例えば、親が子どもの話に「なるほどね!」とうなずきながら感心して耳を傾けてみたらどうでしょう。
子どもはきっと、(お母さんは私の話に興味をもっているんだな) (更に詳しく話してお父さんをもっと感心させよう!) そんな気持ちがムクムクわいてきます。ますます得意げになって話すかもしれません。
もっと親を感心させようと、自主的に何かを調べたり、新しいチャレンジをしたりという行動につながるかもしれません。
同じ目線に立つことの重要性
このように、親の「感心する」声掛けには、子どもが(自分は注目されているぞ!認められているな) と思える、まさに自己肯定感を高める力があります。
そして、子どもが自分で考えて新たにチャレンジする行動まで引き出してくれるでしょう。
絶対にタテ関係の声掛けがダメ、ということではありません。
子どもの成長や状態に合わせて、柔軟にタテやヨコの関係にできれば、親子関係は良好に進むでしょう。
ただ、あまりにも厳しいタテ関係のままずっと進んでいくと、中には思春期を迎える辺りで子ども側からの強い反発が起こり、そこで親子の関係性が深くこじれてしまうことがあるので注意が必要です。
実践!「感心する」声掛け
実際、どのような場面で子どもに「感心する」声掛けをすればよいのでしょうか。
実は難しく考える必要は全くありません。
なぜならあらゆる場面に、子どもに対して「感心したよ!」と伝えられるシーンは用意されているからです。
日常でのイベントで「感心する」
例えば、園や学校のイベントには感心するポイントがたくさんあります。
体を動かすのが得意な子であれば、運動会などスポーツのイベントが良いでしょう。
頑張って競技に取り組む姿に対し、「びっくりした!もうそんなこともできるようになったのね!」と驚いてみてください。
これだけでも感心を伝えることになります。
くれぐれも、「まだまだ全然ダメね」なんて評価する言葉をかけないようにしましょうね。
運動系よりは文化・芸術系に興味がある子であれば、展覧会や作品展などは良いイベントです。
子どもが描いた絵、作った作品、一つ一つに対し、「これ、どうやって描いたの?」「この作品作るの大変だったんじゃない?」「すごいなぁ」と声をかけてあげてください。
親が自分の作品に興味津々で感心していると分かり、子どもは満足げになるでしょう。
ここでも評価する言葉は禁句です。「もっと上手にできたんじゃない?」「適当にやったでしょ?」なんて言われたら、子どもはがっかりしてしまいます。
子どもが持ち帰る成果物に「感心する」
子どもは園や学校で取り組んだ成果物をたくさん家に持ち帰ってきます。
テストの結果だけでなく、作文や図工で作った成果物、社会科で学んだ内容をまとめたポスター、本当にさまざまな作品と呼べるものを持ち帰ります。
その作品たちをじっくり観察して、「これってどういうこと?」と思うポイントを探してみましょう。
その疑問をシンプルに子どもに質問してみてください。
子どもが説明をしてくれたら、感心した声掛けや態度を示すチャンスです!
「なるほどね!良く分かった!」「そんな考えがあったとは!分からなかったなぁ~」など、大げさなくらい大きく感心してあげて欲しいです。
子どもはまんざらでもない表情になるに違いありません。
子どもの成果物に対し様々な質問を投げかけてあげる行為は、自然と“子どもが、「親に教える人」”、“親が、「子どもから教わる人」”とうい構図が出来上がります。
この逆のタテ関係になる場面をあえて作ることで、教えられた親は、感心する声掛けをたくさんかけてあげられます。
あえて何もわからない人になったつもりで、子どもの成果物に対してたくさん質問をしてあげましょう。
もちろんここでも、「もっとこうした方がいいよね」とか「これは間違っているよ」などという指摘は不要です。
おわりに:「感心する」言葉が子どもの才能を伸ばす
今回は、親の「感心する」声掛けが、いかに子どもの自己肯定感や子どもの自立心に繋がるかについてまとめました。
子どもの才能を伸ばす言葉と言われると、「褒める」言葉や、よくできたねと評価するような声掛けが思い浮かぶかもしれません。しかし、これらの言葉の背景には、「評価する人-される人」というタテ関係が生まれています。
子どもの特性や発達段階によっては、このタテ関係だけでは行き詰ってしまう場合が多いです。
そんな時は、子どもの行動・言葉に対して、シンプルに親が感心したと伝えてあげてください。
親の感心が伝われば、子どもはきっと嬉しそうな顔、得意げな顔、照れた顔、まんざらでもない顔をするでしょう。
そして、自ら考え行動する勇気を得て、生まれ持った才能をぐんぐん伸ばしていってくれるに違いありません。
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