デジタル社会で生き抜く力!子どもに教える本当の情報リテラシー

現代社会は、「情報化社会」という言葉が定着し、多様な情報にアクセスすることは容易になっていますよね。

大人も子どもも、アクセスできる情報の全てが正しいわけではなく、情報を適切に扱うことが求められています。

今回は、情報を適切に扱うことができる大人になるために、子どもの頃からどう育てていけば良いのかについてQ&A形式で解説していきたいと思います。

この記事を書いた専門家

杉野

杉野 亮介


公認心理師、臨床心理士

教育支援センター、スクールカウンセラーとして教育分野で不登校支援等に携わった後、児童福祉施設で心理士として20年間以上従事。児童虐待を受けた子どもや発達凸凹のある子どもたちへの心理的支援、生活のケアを行う。

私が子どもの頃は、何か分からないことがあった時に、辞書や事典を調べなさいと言われるか、新聞やテレビのニュース番組から事件や事故のことを知ったり、雑誌の記事から「最新の情報」に触れようとしていたと思います。

学生になって論文を書くとなり、図書館で本や雑誌を探しまくったり、遠方の図書館から自分が必要としている論文をコピーして送ってもらったりと、何かと苦労した記憶があります。

しかし、今の社会では、分からないことや知りたいことがあれば、スマホ等で検索すればすぐに情報にアクセスできます。

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とても便利な時代になりましたが、一昔前とは異なった問題が表れています。

以前であれば、大衆に提示される情報の多くは、何らかのチェックを受けて、事実あるいは事実に近いもので、少なくとも普通に生活している子どもが何らかのメディアから仕入れる情報が意図的に歪曲されていたり、完全に誤った事実に基づいているということはほとんどなかったと思います。

(テレビや新聞の誤報は、それ自体がニュースになったこともありました。)

我々はメディアから提示された情報に対して、それほど緊張感を持たずに受け入れていた時代でした。

しかし、現代社会のように、誰もが情報を発信することができ、正しい情報も、事実ではない情報も、誰かを陥れようとする悪意ある情報も溢れていると、情報を取捨選択して生きていく必要があります。

子どもの頃からスマホを持って、ある程度どんな情報にもアクセスできる現代において、保護者は子育ての段階から、子どもが情報を適切に扱えるかどうかということに気を配る必要があるのです。

なお、私は情報機器やそのセキュリティの専門家でもありませんので、ここでは、それらの機器のことではなく、情報に触れる子どもや大人に焦点を当てて、Q&Aをしていきたいと思います。


回答:

【情報のインプット】という観点では、情報を多方面から捉えることです。

1つの情報源からの情報を鵜呑みにするのではなく、「本当にそうなのかな?」という思いを持って、別の情報源からの情報も扱って、それらを比較することができれば理想的です。

「そんな面倒くさいことはしたくない」とか、「そんなことをどうやって教えたら良いのか」という思いを抱かれる方もいらっしゃると思いますので、私が子どもによくやっているワークをご紹介します。


子ども:「今日って、雨降る?」

私  :「インターネットで調べてみたら?」

子ども:(何らかの結果を教えてくれる)

私  :「じゃあ、別のサイトでも調べてみて」

子ども:「ヤフーの天気予報見た。降水確率は50%だった」

私  :「グーグルの天気予報では~」

こうすることで、子どもは、複数のサイトから情報にアクセスすることや、サイトによって結果が異なることがあること、を体験できます。


こちらも簡単です。

子ども:「〇〇が欲しい」

私  :「どこのサイト/お店で買うのが一番安い?その結果を踏まえて買おう」

このようなことは、多くの方がされていると思いますが、生活経験が乏しい子たちは、この手順を踏むと、値段が違うことに衝撃を受けることがあります。


回答:

これは、【情報のアウトプット】の観点ですね。

子どものスマホのトラブル、特にSNSに関してのトラブルで私がよく相談を受ける以下の2点から解説します。

1点目としては、いわゆる”デジタルタトゥー”というもので、ちょっとした出来心で投稿した写真やメッセージについての後悔に関するものです。

ほとんどの場合、投稿してしまった後に完全に削除することは難しいようなので、そういう投稿をしないという対策しかありません。

「その写真や一文は、永遠に残っても大丈夫か」という意識を持ってもらうことです

保護者としては、子どもがそういう被害に遭わないか心配していること、可能であれば子どもの許可を得た上で定期的にチェックしたいこと、などを初めに伝えておくのが良いでしょう。

親に絶対に見られたくないような写真やメッセージを他人に送ることはどうなのかなと、私は思っています。

もちろん、子どもの許可なくチェックすることはお勧めしません。

2点目としては、「自他の境界」を明確にするということです。

これは、他の記事でも何度か触れていますが、子育てをしていく上で、大切な意識の一つとして、「自他の境界」を明確にするということがあります。

SNSでのトラブルにおいて考えれば、以下の2つのポイントに留意しておきたいです。

「自分の話をする。他人の話をしない」というのは、SNS上に限ったことではありませんが、コミュニケーションを取る時には、自分の話を自分の責任のもとに行うのは良いが、他人のことをどうこう言うのはトラブルの元になるのでやめましょうということです。

話題提供のつもりで、「AちゃんがBさんのこと、うざいって言ってたらしいよ」「C君はDちゃんのこと、好きらしい」という他者についてのメッセージが当人の耳に入って、対人トラブルになるということは本当に多くあります。

また、「自分のプライバシーは晒さない。晒すことは嫌だと伝える」というのは、「ここからは自分だけの領域であり他者には触れさせたくない」という感覚を持つことを大切にするということです。

保護者から、一人の人間として大切に扱ってもらえていないという感覚を持っている子どもは、自分を大切にできないです。

また、そのような子どもは他人の要求に応えることで構ってもらおうとしがちなので、他者からの要求に対して、どこまでも応えようとしてしまいます。

見ず知らずの人から「どこに住んでるか教えて欲しい」「裸の写真を送って欲しい」と言われた時に、「嫌です」と言えない(あるいは思えない)ので、その誘いに乗ってしまいます。

「あなたはあなたで良いんだよ」「他の人と比較する必要無いんだよ」というスタンスでの保護者の関わりが、子どもを守ってくれるのです。

このように、情報の適切なアウトプットいうことを考えると、自分の情報発信を見た人(聞いた人)はどう思うのかということを常に意識できているかということだと思います。

常に受け手のことも考えて、自分の情報発信は誰に届くのか(あるいは届く可能性があるのか)、受け手にどんな思いや考えを喚起しうるのかを意識した上で、情報を発信するということが、情報を適切に扱えるかどうかということです。


回答:

子どもは、大人ほど見通しを持って考えることができませんので、「~は大丈夫?」と聞けば、「大丈夫」と答えるのが普通です。

また、これは子どもに限りませんが、知識として知っていても、それを活用できるかどうかは分かりません。

そこで、子どもには具体的に教えてあげる必要があります。

「迷惑メール」や「フィッシング詐欺」等の言葉を使って「気をつけてよ」ではなく、具体的に、こういうメールが来て、ここにアクセスしてしまうとどういうことが起こるのかについて、教えておく必要があります

これは実際に私が経験した例ですが、

「内緒だけど、私、芸能人の友だちがいる」

「たまたま芸能人から間違いメールが来たから」

と話してくれた中学生がいました。

すぐにそれが迷惑メールだよと教えてあげると、すごく不快そうな顔をして、

「本当?信じられない」と言うので、

「友だち5人に聞いてみて」と返しました。

その後に会った時に聞いてみると、「友だちがみんな、やばいメールって教えてくれた」、「迷惑メールって、もっと悪口とか書いてあるのかと思ってたから」と教えてくれました。

これは、スマホの記事でも述べたのですが、情報機器を持たせる段階で話をしておくのが効果的です。

すでに持たせた後では、なかなか話が入りにくくなってしまうからです。

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回答:

「絶対に~」「決して~ない」「~に決まっている」と言いきっているような情報に対しては、「本当かな?」と思う必要があるでしょう。

よく言われていますが、「絶対に儲かりますよ」という文言ほど怪しいものはありませんよね。

ただ、そのような詐欺に騙される人たちの多くは、初めから自分が騙されるとは思っておらず、むしろ、自分は騙されるはずがないと思っているのではないでしょうか。

不適切な情報に振り回されないためには、「もしかしたら自分は騙されるかも」という思いを持っておくことが必要です。

子どもに対しては、「騙されたらダメだよ」ではなく、

「残念ながら、あなたを騙そうとする人はいる」

「おかしいなと思ったら、相談して」

「騙される人が悪いのではなく、騙す人が悪いんだよ。でも、騙されたことが分かっていて黙っているのも悪いんだよ」

と伝えておくことが必要です。

ここでもやはり、一つの情報を多面的に捉えるという意識も大切だと思います。

例えば、「絶対に得をします」という情報を得た時に、「そんなことはあり得るのか?」と立ち止まって考えてもらいましょう。

「誰かが得をする」ということは「誰かは損をするのではないか」と考えることが必要です。

「なぜ、この会社は損をしてまで、私に得をさせてくれるのか」「おかしいな」と気づく必要があります。

もちろん、子どもがここまで考えることは難しいかもしれませんが、保護者が子どもに対して、「私はこう考えるから、これはおかしいと思うんだけど」と思考のプロセスを提示してあげることで、子どもも徐々に自分なりに「本当かな?」と考えることができるようになります。

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回答:

現代の多くの家庭では、情報機器の扱いに関して言えば、親よりも子どもの方が上だと思います。

だからと言って、子どもは親に頼らないかと言われれば、そうではないでしょう。

保護者にできることは、「分からない」「やばいかも」「困った」と子どもが思った時に、保護者に相談できる関係性の構築だと思います。

情報の扱いに限ったことではありませんが、子どもなりに細心の注意を払っていても、騙されてしまったり、何か上手くいかないことが起こるのは当然です。

そこで、大人に相談しようと思えるのか、「ばれたらやばいから」と隠そうとして問題が大きくなるのかが、分岐点だと思います。

子どもが大人に相談するためには、この人は頼りになるな、助けてくれるなという思いを持てていることが必要なので、子どもが相談に来た時に「よく相談してくれたね」と評価してあげることが必要です。

「困ったら相談してよ」と言いつつ、いざ相談に行ったら「なんで、こんなことになるまで言わなかったの?」と責められてしまえば、「相談しなければ良かったな」となってしまいます。

また、「分からない」と子どもが言ってきた時に「自分で調べて」と返してしまったり、「そんなの分からないの」と言ってしまえば、子どもは「もう相談しない」となるでしょう。

「分からない」と相談した時に「じゃあ、一緒に調べよう」と調べる過程から一緒に体験することが望ましいです。

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冒頭にも書きましたが、私が子どもの頃は、情報を適切に扱えるようになるという視点は、子育ての中には、なかったように思います。

このように社会が変化していくにつれて新しい視点がどんどん増えてきて、「情報化社会」とか「デジタルなんとか」とか聞くと、昔ながらの子育て論は通用せず、新しい子育ての形が必要なのではないかと思ったり、自分の親世代に相談しても何も分かってくれないのではないかと不安に思われる方もいらっしゃると思います。

どこに相談すれば良いのかと不安にも思います。

我々を取り巻く環境は日々変化しているのですが、私は、子育てにおいて最も大切な部分は変化していないと感じています。

どんな問題においても大切なことは、子どもが親に「分かんない」「困った」「助けて」と言えて、親が「じゃあ、一緒にどうにかしよう」と言ってあげることです。

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子育てをしていると、あれもこれもと心配なことはたくさんありますが、親子の関係性について不安に思った時は、子どもが親に対してSOSを出せているかどうかを意識してみてはいかがでしょうか。