長期休みのなかでも、特に夏休み明けに「学校に行きたくない」と感じる子どもは多いといわれています。
私たちも小学生のとき「夏休みがもっと長かったらな…」と思ったことはあるのではないでしょうか?
しかし、その「学校に行きたくない」は「もっと長くなったら」ではない可能性があります。
そこで今回は、臨床心理士・公認心理師である筆者が、夏休み明けの行き渋りの理由と対処法を解説します。
この記事を書いた専門家
いけや さき
公認心理師、臨床心理士
精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。
目次
夏休み明けに子どもが行きしぶる理由4選
文部科学省の調査によると、小学生の夏休み以降の出席状況は次の通りです。
「全く学校に行っていない(15%)」
「ほとんど学校に行っていない(20%)」
4割弱の小学生が登校渋りをしていることがわかります。
では、学校に行きたくない理由はどのようなものがあるのでしょうか?
1. 生活リズムが乱れている
夏休みの間、夜遅くまで起きたり、お昼くらいまで寝たりしている子どもは多いのではないでしょうか?
お子さんが希望して生活リズムが乱れている場合もあれば、「夏休みだもんね」と家族が容認しているケースもあります。
特別なことをしたくなる気持ちはわかりますが、子どもが生活リズムを立て直すのは大人以上に大変です。
昼夜逆転まではしていなくても、生活リズムの乱れが学校に行きたくない理由となっているかもしれません。
2. 宿題が終わっていない
宿題が終わっていないとき、「怒られるのではないか」と怖くなってしまう子どもは多いです。
宿題は課された課題なので終わらせることが普通…と捉えると思いますが、まずは子どもが宿題を避けてしまった理由や怖がっている気持ちに寄り添いましょう。
夏休み最終日や新学期が始まってから発覚した場合、親御さんが優先順位をしてあげてどれから取り組めばいいか、サポートしてあげるといいかもしれません。
3. 寒暖差に疲弊している
生活リズムの乱れや気温の変化によって、子どもは次のような症状などを抱えることがあります。
・起立性調節障害
・寒暖差アレルギー
・熱中症
・秋バテ(季節性感情障害)
夏から秋にかけて、日中と夜の気温差だけでなく、一週間のなかでも気温差が激しい時期になりやすいです。
子どもの変化に敏感になり、疲弊していないか注意しましょう。
4. 学校への不安がある
子どもの生活の大半は学校ですよね。
夏休み中に家の生活が中心になると、学校生活の不安や心配を自覚する子どもも増えます。
また、もともと行きたくない気持ちを抱えていた場合、「またつらい日々が始まる」と思ってしまうこともあるでしょう。
たとえば学校への不安には次の原因があると考えられます。
友人関係
クラスメイトやクラブ活動、委員会など、子どもが関わる「友人」は教室内だけではありません。
文部科学省の調査によると、最初に学校へ行きづらいと感じ始めた学年は「小学4年生(30.2%)」が最も多いとされています。
「小4の壁」という言葉があるように勉強や人間関係の悩みが生じやすいのが小4です。
学童期のなかでも、自分を客観的に捉えられるようになる年齢といわれています。
先生との関係性
学校の先生との相性も行きたくない理由の1つ。
文部科学省の調査でも、先生が原因で不登校になった割合は1.1%と明らかになっています。
割合としては高くはないですが、見落としやすい原因とも考えられるでしょう。
・先生の発言が怖い
・先生に話しかけにくい
・先生が信用できない
・先生のことだけ全く話さない
子どもの発言から、先生に関する話題があるかどうかも見極めポイントの1つです。
勉強に追いついていない
勉強に苦手意識を持つ子どもや、なんとか頑張っていたお子さんの場合、夏休み明けは学校に行きたくない気持ちが強くなると予想できます。
小学校低学年では、まだ勉強に関する悩みは少ないかもしれません。
しかし小3以降は、周囲との差を認識するようになるでしょう。
「できれば勉強したくない」「なんで勉強しなきゃいけないの」という考えになりやすいと思われます。
また、勉強ではなくても音楽や体育、美術などが苦手な子もいます。勉強だけではない、学校が嫌になるポイントにも気をつけてあげてくださいね。
秋の行事に不安がある
夏休み明けといえば、秋の行事がいくつか待っています。
・運動会
・校外学習や遠足
・学芸会
・学校特有の○○大会
1学期に運動会をする小学校もありますが、集団行動が苦手な子、運動や芸術系、発表が苦手な子にとってかなりストレスがかかるでしょう。
行事を嫌がる場合の詳しい記事は夏休み明けの「行きたくない」は不登校になるケースも
夏休み明けに学校へ行きたくない子どもは多いですが、不登校になるケースとしばらくして学校に行けるケースがあります。
不登校になりやすい子の特徴は次の通りです。
・体調不良を訴える
・学校のことを話したがらない
・そもそも口数が減る
・休んでいいことがわかると回復する
・外出を避けたがる
・眠れない、起きれない
子どもは自分の状態を言語化できないことも多いです。
親御さんが、子どもの様子を観察してサインを見逃さないようにしましょう。
不登校に関する詳しい記事は夏休み明けに「学校へ行きたくない」親御さんができること
子どもが小学校に「行きたくない」と言ったら、親はどのように対応したらいいのでしょうか。
ここでは、子どもに対して親御さんができることを解説します。
子どもが安心できる状況を作る
まず前提として、子どもにしつこく理由を聞いたり、学校へ無理やり行かせようとしたり、行かないことを注意しないように気をつけましょう。
その代わり、理由をそれとなく聞いたうえで、話してくれなければ見守る姿勢でいてください。
理由が気になると思いますが、無理に聞き出すものではありません。
また、はじめて「行きたくない」と言った1日はまず、ゆっくり休ませてあげましょう。
それだけで翌日に行ける子どももいます。
一方で、翌日も変わらないもしくは様子が悪化したように見えたら、「無理して行かなくていいよ」「でも心配してるから、よかったら話してね」と子どもに安心感と話せる状況を与えてあげましょう。
以下で、原因別の対応方法を解説します。
ケース① 生活リズムが原因の場合
子どもが学校に行きたくない理由が生活リズムが原因の場合、生活リズムを取り戻すことに協力してあげてください。
夜更かしを無理に辞めさせようとするよりも、朝起きてからの日中活動の仕方に工夫しましょう。
少しずつ起きる時間を登校時間に合わせ、日中に買い物や公園に一緒に行くなど、日光を浴びて活動する時間を増やすのがおすすめです。
また、必要に応じて起立性調節障害などの可能性も視野に、医療機関に相談しに行くことも検討してみてください。
勉強を強要しないで、一緒に学びを楽しむ時間や、宿題するときにお父さんお母さんも一緒に何か作業をする時間を作ってみましょう。
宿題や学校の勉強は上記の工夫がおすすめですが、苦手意識が強すぎる子や、宿題に拒否反応がありそうなら次の方法も試しましょう。
・ひと学年下のドリルやプリントをやる
・ゲーム感覚でできる方法を試す
・すぐに丸を付けて、最後に花丸をつける
・全問正解を目指さず、取り組みに注目する
また、子どもは親に褒められると嬉しい気持ちになるだけでなく、やる気につながります。どんな問題を解いたか、どれくらい難しかったのかを聞いて「がんばったんだね」と伝えることもコミュニケーションとして重要です。
筆者が成人のカウンセリングをしていて、よく聞く話があります。
それは、学校の友達との関係を親に相談したけど「怒られた」「何の解決にもならなかった」です。
相談することを諦めた子どもが大人になり、人間関係に苦しんでいるパターンだと考えられるでしょう。
子どもによって求めているものは異なりますが、一番大事なことは「最後まで話を聴くこと」です。そのうえで、気持ちを受け止めてあげてください。
「そんなの○○すれば大丈夫」「お母さんはそんなことで〜」など、大人の価値観を伝えてしまったら、子どもは「味方になってもらえなかった」という感覚になります。
対策は子どもがどうしたいか、どうなりたいかを聴いたうえで一緒に考えてあげてくださいね。
夏休み明けの「行きたくない」は専門家に相談
夏休み明けの子どもの「学校に行きたくない」は、親子だけで抱える必要はありません。
学校や病院に相談するなど、一緒に解決していく仲間を見つけていきましょう。
Gifted Gazeはすべての親子の味方です。
家族だけで解決しようとせず、周りを頼ってくださいね。
専門家に相談したい方は