受験生であっても、勉強しない子どもはたくさんいます。
ただ、「勉強しなさい!」と口酸っぱく言っても逆効果になってしまうことも多々ありますよね。
親として、そんなお子さんを目の前にして何ができるのか、どのような姿勢でいるとよいのか、受験期のお子さんに対する親御さんの意識や姿勢について説明していきます。
この記事を書いた専門家
日塔 千裕
公認心理師、臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
はじめに
中学受験、あるいは高校受験を控えているお子さんをもつ親御さんは、お子さんよりも、親御さんの方が焦りや不安を強く感じていることは多いです。
親御さんは、受験や就活、転職などを経験してきた中でどんなものか、どんな努力が必要かなどが分かっているので、お子さんの生活を見ていて、こんなことしていたら受からない…と不安になることでしょう。
お子さんは、一切そのようなことを経験してきていないので、想像ができていないのです。
親御さんから見て危機感がないように感じるというのは自然で、そのようなお子さんに対する不安・心配に関する相談は多く受けてきました。
志望校はどう決めたらよい?子どもが志望校を決めない場合
中学受験であれば、ある程度、親御さん主導で進めている方が多いと思います。
一方で、高校受験になれば、親御さん主導で決めることも難しくお子さんに希望や考えを聞くものの、考えているんだか考えていないんだか分からないような反応が多い…ということもよく聞きます。
中学受験にしても、高校受験にしても、多少、親御さん主導の部分はあったとしても、最終決定はお子さん自身が行う状態にすることが望ましいです。
志望校の決め方の基準
下記に志望校の選択基準例を5つ挙げてみます。
ー志望校の選択基準(例)ー
① 学びたい授業がある
② やりたい部活がある
③ 行事の雰囲気
④ 制服がかわいい/制服の選択肢が多くアレンジできる/制服がない
⑤ 校舎がきれい/学校の設備がよい
⑥ 家から近い(通学しやすい)
⑦ 生徒や先生たちの雰囲気
⑧ 卒業生の進路
親御さんとしては、やりたいこと・学びたいことなど何か目的を持って決めてほしいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そうあってほしいと望む気持ちは当然のことだと思いますが、お子さんの小学生・中学生という年代から考えると、そこが明確になっているお子さんはごく一部ですよね。
まずは、今のお子さんが進学先の学校を決めるにあたっての重要となる価値観はどれになるのかを聞いてあげてください。
上記8つの例を参考にしながら、「こういう判断の仕方があるけど、あなたは3年間通う学校をどういう理由で決めたい?」と。
③④⑤⑥のような基準で決めても、それは今のお子さんの価値基準がそこなのだと受け止めてあげてください。
純粋に「楽しそう」、「あれをやりたい」などの感覚で選択してもいいということです。
大人でも就職先(転職先)を決める際には通勤のしやすさが重要なポイントになることは多いです。
なので特別に「これ!」とお子さんの中で感じるものがなければ⑥の通学のしやすさなどの基準で選択しても受け入れてあげましょう。
親から言われたからここを受けた(進学した)ではなく、お子さん自身に決めさせることは重要なことです。
志望校決定に際して親としてできること
親御さんができるのは、資料集めなどの情報収集程度と思っていましょう。
場合によっては、集めた資料・情報の中から、先ほどお伝えした選択基準のような内容を一緒にまとめて表などにして作ってみると、視覚的に分かりやすくなり、判断しやすい基準ができて子どももよく考えることができます。
高校受験の場合は、オープンスクールや説明会等に親御さんも必ずとなっている場合やお子さんのみが基本となっている場合など、学校や地域によって違いがあります。
親御さんが行ける場合には情報集めの一環として行っていただいてよいですが、「〇〇がよかったよね」「〇〇があなたに合ってるんじゃない」など親御さん自身の価値観を押し付けないようにしましょう。
考えを伝えすぎると、親御さんの思いで決定させるようにお子さんを誘導していることになってしまうためです。
将来的に何か親子で揉めた際に、「自分は行きたくなかったのに、親が言うからそこに決めたんだ」などと言われてしまったり、自分事として捉えずに人に責任を押し付けるようになったりする可能性がありますし、勉強のモチベーションも変わってきます(後半で解説します)。
そのため、
- 自己決定する機会として、お子さんの考え・感覚を重視して決める
- 親御さんの考え・気持ちは言いすぎない(情報として客観的なもののみを伝える)
ということを大事にしてください。
これは中学受験においても同様です。
中学受験の場合は、志望校の候補絞りなどある程度の枠組みは、親御さん主導で行う必要はあります。
中学受験においては、お子さんに具体的に聞いていくことが必要です。
例えば、「お母さん(お父さん)は、この学校のこういうことをやっているのは楽しそうだなと思ったけど、あなたはどう感じた?」などです。
教育理念や指導方針なども親として大切な選定基準かと思いますが、お子さんにとっては難しくまだイメージができないのです。
実際の学校生活を送ることをベースに、授業内容や休み時間の過ごし方、行事、校舎の設備等で確認できるとよいです。
そして、これは中学受験にも高校受験にも通じることですが、オープンスクールや文化祭の見学等で学校に行く際には、必ず実際、通学することを想定した交通手段・ルートで行ってください。
学校には魅力を感じているけど、いざそのルートで行ってみると大変でしんどかった、これが毎日となるときついかも…なんてこともあり得ます。
親御さんは経験値の多さから想像できることも、お子さんはまだまだ想像力が十分に働いていないことも多いため、実際に経験・体験させることが重要です。
「子どもが全然勉強をしない」
これは、初めての受験を控えているお子さんをもつ親御さんの方が多く抱えている悩みかもしれません。
受験かどうかにかかわらず、「勉強しなさい!」と言うのは、お子さんの反発心を煽り、余計に勉強しないという逆効果を生みやすくなります。
「勉強しなさい!」は極力控えつつも、どう対応するのがよいでしょうか。
中学受験の場合
“全然”勉強しないということはないにしても、勉強量としてもう少し増やしてほしいなどと感じる場合はあるかもしれません。
空間や時間をできるかぎり、分けてみてください。
遊びなどお子さんが興味を引くものが視界に入らない環境で、そのスペースは勉強以外に使用しないことが空間として理想です。
そして、時間についてもできる限り「〇〇が終わったら勉強△分」「〇〇の前には勉強△分」などとルーティン化する。
最初はその状態でも集中しにくかったとしても、続けることで、この空間に来たら勉強スイッチが入るというように体に無意識に刻まれていきます。
これから中学受験対策を始めるという方は、最初が肝心ですので、下記のような方法もあります。
中学受験の場合であれば、お子さん一人に勉強させるというよりも、親御さんも仕事や資格の勉強などをするから「一緒にしよう!」と同じテーブルで並んで取り組む時間を作るというのも方法でしょう。
親御さんが真剣に取り組んでいる姿勢を見せることで、お子さんも今自分にできる勉強をがんばろうというやる気を引き起こしやすくなります。
下にきょうだいがいる場合、きょうだいも巻き込めるのであれば、一緒に勉強の時間に充てられるとよいと思います。
きょうだいの年齢などによっては、一緒に勉強ということが難しいようであれば、休日だけご夫婦等で、受験するお子さんと一緒に勉強する人と、下のお子さんを遊ばせる人と分担して対応するのも方法です。
小学生だと、ゲームや友達との遊び、好きな習い事など、勉強以外に時間を使いたい場面も多いと思います。
その場合は、お子さんと一緒にルールを作ったり、時間を決めたり、ご褒美を活用するなどしてコントロールしましょう。
気分転換として遊びの時間も大切ですので、その時間も取り入れるように意識してみてください。
基本的に年単位の長期戦ですので、勉強と遊びのメリハリを意識したスケジュールが大切です。
中学受験に向けての勉強等のスケジュールも、お子さんと相談しながら一緒に立てられるとよいです。
1週間の予定表のような形で見えるようにすると、お子さんも取り組みやすくなります。
高校受験の場合
高校受験の場合は、年齢的に親御さんからのアプローチよりは、第三者を活用することが望ましいです。
親御さんからの声掛けは、勉強を除いて極力日常生活のことだけに努めましょう。
食事やお風呂、学校への提出物(宿題ではなく、志望校など手続き的なもの)などです。
と言っても、これだけでも結構、苦労されたり悩んだりしていることは多いと思います。
そこに加えて、「勉強しなさい!」と言ってしまうと、志望校の決定や学校への提出書類等の必要な情報もお子さんが親御さんに伝えてこなくなってしまうこともあるため、親御さんとしては、勉強のことには口出ししないくらいの心づもりでいましょう。
親御さんからは直接言わないけれど、お子さんに直接話してもらうのは第三者にお願いすると周囲の方に協力を仰ぐように働きかけていきましょう。
第三者とは、学校の先生や塾・家庭教師の先生です。
どの先生がキーパーソンとなってくれるかはそれぞれの状況によって変わってきますので、お子さんの家での様子と親御さんの心配事を伝え、お子さんへの働きかけをしてもらえるかを確認してみてください。
毎日、日々の状況を共有してというのは難しいですが、定期試験後に再度の話ができるように、定期試験の1か月程度前に、通常の面談等がなくても、先生に少しお話する時間をいただけないかとお伺いを立ててみてください。
もし新しい塾に通うことが可能そうな状況であれば、そういうことをしてくれそうな塾を探すということも方法でしょう。
親として焦りを感じる気持ちは当然です。
ただ、テスト結果や成績を見た時は、お子さんの目の前では一喜一憂せず、できる限り平静を装いましょう。
思春期という難しい時期でもあるため、勉強のことを口うるさく言うことは、やらない言い訳をお子さんに与えてしまうことになる可能性があります。
お子さんなりに、なんとなくやらないといけないのも分かっているけど、行動を変えることへの気恥ずかしさが無意識に働いていたりする場合もあります。
親御さんとしては、美味しい食事や規則正しい生活などの、これまでと同じ状態をキープするということが大事です。
おわりに
受験期は、子どもよりも親の方が焦る気持ちが強くなるのは自然な反応です。
お子さんに危機感がないと感じるのも当然です。
夫婦間や塾などの先生と話をする際には、その気持ちを伝えたり、その雰囲気が出ることは問題ありません。
ただ、お子さんに伝わりすぎると、あまり良い効果はありませんので、お子さんの目の前ではできる限り平静な状態を装うように心掛けていきましょう。
そして、親御さんの人生ではなく、お子さん自身の人生のため、親の価値観や考えは少し脇に置き、お子さん自身がどう感じたか、どう考えるかを大切にして進めることを忘れないようにしてください。
子どもの受験ことでお悩みの方は、ぜひお気軽に専門家にご相談ください。
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