急速な技術の進歩により、電子機器の進化は私たちの日常生活に大きな影響を与えています。
特に、ここ数十年の間にスマートフォンやAI技術が普及し、その影響は子どもたちの教育にも及んでいます。
さらに、今の時代は「VUCAの時代」という一層変化が激しい社会になっています。
そこでこの記事では、この激動の時代に、子どもたちが未来に向けて必要な力をどのように身につけていくべきかを探ります。
この記事を書いた専門家
日塔 千裕
公認心理師、臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
目次
電子機器の劇的な進化
今の時代、85%の人がスマホなどのモバイル機器を1台以上、保有しています。
20年ほど前は、高校生になったら携帯電話を買ってもらえる、高校合格のお祝いに携帯電話を買ってもらうなど約束していた家庭も多かったです。それが、今は中学生になって購入する家庭が多くなっています。
地域によって多少の差はあるものの、小学生からキッズ携帯などの携帯電話を持たせている家庭も増えている時代です。
ChatGPTなども出てきて、まるで人同士のような会話ができてしまうほどにAI技術が進化していますよね。
AI技術の革新に伴い、家庭の中でも、仕事でも、さまざまな場所でAIに代替しているものが増えてきているでしょう。
仕事が機械に奪われる」
「10年後、約半分の仕事が機械に奪われる」
オックスフォード大学のマイケル・Aオズボーン准教授が論文発表したのは、すでに10年前のこと。
なくなると言われた仕事で、確かに機械化が進んだものと、そこまで進んでいないものもあります。
当時、衝撃を与えられたほど、スピード感のある仕事の消失には繋がっていないものの、確実に人の手から機械に置き換えられたものは増えてきているでしょう。
一方で、Youtuberなど、今までなかった仕事が出てきて、なりたい職業ランキングに入っているような状況です。
この10年でそうなのですから、今の子どもたちが大人になって社会に出て行く頃にはさらなる変化が生じていることと思います。
そんな激動の時代に生まれてきた子どもたち。
親が過ごした子ども時代とは、状況が大きく変わっています。
「昔はこうだった」「自分の時はこうだったから」
と親の価値観で判断してしまうと、子どもとしては、子ども自身がいるコミュニティの中で生きにくい状況も生じてしまうことがあるかもしれません。
学習指導要領の改訂に伴う変化とは
このようなAIの技術革新が進む中で、子どもたちの教育も同じままではいけないという問題意識のもと、国単位では学習指導要領が改定され、2019年度から幼稚園を皮切りに新しい学習指導要領に基づいた教育がスタートしました。
学習指導要領の改訂
小学校では年度から、中学校では2021年度から、高校では2022年度からと段階的に移行しています。
今回の改定では「生きる力」がテーマで、の3つの柱になっています。
実際の社会や生活で生きて働く「知識および技術」
未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力など」
学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性など」
ここまでAI技術の革新による時代の変化をお伝えしましたが、学習指導要領の改訂においては、AI技術の革新が進んでも、人間にしかできない力を伸ばすことで生きる力を高めていこうというところが大きなポイントになります。
この記事でもそこに重点を置いた内容とするため、今回は広げませんが、新しい指導要領はAI技術の革新だけでなく、外国語教育の充実を図りグローバル化に伴う世界での生きる力を付けることも含まれています。
これまで日本の教育では、どちらかと言えば、先生から生徒に教えるという講義形式の知識の詰め込みが中心の教育でした。
ただ、先に述べたような「生きて働く知識」や「思考力・判断力」などに関しては、知識の詰め込みだけでは通用しません。
知識の詰め込みだけで対応することに慣れてしまうと、それこそ、AIへの置き換えが可能な内容のことしかできないという状況になってしまいます。
アクティブ・ラーニングの登場
そこで新しい指導要領で重要視しているのは、「アクティブ・ラーニング」となります。
アクティブ・ラーニングとは、主体的かつ対話的で深い学びとするための学習スタイルです。
「何を学ぶか」ではなく、「どのように学ぶか」にポイントが置かれています。
この学習スタイルは、アメリカなど欧米諸国の学校の授業では早くから取り入れられており、一方向性の講義を聞くスタイルだけでなく、ディベートなどが多く行われる方法です。
今回の学習指導要領の改訂に伴って、日本でもそのようなスタイルを導入していこうという動きがようやくスタートしたと言えるでしょう。
ただ、子どもたちを教える立場の学校の先生自身がそのような学び方をしてきてはいません。
また、ただでさえ忙しい先生たちが新しい学習スタイルのやり方をいきなりやれと言われても、学ぶ時間も思うように取れない実状もあります。
現状としては、「学習指導要領が変わった!だから即座にやり方を変えよう!」なんてことは不可能なわけです。
大変な中、先生たちもがんばって、指導要領に沿うように試行錯誤して授業のやり方を考えていることでしょう。
先生たちはもちろん、学習指導要領に則った教育を提供していかなければなりません。
だからと言って、「指導要領にこう書いてあるんだから、こうやるべきじゃないの!」などと、最初から内容・質のすべてを学校に求めても、先生たちも人間なので難しいところもあるため、少し学校の先生たちの実状にもあえて触れさせていただきました。
子どもの「考える力」を高める関わり方
私もそうですが、子どもたちをサポートする立場の人、学校教育以外の面で子どもたちの教育・育成に大きく関わる親御さんたちも、学習指導要領は国の指針として確認しておいて、こういう方向に進めるといいのかな、という子どもたちの関わり方に関する行動指針にすることをお勧めします。
先に、新しい指導要領の3つの柱をお伝えしましたが、子どものスキルを伸ばしていくのにどんな関わり方、どんな経験があるとよいかということを具体的に考える時には、これらの柱を軸に考えていけるとよいでしょう。
もっとシンプルに、子どもたちはどんな力を育むアプローチがよいのかというと、「考える力」を高めるアプローチと言ってもよいのではないでしょうか。
AIに置き換えられない、人間だからこそできることは、やはり高次元での思考力です。
“1+1=2″のような、計算して出てくるような単純なやり方だけではなく、”○+○=2″のような、「答えが2になるパターンはいくつあるでしょう?」というような、複数視点で物事を考えるようなアプローチが大切になってきます。
「空はなんで青いの?」
子どもからのそんな質問。
お子さんから質問されたら、親御さんとして日頃、どのようにお子さんに返しているでしょうか。
「〇〇なんだよ」と答えを教えていますか。
「お母さん(お父さん)も分かんないな~」と分からないことを伝えて終わっていますか。
「調べてみてごらん」などと調べ方・確認の仕方を教えていますか。
お子さんからの質問の内容によって異なることもあるかとは思います。
これからの時代で必要なスキルとして「考える力を高める」というポイントにおいては、お子さん自身に考えさせる時間を作っていただきたいと思います。
「どうしてだと思う?」
「どうしてそれを疑問に思ったの?」
「どうして、そう考えたの?」
親御さんとして正解と言えるものが分かっていたとしても、質問を投げかけて、お子さんに考えさせる。
その答えが違っていたとしても、「そう考えたんだね」とそのままを受け止めてあげる。
そのような対話を行い、そのプロセスこそが、考える力に繋がっていきます。
自力で考えられなければ、調べ方を教えて、調べたらそれを教えてと、調べた内容を言葉にして伝えるように促していけると良いです。
調べただけで終わらせてしまうと、文字をなぞって理解したつもりの状態で終わってしまう可能性があります。
言葉にさせることで、どう説明するかと考えることになるので、そこでより深い「考える力」に繋がるのです。
少し手間のかかる関わり方ではありますが、将来的にお子さんが自分で考えて、自分の言葉で伝えて…と人間だからこそできるスキルを獲得して、AIに脅かされない生活を送ることができるようになるでしょう。
こちらの記事でも重要性をお伝えしています。
質問をすることについてはおわりに
電子機器の激動の進化は、私たちの生活を大きく変え、特に子供たちの教育に多大な影響を及ぼしています。
AI技術の発展により、これまでの常識が次々と覆される中で、教育のあり方も大きく変わりつつあります。
新しい学習指導要領に基づいた教育の導入により、子どもたちには「生きる力」が求められる時代となりました。
AIに代替されない人間ならではの力を伸ばすためには、子どもたちが自ら考え、学び続ける姿勢を持つことが求められます。
激動のこのVUCAの時代に生まれた子どもたちが、未来においてもその力を発揮し、社会で活躍できるよう、私たち大人も共に学び、柔軟に成長し続けることが必要ですね。
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