春はわくわくすることも多い一方で、環境の変化や緊張する場面も多いですよね。
「五月病」という言葉があるほど、この時期は大人も子どもも疲れや不調が出やすい時期です。
新学期や休み明け。学校へ行き渋るなどの行動も出てくるでしょう。
今回は、子どものメンタルヘルスに着目して、新学期の子どものストレスやその原因、気をつけておいた方がいいサイン、日常でできる接し方のポイントなどを専門家が詳しくご紹介します。

執筆:山崎 日菜乃
公認心理師・臨床心理士
心理士としてメールカウンセリングに3年半従事し、家族関係の悩み、心身の不調、仕事の悩みなど、様々な困り事へのサポートを行う。アメリカ合衆国在住。
新学期は疲れが出やすい時期
入学や新学年を迎えた4月は、新しい環境、先生たち、クラスメイトに囲まれて、子どもたちはわくわくしながらも緊張した状態が続きます。
進級や進学を期に頑張るぞ!と気合いが入る一方で、担任はどんな先生だろうか、友達とうまくやれるだろうかといった不安もあるでしょう。
5月にはゴールデンウィークがあり、休日が続くことで4月からの緊張状態が一気に緩み、どっと疲れが出ることが多いです。
学校では、授業が本格化したり、中学校では5月6月に中間テストや期末テストがあったりと、勉強面での不安を感じる子も多いです。
新しい環境は楽しみやモチベーションを与えてくれると同時に、ストレスにもなります。
小さいストレスであればポジティブな刺激になることも多いですが、ストレスが大きすぎると心身の調子を崩してしまうこともあります。
とはいえ、頑張った反動で疲れやちょっとした不調が出るのは自然なことであり、いつもよりゆっくり過ごしたり、気分転換をしたり、よく寝てよく食べるようにすることなどで、再び元の調子に戻っていくことも多いものです。
そのため、一時的なものであれば心配しすぎることはありませんが、この時期は子どもにとって疲れやすい時期であることやストレスのサインを知っておくことで、より落ち着いて子どもに接しやすくなるといいなと思います。
不登校の子どもにとっての新学期
不登校の子どもにとっても新学期は疲れやストレスを感じやすい時期だと思います。
進学や進級を期に「学校に行かないと!」というプレッシャーを感じたり、今学期・今学年は登校できるのではないかと自分に期待したり無理をしたり、同級生やきょうだいがどんどん先に進んでいるかのような焦りを感じたりすることも多いです。
保護者の方から見て環境の変化や目に見える行動の変化がなかったとしても、子どもの心には様々な感情が渦巻いているでしょう。
そのため、新学期だからといって特別に保護者の方が先回りしたり焦ったりせず、これまで通り、安心できる場所であり続けることが大切です。
子どもも大人も、安心して休めるお家や人の存在があって始めて頑張れるものですよね。
お家で安心して休めるという前提のもとで、子どもが頑張りたい時にはそのサポートを、休みたい時には休める環境を守ってあげられるといいなと思います。
子どものストレスサイン
子どもはストレスや疲れに自分では気がつけないことが多く、ストレスが体の不調や行動の変化として表れることが多いです。
しかしながら、これらが本当にストレスからくる不調なのか、身体的な病気が隠れているのかどうかはなかなか見分けがつきません。心配な時はためらわず病院を受診してくださいね。
新学期の子どもへの接し方のポイント6選
1. お家を安心できる場所にする
ストレスを感じている時ほどお家でゆっくりと休息できる時間が必要です。
学校で気を張って過ごしたり学校のことを考えて悩んだりしている分、お家が本来の自分としてリラックスできる場所であれたらいいですよね。
子どもの振る舞いがだらだらしているように見えたりわがままや甘えだと感じられる時もあるかもしれませんが、頑張っている反動なのだなと受け止めて一旦待ってあげられるといいと思います。
子どもをサポートするには保護者の方のエネルギーや余裕も必要です。
保護者の方も、お家でゆっくり休んだり気分転換をする時間を大切にしていただけたらと思います。
2. 子どもと会話をする
普段から子どもと会話をし、子どもの気持ちをなるべく否定せずに聞く習慣があると、子どもが困った時や悩んだ時も安心して打ち明けやすいでしょう。
また、保護者の方が心配していることと子どもが心配していることは違っていることも多いです。
先回って解決策を提示したりそんな風に心配することないよと会話を終わらせたりせず、子どもの気持ちや考えを教えてもらう姿勢で聞くことができるといいですね。
子どもの気持ちを受け止めた上で、必要に応じて、新学期や連休明けに不安や億劫さを感じるのは自然なことであること、多くの場合はだんだんと慣れて楽になっていくこと、辛かったら学校を休んだり遅刻早退することもできることなどを伝えてあげるのもいいでしょう。
3. 病院を受診する
体調不良や心の不調が続く時は病院を受診することも検討してみましょう。
子どもの状態を専門家に診てもらうことで保護者の方も本人もよりよく理解でき安心できると思います。
また、体の不快感がとれるとゆっくり休みやすくもなるでしょう。
不調の裏に貧血や起立性調節障害などが隠れていることもあるので、困った時や辛い時には速やかに受診してみることがおすすめです。
4. 生活リズムを整える
特に長期休みや連休明けは、生活リズムの変化がストレスになることも多いです。
時には夜ふかしやいつもはできない遊び方をするのも楽しいものですが、できる範囲で食事や睡眠をいつも通りのスケジュールに保っておくと心身の負担が軽く済むでしょう。
また、普段から朝のルーティーン、睡眠前のルーティーンなどを作っておくと、子どもも見通しを持って安心して行動できるかもしれません(例えば、お風呂→歯みがき→明日の服や持ち物準備→読書や音楽→消灯など)。
特に新学期などのストレスのかかる時期は過密スケジュールにしないこともポイントです。
少し余裕があるくらいの生活リズムで心や体を慣らしていけるといいですね。
5. 楽しむ時間を作る
好きなことをしたり遊んだりして楽しむ時間は子どものストレス発散やエネルギーの充電になります。
家族で一緒に遊ぶのもいいですね。特別なことはしなくても、(保護者の方がさせたいことではなく)子どもがしたいことをさせたり一緒にする、好きなことに熱中できる環境を作るなどで、十分に楽しめる時間が作れると思います。
連休明けに楽しかったことを一緒に振り返ってみるのもいいですね。
また、普段から、楽しかったことや嬉しかったことがあったらそれを紙に書いてビンに入れて溜めておくのもおすすめです。
子どもが不安になった時にそのビンにある思い出を振り返ってみるのもいいでしょう。
6. 学校と連携をとる
子どもが不安に思っていることの内容や不調の度合いによっては、学校の先生との情報共有も必要になってくるかもしれません。
その際も、保護者の方と先生だけで話を進めすぎたり先回りしすぎず、子どもの気持ちや希望を確認しながら、子どものペースを大切にしていただけたらと思います。
お家にも学校にも信頼できる大人がいてくれることは、子どもの安心感に繋がります。
保護者の方のセルフケア
保護者の方にとっても、春はお家や職場がバタバタしやすい時期である上に、子どもの学校用品の準備、保護者会や面談などもあって非常に大変ですよね。
また、子どもに対する期待や焦り、将来への不安が高まってくるタイミングでもあるかもしれません。
子どものことで頭がいっぱいになり、知らず知らずのうちに疲れやストレスが溜まっていることもあると思います。
できそうな時にはぜひご自分の心や体にも意識を向けてみてくださいね。
ストレスや疲れに気付けたり、休む、自分に優しくする、誰かの力を借りるといった保護者の方の行動は、子どもにとってもセルフケアのお手本となることと思います。
どんな時でも周りの人の力を借りていただけたらと思いますし、特に、お悩みが大きかったりゆっくり休めない状況・状態の時には積極的にサポートを求めていただけたら幸いです。
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関連ページ:おわりに
春は子どもも保護者の方も疲れを感じやすい時期だと思います。
子どもの気持ちに寄り添ったりサポートをするにもエネルギーや余裕がいりますから、
ぜひまずは保護者の方ご自身の心や体を大事にしていただけたらと思います。
我慢せずに周りの人や専門家の力も借りてみてくださいね。