IQは、子どもたちの学習や日常生活への適応に大きな影響を及ぼす可能性があります。
多くの場合、IQの低い子どもたちへの支援は豊富に存在し、彼らのニーズに応えるための多様なリソースやプログラムが整っています。
これに対し、IQが高い子どもたちの場合、彼らが直面する独特の課題に対する公的な認識や支援の提供は、比較的最近まで注目されてきませんでした。
IQが高いことによる影響は注目された時期が遅く、情報も増えてきているとは言え子どもがどのような状態にあるのか、子どもをどうサポートしたらよいのか分からない親御さんはまだ多いことと思います。
本記事では、IQが高い子どもたちが経験する可能性のある特有の状況と、支援するための具体的な方法について解説していきます。
この記事を書いた専門家
日塔 千裕
公認心理師、臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
「IQ」とは
ご存じの方も多いと思いますが、IQとは、知能指数(Intelligence Quotient)の略で、知能指数を表します。
IQとは、簡潔に言ってしまえば知的能力を現わしているということですが、知的能力とは何かとイメージが湧きにくいですよね。IQとはそもそも何を現わしているのか、正確に説明しているものは少ないです。
ネット上で”IQ検査”などと謳っている簡単な質問に答えて出てくる結果やクイズのようなもので、「これが解けたらIQいくつ」というものは、本来のIQの定義とは異なっています。
IQは、標準化された心理検査、例えば、WISC(ウィスク)や田中ビネー知能検査を受けて算出された結果です。
今回のテーマとして挙げているIQは、これら標準化された心理検査を受けて算出されたIQであることをご理解ください。
近年は、IQの高さにも注目されるようになってきましたし、お子さんに心理検査を受けさせたことがある親御さんであれば、IQの数値に一喜一憂した経験のある方もいらっしゃるかもしれません。
もともと、心理検査は知的障害の有無の判断をするために心理検査が開発された経緯もあり、知的障害の判断基準としてIQが用いられてきました。
人は日常の中でさまざまなものを記憶し、それらを参照して目の前の状況を理解し、どう行動すべきかを判断するということを無意識に行っています。
その行動や判断は、理解力、記憶力、状況判断力、集中力、問題解決能力など様々な知的能力を活用しています。これらを数値化したものがIQといったイメージです。
IQはまた、お子さんが同年齢の平均のIQと比較してどの程度の知的能力を持っているかを示します。
学齢期の子どもに関しては、IQの高低は読み書き算数の能力とも関連しているとも言われています。
ただ、IQの高さに関係なく、読み書き算数に困難さを抱える学習障害(LD)もありますので、IQだけで学齢期の学習能力が判断できるものではありません。
IQは理解力、記憶力、状況判断力、集中力、問題解決能力などの総称といったイメージとはお伝えしましたが、あくまで一人の人間の一側面です。
IQだけでその子のすべてが分かるわけではなく、心理検査の結果を踏まえて、その子の得意・苦手とする能力、その子に生活しやすくするためにどんな関わりがあるとよいのかなどを把握していくための一つのツールと考えていただくのがよいでしょう。
IQが高い子どもが示す行動と、年齢に伴う変化
IQが低い場合の影響や対応に関しては、情報が多く、さまざまなサポートを利用する選択肢を検討・利用できている方も比較的多い印象です。
一方で、IQが高い場合に関しては、まだまだ情報が少なく、どこに相談したらよいのか、何をできたらよいのか分からないという方も多いです。
また、IQの高さに注目しているネットの情報は大人を対象としていることが多く、お子さんの状態とネット記事に書かれている内容とがリンクせず、「こんな風に全然感じないけど」と思うような内容だと感じた経験があるかもしれません。
子どもの場合は、発達途上ということで適応力の未熟さがあり、いわゆる「IQが高い人の特徴」などと書かれているようなものの内容に合致しない状態のためだからです。
中学生くらいになると、お子さんなりに適応力を身につけることができ、大人を対象としているような特徴に比較的近い状態を示し始めます。
高校生にもなれば、お子さんの同水準の学力や同じような興味・関心で選択して進学していることが多く、周りにも似たようなタイプの子ども多いため、お子さんの特徴が目立ちにくくなるケースが多いです。
ただ、小学生以下のお子さんに関しては、IQの高さが問題行動として捉えられるかたちで現れてしまうことがあります。
例えば、先生の話を聞けない、先生に口答えする、授業中に席を立ってしまう、授業中に先生の指示と違うことをする、友達とトラブルになるなどです。
また、問題行動ではないものの、親として心配してしまう行動として、友達と遊ばずに一人で過ごすことが多い場合もあります。
一人で過ごすことが多いタイプのお子さんに関しては、勉強も出来ることが多いそのため、IQの高さと学歴の高さが比例しており、IQが高いと聞いてもこれまでのお子さんの状態と繋がってIQの高さを理解しやすい親御さんが多いようです。
興味・関心によっては、すごくよく出来るものと、全くできない/やらないものがあるという場合があるかもしれません。
先に挙げたような問題行動として現れるタイプのお子さんに関しては、「勉強も出来るわけじゃないのに何で?」「IQ高いならもっとちゃんとできないの?」と感じられる親御さんも多いです。
そして、学校でも理解されにくく、先生からの指摘や注意、親御さんへの連絡などが頻発して、親御さんも疲弊しやすくなります。「IQが高いということは能力が高い。
なのに、なぜ出来ないのか?」そう感じて、そのような理解がお子さんの状態の理解への障壁になってしまっているのです。
先に「適応力の未熟さがある」とお伝えしました。
IQが高くても、お子さん自身が自分の得手・不得手などの能力を理解しているわけではない。周りの人たちの特長を的確に把握できるわけでもない。
学校という環境の中ではそうした状況の中で適切な振る舞いが出来ず、問題行動として現れる理由であり、適応力の未熟さとして見えてしまう部分と言えます。
正直言って、学校は年齢だけで区切られた集団なので、その中で相性の合うタイプや興味・関心の合う友達を見つけることは非常にハードルが高いものです。
大人になれば、100%ではないにしても、自分の興味・関心で仕事を選べますし、それで選んだ仕事は同じような興味・関心のある内容を学んだり取り組んできたりした人たちの集団なので、仕事に関する話や考え方などは合う部分を見つけることができるでしょう。
また、趣味の仲間を見つけることも、大人になれば自身の生活状況に合わせて選択肢を広げることはできるでしょう。
そのような選択肢の幅の広さによって、自分に合う環境を見つけることができます。
子ども、特に小学生はその選択肢が少なく、年齢だけで区切られた集団に属していることで、お子さんの状態に合っていないが故の問題行動と言えるかもしれません。
IQが高い子どもの問題行動の背景
IQが高いお子さんの場合、一対一で接している時には、理解力や頭の回転の速さ、飲み込みの良さ、大人と接しているような対話力・難しい言葉の使用・知識の豊富さなどを感じることはないでしょうか。
それが、年齢だけで区切られた学校という集団の中に入ると、友達と話が合わない(友達が自分の話に付いてこれず、つまらない)、勉強がつまらない(クラスの中では理解が真ん中より少し下くらいの子に合わせるため、ペースが遅すぎて暇)という状況で、友達とトラブルになったり授業中に席を立ったり他のことをしてしまったりという言動になっていることが予測されます。
また、日本の教育では、協調性を重んじるところが強く、「みんなと一緒」を求める傾向があります。
故に、理由などはなく、「学校ではこうする」「みんながこうするのだからこうしなさい」といった指示だけで子どもたちに従わせようとするところもあるでしょう。
お子さんにとっては、理由が分かれば応じられることも、理由もなくただ指示されても「何で?」と感じて、理由を知りたくていろいろ質問したり意見を述べたりすることがあります。
それを大人からすると「口答えする」と捉えられてしまうこともあるでしょう。
まとめ
合理的配慮や個性の尊重などが言われてはいますが、まだまだ教育現場で浸透しているとは言えず(もちろん行われている学校もあります)、飛び級制度もなく、日本の風潮として「出る杭は打たれる」状態と言えるでしょう。
お子さんに合った環境をどう見つけていくか、お子さんの高いスキルをうまく活かす方法と環境への合わせ方へのアプローチをどう行っていくかが大切となってきます。
IQが高いタイプのお子さんへのサポートに関する相談においては、全国的にここなら相談できますよ、とお伝えできる相談窓口があるわけではなく、支援者個人のスキル・経験に対応が大きく依存してしまいます。
今の環境とお子さんの状態の相互作用で総合的に対応を考える必要があるため、困っている方、気になる方は一度、専門家にご相談ください。
お話しをすることでより具体的なアクションを考えていくことができます。
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