IQ(知能指数)が高い子どもは育てにくい?育て方のコツ5選を心理士が解説 (1)

周りの子どもと比べて、IQ(知能指数)が高い/高いと思われる子どもを持つ保護者の皆さん。

「言うことを聞かない」「急に怒り出す/泣き出す時がある」といった経験はありませんか?

宿題をしない…学校へ行きたがらない…友人関係でトラブルが起きやすい…このような悩みを抱えて知能検査を受けた結果、子どものIQが高いことが分かった方も多いのではないでしょうか。

今回は、児童発達支援や児童精神科勤務経験のある臨床心理士が、主に小学生を中心にIQの高い子どもの育て方のコツを解説します。

この記事を書いた専門家

いけや さき


公認心理師、臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。

IQ(知能指数)とは、個人が持つ能力を標準データをもとに数値化したものです。知能検査を用いて知能指数を測ります。

標準データとは、簡単に言うと知能を測定するために「同年代ならどのくらいの数値なのか?」をデータ化したものです。

私たち心理師はウェクスラー知能検査(WISCやWAIS)を使用して、受検される方の得意不得意とIQを分析します。

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ギフテッドの認定基準は満たしていなくても、110以上のIQを持つ子どもは「IQが高い」といえるでしょう。

・IQ110以上「平均以上~高い」

・IQ120以上「常に高い」

・IQ130以上「極めて高い」

IQが高い子どもを「育てやすい」と感じる保護者様もいれば、「育てにくい」「どうすればいいのかわからない」と感じる方もいます。

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今回はポイントを絞って、IQが高い子どもの育て方のコツを5つ紹介します。


まずは子どもの得意と不得意を知ることが大切です。

おそらくIQがわかっているということは、「知能検査を取ったことがある」というのを前提に次のポイントをもとに子どもの得意を見つけましょう。

・知能検査で高い数値が出た能力

・子どもが好きなこと、夢中になっていること

・子どもがよく話すこと

・親は苦手なのに子どもができていること

・日々の活動のさりげない様子や会話

子どもの得意を見つける方法は、知能検査のような数値化された情報以外にも、子どもを観察したりコミュニケーションで気づくこともあります。

日々の小さなことに目を向けて、褒めたり、認めたり、気づいてあげたりすると子どもが得意を伸ばしやすくなっていきますよ。


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IQが高い子どもの「苦手」は、子ども本人も自覚しやすく、葛藤しやすいです。

たとえば、知能検査の結果は高くても学校の勉強が苦手な子もいますし、同年代の友達と会話が合わなくて大人とのコミュニケーションを好む子もいます。

IQが高いからといって、なんでもこなせるわけではありません。

苦手なことに過剰に反応したり、克服させようとせず、まずは得意を伸ばしてみてください。

そのうえで、得意なことで苦手分野を補えないか考えることは大切です。

また、本人が補えなくても周りの人の協力やツールの活用ができないか考えることも重要。

特に宿題や学校を嫌がる子は、「宿題をさせる」「学校に行かせる」よりも、何が原因で嫌がっているのか、どう工夫すれば子どもなりに納得して(ほかのことでも)行動できるようになるかを考えてみましょう。


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IQが高くても自己肯定感の低い子どもはいます。

私がWISCを取った子のなかにも、IQが高い子で「友達と話が合わない」「わかってもらえなかった」「自分だけ漢字が書けない」と自分がだめに感じてしまっている子どもがいました。

IQが高い子にも低い子にも、それぞれの悩みがあるのです。

IQが高い子は周りと比較するほか、理想を高く持って行動し「できなかった」経験を必要以上に悪いものと評価してしまいます。保護者様はできるかぎり、子どものことを認めたり、結果だけでなく過程もほめてあげるようにしてみてくださいね。


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IQが高い子どものなかには、自分なりの価値観や正義があり、他者理解が苦手な子がいます。

自分が思っていることを、みんなも思っていると考えやすい子も一定数いますし、思い通りにいかないとかんしゃくを起こす子もいるでしょう。

他者理解を深めるためには、自己理解が大切です。
「自分がこうしたい」と「自分はこう思っている」は異なります。まずは自己理解を深めましょう。

他者理解ができるようになると「なんでわかってくれないんだ」「誰にも理解されない」ではなく「○○さんはそうなんだ」と考えられるようになります。

自己肯定感を低くさせる考え方も減らせるでしょう。


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IQは同年代と比較して数値化した指数です。

しかし、「8歳ならこれくらいできないと」など年齢ばかりを気にすると、その子の個性や強みが見えにくくなります。

IQが高い子どもに限らず、子育ては目の前にいる本人を見ることが大切です。

ただし、本人だけを見ていても社会生活に支障が出てしまうこともあります。「一般論にあてはめすぎず」に発達段階も参考にしましょう。

発達段階とは、人間の生涯にわたる発達をいくつかの「期」にわけたもの。一般的にはエリクソンの発達段階が有名ですが、ほかにもピアジェやフロイト、ハヴィガーストなども発達段階を提唱しています。

<エリクソンの発達段階>

1.乳児期

2.幼児期前期

3.幼児期後期

4.学童期

5.青年期

6.前成人期

7.成人期

8.老年期

エリクソンの発達段階は、各時期に起きる可能性のある課題があるとされ、必要な支援のヒントを得られます。

小学生は「学童期」に当てはまる時期。
小学校低学年と高学年でも課題が異なりますが、自ら学び自尊心を得る「勤勉性」が学童期共通の課題です。

学童期に他者と比較されたり、自分のできないことばかりを自覚すると「劣等感」を抱きやすいといわれています。

学齢期のIQが高い子の育て方のコツは、本人の得意を伸ばしながら、さまざまな場面で少しでも成功体験を積み、自尊心を育てていくことを意識してみましょう。

IQが高いと「育てやすい」と感じる人もいれば、「育てにくい」と感じる人もいると話しましたね。

なぜ育てにくく感じるのか、IQが高い子どもが抱える悩みに注目して以下で解説します。


IQとは一般的に「全検査IQ」という知能検査で測れる子どもの能力の総合点のようなものです。

子どもの知能検査は基本的な10項目をもとに、4〜5つの領域のIQも算出します。

※WISC-Ⅳは4領域、WISC-Ⅴは5領域がわかる検査です。

凸凹がある状態とは、領域の差があること。たとえば、『言語理解』はIQ120だけど、『処理速度』はIQ98の子などは凸凹がある状態となります。

凸凹の差が大きいほど、子どもは生きづらさを感じやすくなるのです。知識はあるのに、処理が追いつかない…記憶力はいいのに、課題解決の力が弱い…など「うまくできないこと」を自覚しやすい子が多いといわれています。

自覚してつらいだけでなく、できないことを周囲から注意され続けたりすると、自信がなくなっていき、自己肯定感や自尊心が低くなりやすいでしょう。


全体的に知能が高い子どもや、『言語理解』が非常に高い子どもの多くは理論的に物事を考える傾向があります。

小学生の子ども同士の会話は「楽しい」「面白い」が中心になりやすいですよね。

知能が高いと、もっと深いレベルでの議論を好んだり、注目する事柄も思考を巡らせるようなものが多いため、周囲と会話がかみ合わなくなりやすいといわれています。

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IQの高さについて解説しましたが、子どもの特徴はIQだけでは決まりません。

IQを測る知能検査は、あくまでも支援方法を考えるための補助的なもの。一部分でしかないのです。

子どもの普段の行動や発言、学校と家庭での様子などを見ながら、子どもにあった関わり方をしていきましょう。

子どもの知能に関するご質問やお悩みについて、専門家に相談したい方はこちらからお気軽にご相談ください。

参考文献