【心理士監修】発達障害の子に「生理」をどう教える?5ステップで解説

「発達障害の子どもに、どうやって生理を伝えればいいの?」

そもそも生理の話は親子でするものなのか、学校では教えてくれるのかどうかなども気になりますよね。

結論から申し上げますと、学校も教えてくれますが発達障害の女の子が「自分自身のこと」として理解するためには親子での対話が重要です。

今回は、発達障害の子どもへの生理の教え方や、初潮が遅れている場合の対処法、男の子への伝え方も解説します。

この記事を書いた専門家

いけや さき


公認心理師、臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。

初経年齢はおよそ10~14歳といわれています。
学年で言うと、小学校4~5くらいの年齢ですよね。

しかし、早い子は小3で来ることもありますし、小4のいつ初経が始まるかもわかりません。

できれば小3までに初経についてある程度話しておくようにしましょう。

すでに初経がはじまっている子どもにも、まだ親御さんの方からお話できていない場合は、伝えておくことが大切です。

学校で教えてもらっている可能性もありますが、困ったときや悩んだときに相談できる相手がいると子どもは安心します。
特に、発達障害の子どもの場合、初経に限らず突然のことに戸惑う可能性が高いでしょう。

すぐに相談できる相手がいる安心感を与えるためにも、必ず親御さんが伝えてあげてくださいね。

「でもどんなことを伝えればいいのだろう」と思う親御さんの方が多いと思います。

ここでは、5ステップで発達障害の女の子に生理を伝える方法を紹介します。
紹介している方法はあくまでも一例です。

伝え方などは子どもの特性に合わせて工夫しましょう。

どのように工夫すればいいか迷う方は、Gifted Gazeの専門家相談もご活用ください。


女の子の体がどのような仕組みになっているか、写真やイラストなどを用いて伝えてみましょう。

性教育は学校でも行いますが、指導要領の範囲だと発達障害の子にわかりやすく教えてくれるわけではありません。

特に、絵本やイラストが豊富な本がとてもわかりやすくておすすめです。


初潮がはじまると、女の子の体は女性ホルモンの影響を大きく受けるようになります。
たとえば、身長が伸びる、陰毛が生え始める、胸が膨らむなど丸みのある体型になっていくといった「体の変化」。
周囲の目が気になるようになる、男の子との違いを感じやすくなる、性に関心を持つようになるなどの「心の変化」があります。

いずれも、絶対に生じる現象ではないことや、どれが起きても変なことでもないことを丁寧に伝えていきましょう。

また、月経前後の心と体の変化も伝えるようにしてください。
一度に伝えると混乱してしまうので、初潮のことを伝えたら、毎月訪れる月経の話をするといいかもしれません。


お腹が痛くなることもあれば、かゆみを感じることもあります。
個人差はあるけれど、生理によって女の子の体に変化は起きるもの。
違和感があったり、嫌な気持ちになったりしたら話してほしいことを伝えましょう。
「困ったら」と伝えることも間違ってはいないのですが、発達障害の子どもの場合「困ったら」がピンとこない子もいます。
少々抽象的な言葉なので具体例を伝えましょう。

親御さんも子どもの変化に気づけるよう、日々コミュニケーションをとることも大事なことです。


みなさんは、ナプキンが必要なことや何枚くらい使うかなど、誰から教わりましたか?

授業で受けたかもしれないけど、いつの間にか「そういうもの」と思っていた人の方が多いかもしれません。
しかし、発達障害の子の場合はニュアンスだけで教えても、伝わらないことがあります。
それは本人が悪いのではなく、脳の機能によるものです。
だからこそ、次のようなものが生理中には必要であり、必要に応じてほかのアイテムも使うことを伝えましょう。
専用ポーチやボックスを用意するのも方法の1つです。

一般的に持っておくといい生理用品

・昼用ナプキン
・夜用ナプキン
・生理用ショーツ
・サニタリーバッグ

あると嬉しい生理用品

・鎮痛剤(通院中の子どもの場合は主治医に確認)
・デリケートゾーンケア用品
・サニタリースパッツ

ほかにもお母さま自身の経験や、子どもの特性上であった方がいいものは用意しておきましょう。

ナプキンは羽付きのものの方がズレにくいです。
学校に行っている間は6枚くらいは持っておけるといいですね。

特にナプキンの使い方は紙に書いて、生理用ポーチに一緒に入れておくことで子どもがやり方を忘れたときに役立ちます。
やり方の紙は、イラストや写真付きのものがおすすめです。

ほかには保健室でナプキンがもらえるか確認し、もらえるなら伝え方なども話しておきましょう。
近年は企業や高等学校、大学などでトイレにナプキンを設置しているところも増えているようです。


生理がなぜ女性に必要なのか、ステップ①で紹介した本でも触れているものばかりですが、改めて伝えましょう。
もしかすると「妊娠するつもりはない」という反応や、「まだ子どもだよ」という返答もあるかもしれません。
もしくはすぐに子どもが作れると喜ぶ子もいる可能性があります。

妊娠の仕組みを伝え、大事な場所であるからこそ人に簡単に触らせたり、見せてはいけないことを伝えてください。
性被害や望まない妊娠を防ぐためです。

また、自分で洗うときも大事に扱ってあげることを伝えましょう。

私たちのプライベートゾーン(水着で隠れる部分や口)については、こちらの記事を参考にしてみてください。

初潮は早い子も遅い子もいて、個人差があるものです。
ここでは、一般的にいわれている初潮が来る年齢までの場合と、15歳の子の場合の対象方法をお伝えします。


まず、初潮がくるタイミングは個人差があることを伝えましょう。
その際「15歳までに生理が来なかったら婦人科に一緒に行こう」と、具体的な対処法もお話してください。
それまでは個人差があるから、気にしなくて大丈夫だと本人が安心するまで伝えてみてくださいね。

どうしても子どもが不安であれば、一度かかりつけの小児科などに相談してみるのもいいでしょう。


産婦人科に受診しましょう。必ず保護者が一緒に行くようにしてください。

15歳以降で初潮が始まることを「遅発初経」といい、18歳を過ぎても初経がない場合は「原発性無月経」といいます。
原因はさまざまですが、身長や体重の影響もあるそうです。

一般的に初経がはじまるには体脂肪率17%以上が必要とされています。
日本の場合だと、スポーツを幼少期から熱心に取り組んでいる子どものなかに初経が遅い子もいるそうです。

発達障害の子どもはハマったことにのめりこむ傾向もあり、体や心のバランスを崩しやすい傾向があります。
まずは子どもに対して、「一緒に行くから安心してね」と伝えましょう。

伝えるタイミングは、次のような日常のなかに数多くあります。

改めて時間を作ることももちろんOK!親御さんが伝えやすくて、子どもも落ち着いて話を聞けるタイミングにしましょう。

生理は女の子だけに訪れるものですが、男の子にも伝えましょう。
ただし、伝えた方がいいことと、実は伝えてはいけないことがあります。

生理は日常のなかにある自然なものです。

女の子は自分たちで自分の体を守りますので、男の子に女の子を大事にする任務を与える必要はありません。

ママの話を聞いて「優しくしたい」と思うのと、ママやパパに言われて「優しくしなきゃいけない」と思うのは同じ気遣いでも違うものになってしまうからです。

ただし、プライベートゾーンを見られたり、触られたり、それらに関する話をされるのが嫌な子がいることはきちんと伝えてください。

また、男の子にも心身の変化があることも伝え、「違いはあるけど同じなんだよ」と一人の人として尊重しあう大切さは伝えていけるといいでしょう。

ご参考:男の子のからだえほん

生理とは決して恥ずかしいことではなく、成長過程にとって必要なものです。
でも伝えるってなかなかデリケートで難しいですよね。

特に発達障害の子どもの場合、「なぜそうなるのか?」をきちんと知りたい気持ちになる子もいれば、話を聞いて「怖い…」と不安になる子もいるでしょう。

保護者の方が子どもの安全基地となり、些細な不安や違和感も話せる関係性になっておけることが理想だと感じます。

ただし、保護者様も無理なくGifted Gazeや産婦人科、小児科、児童精神科などの専門家に頼ってくださいね。

参考文献