心理検査をいつ受けるべき?事前に準備できる?心理検査に関するQ&A#3

「子どもの発達で気になることがある」

「発達障害ではないか心配」

子どもの発達に関する情報を調べている中、でネット上で読んだり、園や学校の先生から言われたりすることに【心理検査】という言葉を見聞きすることがあると思います。

この記事では、多くの親御さんから受けた心理検査に関する質問をQ&A形式で紹介します。

心理検査とは何か、どこで受けられるかなど基本的な質問はこちらの2つの記事をご覧ください。

心理検査、知能検査何が違う?子どもに検査を受けさせたいと思った時のQ&A
心理検査の結果はどこまで信用できる? ~子どもの本来の力が発揮できていないと感じる理由

この記事を書いた専門家

日塔 千裕


公認心理師、臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。


ー心理検査を受けたことがあります。もう一度受けたいのですが、前回の検査からどのくらい期間をあけないといけないですか?

回答:

心理検査の中でも、特に発達検査と知能検査は、前回の検査から概ね1年の期間をあけることが望ましいと言われています。

お子さんが受ける検査で多く実施されているものとしては、新版K式発達検査や田中ビネー知能検査、WISC-Ⅳなどがあります。

1年という期間は、「1年程度すれば課題の内容が概ね記憶から薄れ、その場で考え、本来のお子さんの持つ能力として発揮できたもの」と考えられるためです。

お子さんの持つもともとの能力を見る、というのが心理検査の目的です。

短期間で同じ問題のテストを繰り返し受ければ、トレーニングによって解答できてしまうため、以前の課題の記憶が薄れると言われる概ね1年という期間をあけてから受けてください。


ー子どもによって時間が違うようですが、心理検査にかかる時間はどのくらいでしょうか?

1つの心理検査にかかる検査時間は、お子さんによって異なります。

2~3歳頃の幼児であればお子さんへの直接的な検査は30分程度で終わることもあります。

それに加えて、親御さんから普段の様子を伺うなど、心理検査を実施した検査者と親御さんとお話する時間もかかる場合があります。

就学前〜小学生頃になると、概ね1時間程度と考えていただくとよいでしょう。

小学校高学年〜中学生くらいになると、1時間程度で終わる場合もありますし、1時間半~2時間程度かかる場合もあります。

心理検査の実施に関わる時間が短い・長いによって、お子さんの持つ能力のレベルが決まるわけでも、実施態度等の良し悪しが決まるわけでもありません。

心理検査はお子さんのペースに合わせながら実施するため、特にじっくり考え込むタイプのお子さんは当然ですが時間がかかります。

時間が長くなっている場合には、途中で休憩を入れて実施する場合もあります。

そのあたりも、検査者が実施しながら、お子さんの様子を見て判断していきます。


ー心理検査は、どんなタイミングで、どんな頻度で受けるのがいいでしょうか?

回答:

4歳頃までで療育を受けているなどの成長の著しい時期には、1年に1回、経過観察的に心理検査を受ける場合もあります。

小学校入学前には、入学後が心配な場合、入学するお子さん全員が受ける就学時健診とは別に、就学相談というものがあります。

就学相談で心理検査を実施するケースが多いため、就学相談を受けることを検討中の場合は、就学相談の時期を逆算してその前の年齢の受検時期を考える必要もあります。

小学生以上のお子さんに関しては、小学校の低学年・中学年・高学年の多くても3回の時期が受けるかどうか検討するポイントと言えるでしょう。

入学直後に心配なことがあれば、1~2年生の頃に。

いわゆる10歳の壁などと言われている時期の4年生頃に。

中学進学を見据えて、5年生の終わり~6年生頃に。

状態変化や環境変化が起こりやすい時期で、子どもの様子を確認するというのがタイミングを検討するポイントです。

ただ、心理検査は必ず受けないといけないというものではありません。

「以前は心配で気になることがあって心理検査を受けて、今は心配もゼロではないけど、それなりに学校生活を送れているし…」

ということであれば、受ける必要もはあまりありません。

心配が継続している場合には、上記のタイミングが目安にはなりますが、心配が薄らいでいるのであれば、大きな状態変化が起きたときに改めて受けるということを考えても全く問題ありません。


―子どもが検査を受けている様子が気になるので検査場面に親も入りたいのですが、できますか?

回答:

主に2~3歳頃までのお子さんであれば、親御さんも同席してもらうケースも多いです。

ただ、親御さんがいるとふざけてしまうなど、親御さんが傍にいない方ががんばれるタイプのお子さんであれば、たとえ2~3歳のお子さんでも親御さんには待合室でお待ちいただく場合もあります。

5歳頃の就学前頃の時期になれば、親御さんとの分離は自然に出来ていることの方が多いため、原則的にお子さん一人で検査室に入って心理検査に臨んでもらうことが多いです。

ただ、母子分離不安等、お子さんの状態によっては、親御さんに同席してもらう場合ももちろんあります。

小学生以上のお子さんも同様です。

原則的にはお子さん一人で検査室に入ってもらいますが、お子さんの状態によって親御さんが一緒に入室してもらった方が取り組みやすいと検査者が判断した場合には、親御さんにも入室してもらう場合もあります。

親御さんが同席する場合であっても、親御さんはあくまで見守りのみに留めてください。

検査者が伝えた指示を親御さんが繰り返したり言い換えたりしてお子さんに伝えることはしないように注意しましょう。

親御さんからの介入により、お子さんの検査課題への反応・回答が変わってしまう可能性があり、心理検査の結果に影響を及ぼしかねません。

また、心理検査を受ける機関によっては、親御さんの同席のルールがあるため、直接、心理検査を受ける機関に確認いただくことをお勧めいたします。


ー子どもは初めての場所は苦手なので、慣れた人・慣れた場所で受けさせたいです。

回答:

心理検査は、初めての場所・初めての人での対応力も見ています。

完全に初めての場所・人という条件のもとで受けられる環境ばかりではないとは思いますが、定期的に会っている人が検査者として実施することは心理検査の条件としては好ましいとは言えません。

初めての場所や人が苦手なタイプのお子さんであったとしても、慣れない環境で発揮できたスキルは完全にお子さんが獲得できているスキルと言えます。

一方で慣れた環境で発揮できているけれど、慣れない環境である心理検査の場面では発揮できなかったものに関しては、環境要因に左右されやすい、完全獲得の一歩手前の段階と言えます。

心理検査の結果の数値だけの判断ではなく、心理検査時の様子と日常生活での様子などを比較しながら、より詳細にお子さんの状態を把握していくことが必要です。

このようなタイプのお子さんの心理検査の結果の考え方などについては、こちらで詳細に記載していますので、ご参照ください。


―いいスコアが取れるように、心理検査を受ける前にきちんと準備したいです。事前に練習できますか?

回答:

結論から言うと、できません。

というのも、発達検査や知能検査は、以下の2つの大きな目的があるからです。

そのため、学校のテストのように、事前に試験対策をして、その問題を解けるようにして点数を取れるようにするというのとは目的が異なります。

「日常生活の困りごとをあぶり出す」くらいの感覚で考えていただいてもよいかもしれません。

そのためには、どんな課題が出されるのかを何も知らないフラットな状態で臨んでいただいてこそ、お子さんの強みと弱みを把握することができるのです。

それが把握できないと、日常の中でお子さんに必要な配慮や今、伸ばすようにアプローチをする必要があるスキルなどの把握が困難になり、心理検査を受けたこと自体が無意味なものになってしまいます。

そのため、検査の課題の詳細な内容は開示されていないのです。

いかがでしたか?

心理検査の詳細はほとんど開示されていないが故に謎で、不安・疑問を多く持たれる方もいることでしょう。

上記で説明したように、お子さんの持つ能力を測定するという側面や詳細な内容を開示していないという状況から、親御さんの疑問・質問にすべて回答することが難しい場合もあります。

心理検査はお子さんの状態を理解するためのツールの1つを考えて、お子さんの発達面の心配がある場合には、受けることを検討いただければと思います。

Gifted Gazeでは、心理士の先生にオンラインやメールでお子さんの発達や心のことについて相談することができます。ぜひお気軽にご活用ください。