子どものチック症とは?症状や原因、合併しやすい疾患を心理士が解説

チック症
記事

周囲からはなかなか理解されにくいチック症。

チックは、意図しないタイミングで発声や身体の動きが出てしまう疾患です。

大人になっても続く人もいますが、多くは18歳以下の子どもに見られます。

今回は、チック症とはなにか「症状」「原因」「合併しやすい疾患」に焦点を当てて解説します。

最後に治療法についても触れているので、参考にしてみてください。

この記事を書いた専門家

いけやさき

チックとは、思いもよらないタイミングで、反復的に繰り返される素早い動きや発声のこと。

まずは、チック症の症状についてです。

チック症には音声チックと運動チックの2種類があります。

発声や音に関するチックが「音声チック」

身体の動きに関するチックが「運動チック」

細かく分類すると「単純性の音声チック」「複雑性の音声チック」「単純性の運動チック」「複雑性の運動チック」があるので、以下で詳細を解説していきます。

音声チックは、発声や音に関するチックです。

単純性は発声や音の続く時間が短く、複雑性は長い時間をかけて意味があるような発声や音に聞こえるものに分類されます。

・「ンン」「アッアッ」などの単音

・咳払い

・鼻をすする

など

・奇声をあげる

・汚言(おげん)

・卑猥な言葉

・反響言語、反復言語

・特定の言葉を繰り返す  など

汚言とは、社会的にあまり良いとはされていない言葉のこと。

わざとに見えてしまい、しばしば怒られることも多いですが、勝手に口から言葉が出てしまうのです。

運動チックは、身体の動きに関するチックです。

単純性は動く時間が短く、複雑性は長い時間をかけて意味があるような動きに見えるものに分類されます。

・まばたき

・肩をすくめる

・顔をしかめる

・首を振る  など

・飛び跳ねる

・ニオイを嗅ぐ

・他人に触れる

・唾を吐く

・汚行(おこう)

・同響動作  など

汚行とは、不適切な動作や性的もしくは卑猥な身振りのことです。

汚行も汚言と同様に本人の意図しないタイミングで起きる動作です。

チックの発症年齢は18歳くらいまでの子どもです。

典型例は4〜6歳ですが、7歳前後に最もよく見られ、10〜12歳くらいで症状が激しくなるといわれています。

大人になるにつれて自然に治っていく傾向のある病気です。

しかし、保護者からしたら気が気でないでしょうし、本人も意図しない言動で周りに嫌われてしまうこともあるので、できれば早めに治したいと考える人も多いでしょう。

チック症は子どもの頃によく見られる一過性のものが多いですが、保護者のみなさんからしたら心配ですよね。

チック症の診断は、DSM-5やICD-11という世界的な基準を用いて医師が診察で診断します。

チックはてんかん発作や、自閉スペクトラム症の症状などと似ている点があるため、鑑別診断が必要です。

複数の疾患が合併している子どももいます。

子どもの様子を見て「チックかも?」と思った保護者の方は、まずはクリニックに受診してみましょう。

チック症の原因は、確実なものは明らかとなっていません。

しかし、いくつか考えられる以下の3つの原因があります。

  1. 心理的要因
  2. 遺伝要因
  3. 環境要因

それぞれについて解説します。

チックの症状の頻度を見ていると、落ち着いているときは出現していないことがあるでしょう。

不安や疲労、興奮に伴って悪化するため、ストレス耐性の弱い子どもなどは発症しやすいといわれています。

ただし、本人の性格や意欲の問題ではありません。

なんとか症状を軽減させようとするあまり、子どもをさらなるストレス状況に追い込まないように気をつけてください。

家族にチック症の人や、神経発達症など類似した症状を持つ人がいるなど。

保護者の育て方や、保護者の性格によって発症するわけではありません。

保護者はご自身を責めず、まずは子どもが暮らしやすい環境を整えることを目指しましょう。

また、少々専門的な話をすると「大脳基底核」や「大脳皮質」という脳の一部分も、チック症状に関連しているといわれています。

大脳基底核:神経細胞が集まっている集合した部分のことで、随意運動(自らの意思で身体を動かす運動)をスムーズに行うために必要なもの

大脳皮質:大脳基底核へ情報を送る役割を果たしています。脳のシワしわの部分のことです。

大脳基底核や大脳皮質の機能異常の影響によって、チック症状が起きているという研究結果もあります。

寝不足など生活リズムの乱れ、ゲームやテレビのやりすぎなどで瞬きの頻度が増えて悪化する例もあります。

生活環境の見直しは、チック症状の緩和や悪化を防ぐために重要です。

しかし、環境要因は「心理的要因」や「遺伝要因」などと合わさっている場合も多いといわれています。

トゥレット症候群は、1年以上にわたって運動チックと音声チックの両方がみられるときに診断されます。

両方続くと言っても、同時に存在するわけではなく、症状の頻度も増減することもあります。

チックの症状が18歳以前に始まって、発症してから1年以上持続していればトゥレット症候群です。

1年以上続いていても、どちらか一方の症状のみなら「持続性(慢性)」のチック症となります。

合併しやすい疾患は「強迫性障害」や「神経発達症(発達障害)」です。

非常に強い不安感や強迫観念を持っていて、不安や不快感を打ち消すために強迫行為を繰り返す疾患。

たとえば、「手が汚れている」と思うこと自体は自然ですが、強迫性障害の場合は「気になって仕方ない」状態となり、手洗い行為を必要以上に行います。

注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD、SLD)などに分類されています。

精神疾患の診断はDSMやICDという世界基準をもとに行われますが、チック症はICD-10では情緒障害でした。

しかし、ICD-11では神経発達症に分類されています。

チック症やトゥレット症候群の治療は、以下の3つの方法があります

・環境調整

・薬物療法

・行動療法/認知行動療法

以下で詳しくお話します。

軽度の症状である場合、まずは環境調整から始めましょう。

この環境調整には「心理教育」も含まれます。心理教育とは、症状の理解や適切な工夫の仕方を学ぶ機会のことです。

たとえば、子ども本人や家族、学校の先生などの周囲の人々が症状を理解できる状態を目指します。

また、症状の悪化を防ぐための配慮や工夫も用意できるように、本人や家族だけでなく、子どもと関わる周囲の人が対応しやすい環境づくりも含まれます。

抗精神病薬がチックの薬物治療の中心です。

抗精神病薬とは、過剰な神経伝達を遮断する物質のこと。向精神薬という思考や感情などに効果が期待できる薬の一種です。

抗精神病薬を用いることで、チックの軽快を目指します。しかし、小児の場合は大人と異なり用量の調整が必要です。

必要最低限の用量で使用しながら、調整していく方法が多いです。

チック症状は本人の意思とは関係ありません。

しかし、日常生活で支障をきたしていることも多いため、自己コントロールできるように行動療法や認知行動療法を行います。

認知行動療法にはさまざまなものがありますが、特にチックの場合は習慣逆転法(バビットリバーサル)と呼ばれる方法が用いられています。

習慣逆転法は、チックが起こる前の感覚に気づき、起きそうなチック症状を止めるための動作を使用して症状のコントロールを目指す方法です。

本人だけでなく、保護者の適切なサポートが重要となります。

チック症の原因は、ストレスと思われがちですが精神的なものだけとは限りません。

原因をストレスだけと考えず、引き金の1つとして捉え、多角的な視点で子どもを見ることがチック症状の緩和にもつながるでしょう。

しかし毎日子どもと関わる保護者のみなさんからしたら不安ですよね。

クリニック受診を検討する以外に、保護者自身の不安な気持ちや悩みを相談する場として、Gifted Gazeもご活用ください。

参考文献

  • 一般の皆さまへ|一般社団法人 日本小児神経学会
  • 小児および青年におけるチック症およびトゥレット症候群 – 19. 小児科 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
  • 強迫症 / 強迫性障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
  • 発達障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)