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認知の歪み

ネガティブな考えによって辛い気持ちになったり、嫌な考えが頭をぐるぐるしてしまうことはありませんか…?

物事の受け取り方(認知)には人それぞれの癖があります。

その癖を知ったり、頑固な癖(認知の歪み)を緩めていくと、今よりも自分の考えや気持ちと付き合いやすくなるかもしれません。

この記事では、認知の歪みについて解説しながら、認知を柔軟にするヒントをお話しできればと思います。

この記事を書いた専門家

山崎

山崎 日菜乃


公認心理師、臨床心理士

心理士としてメールカウンセリングに3年半従事し、家族関係の悩み、心身の不調、仕事の悩みなど、様々な困り事へのサポートを行う。アメリカ合衆国在住。

心理学における認知とは、物事の受け取り方や解釈の仕方のことです。

人は物事をダイレクトに受け取っているわけではなく、自分なりの認知を介して受け取っています。

例えば、コンビニでお目当てのスイーツが売り切れていた時、「売り切れているなんてどんなにおいしいんだろう!」と思う人もいれば、「私はいつも欲しいものが手に入らない」と思う人もいるかもしれません。

また、初めは「なんて運が悪いんだろう」と思い、しばらくして「その分あとでいいことがあるのかも」と思うなど、一つに固執しない柔軟な認知をする人もいるでしょう。

同じ人でもその時の状況や体調、気分によって認知が変わることは多いものです。

認知

認知の歪みとは、物事の受け取り方や解釈の仕方に自分なりの癖がつき、それ以外の解釈をすることが難しくなってしまっている状態です。

先程の例で言うと、「私はいつも欲しいものが手に入らない」以外の解釈ができず、物事の受け取り方が凝り固まってしまっている場合です。

認知の歪みが強まると、ネガティブな考えによって辛い気持ちになったり思うように行動できなかったり、ネガティブな考えが頭をぐるぐるし続けてしまうこともあります。


認知・感情・行動は、お互いに影響を与えあっていると言われています。

例えば、先程の例で言うと、「私はいつも欲しいものが手に入らない」という認知の影響で、悔しさや落ち込みを感じる(感情)、家に帰ってやけ食いしたりSNSに感情的な投稿をする(行動)といった具合です。

そして、そのような感情や行動によって「今日もひどい一日だった」「こんなことしてるからいいことが起こらないんだ」などと、認知もまた影響を受けます。

認知の歪みは誰にでもあり、認知に正しい・間違いはありませんが、感情や行動に悩まされるなどの支障が出ている場合は、自分の認知を知り、柔軟にしていくことがお悩み解消に繋がるかもしれません。

認知

“歪み“というと間違ったもので矯正しなければいけないように感じられるかもしれませんが、先程お伝えしたように認知の歪みは多かれ少なかれ誰にでもあるものです。

ネガティブな考えが適切な準備やモチベーションに繋がることもありますし、物事の捉え方はあなたの個性でもあります。

ここから先、認知の歪みを紹介させていただきますが、これに当てはまるからダメだとご自分の認知を減点しないでいただけたらと思います。

その代わり、認知の歪みによって感情や行動に支障が出ているものについて、ヒントを参考にしながら、心が楽になりそうな考え方のバリエーションを増やすきっかけにしていただけたら幸いです。

すぐに他の考え方が見つからなくても、よく起こりやすい認知の歪みを知っておくだけで、感情や行動に支障が出ることをずいぶん防ぎやすくなると思います。

また、エネルギーが低下したり強いストレスにさらされた時も認知の歪みが生じやすいと言われています。

認知の歪みに気付かれた場合は、今の心や体の状態、最近無理をしていないか、疲れやストレスが溜まっていないかなども気にかけてみてくださいね。

ここからは、認知の歪みの代表的なパターンを11種類ご紹介するとともに、それぞれについて緩めるヒントをご提案します。

その前に、以下のうちご自身に当てはまるものがないかなど、以下のリストでチェックしてみてください。

認知の歪みチェックリスト

物事の曖昧さを認めず、○か×か、善か悪かのように極端に考える →「白黒思考(all-or-nothing thinking)」

“絶対“”みんな“”いつも“などの言葉がをよくする →「一般化のしすぎ(overgeneralization)」

ネガティブな側面にばかりこだわり、ポジティブな側面を無視する →「心のフィルター(mental filter)」

ポジティブな側面の価値を引き下げたり、よい出来事を悪く解釈する →「マイナス化思考(disqualifying the positive)」

明確な根拠がないのに人からネガティブな感情を持たれていると推測する →「心の読みすぎ(mind reading)」

明確な根拠がないのに事態が悪化すると予測する →「先読みのしすぎ(fortune telling)」

自分の失敗や他者の成功を大きく捉え、自分の成功や他者の失敗を小さく捉える →「拡大解釈・過小評価(magnification and minimization)」

自分の感情を根拠にして物事を判断したり決めつける →「感情的決めつけ(emotional reasoning)」

「すべき」「すべきでない」という考えで自分や他者を批判する →「感情と事実は別物だと意識しておくべき思考(should thinking)」

個別の失敗を根拠に自分や他者にネガティブなレッテルを貼り、それに基づいた情報しか見ようとしない →「レッテル貼り(labeling and mislabeling)」

良くないことは全て自分のせいだと考える →「自己関連付け(personalization)」

物事の曖昧さを認めず、○か×か、善か悪かのように極端に考える。

例)

・数箇所うまくいかなかったプレゼンについて「プレゼンは失敗だった」「プレゼンに向けての準備は全部無駄だった」

・人間関係を敵か味方かに二分して考える

認知

・その思考に当てはまらない部分はないだろうか?(例:プレゼンで上手くいった部分や準備が役に立った部分はない?)

・人にはいいところも悪いところも両方あるのかも、成功した部分も失敗した部分も両方あるのかもしれない。

特定のマイナスの出来事をいつものパターンとして他の物事にも当てはめる。“絶対“”みんな“”いつも“などの言葉が目印。

例)

・一度雨の日に嫌なことがあって「今日は雨だから絶対に嫌なことが起こる」

・数人の無礼な若者を見て「最近の若者はみんな無礼だ」

認知

・本当に“絶対“?本当に“みんな“?(例:雨の日に嫌なことが起こらなかったことは一回もない?)

・過去の経験を活かすことで次はうまくやれる可能性もある。(例:雨の日を楽しくする工夫ができるかも)

ネガティブな側面にばかりこだわり、ポジティブな側面を無視する。

例)

・ほとんどの人が笑っているが無表情の人が数人いて「私の話はつまらないんだ」

・子どものテストの点数が悪いことばかりが気になり、勉強以外のことを褒められても聞き流してしまう

認知

・本当にネガティブなことだけだっただろうか?(例:笑って話を聞いている人はいなかった?)

・常に全員からポジティブな反応をもらうはずはないし、その必要もないかも。(例:全員を笑わせなくてもいい)

ポジティブな側面の価値を引き下げたり、よい出来事を悪く解釈する。

例)

・上手くいった時に「まぐれだ」「運が良かっただけだ」「あの人のお陰であって自分の実力ではない」

・褒められた時に「お世辞に違いない」「嫌味だな」「何か思惑があるんだろう」「気を遣わせてしまって申し訳ない」

認知

・あなたの大事な人が同じように解釈していたら何と声をかけてあげるだろう?(例:成功を「まぐれだ」と言う友人や家族に何と声をかける?)

・ポジティブな物事を時にはそのまま受け取ってみてもいいかもしれない。

明確な根拠がないのに人からネガティブな感情を持たれていると推測する。

例)

・友達からメッセージの返信が来なくて「嫌われているんだ」「私と連絡をとりたくないんだ」

・子どもが言うことを聞かなくて「私のことをバカにしているんだ」「子どもから信頼されていないんだ」

認知

・相手が本当にそう言った?(例:友達から連絡をとりたくないと言われた?)

・他の要因もたくさんあるのかもしれない。(例:連絡がこないのは、相手が忙しかったり、体調をくずしていたり、スマホが壊れていたり、単に忘れているのかも)

明確な根拠がないのに事態が悪化すると予測する。

例)

・子どもが受験に落ちて「この子の将来は絶望的だ」「将来苦労するに違いない」

・上司から叱られて「これから上司には一切期待してもらえないだろう」「ゆくゆく解雇されるのだろう」

認知

・最悪の結果は?最良の結果は?その中間である現実的な結果は?(例:最悪の場合子どもは一生定職に就けないかも、最良の場合社長になるかも、現実的には何かしらの仕事を見つけて生きていくお金には困らないだろう)

・物事は常に変化するし、未来のことは誰にも分からない。

自分の失敗や他者の成功を大きく捉え、自分の成功や他者の失敗を小さく捉える。

例)

・ミスをした時には「とんでもないことをした」と思い、成功をした時には「こんなの誰だってできることだ」と思う

・他人の子どもはちょっとしたことで優秀に見えるのに、自分の子どもが頑張っていてもまだまだだと感じる

認知

・あなたが信頼できる人にはどう見えているだろう?(例:信頼できる友達から見たら私のミスや成功はどう見えているだろう?なんと言ってくれるだろう?)

・自分のことより他者のことは良く見えがちだと心得ておく

自分の感情を根拠にして物事を判断したり決めつける。

例)

・あの人のことが嫌いだから「あの人は悪い人だ」

・飛行機に乗るのが怖いから「飛行機に乗るのは危ない」「この飛行機はきっと墜落する」

認知

・その判断の根拠になる客観的事実は?(例:あの人が悪い人である客観的事実はある?あの人が悪い人ではない事実は一つもない?)

「すべき」「すべきでない」という考えで自分や他者を批判する。

例)

・子どもが野菜を残した時「出されたものは残さず食べるべきだ」「親は子どもに野菜を食べさせるべきだ」「好き嫌いをすべきではない」

・疲れて家事を休みたい時「この程度の疲れでは休むべきではない」「妻・夫なんだから家事を毎日完璧にするべきだ」

認知

・それは本当に守らないといけないルールだろうか?そのルールによって何かが犠牲になっていない?(例:残さず食べさせることに必死になりすぎて食事の楽しい雰囲気がなくなってしまっているかも)

・そのルールは法律で決められているわけじゃないし、「べき」より「したい」を優先してもいい

個別の失敗を根拠に自分や他者にネガティブなレッテルを貼り、それに基づいた情報しか見ようとしない。

例)

・「この子は問題児だ」(叱られたことばかりを思い出し、褒められたことやいいところを見落とす)

・「私は負け組だ」(上手くいかなかったことばかりを思い出し、上手くいったことを見落とす)

認知

・そのレッテルに当てはまらない事実はない?(例:子どものいいところや好きなところはない?褒められたことはない?)

・人には多面性がある、私の知らない一面もあるのかもしれない

良くないことは全て自分のせいだと考える。

例)

・子どもが風邪を引いて「私が子どもの体調管理を怠ったせいだ」

・お出かけの日に雨が降って「私が雨女だからだ」「私の日頃の行いが悪いせいだ」

認知

・私以外のせいだとしたらどんな要因があるだろうか?(例:子どもが風邪を引いたのは、学校で風邪が流行っているからかもしれないし、子どもが手洗いうがいをしなかったからかも)

・私にコントロールできない事柄もたくさんある

いかがだったでしょうか。

この認知の歪みによって嫌な気持ちになったり思うように行動できないことが多いなと思うものについては、緩めるヒントを参考に、こんな捉え方もあるかもしれないと、認知の幅を広げていけるといいなと思います。

周りの人と協力してアイデアを出しあってみるのもいいですね。

また、お子さまの認知について気になった場合は、「そう感じたんだね」とその子なりの受け止め方にまず共感し、「他にはどんな風に考えられるかな?」「こんな捉え方もあるかもしれないね」「(親やきょうだい、友達)だったらどう考えるか聞いてみようか」などと他の選択肢を一緒に広げていけるといいですね。

どんな風に考えられたらより気持ちよく暮らしていけるだろうという視点で、認知の幅を広げたり柔軟にしていけるといいなと思います。

参考文献