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自己肯定感と自己効力感〜自分を好きになる力とがんばれる力:子どもの「やる気スイッチ」〜

「自己肯定感」と「自己効力感」。最近よく耳にすることも増えたのではないでしょうか。

自己肯定感が高い人は、自分の能力を信じやすく、その結果、自己効力感も高まる傾向があります。逆に、自己効力感が高い人も自己肯定感を高めることができると言われています。

自分に自信を持ちやすく、そのおかげでがんばれる力も強くなり、逆に、がんばれる力が強いため、成功したときに自分をもっと好きになれる、という関係です。

自己肯定感も自己効力感も子どもたちの成長にとって重要な役割を果たします。

本記事では、子どもたちの自己肯定感と自己効力感の重要性について探り、子どもたちが健やかに成長し、自らの可能性を信じる力を身につけるための方法について解説していきます。

まず、自己肯定感と自己効力感とは何か。以下に、簡単に説明します。

自己肯定感


自分自身を価値のある、愛されるに値する人間として認識する能力や感覚です。

自己の内面や存在全体に対する肯定的な評価を指します。

つまり、自分を好きになる力であり、自分のことを大切な人だと思える気持ちで、「自分を好きになる力」です。

自己効力感


特定のタスクや状況に対して自分が効果的に対処できるという信念です。

自分の能力を信じ、挑戦に対処できるという自信を指します。

自分に対してできると信じて、チャレンジする勇気のことであり、「がんばれる力:やる気スイッチ」とも言えます。

先に説明した通り、この2つの要素は互いに関連していることが、想像できるかと思います。

自己肯定感と自己効力感が高い場合の特徴として、それぞれ以下のようなものが挙げられます。


  1. 失敗をしても自分を責めない
  2. 自分のいいところや成功したことなど、ポジティブな要素に注目する
  3. 他人と自分を比較しない
  4. 批判や否定的なフィードバックを受けても、自分自身への価値感が変わらない
  5. 自分の感情や想いを大切にし、それに基づいて行動する

  1. 新しいことに前向きに取り組む
  2. 難しいことがあっても、あきらめずに頑張る
  3. 過去にうまくいったことを思い出して、自信を持つ
  4. 困難を乗り越える経験を大事にする
  5. 自分の努力が結果につながると感じる

それぞれ、すごく似ている要素もあると思うのですが、簡単にいうと、自己肯定感が自分に対する評価感情で、自己効力感が自分の「行動」への自信のようなものとご理解ください。

具体的に、この2つの要素がどれほど重要かを子どもたちの学びの場面で考えていきましょう。

自己肯定感や自己効力感が高い子どもは、自分を受け入れる能力(自己受容力)が高く、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する傾向があります。

また、困難な課題に直面したときに諦めずに努力を続けることができます。

このような心と姿勢は、リスクを取る勇気や、失敗から回復する強さにつながり、豊かな成長のために必要な経験をより多く積むことができます。

なお、2018年の内閣府による調査結果によれば、日本の若者(満13~29歳の男女)は、自身を肯定的に捉えている割合が他の国の若者に比べて低い傾向にあります。社会に出てからの仕事や人間関係において、自己肯定感が低い状態で活動している可能性を示していると言えます。

自己効力感に関する有名な研究に、「社会的学習理論」があります。

この理論は、心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された理論で、人が自分自身の能力をどのように信じるようになるのか、またその信念(=自己効力感)がどのように形成されるのかを研究したものです。

「社会的学習理論」も踏まえて、以下で自己肯定感と自己効力感を育むためのアクションについてご紹介します。


子どもが、挑戦した経験することは自己効力感を高める最も効果的な方法です。

例えば、自転車に乗れるように練習を頑張った、テストで前回できなかった問題が解けるまで練習できた、など、日常の小さな体験について、取り組んだ姿勢とプロセスを認めることで、子どもが「私にはできる」という強く信じる心を持つようになります。

これらの体験を通じて、似たような状況や新しい挑戦に対しても自信を持って取り組むことができるようになります。


子どもが尊敬する人物や友達が何かに挑戦して成功する様子を見せることも、大きな影響を与えます。

これは「代理体験」と呼ばれ、子どもが「もし彼らができるなら、私にもできるかもしれない」と考えるきっかけになります。

家族での活動や学校のプロジェクトで、成功する姿を見せることが、子どもの自信に繋がります。

友達、兄弟姉妹、またはテレビのキャラクターが何か新しいことを学ぶ様子を見ることでも同様の効果があります。

子どもが、そういった人物と自分を同一視したり当事者意識を持つと、自分も同じことができると感じるようになります。成功の可能性をイメージするのにも有用とされています。


子どもが挑戦する中で緊張や不安を感じることもあるでしょう。

このような感情的な状態も、自己効力感に影響を与えます。親としては、子どもが安心して感情を表現できる環境を整え、挑戦を続けることをサポートすることが大切です。

言葉による励ましや肯定的なフィードバックは、子どもが自己の能力に対して肯定的な信念を持つ大きなきっかけになります。

子どもの感情的な状態も、自己効力感に大きく影響するため、保護者や教育者などからの言葉は、子どもが挑戦する際の不安を和らげ、自信を持って取り組む勇気を与えます。

想像しやすいと思うのですが、例えば、挑戦する前にリラックスしていると、成功する確率が高まり、不安や恐怖を感じていると、自己の能力に対する信念が低下する可能性があります。

親として、子どもが自信を持ち、前向きな姿勢で挑戦を続けることを願うことは自然なことです。その鍵を握るのが、自分自身の能力を信じられるかどうかです。

先に説明した通り、自己肯定感は自分自身を受け入れ、自信を持つ力を指し、自己効力感は自分の能力や力で物事を達成できるという信念を指します。

両方の要素が組み合わさることで、子どもたちは困難に立ち向かい、成長し、成功するための自己信頼を築くことができます。

子どもたちが自信を持ち、自らの可能性を信じる心を育んでいきたいですね。

才能発掘診断では、自己肯定感はもちろん、お子さんの非認知能力の状態を調べることができます。

参考文献

バンデューラ, A. (1977). “Social Learning Theory.” Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.

バンデューラ, A. (1997). “Self-efficacy: The exercise of control.” New York: Freeman.

Rosenberg, M. (1965). “Society and the adolescent self-image.” Princeton, NJ: Princeton University Press.

Schmitt, D. P., & Allik, J. (2005). “Simultaneous Administration of the Rosenberg Self-Esteem Scale in 53 Nations: Exploring the Universal and Culture-Specific Features of Global Self-Esteem.” Journal of Personality and Social Psychology, 89(4), 623–642.