発達障害児の中学受験における5つのメリットと注意点【専門家監修】

「中学受験させたいけど、発達障害ならやめた方がいい?」

発達障害の子どもを持つ保護者様のなかには、中学受験について悩んでいる方がいます。

今、この記事を読んでいるみなさんにも迷いや不安があるのではないでしょうか?

筆者は、臨床心理士・公認心理師ですが、よく「受験のことで相談したい」「受験するか判断するために知能検査を受けたい」というご相談を受けます。

結論から申し上げますと、発達障害だからという理由で子どもの中学受験をやめる必要はありません。

今回は、発達障害児の中学受験のメリットと注意点を解説します。

この記事を書いた専門家

いけや さき


公認心理師、臨床心理士

精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。

まず、前提として子ども本人に中学受験の意思があるかは重要です。

いくらこの後紹介するメリットがあったとしても、本人が希望していないと意味がなくなってしまいます。

また、注意点で詳しく紹介する【本人の負荷や負担】が増大し、症状の悪化につながる場合もあるでしょう。

本人が嫌がっている場合は、中学受験について家族できちんと話し合い、考えをすり合わせていくことが最優先されます。

その際、家族でも話し合う必要がありますが、第三者(小学校や病院など)にも意見を聞くことも大切です。

受験

発達障害の子どもが中学校受験するメリットは次の5つが考えられます。

①人間関係をリセットできる

②特性に合う環境を選べる

③一貫校であれば高校受験の心配がなくなる

④達成感や成功体験を得られる

⑤選択する力が身につく

それでは一つ一つ詳しく解説していきます。


発達障害の子ども全員が当てはまるわけではないですが、友人関係や先生など、人間関係がうまくいかない子は一定数います。人間関係がうまくいかなかった子にとって、中学受験は人間関係リセットのチャンスです。

学校に対して「行きたくない」「つらい」「つまらない」などの気持ちがあると、学校すべてが嫌なイメージになってしまう子もいるでしょう。

嫌なイメージや記憶が残り続けると、ほかのことに挑戦するときも不安になりやすくなります。そういった意味でも、新しい環境は新たな人間関係を構築するきっかけとなるでしょう。

受験

受験して入学する私立や国公立中学は、個人の特性に合う指導や環境調整をしてくれる学校が多いといわれています。

すべての学校が該当するわけではないため、中学校選びは重要ですが、合う学校に入れれば過ごしやすくなるでしょう。

また、中学校によっては発達障害の子を積極的に歓迎しているところもあります。義務教育の基準は大事にしつつ、授業の特性や学校の設備にも力を入れている学校も多いです。

たとえば、黒板の文字を書き写すことが苦手なタイプの子どもは、合理的配慮の観点ではタブレット端末を使ったり、写真が撮れるようにできると負担が少なくなります。

しかし、公立中学で実現させるのは難しい場合もあるでしょう。

子どもに合った学習方法を取り入れやすいのも、中学受験のメリットです。

発達障害

中高一貫校であれば、エスカレーター式を採用している学校が多いため、受験をせずに高校へ進学できます。

系列の大学がある学校なら、大学受験も内部進学や負担のない範囲の受験にできるかもしれません。

また、ここまで「私立中学受験」と紹介してきましたが、中高一貫校は公立中学にもあります。

私立同様、中高一貫校の公立は中学受験が必要です。

公立中高一貫校の授業料は、私立よりも安価なので学費も抑えつつ、学びやすい環境を整えたい場合にぴったりの選択肢でしょう。


中学受験合格は、筆記試験も面接試験も努力した結果が実る体験となります。

普段、テストの点数がよかったり、成績がよかったりするときの喜び以上の達成感が得られるでしょう。

その分、このあと紹介する注意点も忘れてはいけません。

ぜひ、この記事を最後まで読んで、子どもにとって「いい選択肢」を探していただけたらと思います。

発達障害

通常、小学校から中学校に進学する際は学区内の学校への入学となっています。

しかし、中学受験をする場合は家族で学校へ見学に行ったり、各学校の資料を見比べたりするなど、親だけでなく子どもも一緒になって選ぶことができるのです。

子どもが自分の中学校生活や、今後やりたいこと、興味のあること、過ごしやすい環境などに目を向けて選択する力が身につくのも中学受験のメリットでしょう。

発達障害の子どもの中学受験には、メリットもデメリットも存在します。

ここでは、デメリットとならないよう以下の3つの注意点を紹介します。

①本人に負荷や負担が生じる

②入学後は成績キープが必要になる

③学校選びが重要となる

それぞれ詳しく解説していきましょう。


今回の記事で最初にお伝えしたように、中学受験は子どもの意思を尊重することが重要です。

子どもが「勉強したくない」「受験は嫌」と考えている場合、受験勉強が大きな負担となってしまいます。

特に発達障害のなかでは、ADHDやLDの子どもが中学受験がつらくなってしまう可能性が考えられるでしょう。

だからといって、ASDの子が大丈夫かというとそうではありません。

どの発達障害の特性を持っている子どもでも、受験勉強が本人の負担となった場合は、うつ病などの二次障害を発症することもあります。

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「親の期待に応えられなかった」

「いい点数が取れなかった」

「集中できなかった」

こういった思いから、自己肯定感や自尊心が低下してしまう可能性もあるでしょう。

中学受験をするなら子どもと話し合いながら、専門家の意見を参考にすることをおすすめします。


特に中高一貫校の場合、高校受験がなしで済むケースや面接や書類審査だけになることがあります。

その際、何を重視しているかというと”中学校生活”です。一般的に中学校は義務教育のため、どんな成績でも進級できることは多いですよね。

しかし、私立の場合はたとえ中学生でも留年になる可能性があります。

私立で留年になる可能性があるのは、次のような点が基準となるようです。

・成績不良

・不登校

・病気療養

一定の成績をキープし、出席日数が足りなくならないように工夫することは、入学後の意識として重要。

中学受験をする際は、合格をゴールとせず新たなスタートと考えるといいかもしれません。

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発達障害の子どもの中学受験は、学校選びが重要です。

公立中高一貫校も私立中学も、サポートが手厚いところや発達障害児を積極的に受け入れている子もいれば、そうではないところもあります。

サポートのことも含め、学校選びのポイントを以下にまとめてみました。

1.通学時間や電車の混雑状況はどうか

2. 系列大学(大学付属)があるか

3.校風や雰囲気は合うか

4.合理的配慮に関する記載はあるか

5.学校の設備はどうか

2024年4月から法改正で私立学校も合理的配慮が義務付けられました。

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しかし、義務付けられたばかりですので、学校ごとに配慮の具体策は異なる場合が考えられます。

公式サイトやパンフレット、学校説明会などできちんと確認しておきましょう。

学校の設備については、敷地の広さや図書館、プールの有無のほかに、昼食に関する情報も重要です。

たとえばアレルギーのある子どもや、味覚に敏感な子どもは発達障害児に多く、お弁当の方がいいこともあります。

ただし、近年は共働きの家庭が一般化しているので、子どもだけでなくご両親の負担にならない選択がとれる学校だとよりいいでしょう。(例:お弁当ではなく購入したものなどでもOKなど)

発達障害の子どもも中学受験をしている子もいます。

障害の有無が不利になるというわけでもありません。合理的配慮が私立校も法的義務となったため、より一層、”障害を理由に”不合格にさせることもないでしょう。

また、合理的配慮が必要でなければ、障害の有無をオープンにしていない家庭もあります。

筆者は現在、児童精神科にも勤務する心理士ですが、中学受験を検討されている保護者様が多くいらっしゃると感じています。

子どものためになるか、受験させて大丈夫かと心配になる気持ちは、中学受験を検討中のご家庭にとって自然な悩みです。

しかし、具体的な相談場所はなかなか少ないですよね。

Gifted Gazeでは、子育てに関する悩みや発達障害に関するご相談を専門家が受け付けています。お気軽にご相談ください。

参考文献