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発達障害グレーゾーンの子どもたち〜見えない困りごとと向き合う方法〜

発達障害のある子どもたちは、学校や日常生活において多くの課題に直面しています。

さらに、診断が明確でない「グレーゾーン」にある子どもたちや、高知能であるために発達障害と誤診されるギフテッド・チルドレンもいます。

これらの子どもたちは、見えない困難に苦しみながらも、その悩みが十分に認識されにくいことがあります。

本記事では、グレーゾーンの子どもたちが直面する困難、対処法、そして周りができるサポートの方法についてご紹介します。

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グレーゾーンの子どもたちは、定型発達の子どもたちの中でも日常の各タスクにうまく対処できているように見えることも多いため「普通」と見なされがちです。

また、グレーゾーンにも困りごとのレベル感にグラデーションがあるため、一概に「このパターンがグレーゾーン」というようなことも言えず、理解されにくいのです。

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クラスで授業中に黙って座って先生の話を聞くことができない、周りからは意味のなさそうに見える同じ動作を何度もしないと気が済まない、片づけができずにいつも叱られる、などのお子さんはみなさんが子どもの頃だった時にも教室にいたと思います。

脳の特性によって、「みんな」(多数)ができていることができないと怒られ、問題児扱いされる子どもは、日常生活で困りごとを抱え、さらにうまく対処ができないことによって批判され、孤独感や無気力感を感じてしまうという顕著な課題に直面しています。

グレーゾーンの子どもたちは、発達障害の特性を持ちつつも、診断基準に完全には当てはまらないため、必要な支援や理解を得られにくい状況にあります。

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近年では、「発達障害」「発達凸凹」「グレーゾーン」などではなく、「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」という「脳の多様性」として捉える動きも大きくなってきました。

経済産業省でも、「イノベーション創出や生産性向上を促すダイバーシティ経営」とか「成長戦略」などと捉えてこの概念を推進しています。

“イノベーション創出や生産性向上を促すダイバーシティ経営は、少子高齢化が進む我が国における就労人口の維持のみならず、企業の競争力強化の観点からも不可欠であり、さらなる推進が求められています。この観点から、一定の配慮や支援を提供することで「発達障害のある方に、その特性を活かして自社の戦力となっていただく」ことを目的としたニューロダイバーシティへの取組みは、大いに注目すべき成長戦略として近年関心が高まっております。”

経済産業省 「ニューロダイバーシティの推進について」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html

日本を含む多くの国では、発達障害や知的障害の確定診断を受けた子どもたちに対しては、社会福祉の枠組みで比較的手厚い支援が提供されています。

しかし、グレーゾーンの子どもたちに対する理解や支援はまだ充分には行き渡っていないのが現状です。

これは、発達障害の診断基準が非常に厳格であるため、微妙な発達の違いが認識されにくいことが原因の一つと考えられます。

こうした子どもたちに対して、「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」の考え方をもとに、教育現場では個別のニーズに応じた支援プランを作成し、子どもたち一人ひとりの特性に合わせた教育を提供することが大切です。

一方で、教育現場のリソースや教員の知識・スキル面の理由もあり、実際のところは個別ニーズへの対応が現実的ではない場合が大半です。

定型発達かそうでないか、での基準によって特別支援学級へ振り分けられたり、親同伴で登校を求められるなど、教育現場での脳の多様性がある子どもたちへのケアの方法は適切とは言えず、対応方法も限定的です。

では、発達障害の子どもたちやグレーゾーンの子どもたちへはどのようなサポートが望まれるのでしょうか。

以下では、具体的なステップをご紹介したいと思います。


最初のステップは、子どもの個々の困りごとを把握することです。

それに合わせて教育環境におけるニーズを調整する必要があるからです。

例えば、授業中にみんなと一緒に座って静かに先生の話を聞くことが苦痛だったり、どうしても集団行動ができないなど、子どもが日常生活や学校で直面する具体的な課題を観察し、記録することが有用でしょう。

子ども自身も説明できない困りごとについても、どのようなパターンがあるか、また不適切行動の現れ方の特徴も把握することができます。


困りごとがわかったところで、学校や家庭での環境を、子どもの困りごとを取り除いて安心して能力を発揮出来るようにしましょう。

例えば、音が苦手で集中できない子には騒音が少ない静かな学習環境を提供する、忘れ物が多い子には日常生活におけるルーティーンを作る(しなければならないことを日々の習慣として予測可能な行動にすることで、子どもにとって取り組みやすくなります)などがあります。

子どもにも認知機能、ワーキングメモリや知能面など、脳の特性から来る「取り組みやすさ/取り組みにくさ」があります。

どのような環境が子どもにとっていいか、あるいは悪いか(集中しにくい、やり方が苦痛など)を勘案した上で、それに合う環境やツールの調整をしましょう。


学校のカウンセラーや教育支援専門家、発達障害を専門とする医師との連携を図ることも方法の一つです。

一方で、実際には学校から医療機関を勧められる場合、発達障害というラベリングをされやすい、ということを周りの親御さんからよく聞きます。

不適切行動が何によって引き起こされるのかなど根気強く観察してみたり、ギフテッド・チルドレンの可能性はないか、普段密に関わっている親や教師が総合的に判断をした上で、教育現場や家庭で工夫できることはないかまず検討した上で、適切な第三者機関へ案内することが望ましいはずです。

深刻な他害行動などがない限り、医療機関での投薬は避けるべきという声も多いです。


先で少し触れましたが、ギフテッド・チルドレンと呼ばれるような子どもたちは、発達障害と誤解されがちです。

これらの子どもたちは、高い知能や創造性を持つ一方で、集中力の問題や特定の社交性の課題を抱えることがあります。

彼らの能力を認識し、知的に挑戦的な環境を提供することで困りごとや不適切行動が減るケースも多いです。

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子どもたち一人ひとりが抱える困りごとは、見えていたり見えなかったり、見えていても大小さまざまです。

本人の意思では対応することが難しい、または精一杯対応しているという状況を理解できずに、周りから見ると、「なんでこんなこともできないのか」、「何でこんな手がかかるのか」、などと捉えられることも多いです。

まずは、脳の特性によって困りごとを抱えている可能性がありうる、という状況を理解することが大事です。

そして、子どもたちが自分の感じていることをオープンに話せる安全な環境を提供すること、彼らの困りごととそれに対する努力を認めて肯定的な見方をするようにしてください。

教育現場や家庭だけでなく、子どもたち一人ひとりの脳の特性からくる個々のニーズに対応することが、今社会でも求められています。

困りごとを理解するだけでなく、このユニークネスを活用することに繋がっていくことを期待しています。

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