お子さんの発達が気になっていたり、幼稚園・保育園・学校の先生から指摘されたりなどがあると、悩み、いろいろと情報を調べていることでしょう。
そのような状況の中で、「心理検査」という言葉に触れることも多いはず。
今回は、「心理検査」などの言葉に出逢った際に、多くの親御さんが疑問に持つような疑問やお悩みに心理士がQ&A形式でお答えします。
この記事を書いた専門家
日塔 千裕
公認心理師、臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
目次
心理検査を受けてみようかなと思った時のQ&A
Q1:心理検査、発達検査、知能検査など、色んな検査名があるけど、違いは?
「心理検査」は、総称です。心理検査の大分類が「発達検査」「知能検査」「人格検査」という3つがあり、その3つをまとめた総称が「心理検査」です。
◯発達検査
全身の身体発達や手先の操作、言葉の獲得、数概念の獲得、言語指示の理解や説明など、それぞれどの発達段階まで成長できているかという発達段階を確認するものです。
主に乳幼児や重度の知的障害を有するお子さんに行われます。
◯知能検査
発達検査よりも抽象度が高く、知的な能力水準がどのあたりに位置しているのかを確認するものです。
言語理解力や推論する力、視覚的に認識する力などを把握します。
検査の種類によって受けられる対象年齢は変わりますが、知能検査としては全年齢が対象になります。
◯人格検査
性格特性や心理的傾向などを把握するものです。
お子さんによっては、知能検査と組み合わせて実施します。
Q2 :心理検査は、どこで受けられる?
心理検査を受けられる場所として主な場所は、医療機関、児童相談所、教育相談センターです。
◯医療機関
医療機関では、児童精神科や発達外来、思春期外来を標榜しているところは心理検査も行っているところが多いです。
診療科以外には、小児科などでも発達を診ている医師がいる場合には、実施している場合もあります。
この診療科なら必ず実施している、と断言できるものではないので、必ずホームページを確認して行かれることをおすすめします。
◯児童相談所
地域によっては、こども相談所や子ども女性相談支援センターなど名称が異なります。
お住まいの地域名と児童相談所という言葉をキーワードにしてネット検索していただくと、ご自身の地域の児童相談所の名称などをお探しいただくことができます。
児童相談所は、近年、虐待のニュースの際に名称が挙がることが多いため、虐待への対応をする機関との認識を持たれている親御さんが多くいらっしゃいます。
児童相談所はそもそも18歳未満のお子さんに関する相談すべてを受けている相談機関なので、育児・子育てに関すること、発達に関することなども相談できる場所なのです。
◯教育センター
高校生までお子さんを対象に、主に学校生活での問題に関する相談を受けている相談機関です。多くの地域では小学生以降が対象となる場合が多いですが、地域によっては小学校入学前の幼児も対象となる場合もあるので、ご自身の地域の教育センターのホームページを確認してみてください。
◯その他
全地域で共通している機関としては上記3つですが、地域によっては下記のようなところでの受検が可能な場合もあるため、ご紹介しておきます。
◯スクールカウンセラー
学校・カウンセラーによっては、ごく少数な印象はありますが学校で実施できる場合もあります。学校やカウンセラーに直接ご確認ください。
◯大学の心理相談室
心理学を学ぶ大学院生の実習機関として、大学が相談室を持っており、そこで心理検査を受けらる場合があります。
大学により、対象としている年齢層や得意な相談内容等は大きく異なりますので、必ず大学の心理相談室のホームページでご確認ください。
◯民間の相談機関
私設カウンセリングルームなどで実施している場合もあります。
Q3:心理検査を受けたいと希望したら必ず受けられる?
心理検査は親御さんが受けさせたいと言ったからといって必ず受けられるものではありません。
医療機関であれば、医師の判断で「必要」と判断された場合、児童相談所や教育センター、その他の機関でも相談をする中で「必要」だと判断された場合のみ、実施することになります。
Q4:心理検査を受ける費用は?
◯医療機関
原則、保険適用で行われます。
保険の自己負担分となるため、数千円程度の自己負担となるでしょうし、地域によって医療費助成の対象となる年齢のお子さんの場合には無料などさらに安くなることもあります。
◯児童相談所・教育センター
行政機関となるため、無料で受けられます。
◯スクールカウンセラー
公立の学校のスクールカウンセラーが実施する場合には無料です。
私立の学校の場合には、独自の設定を行っている場合もあるため、学校に確認してみてください。
◯大学の心理相談室
大学により、費用の設定は異なりますが、概ね1つの検査で2,000円~5,000円の範囲に入っているところが多いように思われます。
◯民間の相談機関
ここは、完全に全額自己負担で、価格設定も独自に行われている場所となります。そのため、10,000~20,000円程度となる場合があります。
Q5:受けたい検査種別は希望したら受けられる?
Q3と同様に、親御さんが希望した検査種別を必ず受けられるというものではありません。
というのも、心理検査によって、対象年齢が異なっていたり、年齢は対象の年齢であってもお子さんの特性や知的水準等によって実施が困難であったりと、さまざまな状態・状況を考慮しながら実施すべき心理検査を選定する必要があるからです。
そのため、親御さんの希望通りの検査種別を実施できるとは限らないです。
なお、就学相談の際に心理検査の結果の提出を求められているなどの場合には、必ず検査実施の予約を取る際に受ける必要のある検査種目を伝えるようにしてください。
Q6:心理検査を受けることで何が分かるの?
上のQ1で、簡単に心理検査の違いを説明はさせていただきましたが、心理検査を受けることの目的としては、お子さんの状態・特性を把握し、どのような関わりがあるとよいかを検討することです。
心理検査を受けることの目的
今、子どものどのスキルを伸ばしていけるとよいのか
子どもの得意なスキルと苦手なスキルは何か
子どもにどのような関わり・工夫があると、子どもが生活しやすくなるのか
実施する検査種別によって、どのような結果を把握することができるかは変わってきますが、概ねこのような内容を把握して、日常生活に活かしていく方法を検討することが心理検査を受けることの目的です。
ただ、残念ながら、心理検査を受けた後の説明や報告書の内容は、場所によってとても差が大きく、簡単な説明のみで結局受けてどうだったのかよく分からない、という声も聞いたことがあります。
心理検査を受ける前に、以下のポイントを確認してみましょう。
結果について説明の時間を取ってもらえるのか(30分~1時間程度が妥当)
結果は書面としてもらえるのか
結果説明は誰が担当するのか
(医療機関の場合)医師からの結果説明なのか心理士等の心理検査を実施した人からの結果説明なのか
:かかりつけの医師からの結果説明であれば、日頃の診察時の様子で質問をしやすいかなどが分かっているでしょうし、心理検査を実施した人からの説明であれば、より詳細な検査時のお子さんの様子などを確認することも可能でしょう。
(児童相談所や教育センターなどの相談機関の場合)いつも相談をしている担当の方が心理検査をするのか、心理検査のみ別の担当の方が対応するのか
:いつもの担当の方が質問しやすかったり、質問に対して的確に答えてくれたりしているのであれば、(別の方が心理検査のみを担当したとしても)いつもの相談担当の方に後の疑問等が出てきた時に質問することも可能でしょう。
おわりに
心理検査は本来お子さんが持つ発達状況や知的能力などを測定するため、詳細に課題の内容をお伝えするさができないという状況があります。
ただ、お子さんの今の状態と日常生活での対応方法などの助言があるかどうか、親御さんの不安や疑問にきちんと応えてもらえるかなどが大切になるのではないかと考えています。
もちろん、費用や家からの距離、予約状況などどこで受けるかの判断基準はさまざまかと思います。
全体を把握して、どれを選択するか判断の一助となれば思い、ここまで説明させていただきました。
最善の条件が揃った場所で受けられるというケースは少ないかもしれませんが、選択する際のヒントとしてご活用いただければと思います。
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