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小さな心理学者たち〜子どもたちは見抜く!大人の真価〜

子どもたちは、私たち大人が思う以上に敏感で、大人の些細な行動や態度に対して、自然と鋭い評価をしています。

私たち大人も子どもの頃に、「あの先生のいうことは聞いておこう」とか、「あの先生は聞いたフリでいいかな」などとなんとなく区別していたことがあるのではないでしょうか。

子どもたちの評価は、親でさえも対象となっているのです。

子どもたちが「大人を評価する」という行動は、尊敬する存在を探しあて、その存在を自分の人生の道標にするという生存戦略の現れです。

この記事では、子どもが尊敬できると感じる大人の特徴と、尊敬できないと感じる大人(≒「なめられる」大人)の特徴、そして、それぞれの具体的な行動例を挙げます。

そして、どのような大人が子どもにとって理想的な存在なのか、子どもの発達にどのように影響を与えるかについても紹介していきます。

子どもは、日々の大人たちとの交流の中で、尊敬すべき大人とそうでない大人を無意識に見分ける”評価活動”をしているわけですが、子どもが尊敬できる大人とそうでない大人には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

以下にそれぞれの特徴と具体的な行動例を挙げて説明します。


まずは、尊敬できる大人の特徴を挙げてみましょう。

誠実である

子どもとの小さな約束を守る大人や、間違いを認めて謝ることができる大人です。

「そっか、大人も人間だものね。間違えるよね」と子どもは寛容になってくれるので、安心して間違いを認めましょう。

公平公正である

みんなで決めたルールを守ったり、全員に平等にチャンスを与え、接してくれる大人です。

「えこひいき」という言葉がありますが、大人が意識していなくても、感覚の鋭い子どもたちは、”公平でない”大人の態度に傷つき、心を閉ざしている場合があります。

寛大である

失敗に寛容で、子どもたちのペースを尊重してくれる大人です。

子どもたちは、大人たちからそういう「余裕」を感じることで、安心し、自分のことを信じてもらえていると思います。

例えば、困った時にすぐに答えを教えるのではなく、考える時間を与えたり、見守って導いてくれるような行動です。

大人が子どものペースに合わせて学びや活動を進めることは、子どもが自分自身の興味や強みを理解するのにも役立ちます。


子どもたちが尊敬できないと感じる、もっというと「なめられてしまう」大人の特徴は、以下のような場合が多いです。

大人のわたしたちでも、(職場の上司や周りの大人たちに対して)同じようなことを感じる場合がきっとあると思います。

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一貫性がない

子どもたちは一貫性を重視します。約束を破ったり、ルールを勝手に変えたりする大人にはとてつもない違和感を抱きます。

言うこととやることが違う、一貫性がない行動は、子どもたちから見ると不安定で信頼できないと感じるからです。

威厳がない

子どもたちは、「これはOKかな?」「これは怒られるかな?」というように、大人の境界をテストします。ルールを曖昧にしたり、子どもの要求にいつも応じてしまう大人は、信頼と尊敬を確立することができません。

このように、威厳を持って行動しない(=自信がなかったり、決断力がない)、また、子どもたちを楽しませようと必死になりすぎる大人のことを、子どもたちは軽んじてしまう傾向があります。

ここで注意したいのは、「威厳」とは、過度に厳格であることや支配的な権威など、子どもに恐怖や不安を与えるものではないということです。

威厳がある大人は、子どもへの愛情と尊敬があるため、言動には自然と重みが生まれ、子どもが耳を傾け、指示に従う傾向が強まります。

大人が理解と尊重を持って子どもに接することで、子どもは安心感を持ちながら成長することができます。

感情的で不安定である

怒りやすく、感情的な対応をする大人です。

子どもたちにとって予測不可能で扱いにくいと感じられるため、極度に感情的な反応(特に負の感情表現)は子どもたちの信頼を損ないます。

不安定や非一貫性を示す大人は、子どもの安全感や自尊心に悪影響を及ぼすことがわかっています。

子どもはこのような大人が身近にいる環境で育つと、他者との関係構築において防御的または攻撃的な態度を取るようになる可能性があります。(心理学者エリザベス・トンプソンによる研究)

子どもは単に大人の指示に従うだけでなく、その行動や倫理観を基にして、尊敬するに値するかどうかを判断していることが分かります。

冒頭で、『子どもたちが「大人を評価する」という行動は、尊敬する存在を探しあて、その存在を自分の人生の道標にするという生存戦略の現れ』と申し上げましたが、この背景を説明します。

まず、子どもたちは、大人の行動を3歳頃から意識的に観察し始めます。

そして、幼児期の子どもは、主に感情的な反応や肉体的な近さを基に大人を評価し、学童期に入るとより複雑な認知プロセスを用いて、大人の言動の背後にある意図や公正性を理解し始めます

意図がしっかりしていて公正性のある言動をする大人は、子どもたちの成長に大変良い影響を与えることがわかっていて、大人を評価するという行動が子どもたちが自分自身の成長のために必要なプロセスと言えます。

尊敬できる大人の存在は、具体的に子どもたちにどのような良い影響を及ぼすのか、以下で解説します。

道徳的な模範になる

子どもたちはその大人の行動、態度、対応の仕方を観察し、真似をします。真似をしながら、子どもたちは社会的スキルや対人関係の築き方、問題解決の技術などを学びます。

特に、正直さ、公平性、勤勉さなどの倫理的価値を実践する大人は、子どもたちにとってとても良い影響を与えることができます。

例えば、他人を尊重すること、正直であること、責任を持って行動することなど、社会的に望ましい行動を身をもって教える存在が身近にいることで、子どもたちはこのような価値観を自分のものとして内面化し、行動を調整するようにもなります。

安心感と信頼感を与える

子どもたちは、信頼でき、尊敬できる大人が身近にいると感じることで、安心し、自己効力感も高まり、新しいことに挑戦する勇気が湧いたり、困難な状況に立ち向かう気持ちが芽生えます。

この安心感は、子どもの精神的な健康にも良い影響を与え、ストレスや不安を和らげてくれます。

学ぶ意欲を向上させる

尊敬している大人から学ぶということは、子どもたちの学習意欲をより一層刺激します。

特に、子どもの関心の高い分野において、知識や経験を持つ大人は尊敬の対象になりやすく、子どもの興味や情熱をさらに高めることにつながります。

また、子どもが尊敬している大人が、子どもたちに対して期待を示し接することで、子どもたちは自己評価が高まり、学業成績やその他の活動に対しても積極的に取り組むようになる傾向もあります。

自己実現のモチベーションが上がる

子どもたちは、尊敬している大人を通して、自分自身が成し遂げることができる可能性を見出します。

尊敬している大人が示す、自分の将来の姿を想像して、子どもたちは「自分もこんなふうになれる/できる」という自信を持つきっかけになります。

大人として、子どもから尊敬されるために、一貫性を持って行動し、誠実な関わりを心がけたいわけですが、ファーストステップとして、どのような行動をとるべきでしょうか。

取り組み易い行動として、具体的には、以下が考えられます:

日常の小さな約束を守る

約束は信頼の証です。子どもたちとの取り決めや約束を守ることで、子どもたちが受け取る言葉に大きな価値を持たせることができます。例えば、家族と過ごす時間を大切にし、約束した時間に帰宅したり、たとえば「6時から宿題を見る」といった時間の約束を忠実に守ることで、責任感を示します。食事時にスマホを見ないなど、一緒に決めたマナーを守ることも、子どもに良い手本を示すことができます。

子どもの意見を尊重する

子どもたちが自分の考えや感情を表現したとき、それを真剣に受け止めることが重要です。子どもたちは、尊重され、理解されていると感じると、自信を持ちます。例えば、食事時やドライブ中に、「何か話したいことはある?」と尋ねることで、子どもが意見を述べやすい雰囲気を作ったり、子どもが話した内容に対して、「それは面白いね、どうしてそう思ったの?」などと質問して、話を広げることで関心を示しましょう。また、小さなことでも「この中から何がしたい?」といった選択を任せることで、自己決定能力を育てます。大人が子どもの声に耳を傾け、子どもを尊重する姿勢を示すことで、耳を傾けてくれる大人を尊敬し、指導を受け入れやすくなります。

適切な指導をする

大人として子どもたちが安全で倫理的な行動ができるようガイダンスすることが求められます。たとえば、公共の場での振る舞いや他人に対する礼儀を実際に示しながら教えることで、子どもに理解を促します。新しい活動や課題にチャレンジさせる時には、失敗しても「大丈夫、次はうまくいくよ」と励ますことで、挑戦する勇気を育てましょう。子どもの行動に対しては正しいところは認め、改善が必要な点は優しく具体的に指摘することで、子どもの言動を尊重することとの間でバランスを取ることができます。

子どもの視点から見た大人の行動評価は、子どもたちの社会的な発達のためにとても重要だとご理解いただけたかと思います。

子どもたちが健全な成長を遂げられるように、大人であるわたしたちが、人間らしさを発揮しながらも、子どものお手本になる存在でいたいですね。