子どもが本を読まない理由とは?国語力と関係ある?親ができる効果的なサポートとは

0歳からの「読み聞かせ」が大切!読書で「語彙力」を伸ばそう!中学受験の国語は「読書量」で決まる!

…そんなことは分かっている。しかし、我が子はどうやっても、本を読まない!

そんなご家庭、少なくないのではないでしょうか?

「子どもが本を読まないこと」に、親としてどう向き合うのか、小児科医が解説しました。

白井沙良子

あなたのお子さん、実は、あなたの見ていないところで、本を読んでいるかもしれません。

たとえば、幼稚園や保育園では、先生による読み聞かせタイムがあるところが多いです。

お友だち同士で読み合ってましたよ!という先生からの報告をもらう日もあります。

さらに私の次男の保育園では、月に数回、地元のシニアボランティアの方々が来て、絵本や紙芝居を読んでくださいます(「おはなし会」)。

ひょっこり知らない人がきて、なんだか面白い本や紙芝居を読んでくれて、ひょっこり帰っていく。

こんな時間がとてもスペシャルなようで、次男はいつも「明日、おはなし会なんだ!」と楽しみにしています。

そんな次男も、自宅ではほとんど本を読みません(たまに本棚から取り出して、おもむろに広げていますが、さーっと見て、また棚に戻します)。

小学校でも、朝や帰宅前などに、読書タイムを設けているところが少なくありません。

読書

とにかく体を動かして遊ぶのが大好き、自宅での読書タイムはほぼゼロな長男に「休憩時間はいつも外で遊んでるの?」と聞くと

「ちがうよ。教室の中でしか遊んじゃいけない時間があって、そういうときは折り紙とかするの。あ、あとこの間、先生が本読んでくれたよ。あと◯◯くんと図書館いって、ゾロリ読んだ。」

とのこと。

また、そもそも小学校に入ると、国語の授業で、教科書の物語文や説明文などを、何度も読みますよね(音読の宿題もあります)。

親からすると、自宅で自主的に本を広げて、黙々と集中して読む…という姿を期待してしまいがちですが、親の見ていないところで、実は毎日本に触れている可能性が高いのです。

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また各家庭の生活スタイルにもよりますが、自宅で本を読むという時間が、そもそも取りづらい場合も少なくないと思います(我が家、まさにそうです)。

共働きで、保育園から連れて帰ってから、寝かしつけるまでで精一杯。

小学校のあとは習い事で、帰ってきたらもう19時過ぎて、21時までに寝ようと思ったら本を読んでいる時間なんか無い!など。

そもそも親も、本を読む時間って、子育てをしているとなかなか取りづらいですよね。

親の目の前で本を読まないことが、そんなに悪いことなのか?という親のマインドセットから見直してみると、ちょっと気持ちがラクになるかもしれません。

いや、それでもやっぱり、より多くの本に触れてほしい!そう思う方もいると思います。

その場合も「なぜ私は、子どもにこんなに本を読ませたいのか」に立ち戻ってみましょう。

例えば、保育園・幼稚園に通っているお子さんなら「早く文字に触れて、文字を読めるようになってほしい」という目的があるかもしれません。

しかし絵本を読んだからといって、文字が早く読めるようになるという、絶対的・科学的なエビデンスはありません

むしろ絵だけを見て、自分でストーリーを想像できる空想力のほうが、幼少期に大切ではないかという考えもあります。

「語彙力アップのため」という目的もあるでしょう。

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ただし絵本に出てくる語彙は、いわゆる成人の日常生活における語彙の数には程遠いですよね。

また、たしかに児童書のレベルになると語彙もぐんと増えますが、その語彙を子どもが正しく解釈しているかどうかは定かではありません。

語彙は読書というよりは、むしろ、保護者や先生など、身の回りの大人が実際に使っている場面を聞きながら学んでいくほうが良いという考えもあります。

小学生以後になると「中学受験の長文読解にもめげない読書力を…!」という目的の方もいるでしょう。

ただし絵本や本が大好きで、ずっと読んでいます、というような子でも、必ずしも国語の成績が良くないこと、中学受験で有利ではないことは、数々の中学受験評論家が指摘しています。

上記のとおり、一人で読んでいるだけでは正しく語彙力が伸びているとは限らないこと、また受験での点数稼ぎには特有のテクニックが必要であり、むしろ読書や好きじゃないし、本の世界観に没入することができない、という子のほうが、テクニックを使って作業的に問題を解けるので、中学受験では逆に有利だとする専門家もいます。

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これ以外にも、各家庭で様々な「本を読ませたい目的」があるかもしれませんが、「本当にその目的は、本を読むことだけでしか達成できないのか?」を考えるのが、親の仕事だと私は思います。

なぜなら、子どもによって、得意とする情報獲得のルートが異なるからです(視覚優位、聴覚優位など)。

ちなみに我が子2人とも、5歳になるまでひらがなは1文字も読めず、圧倒的に聴覚優位であることが分かっていたので、「絵本を通じてひらがなを覚えさせる」という行為は私はしませんでした。

そのかわり「良質な動画」を通じて、彼らは国語力を伸ばしています。

実際に我が子2人とも、BBC EARTHやナショナル・ジオグラフィックの動画にどっぷりハマったおかげで「獰猛」「自然界」「歴史的な発見」「弱肉強食」などの、普段は使わないだろう語彙や、また説明文の言い回し・表現・論理展開などを獲得しています。

なぜ本を読ませたいのか、に立ち戻ると、目の前の我が子にとるべきアクションが見えてくるかもしれません。

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いやいや、やっぱり本、本なのよ!そんな方もいらっしゃるでしょう。

たしかにWHO(世界保健機関)やAAP(アメリカ小児科学会)などが推奨する動画視聴時間は、小学生であっても1〜2時間程度までです。

視力への影響も気になるところですよね。

ただし視聴時間や画面との距離に気をつければ、デジタル絵本やデジタル書籍も、十分効果的であることが示されています(デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来 (ちくま新書, バトラー 後藤 裕子)。

特にタッチ機能で音が出たり、次のページに勧めたりすると、楽しいですよね。

長男の小学校で配られているタブレットにも、絵本アプリが入っており、休み時間にみんなでワイワイ見ながら読んでいるようです。

「ここが面白かった!」「◯◯くんが面白いと言っています!」など、レコメンドしあえる機能もついており、アナログの絵本には無い機能を通じて、子どもたちが絵本に触れていることに驚きました。

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またミニサイズの図鑑もおすすめです。

動物園、水族館、植物園に行くときも持っていけるポケットサイズの図鑑も、たくさんの種類がありますよね。

大判の図鑑よりお値段もお手頃ですし、QRコードから動画に飛べるページもついています。

いかがでしょうか。

静かに一人で本を読んでいる子をみると「ああ、うちの子もああやって読書をしてくれたらいいのに」と思うかもしれません。

でも「本当に本を読ませないといけないのか」「我が子に本当に期待することは何なのか」に立ち戻ると、本に対するスタンス、また子育ての自分軸が見えてくるでしょう。

白井沙良子