子どもたちが世界で輝くために〜大事なのは「失敗してもOK!」精神〜

子どもたちは日常で、どんな「失敗」をしていますか?

また、その時に、親御さんとしてはどんなリアクションをしているでしょうか。

日本の文化の「失敗」に対する価値観は、子どもたちの生活と社会全体に深い影響を与えています。

グローバルに見ても、日本は失敗に対して厳しいとされており、子どもたちが過度にリスクを避けて、新しいことに挑戦していこうとする姿勢や創造性を抑制している面があるのも事実です。

失敗を肯定的に捉えることが、子どもたちの成長においてどれほど重要な役割を果たしているでしょうか。

本記事では、日本とアメリカの失敗に対する異なる価値観を探り、それがどのように子どもたちに影響を与えているか、失敗の捉え方について考え直してみます。

日本の教育システムは、高い学力を持つ子どもを多数輩出しているとはいえ、いくつか重要な問題が指摘されています。

その中でも、失敗に対する厳しさに注目してみようと思います。

日本の失敗に対する価値観は、間違いを避け、決まった正解に辿り着くことを重視する文化に根ざしています。

個人や集団が失敗を経験した場合には、「失敗は悪」という勢いで社会的な評価が下がる場合が多いため失敗を避ける文化が根強くあります。

極端な話かもしれないですが、日本では昔、「切腹」していたことも、失敗に対する文化を象徴している気がしますね。

日本のような集団主義の文化では、失敗が「汚名」に変わり、その汚名を誰が濯ぐかが重視されやすいのでしょう。

さらに、日本は不確実性を避ける文化のため、失敗がネガティブに見られる傾向が強いのです。

社会に出ると、例えば失敗した起業家に対しては金融機関がお金を貸さない、取引先が限定されるなど、社会的コストがかなり大きいです。

この「汚名」は、コミュニティの密接な結びつきがあるため、より長い期間にわたって社会に刻まれる場合もあります。

こうした背景から、日本社会は新しいことに挑戦する際のリスクが避けられ、組織が硬直化しやすいという問題もあります。

これが、国際的な競争力やイノベーション、起業家精神にも影響を与えています。

教育の現場においても、この価値観は「間違いを犯さないこと」が奨励される形で現れ、失敗をした子どもは恥ずかしいと感じ、周りは批判的な目を向けるという場合もあるかと思います。

この結果、子どもたちは失敗することを恐れて、何か発言するときにも戸惑ってしまい、創造的で新しい意見や考え方がおさえられてしまいます。

本当に大切なのは、失敗から何を学ぶかです。「切腹」しているようでは、失敗から何も学べませんよね。

このことは、近年、教育現場でもよく言われていることだと思いますが、失敗したことに注目するという文化はなかなか変わっていないように感じます。

以下では、失敗に対するネガティブな価値観が、具体的にどのような負の影響が現れているか確認していきます。

創造性とイノベーションが抑制される

日本の教育システムは、正解を出すことや試験で高い点数を取ることに重点を置いています。

このような環境では、子どもたちは既知の情報を再生産することに慣れ、新しいアイデアや解決策を試みることに消極的になりがちです。

失敗を恐れる文化は、子どもたちが創造性やイノベーションを追求する機会を制限し、学ぶ過程で重要な、人間らしい「トライ&エラー」の機会を奪います。

リスクを負うことから逃げるようになる

失敗に対する厳しい見方は、リスクを取ることの価値を下げ、安全で確実な道を選ぶ傾向を強めます。

しかし、リスクを取る能力は、学業だけでなく、将来的に社会で成功するためにも重要なスキルです。

このような環境では、子どもたちは新しいことに挑戦する勇気を持つことが難しくなり、成長と発展の機会を自ら制限してしまいます。

学びへの情熱を抑圧してしまう

失敗が社会的な恥と見なされる文化では、子どもたちは間違いを恐れ、質問をすることやグループ内で異なる意見や立場を表現することを避けます。こうした恐れが、学びのプロセスにおいて重要なコミュニケーションと協力を妨げ、結果的に子どもたちの教室内での活発な議論や双方向の学びの機会を損なってしまいます。

ポテンシャルを抑えてしまう

学習における失敗の否定的な捉え方は、子どもたちが自分自身の能力や可能性を完全には探求できない環境を作り出します。

失敗を通じて学び、成長することの価値を認識しない文化では、子どもたちは自分の限界を自己設定してしまいがちです。

アメリカの学校では、失敗を経験することの価値を認識しており、それが子どもたちの自信の構築、創造性の促進、そしてリーダーシップの発展に寄与しています。

「失敗は成功の母」という言葉があります。アメリカではこの価値観が浸透しています。

ご理解いただいている方がほとんどだと思いますが、失敗というものを、学びや成長の絶好の機会と捉えるのです。

この文化は、アメリカの教育現場においても、実際に取り組んでみることやチャレンジを励ます機会が多い状況に表れています。

失敗を通じて何を学ぶことができるかが重視され、失敗を経験することは子どもの心の成長に不可欠なのです。

このような環境なので、子どもたちはリスクを取る勇気や失敗から立ち直る強さを育むことができるのです。

学校でも子どもたちが自由に意見を述べたり、新しいことに挑戦することが奨励されています。

教育者は、子どもたちが間違えた場合にその過程を重視し、なぜその結論に至ったのかを探ることで、批判的思考能力や問題解決能力を育んでいます。

日本では失敗を避けるために、大人も子どもも新しい方法や意見、アイデアを出すことも、試すことにも消極的になる一方で、アメリカでは失敗を恐れずに新しいアプローチを試すハードルが低いのです。

なお、グローバルで見ると、例えばイスラム文化では、個人の関係と調和を維持することが重要なので、失敗に対して寛容ではないといわれていたり、UAEのような国々では、起業家精神を尊重する社会が増えていることが、失敗に対する態度が和らいでいるという大きな流れがあります。

このように、失敗に対する価値観はそれぞれです。

以上のような日本とアメリカとの失敗に対する価値観の違いも踏まえて、日本の教育においては、どのようなことに取り組めばいいのでしょうか。

まずは、「失敗」自体のイメージを変えることです。

意識改革に近いため、長い時間が必要でしょう。多くの人々が、失敗をネガティブな出来事、つまり避けなければならない何かとして捉えがちです。

しかし、この視点を変えることで、失敗は実は非常に価値のある経験に変わります。失敗を否定的な結果と捉えるのではなく、成長のプロセスとして捉える必要があります。

なぜそうなったのか、次にどうすればいいのかなどを自然と考える意識を育みましょう。

失敗は、学び、次の学びに繋げるというステップを経験できる大切な出来事です。「こういうことってあるわよね、私も・・・」というように、大人が見本になって人の失敗を受け入れる姿を見せてください。

次に、リスクを取ることの必要性を教えましょう。

新しいアイデアや方法に挑戦することと、挑戦したことで何が学べたかに目を向けるようにします。

子どもたちはリスクを取ることの重要性をよく理解し、リスクへの抵抗感が減り、さらに失敗から回復する力も学びます。

このプロセスを通じて、失敗は恐れるべきものではなく、価値ある学びの瞬間となります。

保護者や教育者が、子どもの失敗に対してポジティブなフィードバックを提供することで、失敗を恐れる心理的障壁を低減できますし、そのプロセスを通じて何を得られたかを強調することが、子どもたちの自信と挑戦する気持ちを高めます。

社会全体で失敗に対する認識を変えることも、教育システムにおける改革に不可欠です。

メディアや公共の場で成功した人々が失敗の経験とそれから得た学びについて話す機会を増やし、失敗が成長と成功へのステップであることを強調することもいいでしょう。

失敗に対する価値観を見直し、それを学習と成長の機会として捉える文化を育てることが、世の中で活躍できる心を育む大きなヒントとなります。

ぜひ、子どもたちがリスクを恐れずに挑戦し、創造性や革新性を発揮できるようになるために「失敗」に対する意識のところから改革してみてください。

子どもたちが、語れることが多い深みのある大人になって、自信を持って世界に羽ばたいていけるようになりますように。

参考文献

Cultural influences on stigma of failure and entrepreneurial activity