子どもたちの教育において、「インターディシプリナリー学習」(Interdisciplinary Learning)というものがあるのはご存知でしょうか。
「インターディシプリナリー学習」とは、特定の知識の枠を超えた豊かな学びの機会として近年注目されているものです。
簡単に言うと、子どもたちが一つのテーマや問題をいろいろな立場から理解し、解決策を考え出す方法です。
異なる分野の知識と方法を組み合わせることで、より豊かで実践的な学習体験を生み出すことを目指しています。
例えば、歴史と科学を統合して気候変動の歴史的背景を探ったり、数学と美術を結びつけて幾何学的形状の美しさを理解するなど、学習はより関連性があり、応用が可能になります。
本記事では、この「インターディシプリナリー学習」の効果や重要性、取り入れるための具体的な方法をお伝えしたいと思います。
目次
インターディシプリナリー学習の具体例
「インターディシプリナリー」という言葉が、少し長くて難しいので、イメージしやすいように、以下に具体的な活動を例を挙げてみます。
例えば「環境社会科学プロジェクト」です。
子どもたちが地元の川の水質調査を通して、環境科学の基礎を学びます。
採取した水のサンプルに含まれる化学物質の種類と量を分析することで、数学の知識を実践的に適用します。このデータを基に、川の汚染が生物多様性に与える影響や地域コミュニティの健康、経済活動への影響を考察します。
この過程では、科学的手法と社会学的視点を組み合わせることで、子どもたちは単なる問題提起から一歩進み、具体的な改善策や保全活動の提案を行います。
例えば、地域の事業者や住民と連携し、川沿いの緑地帯を増やすことで自然浄化機能を高める提案を行うことができます。このようにして、子どもたちは複雑な環境問題に多角的にアプローチし、持続可能な解決策を模索する柔軟な思考を養うことができます。
また、「健康科学プロジェクト」では、子どもたちは医学、心理学、社会学、経済学の異なる分野を横断して、公衆衛生における複雑な課題に取り組みます。
たとえば、地域の健康問題に焦点を当て、その原因となっている社会経済的要因を分析します。
さらに、心理的ストレスが健康に与える影響や、健康不平等を生む経済的障壁を考慮に入れた上で、包括的な健康促進プログラムを設計します。
このプロジェクトでは、具体的な問題解決だけでなく、予防医学の重要性や健康政策の策定における経済的コストの考慮など、より広い視野でのアプローチが促されます。
例えば、子どもたちは地域における運動不足を解消するための公共スペースの活用や、心理的サポートシステムの構築を提案することができます。
このように、複数の分野を横断して、世の中で応用できる一連のスキルを獲得していくことができるのです。
インターディシプリナリー学習の効果
現代社会が直面する多くの課題は、単一の分野の枠組みを超えた複雑なものがほとんどです。
異なる分野の知識とやり方を組み合わせることで、複雑な問題に立ち向かえる子どもたちの柔軟な思考能力や創造性が育まれます。
さらに、分野を超えて知識を活用する必要があるため、今までのアプローチでは見落とされがちな斬新で革新的なアイデアや解決策を見出すことも期待できます。
非認知能力の発達への効果
インターディシプリナリー学習は、ただ知識を学ぶだけではなく、自己管理、人とのやり取り、新しいアイデアを考え出す力、物事を深く考える力など、成績表には現れないような能力の成長にも大きく貢献します。
このような能力は非認知能力と呼ばれ、学問を横断する学びを通じて、子どもたちは問題に対して創造的に取り組み、さまざまな角度から情報をまとめる力を身につけます。
さらに、プロジェクトでのチーム作業を通して、協調性やコミュニケーションの技術も身につけることができるのです。
ギフテッド・チルドレンへの効果
ギフテッド・チルドレンはしばしば、従来の教育プログラムでは刺激が足りず、退屈を感じることがあります。
インターディシプリナリー学習は、上記でご紹介したように、その特徴から彼らの高い好奇心と学習能力を満たすのに理想的な方法です。
異なる分野を統合することで、多方面にわたる興味を引きつけ、もっと知りたいという探究心を刺激し、学びを広げ、深める絶好の機会です。
世界の状況
インターディシプリナリー学習は、世界中の学校や大学で注目を集めており、さまざまな方法で導入されています。
以下、世界各地で実施されている興味深いプログラムの例をいくつか紹介します。
1. STEAM教育
STEAMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を取ったもので、これらの分野を統合して学習するアプローチです。
アメリカ合衆国をはじめとする多くの国で取り入れられており、子どもたちが複数の視点から問題を考察し、創造的な解決策を見つけ出す能力を養います。
大学のご紹介になりますが、例えば、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD:https://www.risd.edu/)です。
1877年に創立された、アメリカ最高峰の美術大学の一つに数えられる大学で「美大のハーバード」と言われることもあります。
ここでは、STEAM教育を推進しており、芸術とデザインをSTEM教育に統合して、新しい学びを開拓しています。
2. 国際バカロレア(IB)プログラム
国際バカロレア(IB)プログラムは、国際的な教育フレームワークを提供し、子どもたちに広い視野と批判的思考能力を育むことを目的としています。
IBプログラムでは、異なる科目間のつながりを強調し、子どもたちが学際的な研究プロジェクトに取り組むことを奨励しています。このプログラムは、世界中の約150カ国で採用されています。
3. プロジェクトベースドラーニング(PBL)
プロジェクトベースドラーニング(PBL)は、実世界の問題を子どもたちが解決するためのプロジェクトに取り組む教育アプローチのことです。
PBLでは、子どもたちは自分たちのプロジェクトを通じて異なる科目の知識を統合し、協力して作業を進めます。
この方法は、アメリカのハイテックハイ(High Tech High:アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴに設立されたチャータースクールと呼ばれる公立高校)やオーストラリアのビッグ・ピクチャー・エデュケーション・オーストラリアなど、多くの国で実践されています。
ケンブリッジ国際教育プログラムは、世界中の学校で提供されており、子どもたちに国際的な視野と深い学問的理解を提供します。
このプログラムでは、異なる学問分野を横断するテーマを設定し、子どもたちが複数の科目にわたる知識とスキルを統合して学ぶことが奨励されています。
まとめ
以上でご紹介したように、インターディシプリナリー学習は、子どもたちにとって、知識の枠を超えた豊かな学びの機会です。
子どもが興味を持つ分野を見つけ、それらがどのように結びつくかを探る機会を持つことがいかに重要かはご理解いただけるかと思います。
インターディシプリナリーの方法は、多様な知識とスキルを身につけ、複雑な世界を理解し、自分の潜在能力を活かして貢献できる人材になる手助けになるでしょう。
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