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【解説版】非認知能力〜アメリカと日本では価値が違う?「協調性」〜

学力やIQなどは「認知能力」と呼ばれていますが、この「認知能力」とは異なる、「非認知能力」というものが、子どもたちが将来幸せで充実した人生を送る上で非常に重要な役割を果たします。

最近では耳にする方も増えたのではないでしょうか。

今回は、この非認知能力の要素の一つである「協調性」について解説してきます。

「非認知能力」とは、学力やIQなどに代表される「認知能力」以外の能力のことで、人間の内面的なスキルです。

非認知能力は将来の幸せの指標とも言われており、子どもが豊かな人生を歩んでいく上で大切な「力」です。

非認知能力には様々な要素があり、それぞれの要素は周りの人との関わり合いの中で育み、時間と共に発達していくものです。

非認知能力は、能力という位置づけで捉えられたり、性格の一つの側面としても捉えられることもあります。

「協調性」とは、社会的指数で、人の気持ちや状況を想像する力、調和力を言います。周りの人との和やかな関係を築いて、維持することができる能力です。

協調性が高い人は、周りの人の気持ちを理解し、配慮する傾向があります。

調和や協働が大切になる学びの場においては、協調性が高い子どもは、物事を円滑に進めることの優先順位が高いです。いわゆる「優等生」に多く、人間関係のバランス感覚がよく先生などの指導者にも頼られる存在でしょう。

協調性

日本では、協調性の高さと社会的な成功が密接に関係しているのですが、例えばアメリカだと、協調性と社会的な成功が正の相関とはなっていないそうです。

協調性、集団の調和、団結を重んじる日本の集団主義文化と、個人の成果、競争、個人的成功が尊敬されるアメリカの個人主義文化との対比があるように、文化的・社会的背景によっても協調性が高いことの社会的な意味や効果は異なります

協調性を重視しすぎると、空気を読みすぎて必要な主張を控え、それがユニークな考え方やアイデアを抑制することにつながります。

また、多数の意見や行動方針を尊重しすぎることで、せっかく気づいている問題を提起する機会を逃したりする場合もあります。

協調的になりすぎないか調整ができるとベストですね。

以下のようなものが強調性の高い人の特徴と言えます:

・友達の感情や立場に対する理解と共感が高い

・周りの人に対して温かく、親しみやすい態度を取る

・共同での作業や活動の時には自己主張が少なく友達や仲間に耳を傾けることが多い

・周りの人を信じやすい

協調性は、人間関係の質や社会的な結びつきの強さに大きく影響を与えるため、将来の子どもたちの幸福感や成功に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

協調性を持ちつつ、自分の意見や考えを持ち、効果的に伝えていくことが、対人関係にいい影響を及ぼします。

具体的に、子どもたちが協調性をどう高めていけばいいのか以下にご紹介します。


誰かが話しているときは、目を見てじっくりと耳を傾ける大切さを伝えましょう

これは、「アクティブ・リスニング」と呼ばれる方法です。

傾聴

誰かの言葉に注意を向ける姿勢をとることで、相手は自分が大切にされていると感じ、もっと心を開いてくれます

質問をしたり、話を簡単にまとめてみたりすることで、相手の気持ちをより深く理解し、大きな信頼関係を築くことができます。

このやり取りは、お互いの協調性も自然と高まります。

子どもに対して実践できる具体的な取り組みとしては以下のような方法が挙げられます:

子どもの話を注意深く聞き、理解しようとする姿勢(アクティブリスニング)を見せることで、子どもに耳を傾けることの重要性を教えます。

例えば、話が終わった後に、子どもが言ったことを要約してみせることで、聞き手が理解していることを示し、これを真似するかたちで子どもに学ばせます。

子どもが興味を持っていることについて、ゲームのような会話を通じて、交代で話を聞く練習をします。

例えば、「話し手」と「聞き手」の役割を交代で行い、聞き手は話し手の言ったことを要約して返すゲームなどがあります。

「このとき、どんな気持ちだったでしょう?」など、話の内容だけではなく感情や内面についても質問を交えると、理解力や想像力が深まります。


誰かがしたことに対して、感謝の気持ちを表現するように促しましょう

大変シンプルな行動なのですが、周りに対する思いやりと尊重を示すことにつながり、協力的で温かい関係を築くことにつながります。

感謝を表現すること自体が、子どもたちの幸福感を高め、協調性や友情にも肯定的な影響を与えます。

食事の時や就寝前に、その日あったありがたいことや感謝するべきことを一緒に話し合う時間を設けます。

家族みんなで感謝の気持ちを共有することで、感謝の心を自然と育んでいきます。

また、「ありがとう」の言葉を使うこと、手紙や絵を使って感謝を表現する方法を教え、日常生活で実践するように促します。

子どもに毎日、感謝したことを3つ書き留める「感謝日記」をつけさせることで日常の中での小さな良いことにも目を向ける習慣が身につきます。

なお、Emmons & McCullough(2003)は、感謝日記をつける実験を通じて、感謝の心を定期的に表現することが幸福感を高め、ポジティブな感情を増やし、人間関係を改善することを発見しました。※1

子どもたちにも同様の効果が期待できます。


どんなチームや社会の中でも、意見や考え方のぶつかり合いは避けられないことです。

大切なのは、そんなときに、落ち着いて建設的な方法で問題に取り組むことです。

自分の気持ちや必要としていることを「私はこう感じる、なぜなら…」と伝えることを教え、相手の立場も尊重できるようになりましょう。

相手と一緒に解決策を見つける姿勢を示すことの大切さを伝えましょう

衝突が起きた時に、双方の感情を認め、共に解決策を見つけるために重要です。

協調性

例えば、「どうしてそのように感じたのか」「どうすれば両者が納得する解決策を見つけられるか」といった問いかけを通じて、子どもに考える機会を与えます。

例えば、意見の相違が生じた際にどのように対応するかを実践します。そして、落ち着いて自分の感情を表現する方法を教えます。

「私はこう感じる、なぜなら…」といったメッセージを使うトレーニングを行い、相手の意見も聞くように促します。これにより、実際の状況で冷静に対処するスキルを身につけることができます。

また、子どもが問題に直面したとき、すぐに答えを提供するのではなく、一緒に解決策を考えるプロセスを大切にすることで子どもの主体性を育み、親主導ではない創造的なやり方を生み出すこともあります。

2012年にハワード・ガードナーが提唱した「多重知能理論」(「MI理論」)は、人間の知能が一つではなく、様々な形で現れると示したものです。

この理論に基づく研究では、子どもたちが様々な活動に参加することで、異なる種類の知能が刺激され、全体的な学習能力と創造性が高まることが示されています。

多様な経験が子どもたちの知的好奇心を養い、新しいスキルの習得に対する意欲を高めることが確認されており、協調性のみならず、他の非認知能力の要素も高められるのです。

才能発掘診断」では、非認知能力を測定するメジャーな指標「ビッグ・ファイブ」に、子どもたちの学びに向かう姿勢に影響する「自己肯定感」を加え、協調性はもちろん、他の非認知能力の要素の状態も推測することができます。

  

  

他にも、上記のMI理論に基づいて、もともと持っている知能のバランスを踏まえて個性や才能を見つけ、効果的な学び方もお伝えしています。

他者と関わりながら成長し、社会の中で生きていくための人間力を育むヒントしてみてください。

現時点の協調性が高くても低くても、それぞれのいいところがあります。

ただ、非認知能力の各要素を一定水準高めていくことで、異なる背景をもつ人々との交流が加速され経験に深みが出たり、価値観が広がり、社会に出た時にいい影響をもたらす可能性が高いと言われています。

子ども自身のペースや性格を尊重してバランスをとりながら身につけていくことがよいでしょう。

協調性が高い子どもたちへ


あなたの協調性と、周りの人とのバランスを大切にする姿勢は、チームやコミュニティにとってとても価値があります。自然と周りの人々と調和を保ちながら、目標に向かって努力することができます。協力して物事を進めることが得意なので、多くの状況でも人々を一つにまとめ、同じ方向に進むためのエネルギーを与えることができるでしょう。

時に、過剰に利他的になることがあると感じるかもしれませんが、それはあなたが周りの人のこと自分のことと同じくらい重視しているからこそです。ただ、自分自身のニーズや幸福も大切にすることを忘れないでください。自分を大切にすることも、他人を思いやることも、バランス良く行うことが重要です。

あなたの協調性、バランス感覚、思いやりは、どんな集団においても和をもたらし周りを支える強さになります。

協調性が高くない子どもたちへ


あなたが内面の声に耳を傾け、自分自身の趣味や興味に深く没頭する姿勢は、新しい自分を見つけたり、自分を理解するために大切なことです。周囲の人への関心が少ないと感じることは、あなたが自分自身の目標や夢に集中していることを意味しているのです。自己中心的と受け取られることがあっても、それはあなたが自分の目的を追求し、成長しようとしている証拠です。重要なのは、自分がしたいことと周りの人が求めていることのバランスを見つけることです。

他人の気持ちを理解することに難しさを感じる場合でも、それはあなたが異なる視点を持っていることを示しているのです。異なる新鮮な視点は、新しいアイデアや解決方法を生み出す源泉です。

あなたのような人が、世界に独自の色を加えます。自分の内面と真摯に向き合い、自分らしさを大切にすることで、あなたは自分だけの道を切り拓くことができます。他人との関わり方においても、自分なりの方法で貢献し、影響を与えることができるでしょう。自分自身を大切にしながら、他人への理解と共感の橋をかける努力をすることで、あなたはより豊かな人間関係を築くことができるでしょう。

協調性が高い方は、友だちや家族、仕事仲間と信頼関係を築きやすく、お互いをよく理解し合えます。

グループや地域社会でみんながうまくやっていけるように助けたり、もめごとがあったときに上手に解決する手助けをすることもあります。

もし協調性が高すぎると、自分のことをはっきりと言えなかったり、他の人の意見や必要を自分のことよりも大事しすぎてしまうことがあるかもしれません。

自分の目標や望みを後回しにしてしまうことにならないように気をつけましょう。

協調性は、人とのつながりを深めること、支え合う友達や社会の輪を大切にするためにとても良いことです。

自分の意見も大事にし、状況に応じてしっかりと自分の考えを伝えバランスをとりましょう。

自分のニーズや目標をしっかり持ち、適切な時に自分の声を出すことが、良い人間関係や自分自身の幸せにつながります。

参考文献

※1 Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life