子どもが泣いたり、叫んだり、手足をバタバタさせたり、物を投げたり…
このような状態を経験したことのある親御さんはきっと多いですよね。これらの行動は癇癪(かんしゃく)といわれ、だいたい2〜4歳くらいにピークを迎えます。
しかし、年長さんや小学生にあがっても続いている姿を見ると「この状態はいつまで続くの?」と疲弊している親御さんは少なくないはずです。
そこで今回は、小学生の癇癪(かんしゃく)の原因や発達障害との関連性、親御さんにできる対処法をお話します。
この記事を書いた専門家
いけや さき
公認心理師、臨床心理士
精神科病院、療育施設、心療内科・児童精神科クリニックなど主に医療と福祉領域にて心理士として従事。発達障害の子どもたちや保護者、女性のメンタルヘルス等のサポートを行いながら、webライターとしても活動中。
癇癪(かんしゃく)とは、コントロールできない感情の表現方法
癇癪(かんしゃく)は、個人差はありますが「イヤイヤ期」といわれる2〜4歳ごろにピークを迎え、5歳くらいには落ち着きます。発達障害の子ではなくても、5歳くらいまでの癇癪(かんしゃく)はよく見られるものです。
以下に、よくある例をまとめてみました。
- 大きな声で泣き叫ぶ
- 物を投げつける
- 親や周りの人を叩く、蹴る
- 手足をじたばたさせて暴れる
- 壁や床に頭を打ちつける
- 床に寝っ転がる
子どもによって出現するものは異なりますが、癇癪(かんしゃく)はすべて「コントロールできない感情の表現方法」です。
小学生なら、上記に加えて「順番が待てなくて、友達を押す」「言動が理解できずに怒る」などもあるでしょう。
なぜ癇癪(かんしゃく)は起きる?その原因とは
幼少期の癇癪(かんしゃく)は主に、自分の要求を上手く言語化したり、表現できないときに起こります。
まだ表現方法を知らないため、癇癪(かんしゃく)という行動として表れるのです。
幼少期の癇癪(かんしゃく)は、まだ表現のバリエーションが少ない子どもならではの意思表示、感情表現方法と考えられます。
小学生の癇癪(かんしゃく)には幼少期とは異なる原因も考えられます。以下に考えられる原因を5つ挙げてみました。
- 感情のコントロールの困難さ
- 気持ちを言葉で表出するのが苦手
- 親の注目を集めたい
- 発達障害の可能性
- 小学校・学業へのストレス
小学生の癇癪(かんしゃく)予防にもなる!親が今からできること
5歳くらいまでは焦らず工夫しながら、見守ることも必要です。一方で、年長さんの後半や小学生にあがってからも続く場合は、原因に合わせた対処が大事になってきます。
まずは今日から実践できる対処方法をご紹介します。これらは徐々に癇癪(かんしゃく)を減らしたり、予防するためにも活用できるものです。
1. 子どもの癇癪(かんしゃく)の原因を探す
癇癪(かんしゃく)の原因は一人ひとり異なります。対処を考える際は、癇癪(かんしゃく)のタイミングやそのときの様子等をよく見て、子どものSOSに気づきましょう。
また、親の注目を集めたい小学生の場合は、会話が少ないと感じたとき、別の注目の集め方として癇癪(かんしゃく)を起こすことがあります。話を聞いてもらえたり、一緒にいる時間が増えるだけでも癇癪(かんしゃく)が減ることもあるので、癇癪(かんしゃく)の時以外の過ごし方を変えるのも1つの方法です。
学校・学業へのストレスを抱えている子どもも、ストレスケアや学校と連携して過ごし方を変えてみると、癇癪(かんしゃく)が落ち着く場合もあります。
まずは観察したり、話し合って子どもの癇癪(かんしゃく)の原因やパターンを見つけましょう。
2. 親は感情で返さず、冷静に対応する
「やめなさい!」
「なにしてるの!」
「うるさい!」
「ねえ、なんで!?」
子どもが泣いたり、怒ったり、物を投げたりしていると、親御さん自身が怒りたくなるのも当然です。
しかし、子どもの心は保護者が考えるよりも敏感。親御さんの機嫌や表情、声の調子などをとてもよく見ていますし、怒られた記憶は脳裏に焼き付きやすいです。
ただし何が原因で怒られたかまでは実は覚えていません。「親に怒られた」という大人の反応の方が記憶に残ってしまうのです。
そこで親御さんができる対処法の1つは、子どもと目線を合わせて冷静に話しかけること。
親御さんが感情的では、子どもは反発するか萎縮してしまいます。まずは親御さんが冷静に対応して、子どもの行動の手本となりましょう。
3. 気持ちのスイッチや伝え方を話し合う
子どもが癇癪(かんしゃく)を起さなくても、気持ちが伝わったという経験を積み重ねることは重要です。
そのために、気持ちのスイッチとなる行動や「○○のときは△△と伝える」などを先に決めておきましょう。
気持ちのスイッチは、深呼吸やストレッチ、水をゆっくり飲む、静かな場所へ移動するなどがあります。癇癪(かんしゃく)を起さずに、もしくは癇癪(かんしゃく)の度合いや頻度が減って代替行動が増えたら、できたことを褒めたり認めてあげてくださいね。
また、イラストや色などで自分の気持ちを相手に伝えられるツールもあります(気持ちの温度計、声のものさし表など)。特に発達障害の子どもは、視覚的なツールを使うと理解したり、自己表現しやすくなります。
癇癪(かんしゃく)になったとき、親ができる対応
実際に癇癪(かんしゃく)になったときに、親御さんができる対処法を紹介します。
- 安全を確保する
- 落ち着くまで待つ
- 子どもの気持ちに寄り添う
1. 安全を確保する
安全の確保は“本人”と“周り”の両方を考えましょう。
例えば、本人がケガをする恐れのある行動をする場合は、行動を無理やり止めるのではなく、クッションやタオルなどを間に入れてクールダウンできるまで配慮し見守りましょう。
周りに人がいる場合などは、物や人を安全な場所に移動させ、本人の安全も確保するように意識してみてください。
2. 落ち着くまで待つ
待つことと、放置は違います。放置は癇癪(かんしゃく)が悪化し、物を壊したり壁を叩くなど、大きな行動に変化してしまう場合があるため、決して放置しないでください。
落ち着くまで待つとは、安全の確保をしたうえで、少し近くに居たり、手を握ったりして待つこと。また、落ち着く場所に子どもを移動させて、親御さんがそばにいることを伝えるのも子どもの安心のために必要な方法です。
3. 子どもの気持ちに寄り添う
癇癪(かんしゃく)を起こす子どもの多くは言語化が苦手。でも嫌な気持ちだから癇癪(かんしゃく)を起します。
そのような時は、「悲しかったね」「嫌だったね」「○○ちゃん(くん)はこうしたかったんだね」と代弁してあげましょう。
寄り添いは、子どもが気持ちの伝え方を知り、自分の気持ちに気づくことにもつながります。なぜ思い通りにならないのか、状況を説明してあげるのもいいでしょう。
一方で、自ら切り替えられたり、以前話し合っていた行動ができたときは、できたことを積極的に言葉で認めてあげてくださいね。
発達障害かも?と気になる親御さんへ
ここまで小学生の癇癪(かんしゃく)についてお話しました。
原因の1つにある「発達障害の可能性」が気になっている親御さんもきっと多いのではないでしょうか。
最後に発達障害の癇癪(かんしゃく)と、そうではない癇癪(かんしゃく)の違いをお話しします。
発達障害(ADHDやASDなど)の子どもの癇癪(かんしゃく)は以下の特徴があるとされています。
- 家・学校の両方で癇癪(かんしゃく)がある
- やりたいことができないときになる
- こだわり、ルーティンを止められたらなる
- 待てない、落ち着かない状況でなる
など、発達障害の子は自分の興味関心などを優先させたい気持ちが強く、状況を不快に感じたときに癇癪(かんしゃく)となりやすいです。
ただし、学校・学業へのストレスや注目されたい理由の癇癪(かんしゃく)でも、発達の遅れがないとは言い切れません。発達障害かどうか気になった方は、専門家に相談することをおすすめします。
また、子どもの対応をしていると親御さん自身も疲れてきますよね。疲れを感じながらも、気軽に周囲に相談できないと思っている人も少なくありません。
一度専門家に話してみるだけでも、心が軽くなったり、原因や対処法が見えてくることもあります。
参考文献
田中康雄, イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本, 西東社, 2014
小野寺謙,かんしゃくを示す児童に対する通常学級の級友による支援,特殊教育学研究,49(4),2011
【医師監修】ただの癇癪(かんしゃく)と発達障害の違い。判断の目安は?
癇癪(かんしゃく)(かんしゃく)とは?原因は?どう接する?対処法を専門家が解説 | 子育て・教育 | ヨメルバ | KADOKAWA児童書ポータルサイト
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