子どもの自己肯定感とは?「自分を信じる力」がなぜ大切なのか心理学的視点から理解しよう (2)

「うちの子、自信がなさそうで心配…」
「ちょっと注意しただけで『どうせ自分なんか』と言い出してしまう」

子育てをしていると、そんな子どもの姿に胸が痛む瞬間はありませんか?

その背景には、“自己肯定感”という心の土台が関係しているかもしれません。

自己肯定感とは、外の評価や結果に関係なく「自分には価値がある」と感じられる力のこと。

これは子どもの心の成長において、学力やスキル以上に大切な“見えない基盤”です。

この記事では、そもそも自己肯定感とは何か、そしてなぜ子どもにとってそれがそんなに大切なのかを、心理学的な視点から専門家がわかりやすく解説していきます。

子どもの”心の根っこ”を育てたいすべての方に、きっとヒントになるはずです。

自己肯定感(Self-Esteem)とは、「自分自身の価値を無条件に受け入れられる感覚」のことです。

これは単なる”自信”や“楽観主義”とは違っていて、たとえ失敗したり挫折を経験したりしても、「それでも自分は価値がある存在だ」と揺るぎなく信じられる心の基盤のことです。

自己肯定感を持つ子どもは、日常の中で自分にかける言葉が肯定的で温かいものになりやすいです。

例えば、失敗したときに、「自分はダメだ……」と責めるのではなく、「今はうまくいかなかったけど、また挑戦すればいい」と前向きに受け止められる力が備わっています。

つまり、自己肯定感とは、外的な成果や他者の評価に左右されずに、「自分の存在そのものに価値がある」と感じられる自分自身の内側から湧いてくる支え、みたいなものなのです。

子どもにとって自己肯定感が不可欠な理由は、大きく分けて2つの心理的メカニズムに基づいています。


自己肯定感の「コア(核)」は、乳幼児期の愛着形成(アタッチメント)を通じて培われます。

心理学者ジョン・ボウルビィの愛着理論によれば、幼少期に「無条件に受け入れられる経験」を積むことが、その後の自己肯定感の形成に直結するとされています。

例えば、赤ちゃんが泣いたときに、親が適切に応答し「大丈夫だよ」「安心してね」と優しく関わることで、「自分は愛される存在だ」「ありのままで価値がある」という感覚が生まれます。

この経験が積み重なることで、「どんな状況でも自分を肯定できる心の土台」が形成されていくのです。


自己肯定感がある子どもは、失敗をしても自然と自分を励ますことができるため、何事も恐れずに新しいことに挑戦する傾向があります。

これは心理学者アルバート・バンデューラの「自己効力感(Self-Efficacy)」の概念と関係しています。

自己効力感とは、「自分はやればできる」と思える力のこと。

自己肯定感の方が自己効力感よりも広い概念で、自己肯定感の中に「自己効力感」が含まれています。

自己肯定感や自己効力感が高い子どもは、「失敗しても自分の価値は変わらない」と思えるため、挑戦することに対して前向きになれます。

一方で、自己肯定感が低い子どもは、失敗を「自分の存在価値の否定」と結びつけやすくなるため、「また失敗するのではないか?」と恐れてチャレンジを避ける傾向が強まります。

例えば、テストの点数が悪かったときの反応を考えてみましょう。

・自己肯定感が高い子:「この点数は悔しいけど、次に向けて頑張ろう!」
・自己肯定感が低い子:「やっぱり自分はダメなんだ……もう勉強しても意味がない」

この違いが、将来の学習意欲や人生の選択にまで影響を及ぼしていくのです。

では、どのようにすれば子どもの自己肯定感を健全に育むことができるのでしょうか?

心理学的観点から、実践的なアプローチを3つ紹介します。


子どもが何かを成し遂げたことを褒めるのではなく、「存在そのものを肯定する言葉」をかけることが重要です。

  • NGな声かけ:「100点取れて偉いね!」(成果にフォーカスしている)
  • OKな声かけ:「あなたが頑張ったことが素晴らしいよ!」(プロセスを重視している)
  • もっと良い声かけ:「100点でも0点でも、あなたは大切な存在だよ」(無条件の肯定)

「あなたは、ただここにいるだけで価値がある」というメッセージを伝え続けることで、子どもは「条件付きの愛」ではなく「絶対的な愛」を感じ、自己肯定感の土台が強化されます。


失敗を責めるのではなく、「成長のプロセス」として肯定的に受け止める習慣を持たせましょう。

そのためには、大人自身が失敗をポジティブに扱うことが重要です。

  • NGな対応:「なんで失敗したの?もっとちゃんとやりなさい!」
  • OKな対応:「うまくいかなかったね。でも、何が原因だったか一緒に考えよう」
  • もっと良い対応:「失敗するってことは、それだけチャレンジした証拠だね!」

子どもは「失敗=成長のチャンス」と捉えられるようになります。


自己肯定感が育つ土壌として、「自分の感情が受け入れられている」と感じることが不可欠です。

  • NGな対応:「そんなことで泣かないの!」(感情の否定)
  • OKな対応:「悲しかったんだね。それはつらいよね」(感情の受容)

その後に、「悲しくなることもあるよね。でも、乗り越えたら強くなれるよ」と”感情の受容+成長の視点”を取り入れた声かけができると良いでしょう。

感情をありのままに受け入れられる経験を積むことで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている、この感覚を持っていていいんだ」と思えるようになり、自己肯定感が育まれます。

自己肯定感は、「自分には価値がある」と揺るぎなく信じられる力であり、乳幼児期の経験がその基盤を形成することが心理学的にも明らかになっています。

また、自己肯定感はあらゆる能力や挑戦を支える「成長の土台」となるため、子ども時代に育むことが極めて重要です。

  • 成果ではなく「存在そのもの」を肯定する
  • 失敗をポジティブに捉え、挑戦を奨励する
  • 子どもの感情を尊重し、受け入れる

親として、子どもの感情を「しみじみ」受け入れながら、子どもにとって一生の財産となる自己肯定感を育てていけるといいですね。

こちらの動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。