駐在員ママインタビュー vo.2

海外経験ママが語る教育観と進路の選び方~アメリカ駐在員ママインタビュー vo.2~

進学や習い事、将来の夢。

親として、子どもの選択にどう関わればいいのか、悩んだことはありませんか?

今回ご紹介するのは、アメリカでの海外赴任や帰国子女としての進学を経験しながら、2人の娘さんを育ててきたEさんへのインタビューです。

それぞれの“好き”や“やりたい”を、無理に型にはめず、じっくりと見守りながら育ててきたEさんの姿勢からは、「才能を発掘するとは、可能性を信じて待つこと」と教えられるようでした。教育方針や学校選び、家庭での経済教育の心構えまで、具体的に語ってくださったEさん。

日々の小さな会話や行動の中に、子どもの個性や好奇心の芽を見つけ、安心して伸ばせる環境をつくるヒントがたくさん詰まっています。

子どもの将来や進路に向き合うすべての保護者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

現在、大学3年生の長女さんは、日本の外国語大学で日本語教育を学んでいます。来年からはオランダの大学に留学予定。

日本語教育に強い関心を持つ一方で、創作活動としてデジタルアートにも取り組んでいるそうです。

将来は日本語教師になりたいと話していますが、まだいろいろ模索中です。
アートも続けたいようですが、それは趣味でやっていくのかなと思って見守っています。

Eさん

オランダの大学を選んだ理由もユニーク。

オランダは日本の鎖国時代からのつながりもあって、日本研究が進んでいるんです。
そういう背景にも惹かれたようですね。

Eさん

「学問の背景にある歴史」に惹かれる感性は、知的好奇心の現れ。

単に知名度や偏差値ではなく、自分の“興味のツボ”に合った環境を軸に進路を考える姿勢もうかがえます。

進路選択は、自己理解の延長線上にあることに改めて気付かされました。

次女さんは、小学生の頃から抱いていた「航空業界に進みたい」という夢を実現すべく、英語を武器に進路を選んでいます。

海外生活の経験もあるEさんご一家。娘さんが小学生だった当時、アメリカのシカゴに駐在することになり、学校選びに悩んだといいます。

最初は現地校と迷いましたが、先生とのやりとりが不安で、日本人学校を選びました。
まずは安心できる環境にして、様子を見てから現地校へ切り替えようと考えていました。

Eさん

中学生の時に一度日本へ本帰国し、高校進学のタイミングで再びアメリカへ。

赴任時は、日本人が多すぎない現地校を選びました。夫の職場に近く、ちょうどいいバランスの学校だったんです。

Eさん

どんな学校に入れるかよりも、安心してその子らしく過ごせる場所かどうかを重視した判断。

結果的に、娘さんたちの自己肯定感や主体性を育てる土台になっていることが伺えました。

教育方針の話になると、Eさんは「褒めて伸ばす教育」についてこう語ります。

昔は“褒めて育てる”が流行っていましたが、褒めすぎて叱られることに慣れていない子もいますよね。
“ちょっと注意されただけで傷つく子”も増えてきた印象がありますし、バランスが大事だなと感じます。
私は“否定しない”ことを大事にしてきました。
必ずしも褒める必要はなくて、まずは子どもの考えを受け止める姿勢が大切だと思うんです。

Eさん

「褒めるか叱るか」ではなく、「どう受け止めるか」。

否定されずに育った子どもは、「自分の意見を言っていい」「失敗しても大丈夫」と感じられるようになり、創造性や主体性、そして問題解決力といった“非認知能力”の基盤となるため、とても大切な関わり方ですね。

長女さんが某外国語大学を選んだ理由のひとつが、「留学生が多くて、国際的な雰囲気が心地よかったから」だそう。

日本について学びたい”という海外の学生に囲まれて、日本にいながら留学気分を味わえるのが魅力的だったみたいです。

Eさん

次女さんは、英語が大好きで某私立大学の英語学科へ。小学生の頃から「将来は航空業界で働きたい」という夢を持っていたとのこと。

アメリカ生活の影響もあって、改めて“英語をもっと深く学びたい”という思いが強くなったようです。
自分で大学フェアに参加したり、航空業界の就職実績を調べたり、かなり主体的に進路を考えていました。

Eさん

「何を学ぶか」だけでなく、「どんな人と学ぶか」に価値を見出す視点が、長女さんの進路選びに表れています。

次女さんも含め、2人とも“学びの主語が自分”になっていました。

「好き」や「やりたい」をきっかけに、自分で調べ、考え、判断するプロセスが育まれていて、これはまさに主体性や思考力といった“内的な才能”が開花しはじめている状態といえます。

環境選びや情報収集の段階から子どもに主導権を持たせることが、こうした資質を引き出す秘訣なのかもしれません。

進学やキャリアだけでなく、「ライフプラン」の話題も親子で自然にするそうです。

将来のライフプランを、タブーなく話し合えることで、子どもにとって「現実と夢を両立して考える」トレーニングの場にもなります。

経済観念やキャリアの選択肢に触れることも、才能を「活かせる形」に近づけるための教育のひとつ。

私は投資にあまり積極的ではないのですが、娘たちには、株や資産運用の知識、為替などの基本を身につけてほしいと思っています。
小学生の頃から地元の商業高校のプロジェクトでお店を出すなど、実際に“お金の流れ”を体験できる機会があるといいなと。

Eさん

子どもの“経済的リテラシー”の育成という観点で、体験を通じて身につけるアプローチを実践されていました。

お金の流れや仕組みを理解する力は、将来どのような分野で活躍するにしても不可欠ですよね。

信頼できる人を周りに置いて、事前にちゃんと準備をするなら、応援したいと思います。
もちろん不安はありますが、若いうちの挑戦は何より本人の糧になると信じています。

Eさん

失敗を恐れるのではなく、「挑戦する価値」に目を向ける。

結婚や出産、キャリア形成、経済的な自立といった人生の選択肢を、家庭内でオープンに話せる環境は、子どもが現実的な視点を持ちつつ、自分の未来を主体的に考える力を育む上でとても重要ですね。

対話を通して、「夢を描く力」と「選択する力」の両方をバランスよく伸ばせる関係が築かれていました。

最近では、小学生向けの学童保育でアルバイトもしているEさん。

そこで感じたのは、「集団行動になじめない子どもたち」への対応の難しさです。

児童心理学にも興味があります。子どもの特性に合わせたサポートがもっと当たり前に選べる社会になってほしいですね。

Eさん

集団行動に難しさを抱える子どもたちは、単に“問題を抱えた存在”として捉えられがちですが、その背景には多様な感覚特性や思考スタイルが潜んでおり、そこにこそ独自の才能が眠っている場合も少なくありません。

一律のルールや枠組みの中では見えにくいこうした子どもたちの力を、いかに適切な環境で引き出すか。

現代教育が直面している大きな課題でもあります。

子どもたちとの時間って、本当に大事だったんだなって今になって実感します。
2歳差での子育ては大変でしたけど、今では笑い話です。

Eさん

親として、子どもの選択を見守り、尊重しながら育ててきたEさん。

その姿からは、「自立を信じて支える」という、現代の子育てに欠かせない姿勢がにじみ出ていました。

“何を教えたか”よりも、“どんな時間を一緒に過ごしたか”。

このシンプルな気づきが、実は才能育成の本質かもしれません。

時間を共にした記憶は、子どもにとって「自分は大切にされている」という確信となり、その土台から才能は安心して芽を出すでしょう。

Eさんのお話から見えてきたのは、子どもの未来を決めるのは、突き抜けた才能や特別な環境だけではない、ということ。

何気ない日常の中で、「興味を持ったこと」「やってみたいと言ったこと」「ちょっと変わった視点や反応」に対して、親がどう受け止めるか、その積み重ねこそが、子どもの可能性を形にしていくきっかけになるのだと気づかされます。

子どもの選択を尊重することは、簡単なようで難しいもの。

でも、それこそが、これからの社会を生きる子どもたちにとって、何よりの力になります。

子どもの可能性や才能は、必ずしも目に見える“成果”の形で表れるとは限りません。

子どもの興味は揺れ動くものだけれど、その揺らぎの中にこそ、未来を照らすヒントがある。

そんなメッセージが、このインタビューから伝わってきました。

私たち大人にできるのは、「才能を育てる」ではなく、「才能が育つ余白」をどう残してあげられるか、という視点なのかもしれません。