発達障害の可能性を持つ子どもの才能発掘と支援:ASD傾向のある子どもを持つお父様に聞く

今回は、ASD(自閉症スペクトラム障害)の傾向を持つお子さんのお父様にお話を伺いました。

発達障害が疑われるお子さんの成長過程において、親御さんとしての心労は計り知れないものがあると思います。

このインタビューを通して、診断に至らない状態のお子さんを持つ時期の必要な情報や相談窓口の整備の必要性について、リアルな声をご紹介します。

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―お子さんについて教えてください。

お父様:上の子は小学校3年生の女の子で、下の子は最近1歳になったばかりの男の子です。

―お子さんについて、発達に関する不安があるとのことですが、具体的にどのような点が心配ですか?

お父様:はい、下の1歳の息子についてです。生まれたときに哺乳不良があり、発達関連の障害があるかもしれないと病院で言われていました。上の娘の赤ちゃんの時と比較すると違うところが多かったので、気になっていました。

例えば、抱っこした時にこちらに体重をかけてこないとか、後追いなどもしないですし、あまり目も合わないです。

半年を過ぎて、特にASD(自閉症スペクトラム障害)かもしれないと感じる点もいくつか出てきました。

例えば、光や音にすごく過敏です。光には異常に眩しがったり、音も小さな音に反応して、寝ている時でもよく目が覚めてしまいます。手を握られるのも非常に嫌がって、泣き出すほどです。特に手の甲が苦手みたいですね。

最近になって過敏の症状は少し落ち着き始めましたが、手を繋ぐのだけは、まだかなり嫌がります。

成長と共に新しく出てきた心配な状態としては、言葉の発達です。一般的な子どもたちより遅れが見られます。喃語は話すけど、「言葉」が喋れないという感じです。

あと右に寝返りをしないのも親としては心配です。ずっと左を下にして寝ているため頭の骨の形を矯正する必要も出てきました。これはASDの症状の一つの、こだわりなのかなと思っています。

こだわりの話でいうと、丸いものが好きみたいで、ずっと触っていたりします。特にタイヤが好きで、掃除機のタイヤをひたすら手で触って回してみたり、ベビーカーの前輪のタイヤをずっと手で触っていたりします。ラジコンの車のおもちゃを買ってあげたのですが、やはりタイヤをずっと見て触っています。

―お子さんがASDかもしれないと知った時、どのような感情が湧きましたか?

お父様:最初にASDの可能性を知った時は、正直なところ、かなり不安でしたし戸惑いました。

「どうやってサポートすればいいのか」「未来はどうなるのか」と考えると、妻も私も心が押しつぶされそうでした。

でも、その後、彼の一つ一つの行動や笑顔を見ているうちに、彼がどんな特性を持っていても、彼自身のペースで成長していく姿を信じてサポートしようと思うようになりました。

―お子さんの発達に関する情報はどのように得ましたか?

お父様:最初はツイッターやYouTubeで情報を探しました。ただ情報の多さと雑多さに圧倒されてしまいました。不安を和らげるために調べていた部分もあります。診断が確定した子どもの情報はたくさんあるのですが、今の私たち家族のような状態の情報って、ほんとに有益なものがないんですよ。

ASD

正直、いろんな人の体験談を見ても、完全にうちの子と同じ状況の子どもはいないですし、状態にも幅もあるので最近は見ていないです。妻にも見ないように言っています。

それは、「重度だったら」という不安とか、「軽度かもしれない」という期待とか、それだけで精神的なアップダウンになるので無駄に調べないようになりました。

自分にとって何が有益かを見極める情報の取捨選択をするのだけでも大変です。

―「不安」というのは、具体的にどのようなことでしょうか。

お父様:子どものこの状態がなんなのか、そして、それに対して子どものために何をしてあげられるのかわからないという状態が不安です。

上の子がいるので、上の子の時と比較して、いつまでに何ができていてというのがあるので余計です。状態が違うので、上の子のように無邪気に可愛がってあげられていないことも親としては辛いです。

診断が確定していないので、不安の解消の仕方がわからないという状態ですが、一方で期待も持っているという不安定な状況ですね。

―そうした状況の中で、相談先はどのような場所で、またどのような支援を受けていますか?

お父様:発達の専門クリニックを受診しました。ただ、そこを予約できたのも3ヶ月先でしたし、実際に待ちに待って受診しても医師とは10分くらいの会話でした。

医師の方も、その場で言えることって「一般的な状態はこうです」というようなことであって、子どもの個別の状態を把握して10分の時間でわかることってあまりないじゃないですか。

それで、結局は「様子見してみましょう」と言われただけでした。私たち(夫婦)の不安が和らぐなら、と思って受診したので少し残念だったというのが正直なところですが、仕方ないといえば仕方ないです。

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他には、6ヶ月検診の時に病院から紹介された別のクリニックなども利用しています。理学療法士が週1回、おもちゃを渡してどんな反応をするか、パチパチと手を叩くことができるか、など年齢に応じてできることできないことを見て、手を繋ぐ練習をしたり徐々にトレーニングを始めています。

先ほどお伝えしたように、言葉にも発達の問題があるので言語聴覚士にもサポートしてもらっています。まだ子どもは幼いですしトレーニングの頻度も多くないので、効果はまだはっきりと見られないです。

私たち夫婦の精神状態は安定はするので、その点ではいいと思います。

今後は、1歳半の時の状態を見て、療育を検討するかもしれないです。現時点で、手を繋いだり、歩くこともちゃんとできていない状態なので。

―発達障害の可能性がある親御さんにとって、どのような場所や機会があればいいでしょうか。

お父様:やっぱり子どもの状態って、個人差がすごいあるので、「このやり方です」みたいなことじゃなくて、カスタマイズしてサポートしてくれる場所や機会が必要だと思います。

今検討している療育は、家から近くて送迎できるか、などという基準で決めざるを得ないので、子どもの状態に合っていて、本当に良い療育なのかがわからないです。

専門家の個別の状態に応じたアドバイスを受けたり、それに応じて実際に必要な人が必要な頻度でトレーニングしてくれるみたいなのがあればベストですね。

実際に、作業療法士さんと言語聴覚士さんのアドバイスのおかげで子どもの行動や発達に対する理解が一定程度深まって、適切な対応ができるようになりました。子どもも私たち夫婦も安心して過ごせるようになったと感じています。

―オンラインでの相談などは活用されたことはありますか。

お父様:まだないです。何をどこに聞けばいい、というものが整理されていれば相談する気になるかもしれません。例えば、いわゆるギフテッド・チルドレンだけど、発達障害も持っている状態の子どもだと、ギフテッド教育をするのか、療育を優先するのかとかもわからないじゃないですか。

確かに、いろんな専門家から具体的なアドバイスや情報を得ることで、不安が和らぐと思います。定期的、例えば、月に一度専門家とオンラインでも話す時間があれば、継続的に子どもの成長を把握して、問題が発生したときにすぐに対応できたりするので活用したいと思っています。

―子育てについて、ポリシーや大切にしていることがあれば教えてください。

お父様:二人目を見ていると、できないことはできなくてもいい、という気持ちを持つようにしています。ASDがあったとしても得意なことを見つけてあげて、将来お金を稼いでいけるようにしてあげたいです。

子どもの可能性は無限大なので、子どもの特性を理解して、将来の選択肢を多く取れるように育てたいと思っています。この点は、今小学3年生の姉の時にはできていなかったことなので、気づけてよかったです。

特に、次男に関しては、もしASDが確定したとしても、彼の得意なことを見つけてそれを社会で活かせる強みに変えていく力をつけられるように、サポートをしていかないといけないと思っています。

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あとは、子どもたちが安心して、愛されていると感じられる環境を作ることです。

発達障害の有無などに限らず、子どもがどんな状態・特性であっても、無条件に愛されていると感じられるようにすることが私たちにとっても子どもたちの成長にとっても大切だと感じています。

親御さんは日々、個々のニーズに合わせた適切な支援と療育を求め続けています。

また、インターネット上の情報に惑わされることなく、専門家のアドバイスに耳を傾け、有益な情報を選択する必要性も改めて感じました。

全ての子どもたちが自身の能力を最大限に発揮し、自信を持って社会に出ていけるよう情報や機会が整備されることが急がれています。

さまざまな挑戦に満ちていますが、それぞれのステップで新たな発見があり、家族としての絆が深まっていることも感じました。

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