子どもにはさまざまな経験をさせたい?習い事の詰め込みは逆効果!

人によっては、子どもが産まれる前に「子どもが産まれたら、こんなことをさせたい!」とサッカー、野球、ピアノ、バレエ…など考えていた人もいるでしょう。

そこまで具体的に考えていないにしても、子どもが産まれて、成長を目の当たりにしていく中で、いろんな経験をさせたいと思う親御さんは多いと思います。

経験と一言で言っても、その幅は広く、どんな経験をさせたいと考えるかは、地域性も出るかもしれません。

今回は、習い事を詰め込みすぎると、生きた経験としてお子さんの中に蓄積されにくくなってしまいます。

習い事をさせるにあたっても、どのような視点を大切にできるとよいのかを解説していきます。

この記事を書いた専門家

日塔 千裕


公認心理師、臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。

子育てをする中で、お子さんがどのような環境で育ち、どのような経験を重ねていくかは、親御さんにとって、とても重要な関心事であるとともに、悩むことでもあるでしょう。

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親御さんの仕事、経済事情などを考えると、元々住んでいた地域・環境の中でどうするかを考える必要が出てきます。

その中で経験を増やす方法として選択しやすいのが習い事だと思います。

習い事の選択肢も地域により差はありますし、家庭の経済事情により通わせられるかも変わってくるところではあります。

習い事ではなくても、地域で単発で行っているイベントに参加することで、さまざまな経験の幅を広げるということもできます。


習い事に限らず、最近は単発のイベント形式で参加できる機会も増えてきました。

以下では、習い事と単発イベントへの参加のメリット・デメリットをご紹介します。


時々は単発のイベントに参加することもあったとしても、子どもの興味関心を広げたり経験を増やしたりする方法として習い事を選択する方は多いでしょう。

いつの頃からでしょうか。「最近の子どもは忙しい」と言われ、多くの習い事をしている子どもが増えています。

もちろん、地域によって差はあると思いますが、選択肢が多い地域では週の半分以上で習い事に通っている、場合によっては、週8などと1日に複数の習い事をハシゴするような子もいます。

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最初から一気に多くの習い事を始めたというよりも、「これをやらせたい!(やりたい!)」「あれもやりたい!」などと徐々に増えていったことでしょう。

ただ、このような詰め込みでの経験はどうなのでしょうか。

お子さんに「さまざまな経験をさせたい」というのは、“経験”だけで終わらせてよいのでしょうか。

それとも、スキルとして身につけてほしいでしょうか。

たとえば、英語の学習を思い浮かべてみてください。

最近の教育では小学校低学年から英語の学習も入っていますが、親御さんの世代だと小学校での英語の学習は年代によって多少差があるかもしれません。

それでも、ローマ字学習は小学校中学年の頃にはしており、その頃から英語に触れていることでしょう。

そして、中学校・高校と英語を学んできましたよね。

果たして、大人になって、英語を喋れる人はどの程度、いるでしょうか。

中学・高校と教育を受けてきた人数に比べると、大人になって英語を喋れる人数はかなり少ないことと思います。

人はさまざまな経験を自身の中にインプットしていきますが、インプットだけでは“経験”で終わります。

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アウトプットができるようになって初めて自身のスキルとして身に付いた状態になるのです。

自身のスキルとして身につけていくためには、インプットとアウトプットを繰り返していくことが大切なのです。

日本の英語教育は、英単語や英文でのインプットは多いものの、スピーキングとしてアウトプットの機会は少ないので、10年近く学校で英語の学習をしていても喋れないのです。

さらに、インプットするにあたっても、精神的にも体力的にも余裕が必要となります。

人によってはテスト勉強を一夜漬けでやっていた方もいるかもしれません。

一夜漬けは向き不向きがあり、眠くなって全く覚えられないという方もいるでしょう。

その方はそもそも心身の状態が万全でないと、インプットできないということを体感しているはずです。

一方で、一夜漬けで乗り越えてきた人、自分にはその方が向いていると思っていた方に関しては、テスト自体はそれで乗り越えられたかもしれません。

しかし、その後、その覚えた内容は定着せずに忘れ去られていることもあると思います。

先ほどの習い事の詰め込みでの経験がどうなのか、という質問に戻ります。

習い事の数が多ければ、最初はよくても、継続していくうちに、体力的・精神的に疲労は必ず出てきます。

それに伴う、脳の疲労も生じるため、インプットが難しくなってしまいます。

そうすると、「ただやっているだけ」でお子さんのスキルとして身につけていくことは難しい状況となります。

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そのため、習い事をやるにしても、休息日、お子さんが自由に時間を使える日「余白日」を設けておくことをおススメします。

習い事の種類にもよりますが、特にルールや型が決まっている枠組みのあるものでの習い事の場合には特にです。

お子さんが自由に時間を使える日があることで、一日の時間の使い方など自由な発想・創造(想像)ができアウトプットに繋がりやすくなる可能性があります。

お子さんによっては、時間があるとゲームばかりということもあるでしょうが、それも気分転換になって、脳の切り替えが行われているのでOKです。

あと、人はやはり余白がないと心の余裕がなくなってしまいます。

親御さんも仕事や家事、習い事の送迎などと忙しくなると、体力的にも精神的にも余裕がない状態になると、お子さんへの関わりに対しても余裕がなく、怒ることが増えてしまったりしますよね。

そういう意味でも、どこか出かける予定を入れてもいいし、「今日は何もしない日」と決めて家族で一日ゴロゴロ過ごす日にしてもいいし…と自由に選択できる日があることが、親子ともに余裕を作り、家庭内の雰囲気をよくすることにも繋がるのではないでしょうか。

さて、習い事に関して、多くの親御さんが心配されたり、質問してこられたりすることが、「習い事をやめると、やめ癖(諦め癖)がつくのではないか?」ということです。

習い事をやめることがすぐにやめ癖に直結するわけではありません。

お子さんの言うままではなく、期限や目標合わせて習い事をやめるタイミングがあってもよいとは思います。

ただ、お子さんが嫌だと思っているものを嫌々続けても、集中力・興味が低い状態なので、それこそインプットできない状態のまま「ただやっている」状況です。

お子さんが「楽しい!」と思えることがやはり吸収力は高くなり、お子さん自身のスキルとし深まり、伸ばしていくことに繋がります

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継続を目標にするのではなく、お子さんが楽しいと思える環境を考えることに視点を置いていただくのがよいと思います。

やめることを子どもがあまりにも無造作に選択している場合には、習い事をする前に、辞めるときのルールを決めておくことも方法です。

今の時代は、ゲームやYoutubeなど、受け身で情報が入ってくるものが多く、自分から「これをやりたい!」「これが好き!」と思えるものがある子どもは減っているように感じます。

親御さんからいろいろな機会を提供しても、お子さんが興味を持たないことも多いかもしれません。

親御さんがいろいろな情報を探して機会を提供している苦労を考えると虚しさや悲しさを感じることもあるかもしれませんが、お子さんにヒットしたら「奇跡!」「ラッキー!」くらいの感覚で機会提供していくことが大切です。

その時は響かなくても、長い時差を経て、お子さんが興味を持ったりする場合もあります。

お子さんが特定のことに興味を持っていれば深めるためのアプローチでよいでしょう。

ただ、興味をあまり持たないようであれば、親御さんからは広く浅く経験させておいて、インプットした中から将来何かお子さんの心の中に引っかかっていればいいな、くらいの感覚で、やめることも選択肢として持っておいていいでしょう。