なぜ気づかれにくい?女の子の発達障害

子育てをしていると、お子さんのことを「ちょっと変わってる?」「なんだか落ち着きがない」と思うことは少なからずありますよね。

それが発達障害の特性によるものなのか、単なる子どもらしさによるものなのかを判断することは意外に難しいです。

発達障害の場合は、生まれつきの脳の特性によって、対人関係や行動、注意力などに影響を及ぼすものです。

この記事では、特に自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)の2つに焦点を当てて、行動面等で顕著に現れやすい特徴、そして気付かれにくい(思春期以降になって気付かれる)特徴を解説します。

また、気付かれやすい特性は男の子に多い傾向があり、気付かれにくい特性は女の子に多い傾向があるという性別による違いもご紹介します。

執筆:日塔 千裕


公認心理師・臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。

発達障害と言ってもさまざまな障害がありますが、ここでは主要な自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(AD/HD)の2種類に焦点を当ててご説明させていただきます。

以下で、まずそれぞれがどんな特徴があるかを確認しておきましょう。

ASDは、「対人関係や社会的コミュニケーションの障害」と「こだわり行動」の2つが基本的な特性です。

これらの特性が複数の場面で、持続的にみられる場合に診断される可能性があります。


「対人関係や社会的コミュニケーションの障害」の特徴としては、以下の行動が見られます。

  • 言葉にしない、相手の表情から「嫌がっているかも…」などと感情を読み取ることが難しい
  • 場の空気を読んでの行動が難しい
  • 「暗黙のルール」を暗黙の状態で理解することが難しい
  • 初対面でも急激に近づきすぎるなど、人との距離間の取り方の奇妙さ
  • 比喩や皮肉など言葉の裏の意図の理解の難しさ

「こだわり行動」の特徴としては、以下の行動が見られます。

  • オモチャを一列に並べるなど単調な行動を繰り返す
  • 毎日、同じ道順など同じ行動を強く求め、変更が受け入れられない
  • 決まった流れからの変更が難しく、変更があると途端に行動できない、パニックになるなどがある
  • 特定のものに強く執着し、同じ服しか着ない、同じものしか食べない
  • 勝つことに固執し、負けが受け入れられない
  • ルールが絶対で、ルールを守れない人が許せず、強く相手に強要する

などの様子が見られます。

ただ、「こだわり行動」に関しては、人により、何にこだわりが見られるか、どのような点にこだわるかはそれぞれであり、人により示す言動は異なります。

また、感覚刺激への敏感さ・鈍感さがある場合もあり、感覚過敏により「こだわり行動」のように見えている場合もあります。

AD/HDは、「不注意」と「多動性および衝動性」が基本特性であり、複数の場面で6か月以上、持続的に見られ、社会的・学業的行動に影響を及ぼす場合に診断される可能性があります。


「不注意」の特徴としては、以下の行動が見られます。

  • 忘れ物が多い
  • ケアレスミスが多い
  • 1つの遊びで長時間遊び続けられず、遊びをコロコロ変える
  • 授業中など活動の途中でも気になることがあると、意識が“気になること”に向いてしまう
  • 朝の支度や翌日の持ち物の準備等や、宿題などを一気に最後までやり遂げることが難しい
  • 時間管理が苦手

「多動性および衝動性」の特徴としては、以下の行動が見られます。

  • じっと座っている時間がほとんどなく、常に動いている
  • 座っていても、足や身体などが常に動いている
  • 食事中にじっと座って最後まで食べ続けられない
  • 授業中など座っていなければならない時間でも、気になることがあるとすぐに離席してしまう
  • お喋りが止まらない

ここで記載した特徴が顕著に現れている場合には気付かれやすく、診断されたり支援機関等に繋がりサポートを受けたりしていることでしょう。

一方で、そこまで顕著に見られない場合が気付かれにくくなるわけですね。

一般的に、男の子発達障害は、女の子の発達障害の4倍の気付かれやすさと言われています。

ただ、これは男の子に多いというわけではなく、女の子の発達障害が気付かれにくく、診断に至っていないことが1つの理由にはあるでしょう。

一概に性別で分けることはできないものの、一般的に男性は論理的思考で、女性は感情論的思考の傾向があると言われたりします。

脳の構造や機能が男女によって多少異なるところがあるのです。

特に、対人関係や社会的コミュニケーションにおいては、人との繋がりや感情のやりとりが重視されるため女の子の方が周りに合わせることが得意、ということも背景にあります。


男の子は元々の脳の構造上、感情を司る機能が女の子よりは弱い傾向があり、そこにASDの特性が加わると、人との繋がりを求めずに一人遊びが多かったり、感情のやりとりが行われず感情面で説明しても理解できないなどの様子が顕著に見られやすくなります。

そのため、ASDの診断基準に当てはまる言動が見られやすく、早期に発見されやすくなります。


一方で、女の子は、元々の脳の機能上、感情を司る機能が男の子に比べると得意としている傾向があります。

そのため、低年齢の時期にはその機能でカバーできて、一緒に周りの友達と遊べていることが多くなるのです。

しかし、小学校中学年、高学年と年齢が上がるにつれ、女の子同士のコミュニケーションはより複雑な感情の察知や空気を読むなど非言語的な側面で高度なスキルを求められることが多くなります。

そのため、その頃になるとさすがにカバーできなくなり、思春期前後で気付かれ、診断されるということも多くなるのです。

そうすると、子ども本人も友達とうまくいかないと感じて不登校になったり、周りの子からなんか違う、ズレてるなどと仲間外れにされたりいじめられたりするようなことになってしまう場合もあります。

中には、早い時期から感覚的に女の子の感情的なやり取りが多めの関係性よりも、男の子との関係性の方が楽だと感じ、男の子と遊ぶことを選択している子もいるでしょう。(もちろん、女の子で、男の子とばかり遊んでいる子すべてがASDというわけではないことはご注意ください。)

思春期前後で対人関係の築きにくさが表面化してくれば、女の子のASDの中では気付かれるのが早い方でしょう。


この段階でも、感情をコントロールする力や我慢する力が高いと、周りに合わせようと必死に努力を重ねていることもあります。

そうすると、過剰適応のような状態になっているかもしれません。

学校から帰宅後や休日にはとても疲れていたり、学校の先生からは学校でうまく過ごしているように言われるが家では反抗的態度が非常に激しかったり、家では一人で過ごすことがうまくできているのに学校では友達と過ごすことに固執しているような様子があるなどの場合には、もしかしたら学校で過剰適応しているサインかもしれません。

AD/HDでまず気付かれやすいのは、多動性・衝動性です。

幼少期からじっとしていられない、落ち着きがないという行動面が顕著に現れていると早くに気付かれやすくなります。

上記ASDのところでお伝えしたように、女の子は脳の感情を司る機能が男の子よりは発達している傾向があります。

この機能が発達していると、感情をコントロールする力や我慢する力も発達しやすくなる傾向があります。

そのため、女の子は多動や衝動性もある程度、コントロールでき、幼少期には目立たないことが多いのです。

ただ、『多弁』という形で現れることもあり、”度が過ぎるお喋り”と思われる場合もあります。

AD/HDの場合、男女問わず、幼少期には多動性・衝動性で現れ、年齢の経過に伴い、多動性・衝動性は落ち着いてきて不注意に移行するケースがあります。

女の子の場合、幼少期の多動性・衝動性は目立たず気付かれないまま、思春期前後で自立して学校の準備や宿題など取り組むことが求められる機会が増えてくると手順や段取りの難しさとして現れてくることがあります。

気付かれやすいタイプと気付かれにくいタイプを、男の子と女の子という視点で今回はお話しました。

ただ、昔は男性脳・女性脳と言われていた時期もありますが、今は男性脳を持つ女性もいるなど男女で完全に分けることはできないと言われています。

発達障害においても、性別で判断することは難しい実状はあります。

一般的な傾向として伝わりやすくするために男の子、女の子という表現をしていますが、男の子でも女の子として示したような状態に当てはまる子もいるかもしれません。

個々の特性はそれぞれですので、性別の表記はあくまで参考程度に留めていただき、お子さんの示す状態像を軸に考えていただけたら幸いです。

参考文献