赤ちゃんの発達障害(ASD)とは?サインや特徴などを徹底解説 (2)

「うちの子、発達障害かもしれない…」「言葉が遅いのは普通?」と不安に思う親御さんは少なくありません。

発達障害は、赤ちゃんの頃から兆候が見られる場合もあれば、円や小学校に入ってから気づかれることもあります。

特に、自閉スペクトラム症(ASD)の特徴は、乳幼児期から現れることが多いですが診断がつきにくい時期でもあります。

この記事では、ASDの赤ちゃんに見られる特徴、診断のタイミング、早期療育の重要性について詳しく解説します。

なお、すでに幼稚園に入園したり就学していたりするお子さんでもASDかどうか気になっている方は、赤ちゃんの頃の行動もお子さんに合った育て方を考えるためのヒントにしてみてください。ぜひ最後までご覧ください。

発達障害とは、脳の機能に偏りがあるために、行動やコミュニケーション、学習などに困難を抱える状態を指します。

主な種類として、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。

注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)は、園や学校での集団生活の状況や学業の状況からわかることが多いため、今回は赤ちゃんの時(乳幼児期)に診断の兆候が見られやすい自閉スペクトラム症(ASD)について取り上げます。

ASD(自閉スペクトラム症)は、コミュニケーションや対人関係に困難があり、特定のこだわりや感覚過敏などを持つ発達障害です。

かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」と分類されていましたが、現在はASD(自閉スペクトラム症)として統一されています(DSM-5, 2013)。

近年、ASD(自閉スペクトラム症)の発症率は世界的に増加傾向にあり、例えば、米国のCDC(疾病予防管理センター)の報告では、2000年には150人に1人だったASDの診断率が、2023年には36人に1人にまで増加したことが示されています(CDC, 2023)。

この状況は、以前は『発達の偏りはあるけれど、診断基準に満たない』とされた子どもも今ではASDと診断されるなど診断基準の変更があったことや社会的認知度が上がったことなどが背景と考えられています。

ASDの兆候や特徴は、乳児期から幼児期にかけて現れることが多いですが、もちろん状態や症状があらわれる時期にも状態にも個人差があります。 


✔ 目が合いにくい(親が話しかけても視線をそらす)
✔ 抱っこを嫌がる(密着を避ける傾向がある)
✔ 表情が乏しい(笑顔が少なく、感情表現が少ない)
✔ 名前を呼んでも反応しない(他の音には敏感に反応するのに、自分の名前には無反応)


✔ 1歳半になっても単語を話さない(「ママ」「パパ」などの発語がない)
✔ 指さしをしない(欲しいものを指さして伝えることがない)
✔ お友だちとごっこ遊びをしない(他の子と遊ぶより一人遊びが好き)
✔ 特定の音や光に極端に敏感(掃除機の音、車のヘッドライトを異常に怖がる)
✔ 特定の触感を嫌がる(服の素材や縫い目、食べ物の食感を強く拒否する)
✔ 一定の動きを繰り返す(手をひらひらさせる、体を前後に揺らす)
✔ 特定のおもちゃや衣服に執着する(いつも同じおもちゃで遊ぶ、決まったパジャマじゃないと眠れない)


発達障害の診断は、一般的に以下のタイミングで行われます。

・1歳半健診:言葉の発達や社会的な反応を確認
・3歳児健診:コミュニケーション能力や行動の特徴を確認

こうした健診で気になる点があれば、専門の医療機関に相談し詳細な発達障害に関する診断を受けることが多いでしょう。

ただし、発達には個人差があり、早期の発達障害の診断が難しい場合もあります。

注意力や実行機能の遅れは、幼児期以降に明確になることが示されており、”症状が現れていないからASDではない”というわけでもありません。


ASDの赤ちゃんは、1歳半~3歳の健診で以下のような項目を確認されます。一般的な項目なので、状態や時期によって検査項目や問診の内容は異なります。

先述の「ASDの赤ちゃんによく見られる具体的な特徴」でご紹介した項目もご参考にしてみてください。

ASDかどうかのチェック項目(乳幼児期)

  • 目をそらすことが多い(0歳の時から兆候が見られるケースもあります)
  • 指さしをしない
  • 名前を呼んでも振り向かないことが多い
  • 他の子に無関心で人に興味を示さない
  • 2語文(例:「ママ、きた」)が出ないなど言葉の発達が年齢に比べて遅い

診断の流れ

  • 健診でのチェック(1歳半・3歳児健診で発達の遅れが医師によって指摘される)
  • 専門機関への紹介(発達相談センターや児童精神科を受診)
  • 発達検査を実施(M-CHAT・ADOS-2などの診断ツールを使用)
  • 診断確定と療育の開始

ASDの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因が関係していると考えられています。


双子の研究では、一卵性双生児の片方がASDの場合、もう片方もASDになる確率が70~90%と報告されています(Bailey et al., 1995)。※1

また、ASDの家族歴がある場合、発症リスクが高くなる傾向があるとされています。


妊娠中のウイルス感染、栄養状態、大気汚染が関与する可能性があるとした研究や、低出生体重児・早産の子どもはASDの発症リスクが高いとされる研究もあります。


ASDは、遺伝的要因や環境要因があるものの、親の育て方が原因ではありません。

過去には「母親の愛情不足が原因」という誤った説がありましたが、現在では完全に否定されています。

ASDと診断された赤ちゃんに対しては、専門家や医師に相談しながら早期療育を行うことが非常に重要です。

療育を行うことで、コミュニケーション能力を伸ばしたりや社会性を身につけることが期待できます。


✔ ABA(応用行動分析):行動のパターンを変えるための科学的アプローチ
✔ TEACCHプログラム:視覚的サポートを活用し、スケジュールを明確にする
✔ 言語療法:発語を促すための専門的なトレーニング
✔ 感覚統合療法:感覚の過敏さを調整し、生活しやすくする


✔ 視覚的なサポートを活用する(絵カードやスケジュール表を使うなど)
✔ パニックを防ぐためにルーティーンを大切にする(急な変更は前もって説明するなど)
✔ 無理に「普通」に合わせようとしない(その子のペースを尊重するなど)


ASD(自閉スペクトラム症)の赤ちゃんは、「できないこと」に注目されがちですが、「できること」「得意なこと」を伸ばすことが何よりも大切です。

発達のスピードは十人十色。

言葉が遅くても、人との関わりが苦手でも、一つのことに深く集中し、誰も気づかないような細かい違いを見抜く力があるかもしれません。

親ができることは、「普通」に合わせることではなく、子どもの「得意」を見つけることです。

「みんなと同じようにできるようになってほしい」と思うのは自然なことですが、ASDの子どもには”みんなと同じ”よりも”その子らしい育ち方”が何よりも大切ですよね。

例えば、絵を描くのが好きな子なら、お絵描きを通して表現力を伸ばす。

数字が好きなら、パズルや計算を楽しむ機会を増やす。

「苦手なことを克服させる」のではなく、「得意なことを最大限に伸ばす」ことで、自信と自己肯定感を育めるようになります。


「なぜ話さないの?」「なぜみんなと遊ばないの?」と不安になるかもしれません。

しかし、ASDの赤ちゃんは、自分なりのペースで世界を学び、理解しようとしています。

ASDの赤ちゃんの成長を見守ることが、親にとっても新しい発見や学びにつながることもあるのです。

大切なのは、「この子にはこの子の時間がある」と信じてあげること。できることを見つけ、一緒に楽しむ時間を増やしていくことが、子どもにとって何よりの支えになります。

まだまだASDの子どもたちへの理解や支援の機会が充実しているとは言えない状況です。

赤ちゃんの頃は、医師に相談しても「まだ様子を見てみましょう」と言われたり、親御さんとしては、診断が確定しない状況などでは対応策も十分に検討できず、不安も大きいことと思います。

ただ、私たち大人が発達障害の子どもに対して心がけたいことは、「普通に近づける」ことではなく、その子が自分らしく輝ける環境を整えることです。

世界には、さまざまな考え方や生き方があります。

他の子どもたちとは少し違っても、「その子だけの特別な道」です。

参考文献

※1 Autism as a strongly genetic disorder: evidence from a British twin study

難波栄二, 2001, 精神保健研究,自閉症の遺伝的背景

北 洋介・細川 徹, 東北大学, 2010, 自閉症スペクトラム障害(ASD)における感情一非定型発達脳での感情発達に及ぼす社会的経験の役割一

Environmental exposures associated with elevated risk for autism spectrum disorder may augment the burden of deleterious de novo mutations among probands