自己肯定感、GRIT、集中力…子育て本に並ぶ数々のワードに「結局、どれが一番大事なの?」と、読めば読むほどよくわからなくなってきますよね。
子どもが人生を謳歌する上で、大切なのはたった1つのことではないか。
そのために、むしろ親がしてはいけない2つのこと。
そして、親が日頃からトレーニングすべきマインドセット。
小児科医が、医学的・心理学的な視点から解説します。
この記事を書いた専門家
白井 沙良子
医師、日本小児科学会専門医
都内クリニックでは、乳幼児健診や育児相談も担当。医療記事執筆や企業セミナーなどを通じて「エビデンスに基づいた育児情報」の発信を行う。
はじめに
これは、アインシュタインの言葉です。
この言葉に、人生100年時代を生き抜く要素が、込められていると感じます。
年々延びる平均寿命。今の子どもたちの寿命は、100年近くになるとも言われています。
そんな人生100年時代には「好奇心」こそが最強アイテムではないでしょうか。
何にでも興味や関心を持てる気持ちを保てれば、長い人生、飽きることなく楽しめる。
「そんなこといっても、うちの子は何に興味があるのか、よくわからない」
「何かにハマることがない。次々色々やるけど、別にどれが特別好き!ってわけじゃない」
という場合もありますよね。
好奇心のタイプと「強い」「弱い」
好奇心にも様々なタイプがあります。
同じような課題やテーマに何時間も取り組んだり、がむしゃらに打ち込んだりするタイプもいれば、とにかく、次々と新しい経験や知識を取り入れたいというタイプ。
スリルを求めるので、多少のリスクはエキサイティングと感じ、行き当たりばったりで経験していきたいタイプ。
確実さ、安全さ、先が読めることを重視するので、よほど確信と自信を持てない限りは、チャレンジを控えるタイプ。
どのタイプが優れているという話ではなく、また同じ人でも、ジャンルや対象によって、色んなタイプが混在しています。
きっと年齢や環境によっても、好奇心のタイプは変化しうると思います。
「電車オタク」「昆虫オタク」のように、わかりやすい好奇心の対象がない。
それは好奇心がないからではなく、逆に様々なものに広く興味を持てることの裏返しでもあります。
さらに好奇心の強さ、またそれがどれくらい体の外に表現されているかも、良い悪いはないと思うのです。
1週間くらい迷路にハマったと思ったらすぐ飽きて、次の1週間はパズル、また次の1週間はLaQ(ブロック玩具)…と、次々に興味の対象がうつるのをみると「どうしてもっと深くハマらないのかな?」「探究心がないのかな…」と感じることも。
でもそれは色んなものに好奇心を持てる強みでもあるのです。
子どもがその時好きなもの、少しでもハマっているものがありそう!と気づければ、それだけで万々歳。
それが長続きせずとも、何か素晴らしい成果を出さずとも「なにかに興味を持った」という時点で、お子さんには好奇心があり、人生100年時代を生き抜ける武器を持っているのです。
集中力も「好奇心」「好きなもの」から
「うちの子は本当に集中力がなくて…」「集中力がないから、ミスするんです。
どうしたら集中力をつけられるんでしょうか?」こうしたお悩みも多いですよね。
結論、集中力の原材料は「好奇心」です。
好きなものにハマる体験こそが、集中力の土台になるからです。
もっと言えば、子どもは誰でも集中する力を持っています。
子ども自身が「集中したい!」というほど情熱と好奇心を持った対象に対しては、子どもは集中します。
集中は「子どもの中から自然に生じるもの」であり、大人がさせるものではないのです。
大人は「勉強」に集中してほしいと思っている。一方で、子どもは「手持ちのレゴで、いかにカッコいい車を作れるか」に集中したいと思っている。
こんな感じで、集中してほしい・集中したい対象に、親子でミスマッチが起きているだけ。
子どもの集中力のために。大人がやってはいけないこと
集中力をつけさせるために、何か特別なことをするのではなく、むしろ、子どもに集中力を発揮させたいなら、親がやってはいけないことが2つあります。
一つは、子どもの興味や好奇心を、ばかにすること。
枝やら小石やらセミの抜け殻やら、親からしたら「…?」と思うようなものに、子どもは全神経を注いで熱中します。
「そんなのどうでもいいから、早くしてよ!」「なんでいつもこんなものばっかり持って帰ってくるの?」と言いたくなる気持ちは山々ですが、まずは「すごく楽しかったんだね」「すごい集中力だね」の一言で迎えてあげたいものです。
親が一緒に、枝や小石やセミの抜け殻に、死ぬほど夢中になる必要はありません(というか、なれない人がほとんどだと思います)。
そうではなく「子どもが好奇心を持っている」という事実に、親が気づき・認めてあげられれば、それでいいのです。
二つ目は、子どもの集中を邪魔すること。
ただ、土をいじって遊んでいるようにみえる。ただ、上着のジッパーが上げられずに、ずっと手こずっているようにみえる。こんな瞬間に、実は子どもは全力で集中しています。
モンテッソーリの基礎にもありますが「子どもの集中の邪魔をしない」のが、親の大切な役割の一つ。
「遊んでないで、さっさとやることやって!」「はいはい、ジッパーはこうするの」という親の一言や、親の手助けが、子どもの集中を邪魔しかねません。
もちろん朝の慌ただしい時間に、悠長に対応できません。
でも1週間のうちに何回かは「ああ、今とっても子どもに声をかけたいし、手伝ってあげたいけど、子どもの集中を邪魔しないんだぞ!」と意識して行動できる瞬間があると良いですね。
親の仕事は「イイトコロ」さがし
大切なのは「好奇心」。
そのために、子どもが好奇心を持てた瞬間に気づくこと、子どもの集中を邪魔しないこと。
とはいえ、具体的に親として何をしたら良いのか、やっぱりよくわからないですよね。
子育ての本質って、こういうモヤモヤしたところにあるよなぁと思います。
あえてシンプルに言えば、親の仕事は子どもの「イイトコロ」さがしです。
これは精神医学や心理学でも大切な概念で、とにかくどんな人にも「強み」「長所」がある、という前提で接するというものです。
たとえば、パズルが知育に良いと聞いて、やらせてみたものの、全然ハマらない。
「ああ、この子は集中力もないし、粘り強さもないし、賢くもないんだ」と考えがちです。脳科学的にも、脳は欠点に目がいきやすいもの。
でもそんなときに意識して、「この子は、パズルなどの収束的思考よりも、布1枚だけでヒーローを1時間演じられたり、延々とおままごとができたりする、拡散的思考に長けている子なんじゃないか?」と捉え直してみる。
こうして日頃から意識して、子どもの「イイトコロ」に目を向けるようにするのが、保護者に必要なトレーニングです。
常に動き回っていて「落ち着きがない」などと言われる子も同様です。
このような子は、なんとか落ち着かせて席に座らせようとしても、うまくいきません。
とにかく体の五感で刺激を常に受けていたいタイプなので、逆に思う存分動き回ることで、集中力が発揮されます。
実際に、発達の特性のない子どもや成人でも、体を動かすことは、認知能力のアップにつながることは数々の研究で報告されています。
校庭で遊んだ後や、スタンディングデスクのほうが集中力が高まったり、実行機能が高まったりするのです。
「体から刺激を取り入れることで、集中力が高まるという自分の体質を、この子は体得しているんだな」と捉えてあげることが大切です。
もちろん発達の特性によっては、捉え直しなど心理的なアプローチだけでなく、具体的な行動療法や投薬などの医学的な対応が必要な場合もあります。
ただし、発達の特性がある子こそ、日頃からの「保護者によるイイトコロさがし」は重要です。
子どもが人生を謳歌する、たった1つの最強アイテムは「好奇心」。
好奇心を原材料として、集中力も育まれること。
親はその好奇心をバカにせず、集中力を邪魔せず、「イイトコロ」さがしに努めること。
私も二児の母として、毎日心がけていきたいなと思います。
子どものイイトコロを見つけたい方はこちら
参考文献
高卒シングルマザーがわが子をucla特待生に育てた45の方法
the self driven child 脳科学が教える「子どもにまかせる」育て方
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