【インタビュー】学校ではない居場所を選んだ理由〜フリースクールという選択肢〜

お母様:

フリースクールに行き始めたのは、小学校2年生の時からです。

幼い頃から感情が敏感な子だったので、息子の特性を踏まえてどんな環境がいいか、小学校に入る前からいろんな可能性を検討していました。

公立か、私立か、オルタナティブスクールか、など色々情報を探しました。

その時はコロナ禍で見学にも行けなかったので不透明なことが多く、情報だけで決めることがベストではないと思っていました。「行ってみて合わなかったら変えよう」という気持ちで、公立の小学校に入れました。

小学1年生の時は学校に行けていたのですが、2年生になって、大きな声で怒る先生が担任になってから息子が「あの先生がいるなら行かない」と行き渋りが始まりました。

息子は、友達と遊んだり勉強すること自体は好きだったので、学校には行きたいという思いはあったみたいです。

お母様:

他の子が怒られているのに、自分が怒られているようになったり、人の気持ちに影響されやすいです。

先生は、子どもたちが喋っていると、保護者が近くにいても、「うるさい!黙れ!」と怒鳴ります。

この先生は学級崩壊を立て直した実績があったようで、学校からの評価も自分の評価も高かったようです。

先生ご自身は、「子どもたちを育てるために、勘違いしないように怒っている」といった感じでした。

お母様:

心理検査(WISC)を受けました。小学1年生の夏の時です。

結果は、できることとできないことに大きな凸凹があり、スコアは高いものだと120、それ以外は平均で、1つだけ90くらいの分野がありました。

息子は読み書きに困りごとがあるのですが、心理検査を受けてみて、それが自分のせいではなかったという安心感はあったようです。

お母様:

当然ですが、遊びが好きですね。

逆に、みんなと一緒に同じことをやらないといけない状況を嫌がります。

学習障害(LD)の傾向があるので、読み書きは苦手です。

学校の評価は、多くが読み書きのようなもので評価されるので、学校の勉強に対する苦手意識が大きくなったと思います。


お母様:

心理検査の結果を学校に提示して、読み書きに困りごとがあったのでiPadを持ち込むという対応を認めてもらいました。

板書を取ったり連絡帳を書くことが難しかったのですが、その点では息子は楽になったと思います。

ただ、板書は普通先生が書いているときにとるのではなく、授業の終わりにまとめてとらないといけないという制限がありました。

なので授業中にみんなが板書している時間はやることがなかったし、板書をして理解できることもあると思うのでみんなと同じペースで理解を深めることが難しかったようです。

また、周りの友だちからは、iPadを持ち込んでいることを「ずるい」と言われ、”特別扱い”をされていることを責められたこともありました。

お母様:

2年生の時の先生は、息子のような子どもの状態やその理由を全く理解していなかったです。

説明しても伝わらないですし、理解しようとしているのか疑問でした。

先生自身も、もちろん周りの子どもたちに説明ができないです。

1年生の時の先生は全く違って、発表する時でも息子に事前に「一番最初に当てるよ」と答えやすいように発表順の調整をしてくれたり、先生が声に出して息子のために文字を読み上げてくれたり、穴埋めの問題を用意してくれたりと個別に対応してくれていました。大変ありがたかったです。

2年生になってから、担任の先生も対応も変わったので、私が学校に付き添って授業中に息子の代筆と代読をすることになりました。

当時は、私が付き添えば息子は学校に行ける状態でしたし、学校も付き添いを受け入れてくれていました。

私は、息子に学校に行きたいという気持ちがあるなら、その気持ちを応援しようと思っていたのでできるだけの対応をしていました。

ただ、さすがに毎日はしんどいので、ボランティアセンターにお願いして学生が週次で付き添ってくれたりしていました。

それでも毎回誰かが付き添えるわけではないので、付き添いがいない時には、担任の先生から「書きなさい」「やりなさい」と言われるんです。

心理検査の結果や意見書を出して、何度も学校に話をしたのですが、iPadの持ち込みなど今の対応水準が限界で、「たった1人のこの子のためにだけに、これ以上の対応はできない」とも言われました。

学校全体での対応は難しくても、担任の先生個人が理解してくれている場合があると周りからも聞いていましたし、1年生の頃の先生の対応も見ていたので、工夫一つで学校に行けるのになと思います。

お母様:

今でこそ、支援級に入れる子どもの状態の範囲は広がりましたが、当時は知的に遅れがなかったため入れませんでした。

あとは、周りの友だちからかいも息子が気にしていたので、支援級に入るという選択肢はなかったですね。

入ったとしても、当時の支援級の担任の先生は知的に遅れのある子どもの対応のプロの先生なので、知的に遅れのない息子のような状態の子どもにとっては快適ではないとわかっていましたから。


お母様:

最初は教育センターに相談しました。学校に行けなくなった子ども達の相談を受ける場なので。

ただ、そこでは、「学校に行くしかない」と言われただけでした。

とても残念なことでした。行政には頼れないな、と思いました。

お母様:

はい、息子は心理検査の診断が出ていたので、スクールカウンセラーに相談し、早い段階で学校以外の選択肢もあるよということは言われていました。

学校と学校以外の場所を併用できることも教えてくれました。

ただ、具体的にどんな場所があるかなどの情報を教えてくれるわけではなかったですし、自分で探すとなっても、小学校低学年だと学校以外の選択肢が本当になかったんです。

当時私が見つけたフリースクールは、遊びが中心の場所が多かったのですが、息子の場合は勉強に対する意欲もありましたし、ある程度勉強を見てくれるところが良かったんです。

オンラインでの勉強の機会を探しても、小学校低学年の情報はなかなかなくて、色々調べたり試したりしましたが、ゲーム中心だったりほとんど自由時間というような場所が多かったです。

今でこそ、色々な機会があるということを知れたのですが、当時は息子の気持ちや状態に合った有益な情報を見つけることができなかったです。


お母様:

小学2年生の時に行き渋りが始まったので、学校以外の居場所を見つけておきたいと思って探し始めました。

公立と私立が併用できないのと、先生や友だちの言動によって傷ついているところもあったので、ペースダウンして、自分のペースで学べるところを選びました。

オンラインとかではなくて、リアルな環境で周りの人と話したり勉強ができる、小さい学校みたいな場所があったらいいね、ということを息子と話していました。

今行っているフリースクールはそんな場所です。息子にも合っていると思います。


お母様:

学齢期で一番大事なことは、面白い大人にたくさん出会うことだと思います。

たくさん色んな刺激を受けて、色んな価値観を知って、鍛えられることが大切だと思います。

学校に行かなくても学べる場所はあります。ただ、学校ってやっぱりいろんな機会が用意されていますよね。

学校に行かないと親のマンパワーが必要ですし、子どもの出会いと体験も少なくなります。

子どもに何を与えられるか、という点では学校に行くのと行かないのでは大きな差になると思います。

子どもって居場所が必要ですし、何が好きか見つけるためにも、学校であっても学校以外の場所であってもいろんなきっかけが必要だと思います。


お母様:

子どもたちには、自立した人間になって、好きなことをできる環境で、笑っててほしいなと思います。

そのために、何事も、選択できるということを知っていてほしいです。

息子が学校に行けなくなったあの当時は見つけられなかったですが、今になると選択肢はいっぱいあったなと思います。

今回のインタビューから、多様な教育選択肢の重要性とそれに伴う苦労が伺えました。

特に、発達の特性がある子どもたちに対して、まず学校がきちんと理解しようとすることと、個別のサポートの必要性を再確認することが必要です。

子どもたちが自分のペースで学び成長する場は、学校ではなくてもいいという人もいれば、やっぱり学校に行って欲しいという人もいると思います。

選択肢は多様ですし、子どもの気持ちに寄り添いながら試していくことが必要なのでしょう。

具体的にどんな状態であればこのような場所がある、など、子どもたちの状態や得意不得意、目指したい方向をよく理解して、模索して、選択肢を提供することの価値は計り知れないのです。

この記事が、同じような状況に悩む親御さんの参考になれば幸いです。