反抗期はなぜ起こる?ないと心配?なくても問題ない場合とは

小学校高学年頃の思春期に入れば、反抗期が訪れます。

子育て中の親御さんにとってはあたり前のような常識的な知識としては持っていることでしょう。

お子さんの発達として一般的なものではありますが、必ずしも反抗期を迎えるばかりではありません。

親など大人への反抗は発達のプロセスとして一般的ではありますが、親子関係の在り方によっては反抗という言動が現れない場合もあります。

それはお子さんに問題があるということではなく、親子関係の在り方で反抗する必要性がないのです。

そんな在り方を作っておけば、反抗期を軽く、あるいは迎えないままに青年期になることもあります。

この記事では、反抗期の有無を軸に、親子関係の在り方について解説していきます。

この記事を書いた専門家

日塔 千裕


公認心理師、臨床心理士

発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。

子育てをする中では、あるいはご自身の成長過程での経験上、「子どもには反抗期がある」というのは誰もが認識していることでしょう。

反抗期は、概ね小学校高学年から中学生頃の時期に生じます。

早いと小学校中学年から現れたり、遅いと高校生まで続いたりする場合もあります。

反抗期があることはあたり前と思われていることは多いですが、必ずしも全員が反抗期を経験するものではありません。

明確な反抗期と言えるような状態にならなかったというケースも多数存在しま。

反抗期がないことがすぐに問題となることではありませんし、反抗期がないことによる心配なケースも、もちろん存在します。

そもそも反抗期とはなぜ起こるのでしょうか。

成長過程の中で、状況を見る力、考える力、判断する力、自分の感情を理解する力…とさまざまなスキルが高まってきます。

自我が強くなり、自分の意思もはっきりしてきます。

反抗期

「自分はこうしたい」「自分はこう考える」などが強く出てきた中で、周囲から「これしなさい」「こうした方がいいよ」などと助言や指示をされることに対して、疎ましい感情が出てきて、反抗という態度や行動で示すことが多くなるのです。

成長している証とも言える言動ではあります。

また、反抗的な態度・行動ができるということは、家庭が安全基地になっているという証でもあります。

多くの場合は、反抗しても親に見捨てられないという安心感がお子さんの潜在的意識の中にあるからこそ、現れる言動とも言えるのです。


反抗期がないと心配な場合の一つは、親が高圧的・威圧的で、子どもにものを言わせないようなタイプの場合です。

お子さんにとっては反抗したくてもできない関係性であり、お子さんの成長面で心配になってしまいます。

お子さんの意思や感情に目を向けてもらえないとお子さん自身が感じ、成長過程の中で感じるようになってきているものを表に出さず、抑圧している状態と言えます。

そのような状態が必ずしも問題行動となるばかりではないので、心配という表現で記載しています。

お子さん自身の性格や能力、家庭以外の環境における人間関係等によって、問題行動としては表現されない場合もあります。

ただ、人間関係の築き方やコミュニケーションの取り方などは、親子関係を基盤として形成されていくため、基盤となる親子関係が健全とは言える状態ではありません。

故に、それが人間関係の歪みや、周りから見るとうまくできているように感じられることもお子さん自身は葛藤を抱えていたり、それをうまく周囲に伝えたり助けを求めたりすることができずに一人で抱え込みすぎてしまったりするなどといった、精神衛生上の課題を抱えることになる場合があるからです。

反抗期

たとえ、10歳そこそこの子どもであったとしても、親とは異なる、別の人格を持つ人間であり、親とは異なる感性・感情・意思を持つ一人の人間です。

「子どもだから」と親の意見・考えを押し付けるばかりではなく、子どもの気持ちや意思を聴き、受け止めていくことが大切となります。


反対に、反抗期がなくても問題がない子とは、どのようなケースでしょうか。

そもそも「反抗」とは、お子さん自身が自分の意思・感情とは異なる助言・指示をされた場合に起こる反応、または、お子さんの意思や感情を聴いてもらえないままに、助言・指示をされた場合の反応です。

たとえ、親の助言や指示が、お子さんの意思や感情に合致・近いものであったとしても、プロセスとして聴いてもらえずに一方的に押し付けられたと感じた場合も反抗になって現れるでしょう。

したがって、親からお子さんに対する一方的な助言・指示が多ければ、その分、反抗というお子さんの言動も多くなる傾向があります。

反抗期

逆にいうと、日頃からお子さんの意見や考え、気持ちなどをしっかり聴いていて、それを踏まえて、一緒に考えて、お子さん自身が判断・決断している、といった親子のコミュニケーションが取れているようであれば、反抗の余地がないのです。

そのプロセスの中で、親御さんが助言をしたとしても、お子さんの話を聴いたうえでの助言であることをお子さんも理解しています。

話を聴いてもらえていることで、親御さんからの助言も受け止めやすくなるのです。

このような場合は、お子さん自身がしっかりと意見や考え、気持ちなどを言語化して、親御さんに伝えることができています。

そして、親御さんも、そのお子さんの意見や考え、気持ちを受け止め、それらを尊重して、一緒に考える姿勢で対応していることでしょう。

お子さんが自身の内面を言語化し、それを受け止めてくれる人がいて、親御さんがサポートしながらも、どのような対応ができるとよいかを考えるプロセスを一緒に経験している。

これは、人間関係における、とても安定的な関係性を築くことに重要な役割を果たしてきます。

つまり、このような親子コミュニケーションが取れている場合には、反抗期がなくても問題はないのです。

先ほどお伝えした通り、

といった対応をすることにより、反抗の余地はないのです。

「〇〇しなさい!」

「もう〇〇する時間でしょ!」

「〇〇しないならご飯あげないよ!」

などと慌ただしい日常の中では、どうしても親御さんからお子さんに対する指示が多くなっていないでしょうか。

特に働いている親御さんは、限られた時間の中で、家庭内の多くのことをやらないといけないため、常々、お子さんのペースで、お子さんの話に耳を傾けるということは難しいと思います。

お子さんは、親御さんに話したい、聴いてもらいたいと思っていることは、たくさんあるはずです。

お子さんは言語能力も発達途上のため、簡潔な説明は難しかったり脱線も多かったりすることもあるでしょう。

忙しい親御さんにとっては、「早く話して!」「そんなつまらない話で、こっちの手を止めさせないで!」と感じることもあるかもしれません。

親御さんにとっては“どうでもいい話”でも、お子さんにとっては“体験を親御さんに共有したい”のです。

親御さんのイライラをお子さんにぶつけてしまうと、親御さんに対して「話を聴いてくれない!」とお子さんは感じて、話すことを止めてしまいます。

その中で、親御さんから一方的な助言や指示をされると、強い反抗が返ってきたり、反抗期の時期が長くかかったりします。

反抗

以下では日常の中でできる「反抗」を減らす方法をお伝えします。


全場面で、どんなタイミングでも、すべてお子さんの話を聴くというのは、現実的ではないでしょう。

生活習慣としての歯磨き、食事、お風呂、就寝などの指示はしたとしても、

・食事の時間だけは同じタイミングでテーブルについて、お子さんの話にしっかり耳を傾ける。

・寝る前の時間に、一日の出来事を話す時間を作る。

など、一日の中で、この時間だけはお子さんのペースで話を聴く時間を作ろうと決めることも方法でしょう。

これは、年齢の低いうち、小学校入学前から習慣化しておくと、良好な親子関係の構築になり、反抗期もかなり軽減されるはずです。

もう小学校入学しているという場合でも、夕飯の時間だけは同じタイミングでテーブルについて一日の出来事を話す時間として、お子さんのペースで話を聴く時間にするように心掛けてみましょう。

傾聴

ただ、これまでの状況次第では、いきなりお子さんに話をするように仕向けても、「別に」「普通」と語ってくれないことはあり得ます。

そのような場合は、まず親御さんから仕事のことや買い物時や通勤時の出来事など、お子さんに聴いてもらうということも方法です。

親御さんが開示したうえで、お子さんに「あなたの一日はどんなことがあった?」と聴くとお子さんも話しやすくなります。

愚痴であったり、ホントにたわいもない、ちょっとした出来事への遭遇であったり、お子さんとは言え、友達に話すような内容を親御さんが話す姿を見せることで、お子さんも“話してもいいんだ”という感覚がジワジワと沸き上がってきて、少しずつ話してくれるようになる場合も多いです。

反抗期中でも、食事は一緒にできるなどの場合には、活用可能な方法ですので、ぜひ試してみてください。