【インタビュー】家庭で育む未来の天才たち〜ギフテッド・チルドレンを持つ親として〜

今回は、小学校5年生のギフテッド・チルドレンの男の子のお母様のT様にインタビューをさせていただきました。

ギフテッド・チルドレンとその家族が経験する特有の課題を理解するヒントをご紹介します。

ギフテッド特集

―お子さんについて、簡単に教えてください。

お母様:こだわりが強く、知的好奇心が異常に強いです。学校から勧められた病院で心理検査を受け、高知能だということがわかりました。好きなことは、マインクラフトやレゴなどです。鉄道も大好きです。

―お子さんがギフテッド・チルドレンだと気づいたのはいつですか

お母様:「そうかな?」と思うことが振り返ってみるとよくありました。息子の興味の対象が、特定のものに向けられていることや、何かに没頭するときの集中力が、ただの好奇心の強さを超えているように感じたのがきっかけですね。特に、子どもが幼稚園に通っていた頃に、幼いながらにレゴで複雑な構造を作ってたりすることがあり、集中すると平気で4時間とか作業しているんです。さすがに親としては心配になりました。鉄道に関しても単に興味があるレベルではなく、年齢に合わないほどマニアックな情報を把握しています。

夫や仲のいい友達に聞いても、自分たちの子どもの頃とは違いますし、ネットで調べてみるとギフテッド・チルドレンだと思ったんです。

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あとは、いつも質問が大人っぽいというか、すごく考えてこの質問をしているのかなということも多かったです。例えば息子が小学校低学年のころ、家族で公園を散歩している時に、「この公園にはなんでこんなに多くの種類の植物があるの?どうしてあの種類の木が一番多いの?」と聞かれたり、「あの種類の木が多いのは、ここの環境に一番適応しているから?でも、それって他の植物には不公平じゃない?」と言われたりしました。さすがにその質問をされて、息子が満足する答えができなかったので、帰って調べようとその場をやり過ごしました笑

―息子さんの行動は、身の回りの世界に強い好奇心があって、物事の後ろにある理由や原因を理解しようとする強いモチベーションの表れですね。単に知識を得て満足するのではなく、その知識を使って身の周りの世界をより深く理解しようとする姿勢が感じられます。ギフテッド・チルドレンが見せる特徴の一つですし、思考の深さと学ぶことへの情熱に溢れていますね。

お母様:そうですね。私自身が、子どもの頃、親に質問を投げかけてもきちんとした答えが返ってこなかったことがすごく嫌だったので、子どもにはできるだけ答えてあげたり調べるきっかけを作りたいと思っていますが、正直いうと、毎回きちんと息子が満足できる回答ができるわけではないです。

でも今の時代は、私たちが子どもの頃とは違っていろんなツールや情報があるので、親として答えを知らなくても、子どもたちに調べさせたり情報を取捨選択する必要性を教えることができれば、子どもの好奇心を最低限は満たせるのでは、と思うようにしています。

私の子どもの頃は、母から「そんなこと辞書で調べなさい」とよく言われてましたが、辞書に知りたいことが書いているわけないですよね笑

―ギフテッド・チルドレンに関する情報はどこで得たのですか?

お母様:基本的にはインターネットで調べました。専門家が書いた記事や、ギフテッド・チルドレンを持つ親のブログも見ながら、できるだけ実体験に基づく情報を探しました。

ただ、整理されていて、かつ信頼できる情報をまとまって見つけることはできなかったです。知り合いにもギフテッドの親御さんがいるのですが、地元の教育機関とか、大学と連携している支援プログラムを利用して、なんとか情報を得たと聞きました。

地域ごとに窓口も違うし充実度も違うし、正直、個人的には参考にならなかった情報の方が多かったです。通っている学校の先生や特別支援級の先生も十分な情報を持っていなくて、満足する情報に辿り着くことがどれだけ大変か痛感しましたし、不安でした。
役に立った情報といえば、ギフテッド・チルドレンの親のためのオンラインフォーラムとかコミュニティです。同じような状況にある他の家族と情報交換を行い、経験談や助言を共有したことが一番ですかね。情報はもちろんですが、いろいろわからないことがある状況で、精神的にもサポートになったと思います。

―先ほど、不安などのキーワードが出たと思うのですが、具体的にギフテッド・チルドレンであるが故に、生活で大変なことや困っていることなどはありますか?

お母様:息子の場合、こだわりが強いのと、不安症なので、例えば、予定していたことが変わったりすると癇癪を起こしたり不安になって取り乱すことがあります。子どもらしい反応とも言えるのですが、「今日行くって約束したじゃん!なんで変更しなきゃいけないの?」と何度も繰り返したり。事前に決められた計画の変更が理解できず、他の子どもよりも変更に対応することが難しいのかなと思います。

その時は、計画が変更された理由を落ち着いて説明し、体調が良くなったら別の日に行くことを約束して、その日家でできる活動を一緒に考えたりして気持ちを切り替えさせるようにしました。

ー予期せぬ変更に対して子どもがどのように反応するかを理解し、不安を感じる時にどのように安心させ、さらに感情をコントロールするのを助けることができるかについて試行錯誤することは大変ですが、私たち大人も成長する機会ですよね。

お母様:そうですね、できるだけ丁寧に接しないといけないですよね。どんなことに不安を感じたり怒ったりするのか、対応も含めてパターンが分かれば楽になるので。

あとは、息子はよく自分の知識や論理を使って、なぜ、そのルールや指示が「不合理」か説明しようします。塾の先生に対してもそんな感じで話すので、先生からすると口ごたえしていると捉えられて、あまりいい印象ではないですよね。「今からこんなに勉強しちゃうと、もっと頑張らないといけない時に頑張れなくなる。僕には自分のペースがあるんだ」という感じです。

大変なのは、息子の論理が正しいときですね。感心はするのですが、それがルールとか日常生活の流れを乱す原因となることもあります。たとえば、就寝時間について、息子が「なんで僕は8時半に寝なければならないの?研究によると、子供の睡眠時間は年齢によって変わるけど、もう少し遅くても大丈夫なはずだよ」 とか、「もっと起きていられたら、今読んでいる本をもっと読めるし、なんで早く寝ないといけないの?」とか言ってくるわけです。

健康のことも学校生活もあるので、親としては規則正しい生活リズムを守ることの重要性を説明することが王道だと思うんですが、息子の論点は一見合理的ですし息子の知的好奇心や学ぶことへの情熱からくるものなので一概に抑えるのは難しいですね。

他にも、「なんで宿題をしないといけないの?授業でやったことを家でもやるのが大切なのはわかるけど、僕はすでに理解しているし、この時間をもっと〇〇のことに使いたい」と説得してくるんです。

―お子さんの意見を尊重しつつも、ルールとかルーティーンの重要性とか、子どもたちにとって長期的に見ていい選択ができるためのバランスを見つけるのは難しいですよね。

お母様:そうなんです。実際はきちんとできないことの方が多いですね。イライラしまうこともありますし。特性の一部であると理解するようにしています

―学校では友達とうまくやっていますか?先生との関係も教えてください。

お母様:そうですね、同じ趣味で仲良くしている友達は多いと思います。マインクラフトやレゴが好きな友達とか、学校でも特に同じ興味を持つ子どもたちと楽しそうにやっています。

知り合いのギフテッド・チルドレンの親御さんは、お子さんの正義感とか権威への拒否感が強いので、クラスメイトに攻撃的になったり、難しい話が合わないとかで学校に行くことが嫌になっているという状況も聞いたことがあります。

先生との関係については、一部の先生は息子の好奇心を理解して、それを育てるための努力をしてくれていると感じますね。例えば、追加の課題を出してくれる先生もいます。一方で、息子の特性やニーズを完全に理解し対応するのが難しいんだろうなと感じる先生もいます。

高い知的好奇心とか議論したがる傾向が、授業の流れを乱すことになる場合もあるので。
息子の質問で授業が中断されて、予定されていた流れから外れることが多いと担任の先生からも遠回しにですが言われました。幸いにも他の子どもたちも息子の質問とか話題に興味を持つので、先生はこの機会を利用して、追加の説明をしてくれているらしいのですが。

ー先生方に柔軟な対応をしていただけると、息子さんの学びに対する異常な情熱も支えて学びを豊かにできるので貴重な機会ですよね。一方で、授業の目的や他の子どもたちのニーズとのバランスもあるので、学校としても対応が難しいのでしょうか。

お母様:そうだと思います。なので、先生たちともコミュニケーションを取って、息子のニーズや特性をよりよく理解してもらうようにしています

学校での友達作りや先生との関係は、息子にとっても私たち親にとっても簡単ではないと思いますが、息子が社会性を身につけたり、いろんな人との関わり方を学ばないといけない機会です。親としては、息子が前向きに学校生活を送れるように、見守って、理解を示し続けることが大切だと思っています。

―中学受験もするという予定を伺っていますが、受験勉強については進んで取り組んでいますか?

お母様:最近は、自分がしたいことの時間が塾などでどうしても制限されるので、あまり前向きではないです。息子は特定のトピックに強い関心を持つと、それに対する自分の探求心を満たすことに全ての時間を費やしたがるため、他の必要な活動に移るのが難しい時もあります。

正直なところ、親としてもバランスを見つけるのが難しいです。息子が持つクリエイティビティと知的好奇心を、受験勉強によって抑制されるかもしれないという感覚はあります。受験勉強は、決まったことを決まったやり方で、決まった正解を導き出すための修行のようなものですから。学業の基礎をしっかりと身につけさせることは社会に出るために大切と認識はしているんですが、今持っている息子のクリエイティビティや好奇心を十分に発揮させることの間でのジレンマです。

効果があるかわからないですし、私も試行錯誤しながらやっているのですが、クリエイティビティを維持するために、学業とは別に自由に好きなことを探求できる時間は、息子としっかり相談しながら確保しています。マイクラやレゴをしたりする時間です。そうやってバランスを取ることで、受験勉強に必要な集中力と努力を促しつつも、創造性と好奇心を失わずになんとか続けることができている気がします。

ー受験勉強が、お子さんの学びや成長の過程で、ただの義務ではなく、興味と探求の一部となるように、サポートされているわけですね。

お母様:成績が下がったりする時には、正直親としても少しは不安になりますし、息子が言い訳をしたり反発をしたりすることもありますが、息子自身も、学びと成長のために何が最善かを模索している証だと思います。

私たちは、息子の意見を尊重して、一緒に最適なバランスを見つけたいと思っています。

―学校や社会に、どんなことを期待しますか?

お母様:まずはやっぱり子どもたち一人ひとりの興味、能力、学習スタイルに合わせた教育プログラムになることですね。学校も大変だと思うのですが、それをわかった上で申し上げると、子どもたちが可能な限り自分のペースで学び、成長できる環境です。

標準的なカリキュラムに加えて、特定の分野への深い関心に応えるための追加的な学びの機会がもっと手軽にアクセスできるとよりいいです。わがままかもしれないですが、子どもたちが自分の関心を深めて、新しい知識を現実世界の中で適用する経験を積むことができるとベストですよね。

息子もそうですが、ギフテッド・チルドレンは、社会的スキルや感情的な側面での支援が必要な場合もあります。学校や家庭という環境だけでなく、子どもたちがコミュニケーションスキルを育てて、いろいろな人と関わるための機会があればいいなと思います。

  

ギフテッド・チルドレンとその家族が経験する特有の課題に対して、理解と支援を提供するコミュニティの存在、学校や社会が各個人の個性を尊重し、異なる能力や興味を持つ人々が共に学び、成長できる多様性を受け入れる文化を育む重要性を改めて感じました。
親のネットワーク、教育者、専門家が連携し、情報共有や経験談の交換を通じて、家族が直面する問題に対処できるシステムが整っていることが望ましいです。
子どもたちが、自分自身の可能性を最大限に引き出し、豊かな学びと成長の経験を享受できるようにするため、ギフテッド・チルドレンだけでなく、すべての子どもたちがそれぞれの能力や興味に応じた機会を得る必要性を、今回お話を伺って改めて痛感しました。

ギフテッド・チルドレンの学ぶ環境として、先でお伝えしたように、追加的で挑戦的な学習環境の提供がポイントです。

才能発掘診断では、ギフテッド・チルドレンの傾向があるお子さんの場合でも、どんな学習スタイルが合うか調べることができます。