心理士監修が解説 多重知能理論とは?8つの知能別「才能の伸ばし方」

 心理士監修が解説 | 多重知能理論とは?8つの知能別「才能の伸ばし方」

「うちの子は勉強が苦手だけど、絵を描くのはすごく上手」

「パズルや実験に強い興味があるのはなんでだろう」

ご自身の子どもに対して、このように感じたことはありますか?

親子でも得意不得意に違いがあります。

「多重知能理論(MI理論)」を提唱したアメリカの心理学者ハワード・ガードナー博士は、私たち人間の知能は1つではなく、8種類のタイプに分かれていると考えました。

この記事では、8つの知能タイプ別に才能の芽をどう見つけ、学びや日常生活の中でこの概念をどう活かすかを臨床心理士が解説します。

それぞれのタイプの行動の特徴や強みもご紹介していますので、ぜひご家庭で今日からできるヒントとしてご活用ください。


多重知能理論は、私たち人間誰もが、以下の8つの知能を異なるバランスで持っているとした考え方です。

  1. 言語的知能
  2. 論理数学的知能
  3. 空間的知能
  4. 音楽的知能
  5. 身体運動的知能
  6. 対人的知能
  7. 内省的知能
  8. 博物的知能

近年、小学生に対しMI理論を活用した調査研究では、自分の得意を知った子どもたちが自己有用感(自分が他者や世の中の役に立っている)に良い影響をもたらすことがわかっています。

※ガードナー博士は、1983年に「博物的知能」以外の7つの知能を提唱し、1999年の研究で「博物的知能」を追加しました。また、「実存的知能」と「霊的知能」の存在も検討されていたそうです。

多重知能理論の概要は、以下の記事で詳しく解説しています。

以下では8つの知能タイプ別に、特徴と才能の伸ばし方を紹介します。

言語的知能


こんな特徴がある子どもは、言語的知能が高いです。

  • 物語を作るのが好き
  • よくおしゃべりをする
  • 新しい言葉に興味を持ち覚える

この才能を伸ばすためには、子どもが言葉を自由に操れる環境を整えてあげることが大切です。


日頃から子どもの言葉を大切に扱い、表現する場をたくさん作ってあげましょう。

会話のキャッチボールをすることで、語彙力や思考力が自然と豊かになります。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・読書:子どもに本を選ばせて読む機会をつくりましょう。幼い子どもなら、一緒に読むのも良いですね。感想を語り合ったり、登場人物の気持ちを想像する会話を楽しんでください。

・対話:子どもの話に耳を傾け、積極的に「そう思ったのはどうして?」と会話を広げる質問をしてみてください。時折、親の考えも伝えて議論を深めてもいいですね。

言語的知能の高い子や言語的知能を高めたい子には、言葉を使い、表現する楽しさを伝えることで、才能を開花させていきましょう。

論理数学的知能


 こんな特徴がある子どもは、言語的知能が高いです。

  • 物事に関心を持ち、よく質問をする
  • パズルやクイズが好き
  • 数字を扱うことが得意

論理数学的知能は、科学や技術分野だけでなく、複雑な問題を解決する力や物事を筋道立てて考える力にもつながっています。


子どもの「なぜ?」という探究心を大切にし、一緒に考える姿勢を見せましょう。

たとえば、日常生活や学習においてで次のような機会を増やしてみてください。

・科学館や水族館へ行く:子どもの知的好奇心を満たす活動を積極的に取り入れましょう。実際に行くだけでなく、図鑑や実験キットの活用もいいですね。絵本よりも図鑑や少し難しい本を好む子も多いです。

・親からも問いかける:「このおもちゃ、どうして動くんだろうね?」といった問いかけを親からも行ってみましょう。これは、論理数学的知能を高めたい場合にも役立ちます。 

このような取り組みを通じて、子どもは自ら答えを見つけ出す喜びを経験し、論理的な才能をさらに伸ばしていきましょう。

空間的知能(視覚)


 こんな特徴がある子どもは、空間的知能が高いです。

  • 絵を描くのが得意
  • 立体的なものを組み立てるのが好き
  • 地図を読むのが上手

空間的知能は、デザインや建築、エンジニアリングなど、多くの分野で役立つでしょう。


子どもの「イメージする力」を大切に育みましょう。空間的知能は、図や絵を描くことだけでなく、物事を多角的に捉え、複雑な情報を整理する力にもつながります。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・立体的な遊び:LEGOやブロック、プラモデルなど、想像力を使って立体的なものを作る遊びがおすすめです。作ったものを説明してもらったり、質問したりすることで考える力も育みます。

・写真や動画を撮影してもらう:構図の意識がもしかすると親とは異なるかもしれません。「ママとパパを撮って」とお願いしたり、トイカメラやスマホなどで、公園内の写真を取ってもらうのも良いでしょう。

子どもの作品自体だけでなく、アイデアや工夫にも着目してあげてくださいね。

音楽的知能


こんな特徴がある子どもは、音楽的知能が高いです。

  • 音の違いに敏感である
  • 楽器を弾いたり歌ったりするのが好き
  • リズム感が良い
  • 作曲や演奏に集中する

音楽的知能は、音感やリズム感だけでなく、感情を豊かに表現したり、集中力を高めたりする力にもつながります。


子どもが音を楽しむ姿を大切にし、自由に表現できる環境を整えてあげましょう。音楽は、言葉では表現しきれない感情や感覚を伝えられる手段の1つです。

音楽的知能を育むことで、子どもは自分自身の想いをより表現できるようになり、感受性も豊かになります。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・多様な音楽に触れる:クラシックやジャズ、J-POPなど、さまざまなジャンルの音楽を一緒に聴いてみましょう。好きな楽器に挑戦するのも素敵です。

・音楽の背景を知る:「この曲はどんな時に作られたのかな?」と、音楽の背景にあるストーリーに触れることで、より深い学びにつながります。

音楽のスキルを追求するだけでなく、音をさまざまな方面から楽しむ気持ちを大切にしてみてください。

身体運動的知能


こんな特徴がある子どもは、身体運動的知能が高いです。

  • 体を動かすことが大好き
  • 表情やジェスチャーが豊か
  • スポーツやダンスが得意

身体運動的知能は、スポーツやダンスだけでなく、料理や工作など、体を使って表現する活動につながっています。


体を動かす楽しさを知り、動作を深く理解できる環境を整えてあげましょう。体を動かすことで、五感が研ぎ澄まされ、空間認識能力や協調性も育まれます。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・身体を動かす:スポーツだけでなく、ダンスや演劇、料理やDIYなど、体を使って表現する機会をたくさん作ってあげましょう。ダイナミックに動かすときと、軸を持って腕を動かすときを作ってあげるのもいいですね。

・動作を言語化する:身体を動かすだけでなく、「その動き、どうやって思いついたの?」と、動きの工夫や豊かさに目を向けることで、考える力や説明する力も身につきます。

対人的知能


こんな特徴がある子どもは、対人的知能が高いです。

  • 相手の気持ちを察するのが得意
  • リーダーシップがある
  • 人と仲良くなるのが得意

対人的知能は、コミュニケーション能力や協調性、共感力につながります。


子どもがさまざまな人と関わり、協力する経験を重ねることが重要です。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・コミュニケーションを増やす:同い年の友だちだけでなく、兄弟や年上の子と遊ぶ時間を確保してみましょう。親とも外出や対話を通して、良い関係を築いていきたいですね。

・役割を与える:食器を並べる担当や洗濯物をたたむなど、責任感を持たせるのはいかがでしょうか。また、外出時には「どこに行きたい?」ではなく、定めた条件のなかで子どもに考えさせるのも良いですね。

子どもが人との関わりの中で経験する成功や失敗を、温かく見守り、支えてあげることが大切です。

内省的知能


こんな特徴がある子どもは、内省的知能が高いです。

  • 一人でいる時間を好む
  • 集中して物事に取り組むのが得意
  • 物事を深く真剣に考える

内省的知能は、自己理解を深め、自分らしい生き方を見つけるための大切な力となります。


子どもが静かに過ごせる時間を確保し、向き合う過程を尊重することが重要です。

たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・一人の時間:交流を深めるだけでなく、集中できる静かな環境を確保しましょう。なんでも声をかけるのではなく、干渉しすぎないようにしてみてください。

・自己分析の習慣:日記やジャーナリングを活用してみましょう。また、親子の会話のなかで「今日どんな気持ちだった?」と、自分の感情を相手に伝える問いかけをするのも良いですね。

子どもの内なる声に耳を傾け、その個性を尊重することは、子どもの自己肯定感の向上につながります。

博物的知能


こんな特徴がある子どもは、博物的知能が高いです。

  • 生き物や植物に興味がある
  • 図鑑を眺めるのが好き
  • たくさんの情報を整理するのが得意

博物的知能は、科学者や研究者、生物学者など、探究心が必要な職業で活かされます。


子どもの探究心を満たす環境を整え、好奇心を一緒に楽しむことが大切です。

 たとえば、日常生活で次のような機会を増やしてみてください。

・自然との触れ合い:公園や山、海などへ出かけて自然に触れる機会を増やしましょう。自然との触れ合いは五感を研ぎ澄まし、集中力も高めてくれます。

・探究活動:昆虫採集や植物の観察、図鑑で調べる習慣を大切にしてください。集めたり、調べたものは、分類や整理をすることで知的満足度も高められます。

子どもが持つ小さな「なぜ?」を大切にし、疑問を共に解き明かすことで、探究心はさらなる才能へと育つでしょう。

多重知能理論は、子どもがどんな「得意」を持っているかを親が気づくための理論です。

学校の成績やIQだけでなく、子どもが何に目を輝かせるか、どんな活動に夢中になるか、日々の生活の中で観察してみてくださいね。

参考文献

中村ほか. 小学校低学年の係活動における多重知能(MI)理論の活用 日本学級経営学会第7回研究大会概要集(口頭)2025年

大西 好宣. グローバル時代における多重知能理論の再考:研究推進のための予備的考察と提言 人文公共学研究論集

長谷川 淳一. 多重知能(MI)理論を応用した小学校英語教育:国の共通教材のタスク分類結果を参考にして 慶應義塾大学教職課程センター年報

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