ギフテッドが大人になったら?|特性はどう変わる?子どものうちに育てたい5つの力
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ギフテッドが大人になったら?|特性はどう変わる?子どものうちに育てたい5つの力

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「この子は大人になったら、生きづらさを抱えてしまうのだろうか」

ギフテッドの子どもを育てていると、そんな不安が頭をよぎることがあるかもしれません。

本やインターネットでは、「ギフテッドは大人になっても生きづらい」「人生の意味に悩みやすい」「職場になじめない」といった話をよく目にします。

では、研究では何が分かっているのでしょうか。先にお伝えすると、「ギフテッドは大人になっても生きづらい」という説は、研究では裏づけられていません。

広く一般の人を対象にした大規模な調査では、知的能力の高い大人に、平均して心の健康上の不利は見られなかったのです。ただし、「困りごとを抱えるギフテッドの大人はいない」という意味ではありません。

この記事では、大人になったギフテッドについて研究で分かっていることと分かっていないことを整理し、そこから見えてきた「子どものうちに育てたい5つの力」を紹介します。

この記事でいう「ギフテッド」は、知能検査などで全般的に高い知的能力を示した人(知的ギフテッド)を指します。

ギフテッドが大人になったら?研究で分かっていること

ギフテッドの子どもを大人になるまで長く追いかけた研究は、主にアメリカで行われてきました。子どものころの特徴が大人になっても形を変えて表れることがわかっています。

子どものころの「得意の形」は、大人の進路に表れる

アメリカには、13歳までに知的能力が上位1%と判定された子どもたちを何十年も追いかけている研究があります。

その一つでは、2,409人を25年以上追跡した結果、数学と言葉のどちらがより得意かという「能力の偏り」が、大人になってからの成果が人文系と理工系のどちらに現れるかを予測していました(Park et al., 2007)。

別の研究では、言葉よりも空間を捉える力が得意な子は工学や数学の分野へ、その逆の子は人文・社会科学や法律の分野へ進む傾向がありました(Shea et al., 2001)。子どものころの「何が得意で、何がそれほどでもないか」という形は、大人になってもその人の道しるべになるのです。

多くは大人になって成果をあげ、満足度も高かった

1970年代に数学的な推論で上位1%と判定された約1,650人を、約40年後に調べた研究があります(Lubinski et al., 2014)。対象者からは、書籍85冊、査読付き論文7,572編、特許681件が報告されました。それだけでなく、心の健康、生活の満足度、人間関係の満足度も男女ともに高い水準でした。

興味深いのは、生き方の優先順位が人それぞれだったことです。仕事に費やす時間には男女差があり、「週に40時間以上は働きたくない」と答えた人は女性で30%、男性で7%でした。そして男女ともに、意味のある人生にとっては仕事より家族のほうが大切だと考える人が多かったのです。大人になったギフテッドの幸せは、業績の大きさだけでは測れないといえます。

ただし、これらはいずれもアメリカの同じ才能発掘プログラムの参加者で、数十年前の世代です。今の日本の子どもにそのまま当てはまるとは限らない点には注意が必要です。

心の健康:「誰を調べたか」で結果が分かれる

「知能が高い人は、うつや不安、発達障害が多い」という話を聞いたことがあるかもしれません。この点については、どんな人を調べたかによって、結果がまったく違ってきます。

調べた人主な結果
一般の人を広く集めた大規模な調査知的能力が特に高い群でも精神疾患は多くなく、不安などはむしろ少ない
子どものころに才能を見いだされ、追跡された人業績も生活の満足度も高い
高IQ団体(メンサなど)の会員うつ、不安、発達障害などの報告が多い

英国の約26万人のデータを分析した研究(Williams et al., 2023)では、知的能力が上位約2%の人たちは、平均的な人たちに比べて精神疾患が多くなく、全般性不安やPTSDはむしろ少ないという結果でした。

子どものころの知能が高いほど、30代で強い心のつらさを抱えることが少ないという英国の研究もあります(Gale et al., 2009)。

一方、メンサ会員を対象にした研究では、不調の報告が多く見られました(Karpinski et al., 2018;Fries et al., 2022)。

ただし、上位1%と上位2%の会員のあいだに差はなく、研究者自身が「知能の高さそのものではなく、団体に加わる人の特徴を反映している可能性」を指摘しています。

悩みを抱えて「自分は何者なのか」を知りたくて知能検査を受け、団体に加わる人もいるからです。

つまり、「知的能力が高いこと」と「困りごとを抱えて助けを求めること」は、分けて考える必要があるのです。

なお、IQ145を超えるような特に高い層や、ギフテッドと障害を併せ持つ大人(2E)については、まだ十分に調べられていません。

ギフテッド2Eの3つのパターン | 発達障害の違い・特徴・支援方法を解説

幸せと「生きる意味」

ドイツの研究(Wirthwein & Rost, 2011)では、平均IQ136の大人101人と平均的な知能の大人91人を比べました。

その結果、生活の満足度や仕事、配偶者、友人への満足度には、ほとんど差がありませんでした。ただしギフテッドの群では、「仕事に満足しているかどうか」が生活全体の満足度に強くかかわっていました。

一方、メンサ会員を対象にした研究では、「自分の人生には意味がある」という感覚が弱く、意味を見失う「意味の危機」が起きやすいという結果が出ています(Pollet & Schnell, 2017;Vötter & Schnell, 2019)。

これも先ほどと同じく、限られた集団を対象にした小さな研究です。それでも、意味の感覚を支える手がかりも見つかっています。この点は、後半の「5つの力」で紹介します。

よく聞く「大人のギフテッド」の話はどこまで本当?

一般向けの本や情報で語られることと、研究で分かっていることを並べると、次のようになります。「研究が少なく、まだ分からない」ものが意外に多いことに気づくかもしれません。

よく聞く話研究で分かっていること判定
ギフテッドは大人になっても生きづらい大規模な調査や長期研究では、平均して不利は見られない裏づけなし
知能が高いと、心の不調や発達障害が多い一般の大規模調査では多くない。多いのは高IQ団体の会員の自己報告裏づけなし
子どものころの得意は大人になっても表れる能力の偏りが進路や成果を予測する(米国の同じプログラムの参加者)条件付きで裏づけあり
大人のギフテッドは生きる意味に悩みやすいメンサ会員では意味の危機が強い。小規模な自己報告条件付きで裏づけあり
過度激動(OE)はギフテッドに特有知的なOEを除き、大人ではギフテッドとそうでない人に差がない裏づけなし
過度激動は大人になっても続く子どもから大人まで追った研究が見当たらないまだ分からない
インポスター感を抱きやすい成果の高い集団では広く見られるが、ギフテッドとの関係を調べた研究が見当たらないまだ分からない
職場になじめない信頼できる研究が乏しく、主に自己啓発の本で語られているまだ分からない
発達障害と誤診されやすい臨床家からの懸念が中心で、どれくらい起きているかは不明まだ分からない

判定は、筆者が文献を整理して付けた目安です。「条件付き」は、限られた集団や少数の研究にもとづくことを示します。

過度激動(OE)について

物事を強く深く感じる「過度激動(OE)」は、ギフテッドの特徴としてよく紹介されます。

2026年に発表されたメタ分析(Olszewski-Kubilius et al., 2026)では、OEとギフテッドには全体として関連があり、特に知的なOE(知性OE)で関連が強いことが分かりました。

ただし、差が見られたのは高校生だけで、大人では差がありませんでした。大人を対象としたドイツの研究でも、ギフテッドとそうでない人のあいだで差があったのは知性OEだけでした(Wirthwein et al., 2011)。

だからといって、お子さんの感じ方の強さが「気のせい」というわけではありません。感じ方の強さは、ギフテッドかどうかにかかわらず、その子の個性として大切に受け止めていけばよいのです。

過度激動性(OE)とギフテッドの関係 | 発達障害の違いと特徴、刺激への対策も解説 過度激動(OE)について、ギフテッドのお子さんの日常の支援に役立てられるよう解説しています。 ギフテッドの子どもに多い過度激動(OE)の特徴とは?ADHDやHSPとの違いも解説 OEとは何か、種類と特徴、ADHDやHSPとの違いについて解説します。

「ギフテッド」という言葉の伝え方

アメリカで約100年前に始まったターマン研究の参加者を調べた研究では、「自分は才能児の研究の対象だ」と早い年齢で知った人ほど、中年期に「自分の能力に見合った生き方をしてきた」と思いにくい傾向がありました(Holahan & Holahan, 1999)。

家庭環境などほかの要因もかかわりうるため、「言葉のせい」と断定はできません。それでも、「ギフテッドだから」というラベルより、その子の得意や好きなことを具体的な言葉で伝えるほうが安心だといえそうです。

子どものうちに育てたい5つの力

ここまでの研究からは、大人になったギフテッドが自分らしく生きるためのヒンチも見えてきます。そこから考えられる「子どものうちに育てたい力」を5つにまとめました。

大人を対象にした研究から導いた提案であり、子どもへの効果が確かめられたものではないことをご理解ください。

① 自分の得意と苦手を言葉にする力

子どものころの「何が得意で、何がそれほどでもないか」という形は、大人になってからの進路と結びついていました。だからこそ、「自分はギフテッドだから」という大きなラベルよりも、「図形を頭の中で動かすのが得意」「文章を書くより話すほうが考えをまとめやすい」といった具体的な言葉で自分を説明できることが大切です。

家庭では、「すごいね」「頭がいいね」で終わらせず、「実験の手順を自分で考えたのがよかったね」のように、何がどうよかったのかを言葉にして返してあげましょう。苦手なことも「だめなところ」ではなく「工夫が必要なところ」として、一緒に整理しておくとよいでしょう。

② 強みを生かせる場所を選ぶ力

ドイツの研究では、ギフテッドの大人の生活の満足度には、仕事への満足度が強くかかわっていました。自分の得意を生かせる環境を選ぶことは、大人になってからの満足度を高めることにつながりそうです。

その練習は、子どものうちからできます。習い事や進学先、放課後の過ごし方を選ぶときに、「どんな場所だと自分は力を出せる?」と一緒に考えてみてください。合わないと感じたら場所を変えてもよい、という視点も大切にしたいです。

③ 自分にとっての「大切」を決める力

上位1%の人たちを追った研究でも、仕事にどれだけ時間を使うかは人それぞれで、多くの人が仕事より家族を大切にしていました。「能力があるのだから、大きな成果を出さなければもったいない」という考え方は、その子自身の幸せとは必ずしも一致しません。

「何になりたいか」だけでなく、「どんな毎日を送りたいか」「何をしているときが楽しいか」を話し合う時間をつくってみてください。大人の期待ではなく、本人が決めた「大切」を尊重することが、その子が”自分で選んだ”という自信にもなります。

④ 誰かのために力を使う力

メンサ会員を追った研究では、「次の世代や社会のために何かをしたい」という気持ち(世代性)が、「自分の人生には意味がある」という感覚と強く結びついていました(Vötter & Schnell, 2019)。

自分の力を人のために使う経験は、「自分は何のために生きているのか」という問いへのひとつの答えになると言うことかもしれません。

もちろん、子どものうちは、大きなことでなくてかまいません。弟や妹に詳しいことを教える、自由研究の成果を学校の外で発表する、身近な困りごとを解決する工夫を考える。家族に「ありがとう」と伝える。日々の小さな「誰かに素敵なことが届いた」という経験を重ねていきましょう。

⑤ 立ち直る力と、助けを求める力

意味を見失いかけたときに幸せを守る支えになっていたのが、つまずいても立ち直る力(レジリエンス)と、自分を整える力でした(Vötter, 2020)。

また、大人のギフテッドがつらさを抱えたとき、それを「ギフテッドだから仕方ない」と片付けてしまうと、うつや不安、発達の特性など、本当に必要な支えにたどり着けないことがあります。

失敗したときに「どうやって立ち直ったか」を一緒に振り返ること。そして「困ったら人に頼っていい」と、大人が自ら頼る姿を見せること。大人になってから、つらさを一人で抱え込まないためにもこうした積み重ねが必要になります。

まとめ:「生きづらい大人になる」と決まっているわけではない

いかがでしたか?

今回ご紹介した研の通り、「ギフテッドは大人になっても生きづらい」という説は裏づけられていません。

子どものころの得意の形は大人の進路に表れ、多くの人が成果と満足のある人生を送っていました。

  • 広く一般の人を調べた研究では、知的能力の高い大人に平均して心の健康上の不利はない
  • 不調の報告が多いのは、高IQ団体の会員など自ら情報や助けを求めた人たち
  • 過度激動やインポスター感、職場での不適応が「ギフテッドならでは」であることはまだ確かめられていない
  • IQが特に高い層や、2Eの大人についてはまだ分からないことが多い

それでも、困りごとを抱えるギフテッドの大人がいることも事実です。だからこそ、「ギフテッドだから」とひとくくりにせず、その子自身の得意や大切にしたいこと、困ったときの頼り方を一緒に育てていくことを大切にしたいです。

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参考文献
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