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「療育」とは?早期療育が必要なケースについて

発達障害および発達障害グレーゾーンの子には、早期療育が必要不可欠と言われています。

なぜ彼らには早期療育が重要なのでしょうか。

今回は、発達障害および発達障害グレーゾーンの子たちの特性をお伝えしつつ、具体的にどんな早期療育を行えば彼らが大人になってより生きやすくなるか、についてお話しします。

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この記事を書いた専門家

水谷愛

水谷 愛


公認心理師、臨床心理士

精神障害者デイケア、スクールカウンセラー、就労支援、療育現場、就労継続支援B型作業所で合計約25年間心理士として医療・福祉・教育分野にたずさわり、主に子どもから成人までの発達障害、精神障害の方のサポートを行う。


発達障害には、自閉症スペクトラム、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)などいくつかあります。

いくつかある発達障害共通の障害特性についてご紹介します。

この3点が発達障害の特性として挙げられます。

そのほか、聴覚過敏、光への過敏、触覚過敏など、感覚過敏なども発達障害にはよくみられます。

(暑さや寒さに対して鈍感で、気温にふさわしくない服を着ていても気にならないような感覚鈍麻の人も中にはいます。)

以下の文章では、発達障害特性を含んでいる子どもたち、発達障害グレーゾーンと言われた子どもたちも含めてお話ししていきます。


発達障害にできるだけ早く気づくためには、子育ての中で子どもの発達状況にアンテナを張っている必要があります。発達障害の早期発見によって、早期療育などの介入をすることができるからです。

それでは、発達障害に気づくきっかけになるのは、どんなときなのでしょうか。

このような場で、親が子どもの発達障害に気づくチャンスがあります。


などがあります。

このようなところで発達障害のある子どもの観察や検査などを行い、個々の子どもにどうかかわれば良いのかを考えていくことができます。


療育という言葉は、「治療+教育」という意味でついた名前です。

具体的には、障害のある子(発達障害だけでなく、知的障害にも適用されます)に対し、個々の障害特性に合わせながら、今の困りごとの解決と、将来の自立をめざして支援していくことを言います。

特に、発達障害の子には療育が必要不可欠です。

その理由は、幼児期から療育に取り組むことで、学齢期以降の二次障害(うつ状態、不登校、摂食障害、強迫神経症など)を防ぐことができると言われているからです。


幼児期の子どもがスムーズに小学校以降やっていくためには、どのような能力が身についていれば良いでしょうか。

身辺自立

幼稚園などで生活をしていくためには、排せつやひとりで身じたくができる必要があります。

また、ご飯をひとりで食べたり、一定の時間座ることができるなども必要です。

運動能力(粗大運動)

座る、立つ、歩く、跳ぶ、姿勢を保つ、走るなどを行うためには、適切な筋肉を動かせるようになる必要があります。

また、子どもの体幹をきたえる必要性も出てきます。

微細運動

ものをつかむ、指でつまむ、スプーンやフォークを使う、ハサミなどの道具を使うなどができるよう、細かい手先の動きを練習する必要があります。

ことばの発達

親はもちろん、子ども同士や先生とのかかわりには、ことばが欠かせません。ものには名前があることや、ことばを使って他人とやりとりをすることを学ぶ必要があります。

上記のようなところを、療育では遊びや子どもの得意なことを通してきたえていきます。

療育は、医療機関、市区町村の発達支援センター、児童発達支援事業所などで受けられます。

医療機関については、療育を行っている医療機関にかかり、主治医が必要と認めてくれれば受けることができます。

市区町村の発達支援センターは、親が予約を取り、直接専門スタッフと相談することによって、必要となれば療育を受けられます。

児童発達支援事業所は民間で実施しており、各事業所の特色があります。

民間の事業所になりますが、国が認可した「障害福祉サービス」のひとつですので、利用手続きは市区町村で行います。

市区町村の障害福祉課や福祉事務所などに申し込み、手続きを行う形になります。


早期療育を行う意義として考えられるのは、

✓子どもが遊びの中で身辺自立などを学んでいくことで、自立・自律が誇らしいことなのだと知る

✓子どもの得意なところから早期療育を行い、たくさん療育スタッフにほめられることで、子どもの自己肯定感を上げることができる

✓子どもができることを増やすことによって、親や先生などに怒られるのを減らすことができる

✓保護者も療育スタッフのかかわり方を見て学ぶことで、子どもと安定したかかわりができるようになり、子どもも安心できる親子関係を築くことができる

✓保護者が必要なとき、療育スタッフに子育てについて相談できることにより、保護者のこころの余裕につながっていく

などが挙げられます。


早期療育というと、一般的には幼稚園などに入る前の子ども(未就学児)から行うことが多いです。

1歳半健診で発達についての指摘があり、様子をみたり、受診した結果、療育を行った方が子どもにとって適切な成長につながると判断されれば、2~3歳くらいから導入されます。

早期とはいっても、乳児(0~1歳)では集中力がもたなかったり、途中でお昼寝の時間が来たり、母子分離が難しかったりして、うまくいかないことも多いかもしれません。

幼稚園など、集団生活に入っていく前に自分でトイレに行ったり、着替えたり、ご飯を食べるなどができると安心ですね。

また、基礎的なコミュニケーション(「かして」「トイレ」「ありがとう」「ごめんなさい」など)ができるようになっておくと幼稚園に入って子どもがお友達と楽しく遊んだり、困ったときに助けを求めることにも役立ちます。


早期療育を受けている時間は、家庭にいる時間よりもはるかに短いです。

療育現場で子どもががんばって何かを身につけたとしても、家庭でも療育現場で行ったことと同じようにやっていかないと子どもの中に学んだことが定着しません。

療育スタッフがどんなことを行い、どんな視点で子どもと接したか。

どんなときに子どもの目が輝き、何をしたら好ましい行動が増えたか。

療育スタッフとのフィードバックで聞いたことを家庭でも実践していきましょう。

日常的に子どもが療育と同じように生活し、保護者も療育スタッフのアドバイスを聞きながら子どもと接することによって、子どもが望ましい行動を定着させることができます

発達障害および発達障害グレーゾーンの子どもにとって、早期療育が重要である理由をお伝えしました。

子どもの自信や自己肯定感を伸ばし、集団生活に入るまでにできることを増やしていくこと。

そして、保護者もこころに余裕をもって子どもと接し、子育てを楽しめるようにすること。

これが早期療育のいちばんの効果であるといえます。

発達障害および発達障害グレーゾーンの子どもにとって、その後の将来、二次障害を被ることなく人生を送ることにもつながってくることは、障害による生きづらさを軽減することにもつながりますね。

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