Gifted Gaze
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子どもの才能を伸ばす声かけ〜信頼する編〜

どんな時も自分の力や仲間の力を信じられる子になって欲しい。

多くの親はそんな風に願います。

自分や他人を信頼できる力は、子どもがこの先どんな世界に飛び込んだとしても、子どもの成功を支えてくれる重要な力になるでしょう。

自分や仲間を信頼する力を養うには、幼い頃からの親の態度、親が子どもや社会に対してどんな声掛けをしているかが影響します。

今回は、子どもに対して「信頼する」声掛けをする大切さや、どうやって子どもに信頼を伝えていくか、その具体的な方法についてお伝えします。

この記事を書いた専門家

相楽 まり子


公認心理師、臨床心理士

小中学校のスクールカウンセラーとして教育現場で経験を積む。現場で子どものケアには周りの大人へのサポートが欠かせないことを痛感し、産業領域でのカウンセリングも開始。子育てと仕事を両立する働き世代へのカウンセリングを得意とする。2児の母。


子育てにおいて、まず優先して育ててあげたい2つの力があります。

それは「自己肯定感」と「他者信頼感」です。

自分を信じられる力と、他人を信じられる力、この2つを合わせて「基本的信頼感と呼ぶとしましょう。

基本的信頼感を幼いうちに獲得できた子どもは、どんな分野でも自然とその才能をいかんなく発揮するように成長していきます。

自己肯定感によって「自分ならきっとできる!」という言葉が自然とわいてきますし、他者信頼感によって「みんなきっと味方になってくれる。応援してくれる。」という気持ちでどんなことにもチャレンジできるからです。

この素晴らしい力を養うためには、親が日頃から「信頼する」声掛けを多用しているかどうかが重要です。

「あなたのことを信頼している」「あなたの才能を信じている」という子どもに対する信頼の言葉。

「この世界は信頼できる」「困った時は支えあえる」と、他人や社会を信頼する言葉。

そしてもう1つとても大事な言葉、それは「私は大丈夫。何とかなる。」と、親自身が自分を信じる言葉を使っているかどうか、です。

こうしてたくさんの信頼のメッセージで日常を満たしていくことが、子どもの基本的信頼感を高めるのです。

逆に、子どもの頃にこの基本的信頼感を獲得できないと、大人になった時に様々な場面でつまずきを感じます。

あらゆる場面で、自分にはできない、自分はダメだと否定的な言葉がこだまします。

また、他人や環境を疑い、信じられず、思い切って行動できなくなってしまうことも起こります。

このように、「信頼する」声掛けは、子どもの才能を伸ばすために必要不可欠なのです。


誰かから「あなたってこんな才能や能力があるのね」という言葉をかけられたら、子どもに限らず大人だって嬉しいものです。

そして、期待され信じてもらったことが嬉しくて、ますます頑張ろうという気持ちになります

これは、教育心理学で有名な「ピグマリオン効果」と呼ばれる心理的行動としても説明がつきます。

周りの大人に期待されると、それに応えようと頑張る子どもはとても多いです。

テストなど何か結果として目に見える能力だけにこだわる必要はありません。

どんなに些細なことでも構わないので、子どもに才能を感じたら、即「素晴らしい才能を持っているよね」と信頼してあげましょう。

字が上手にかけた、ご飯をたくさん食べた、周りの人を笑顔にした、本当にどんなことでも大丈夫です。

むしろ、学習面以外のことでたくさん「それって大事な才能よ」と信頼する声をかけてもらった方が、子どもの引き出しは増えるのかもしれません。

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細かく考えすぎず、子どもの内面から出るものに対して素直に「素敵だな」「すごいな」と感じることがあれば、すぐにその気持ちを言葉にして伝えてあげましょう。


お友達との喧嘩やトラブルなどがあった時、まず親がどんな言葉で状況を説明するのか、子どもはよく聞いています。

お友達が悪い、あのトラブルはあの人がひどかったからだ、などと、一方的に他人を責める口調で子どもと話すと、子どもはどう感じるでしょうか。

極端なことを言えば、「他人はあなたを攻撃しているのよ」という不安を植えつけているかもしれません。

これでは、他人を信頼する声掛けとは真逆の声掛けをしていることになります。

お友達とのけんかやトラブルがあった時は、子どもの他者信頼感を育むチャンスです。

相手はこう思っていたのかも?なぜそんな言動をしたのか?一緒にじっくり考えてみましょう。

相手の背景や心情を想像しながら「あなたを傷つけたいわけではなかったのかも」「こんなことを考えていたのかもしれない」と話し合えば、子どもの想像力は増していきます。

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そうすれば、一方的に他人を批判するのではなく、他人にも自分と同じように考えや気持ちがあるのだと理解できるようになっていきます。

そこから更に、「じゃあ、話し合えば分かり合えそう」「もしかしてこんな誤解があったからすれ違っただけなのかも」と他人を信じるきっかけにつながっていきます。


子育てをしていると、親自身も悩むことが多いと思います。

これであっているのかな?この対応で良かったのかな?

そんな迷いの連続です。

ここで、迷いや悩みに圧倒される自分を「ダメな親だ」「親失格だ」などと自分で責めてしまうと、それが子どもに伝わります。

親がいくら表面上で、「あなたの才能を信じているわよ」と言っても、親自身が自分を否定して責めている姿を子どもに見せていては、子どもは安心して自分を信じることができません。

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子育てに悩みや迷いがあるのは自然です。あなたが悪いから悩むわけではないのです。

悩みながらも、「大丈夫!」「自分を信じて前進しようと」と、親が自分を信じ鼓舞する言動を子どもに見せることが、何事も信頼できる力を育むためには一番大切かもしれません。

実際、どのような場面で子どもに「信頼する」声掛けをかけてあげればよいのでしょうか。信頼を伝えるチャンスを具体的に紹介していきましょう。


成績、行動、作品など、目に見えるものを褒めたり評価したりすることは簡単です。

そうではなく、子どもの性格的な部分や考え方について「素敵だね!」とたくさん認めてあげましょう

究極は、「居てくれてありがとう」「生まれてきてくれたことが幸せ」と、存在自体を認めることです。

存在を認められることは、自分は大切な存在なのだと信じられる、そして家族は自分の絶対的な味方なのだと信じられる土台になります。


例えば、子どもが何か難しいことにチャレンジしようとしているとします。

子どもの失敗を心配し、先回りして「それはあなたには難しいんじゃない?」「まだ無理だと思うよ」などと声をかけていませんか?

これでは、子どもは自分の力を信じられなくなります。

親の心配や不安は親の問題です。子どもがやってみたいというなら、できる限りチャレンジさせてあげてください。

その時に、「大丈夫だと思うよ」「チャレンジしたいならやってみたら?」「あなたならできるかもね」などと、シンプルに信頼してあげることが非常に重要です。

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少々難しそうであっても、「まぁ大丈夫でしょう」「チャレンジは大事な経験になるよね」と、子どもを信頼する言葉を親がかけてあげられると、子どもは根拠がなくても自分の力をぐんぐん信じられるようになっていきます

この根拠のない自信は、子どもが将来何事にもチャレンジできる人間になるかどうかを左右するでしょう。

今回は信頼する声掛けがなぜ重要なのか、子どもにどんな影響をもたらすのかを見てきました。

自分を信じ、他人も信じ、そしてこの世界も信じて、何事にもチャレンジできる人に成長できるよう、日頃からたくさん、信頼を伝えるメッセージを発信していきましょう。