日本で飛び級はできる?大学の飛び入学制度を解説
高校卒業を待たず入学できる学部・専門分野と受験 | 年齢より適性で選ぶギフテッドの学校選び

「授業がつまらない」と言う中学生のわが子。成績は悪くないのに、どこか力を出し切れていない。高校選びを前に、「このまま今の学校の延長でいいのか」「飛び級のような道はないのか」と考える保護者の方もいると思います。
この記事では、日本で飛び級ができるのか、実際にある「飛び入学制度」の対象や選抜の方法、実施している大学一覧と実績、飛び級についての研究と注意点、ギフテッドの中学生・高校生の進路の考え方と高校選びのポイント、学校の外で学べる場をご紹介します。
制度の情報は2026年11月時点のものです。最新の内容は各機関の案内で確認してください。
日本の教育制度で飛び級はできる?|小学校・中学校にはない
日本の小学校・中学校には、学年を飛ばして上の学年に進む「飛び級」の制度はありません。
学校教育法第17条で、子どもは満6歳になった後の最初の4月に小学校に入学し、年齢で学年が決まる仕組みになっているためです。小学校に早期に入学することもできません。
どれだけ勉強が進んでいても、義務教育のあいだは同じ年齢の子どもと同じ学年で学ぶことになります。ただし、高校から先には、早く進学できる道がいくつか設けられています。
高校2年から大学へ進む「飛び入学制度」とは|学校教育法第90条の対象者と受験資格
高校に2年以上在籍し、大学が定める分野で特に優れた資質があると認められた人は、高校を卒業しなくても大学に入学できます。
これを「飛び入学」といい、「飛び級入学制度」と呼ばれることもあります。
学校教育法第90条第2項に定められた制度で、多くの場合、高校2年生のときに受験し、17歳で大学に入学します。
受け入れる大学には、その分野の大学院があること、高校長の推薦を求めるなど適切に運用することなどが求められています。
飛び入学制度を実施している10大学の一覧と入学者の実績(2026年7月時点)
文部科学省のページによると、2026年度(令和8年度)に飛び入学の制度を設けているのは、以下の10大学です。
これまでに飛び入学で大学に入った人は、募集を停止した大学も含めて161人で、毎年数人程度と非常に少ないのが実情です。
| 大学 | これまでの入学者数 |
| 千葉大学 | 108人 |
| 名城大学 | 27人 |
| 会津大学 | 11人 |
| エリザベト音楽大学 | 3人 |
| 名古屋音楽大学 | 3人 |
| 日本体育大学 | 2人 |
| 東京藝術大学 | 2人 |
| 京都大学 | 1人 |
| 桐朋学園大学 | 1人 |
| 東京音楽大学 | 0人 |
出典:文部科学省「大学への飛び入学について」
(入学者数は2026年7月時点。最新の大学一覧はこのページで確認できます)
飛び入学の選抜方法と対象の学部・専門分野
飛び入学は、大学の全学部で行われているわけではなく、一部の学部・専門分野に限られています。
たとえば、最も実績の多い千葉大学は1998年度から「先進科学プログラム」として理工系の分野で受け入れており、会津大学はコンピュータ理工学部で実施しています。
理工系のほか、音楽やスポーツの分野で実施している大学もあります。
選抜の方法は大学・学部によって異なり、書類審査、筆記試験、面接、課題研究の発表などを組み合わせて、その分野での優れた資質や意欲を見るのが一般的です。
高校での成績だけでなく、科学オリンピックや研究コンテストでの実績が評価の参考になることもあります。
募集する分野や試験の内容は毎年変わることもあるため、志望する大学の募集要項を必ず確認してください。
飛び入学で合格したら|高校の卒業資格と注意点
飛び入学の選抜に合格して大学に入った場合、高校は「中退」の扱いになります。
現在は、飛び入学した大学で一定の条件を満たすと、高校卒業者と同等以上の学力があると認められる制度もあります。詳しくは大学に確認しましょう。
また、同年代より早く大学生になるため、年上の学生の中で生活することになります。
勉強の面だけでなく、一人暮らしや友達関係など生活面の準備ができているかも、受験を考える前に本人と話し合っておきたい点です。
大学3年から大学院へ進む飛び入学
大学に3年以上在学し、大学院が定める単位を優秀な成績で修得した人は、大学を卒業しなくても大学院に入学できる制度もあります。
高卒認定試験で大学の受験資格を得る道
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、その年度の終わりまでに16歳以上になる人が受けられます。
合格すると大学の入学資格が得られますが、資格として使えるのは18歳になってからです。
高校に在籍しながら受けることもできますが、早く大学に入るための近道というより、高校に通うのが難しい場合の選択肢と考えるのが現実的です。
国の教育制度の見直しも進んでいる
文部科学省は「ギフテッド」という言葉ではなく「特定分野に特異な才能のある児童生徒」と呼び、支援のあり方を検討しています。
2026年8月に示された取りまとめ案では、才能のある子どものための特例の教育課程を令和10年度から先行実施できる方向が示されました。ただし、当面の対象は義務教育段階で、高校は今後の検討とされています。
国の方針の詳しい内容は「【2026年最新】文科省のギフテッド教育方針まとめ」で解説しています。
飛び級は子どもに必要?海外の研究と注意点を解説
飛び級の制度がある国では、飛び級はどう評価されているのでしょうか。
世界の研究で確かめられている飛び級(早修)の効果
アメリカでは、学年をまるごと上げる飛び級や、得意な教科だけ上の学年の内容を学ぶことなどをまとめて「早修(アクセラレーション)」と呼びます。
早修についての研究をまとめた報告書『A Nation Empowered』(2015年)では、早修は才能のある子どもの学力を伸ばすうえで効果があり、適切に行えば心や人間関係への悪い影響は一般に見られないと報告されています。
学力だけでなく、心の成長との関係も見る
一方で、ギフテッドの子どもには、得意な分野の力と、感情や体の発達に差がある「非同期発達」がよく見られます。
数学は高校生並みでも、ほかの教科や心の成長は年齢相応ということも珍しくありません。
そのためアメリカでは、学力だけでなく、心の成熟度や本人の希望、友達関係などを点数化して飛び級が合うかを判断する「アイオワ早修尺度(Iowa Acceleration Scale)」のような道具も使われています。
飛び級が合うかどうかは、制度を利用できるかどうかではなく、その子の学力・心の成長・本人の気持ちを合わせて考える必要があるということです。
非同期発達については「ギフテッドの子どもの非同期発達とは」、アメリカの仕組みは「アメリカのギフテッド教育の仕組みを徹底解説」で詳しく紹介しています。
日本でできる「学年を上げない」伸ばし方|飛び級の代わりになる方法
日本では学年を飛ばすことはできませんが、学年は今のままで、得意な分野を伸ばす方法はあります。
- 教科ごとの先取り:得意な教科だけ、家庭やオンライン教材、塾で先の内容に進む
- 学びを深める(拡充):今の単元を、探究や実験、作品づくりで深く広げる
- 学校の外のプログラム:大学や研究機関、海外の大学が行う才能のある子ども向けの講座に参加する
- 学校への相談:得意な教科で発展的な課題に取り組めないか、担任の先生に相談する
先取りをするときは、学年を先に進めることだけが目的にならないよう注意しましょう。
学校の授業がさらに退屈になったり、「できて当たり前」というプレッシャーにつながったりすることがあります。
世界と日本のギフテッド教育の考え方の違いは「ギフテッド教育の10のポイント|世界と日本の違いを解説」で紹介しています。
ギフテッドの中学生・高校生の進路|大学進学までに大切な3つの視点
進路を考えるときは、偏差値や学校名だけでなく、次の3つの視点で選ぶと、本人に合う環境を見つけやすくなります。
- 本人がどんな学び方で力を発揮するか(深く考える課題、自分で進める学習、議論、ものづくりなど)
- 得意な分野を、学年に関係なく伸ばせる仕組みがあるか
- 感じ方や考え方が近い仲間と出会えるか
ギフテッド教育は、有名大学に入るための近道ではありません。
考え方や学び方の違う子どもに、その子に合った学びを届けるためのものです。「IQが高いから難関校へ」と決めるのではなく、本人が安心して学べ、好奇心を満たせる場所かどうかを一番に考えましょう。
中学生になると、本人の意思もはっきりしてきます。保護者が選んだ道を示すより、本人と一緒に学校を見学したり、話を聞きに行ったりして、本人が納得して選べるようにすることが大切です。
ギフテッドの高校選びのポイント|大学や研究機関との関係も確認
学び方の自由度を確かめる
探究学習や課題研究に力を入れている、科目を自分で選べる単位制、大学の講義を受けられる連携授業があるなど、自分のペースや興味で学べる仕組みがあるかを確認しましょう。
理数系の分野に優れた生徒はスーパーサイエンスハイスクールも
文部科学省は、先進的な理数教育に取り組む高校を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定しています。
SSHの学校では、大学や研究機関と連携した課題研究や、研究発表の機会が多くあります。理数系の分野で深く学びたい子どもにとって、選択肢の一つになります。
通い方の選択肢も視野に入れる
全日制だけでなく、通信制や単位制の高校、オンラインを中心に学べる学校もあります。
学校生活の刺激が強すぎて疲れやすい子や、自分の研究や活動に時間を使いたい子には、通い方の自由度も大切な条件です。
学校説明会で聞いておきたいこと
- 得意な教科で、授業より先の内容に取り組める機会はあるか
- 授業以外に、研究や発表、コンテストに挑戦する機会はあるか
- 大学や地域、企業と連携した学びはあるか
- 感覚の過敏さや提出物の苦手さなど、困りごとへの配慮を相談できるか
ギフテッドの子どもが学べる学校については「ギフテッドのための教育が受けられる学校は?日本の専門スクールも紹介」でも紹介しています。
学校の外で専門分野を学べる場|研究プログラム・科学オリンピック・海外の大学
学校の中だけで学びを満たすのが難しいときは、学校の外の場も選択肢になります。
STELLAプログラム:大学で研究に取り組む(科学技術振興機構)
科学技術振興機構(JST)の「次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLAプログラム)」は、理数系に優れた意欲と能力を持つ小学校高学年から高校生を対象に、大学などが探究活動や研究の機会を提供する事業です。
以前の「グローバルサイエンスキャンパス」(高校生向け)と「ジュニアドクター育成塾」(小中学生向け)をまとめて、2023年度から始まりました。実施している大学や募集の時期は、各大学の案内で確認できます。
科学オリンピック:国内の選抜を経て世界大会へ
数学、物理、化学、生物、情報などの分野では、中高生が参加できる国内大会があり、成績上位者は国際大会(国際科学オリンピック)に挑戦できます。同じ分野が好きな仲間と出会えることも大きな魅力です。
世界の学生が学ぶジョンズ・ホプキンス大学CTY(海外)
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の「CTY(Center for Talented Youth)」は、学力の高い子ども向けのオンラインコースやサマープログラムで知られています。
夏のコースは主に2〜12年生(日本の小学2年生〜高校3年生にあたる学年)が対象で、世界各地から生徒が参加しています。英語での受講になりますが、学年に関係なく得意な分野を学べる場の一つです。
日本で学べる場は「ギフテッド教育は日本で受けられる?国の支援・学校で相談できること・学べる場所」、学びを導く大人の存在については「ギフテッドの子どもにメンターは必要?」も参考にしてください。
中学生・思春期のギフテッドに起きやすいこと
小学校では手がかからなかった子が、中学生になってから困りごとが表に出ることもあります。
- 授業がつまらなくても、「目立つと面倒」と力を出さなくなる(アンダーアチーブメント)
- 周りに合わせようとして、自分の興味や考えを隠す。特に女の子に多いとされる
- うまくいっても「たまたま」「実力ではない」と感じてしまう
- 話の合う友達が見つからず、孤立感を抱える
- 勉強が難しくなり、それまで隠れていた発達特性(2E)が目立ってくる
成績が下がった理由を本人のやる気だけのせいにせず、環境が合っているかを一緒に見直してみましょう。
詳しくは「ギフテッドの子どもは成績が悪い?アンダーアチーブメントと対策」「ギフテッドの女の子は見過ごされやすい」「ギフテッドの子は友達がいない?」で解説しています。思春期の関わり方は「プレ思春期・思春期の対処法」も参考にしてください。
進路を決める前に必要な情報|本人の強みと学び方を知る
中学生・高校生になると、本人も自分のことを知りたいと考えるようになります。知能検査やギフテッド診断の結果は、本人が自分の得意や学び方を言葉で理解するきっかけになります。ただし、結果は進学のための公的な証明ではありません。数字にとらわれず、「どんな環境で力を発揮しやすいか」を知るための材料として使いましょう。
検査や診断を受けられる場所は「ギフテッド診断はどこで受けられる?病院・WISC・オンラインの違いと費用」で比較しています。
まとめ|日本の飛び級・飛び入学制度でその子に合う学び方を
- 日本の小中学校に飛び級の制度はない。高校2年修了で大学に入る「飛び入学」はあり、2026年度は10大学が実施
- 研究では早修の学力面の効果が確かめられているが、合うかどうかは学力・心の成長・本人の気持ちを合わせて判断する
- 日本では、教科ごとの先取り、学びを深める拡充、学外のプログラムで力を伸ばせる
- 進路は偏差値より「学び方」「得意を伸ばせる仕組み」「仲間」の3つの視点で、本人と一緒に選ぶ
参考文献
- 大学への飛び入学について(文部科学省)
- 飛び入学について(文部科学省)
- 高等学校卒業程度認定試験(文部科学省)
- 特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程WG 取りまとめ案(文部科学省、2026年8月)
- A Nation Empowered: Evidence Trumps the Excuses Holding Back America’s Brightest Students(Acceleration Institute、2015年)
- 「次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLAプログラム)」2026年度採択機関の決定(科学技術振興機構)
- Center for Talented Youth Summer 2026(Johns Hopkins University Hub、2026年6月30日)

