「知的好奇心が非常に強い」
「感受性が豊かすぎる!」
あなたのお子さんは、こんな特性を持っていませんか?
このような特性を説明する概念として「OE(過度激動性:Overexcitability)」という言葉があります。
OEについての理解が浅いままだと、子どもの特性を誤って捉え、才能を見落とし、さらには不適切な支援をする危険性もあります。
この記事では、OEとは何か、その種類と特徴、ADHD(注意欠如多動症:Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)やHSP(Highly Sensitive Person)との違い、そして家庭での接し方について詳しく解説します。
OE(過度激動性:Overexcitability)とは?
OE(過度激動性:Overexcitability)は、ポーランドの心理学者カジミエシュ・ダブラウスキ(KazimierzDabrowski)が提唱した概念です。
人間が通常よりも強烈に刺激を感じたり反応したりする特性を指します。
特に、才能や知性、創造性に優れた子ども(いわゆる「ギフテッド・チルドレン」)に多く見られると考えられています。
OEを持つ子どもたちは、環境からの刺激に対する感受性が高く、特定の領域で非常に強い興味や情熱を持つ傾向があります。
ただし、その「強烈さ」が家庭や学校生活で困難を引き起こしたり、ADHDなどの発達障害との違いがわかりにくい場合もあるため、まずはOEに対する正しい理解が重要です。
OEの種類とそれぞれの特徴
OEは主に以下の5種類に分類され、それぞれ独自の特徴があります。
知的OE(Intellectual OE)
特徴
- 知識への探求心が非常に強い。
- 何事にも「なぜ?」と疑問を持ち、深く考える。
- 問題解決や論理的思考を好む。
具体例
- 学校の授業中に次々と質問をする。
- 興味のある分野について何時間でも調べたり話し続ける。
注意点
- 知的好奇心が強いため、周囲が理解しきれないほど複雑な質問をすることもあります。
- その結果、「しつこい」と誤解されることがあります。
情緒的OE(EmotionalOE)
特徴
- 感情の起伏が激しく、非常に繊細。
- 他人の感情に敏感で共感しやすい。
- 小さな出来事にも深い感動や悲しみを感じる。
具体例
- 動物が助かるシーンで涙を流す。
- 家族や友人の悩みに心を痛める。
注意点
- 感情が豊かすぎるため、自分自身の感情に飲み込まれてしまうことがあります。
創造的OE(ImaginationalOE)
特徴
- 想像力が非常に豊か。
- 現実の出来事を空想や物語として捉える。
- 独特なアイデアや発想を生む。
具体例
- 日常の出来事を絵や文章で表現する。
- 一人で空想の世界に浸る。
注意点
- 現実との境目が曖昧になることもあり、空想に没頭しすぎることがあります。
感覚的OE(SensualOE)
特徴
- 五感が非常に鋭敏。
- 美しいものや音、味、触感に強く反応する。
- 感覚的な快楽や不快感を強く感じる。
具体例
- 美術館や音楽会で深く感動する。
- 服のタグや騒音に耐えられない。
注意点
- 感覚の鋭さが日常生活でのストレス要因になることがあります。
運動的OE(PsychomotorOE)
特徴
- 体を動かしたい衝動が強い。
- 言葉や動作が多動的になりがち。
- エネルギーに満ち溢れている。
具体例
- 座っていると落ち着かず、常に動き回る。
- 話が止まらず、早口になる。
注意点
- 多動的な行動が「問題行動」と見なされることがありますが、単なるエネルギーの発散である場合が多いです。
以上でご紹介した「注意点」にあるように、子どもの特性として日常生活や学校生活の中であらわれている部分もあれば、本人が困りごととして抱えている場合もあります。
OEとADHD(注意欠如多動症)やASDとの違い
OEとADHDやASDは、どちらも「普通よりも強烈な特性」を持つ場合があるため混同されやすいですが、概念や原因、適応の仕方など根本的に異なります。
特に、情動性OEの場合は、ある特定のものごとに対する愛着がASDのこだわりの特性とよく似た形であらわれることがあったり、ネガティブな感情を放置しないことが大切です。
知的・感覚的な刺激への反応や日常生活への影響など、OEとADHDやASDとの違いをどう見極めるかなどについて、次回以降の記事で解説します。
OEとHSP(Highly Sensitive Person)との違い
OEは、「刺激への過敏性」という点でHSPと共通点があります(OEがネガティブに作用した場合、HSPのような敏感な状態になることもあります)が、両者には根本的な違いがあります。
OEは特定の分野に特化した反応性で、HSPは刺激全般に対する敏感さが特徴です。
例えば、HSPの子どもは学習や対人関係などあらゆる場面で「疲れる」と感じやすいなどです。
簡単に言えば、OEは「特定の刺激に対する強烈な反応性」であり、HSPは「全般的な敏感さ」が特徴です。
OEは、成長や環境次第でポジティブにもネガティブにも変化しえます。
OE(Overexcitability)
- 特定の分野で強烈な興味や情熱を持つことが特徴。
- 知的好奇心や創造性、感情表現の豊かさが目立つ。
- 「強い反応性」が必ずしもストレス源になるわけではない。
HSP(HighlySensitivePerson)
- 環境からの刺激全般に対して敏感で、疲れやすい。
- 過剰な共感や不安感を抱きやすい。
- 敏感さがストレスや不安の原因になることが多い。
OEの子どもに対する家庭での接し方
子どものOEの特性をポジティブに活かすために、以下のポイントを参考にしてみてください。
◯共感し受け入れる
まずは、子ども自身が感じている感情や反応の背景を理解することが一番大切です。
質問や感情表現を無視せず、「この子は自分とは違う感性を持っている」と受け入れるようにしましょう。
◯環境を整える
どのOEタイプかにより環境調整の方法も異なりますが、以下に各タイプの一例を挙げてみます。
- 知的OE:図鑑や書籍、専門家との交流など、知識を深める機会を提供する
- 情緒的OE:感情を適切に表現できる方法を教え、表現できる場を作り、安心感を与える
- 創造的OE:工作や音楽などの創作活動を支援する、ものごとの進め方ややり方を指示せず本人に任せる
- 感覚的OE:ネガティブな刺激を減らす(静かな部屋やタグのない服を用意するなど)
- 運動的OE:授業中に手や体を動かす時間を許容する
◯自己調整の方法を教える
子どもが自分の特性を理解し、コントロールできるように支援します。
例えば、深呼吸や瞑想、スケジュール管理、ネガティブな感情への向き合い方などのスキルを教えましょう。
◯専門家のサポートを活用する
子どもの特性が家庭や学校での生活に大きな影響を及ぼしている場合、心理カウンセラーや教育専門家に相談することをおすすめします。
発達特性によるものなのか、OEによるものなのか、あるいは両方があわさっている場合もあります。
原因や特性に合わせたサポートのために、専門家の助言も活用しましょう。
おわりに
OEの子どもたちは感性が豊かなために、感情の起伏が激しかったり自分自身が他者と同一化して、周りにネガティブなことも含め影響されやすかったりします。
それが、思春期以降に精神のバランスの乱れとしてあらわれたり対人関係で苦労する場合もあります。
子どもの特性に悩むことがあれば、些細なことでもいいので、専門家のサポートを活用してみてください。
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