子どもたちの無限の才能を引き出す!「多重知能理論(MI理論)」入門

「うちの子にどんな才能があるのだろう?」

「子どもの得意なことを伸ばして、将来の選択肢を広げたい!」

このように感じたことはありませんか?

伝統的な教育の枠を超えて、子どもたちの多様な能力を見つけ出し、それぞれの才能に合わせたサポートを提供する方法があるとしたらどうでしょう?

そこで注目したいのが、多重知能理論(MI理論)です。

従来のIQテストや知能検査だけでは測れない、人間の豊かな才能や能力を見つけ出そうとする理論で、子どもたちの育成にとって非常に重要な考え方です。

子どもたち一人ひとりが持つ才能や可能性は、星のように数えきれないほどありますが、その才能をどのように見つけ、どう育てていけばいいのかについて、戸惑うこともありますよね。

この記事では、「多重知能理論」(MI理論)とは何か、この理論に基づいて子どもたちの才能をどう見つけるのか、その診断方法と診断結果の活用法を解説していきます。


多くの人が、「知能」というと、数学や言語のテストスコアを思い浮かべがちですよね。確かに、IQとか知能指数、学力などの認知能力も知能の一つです。

「多重知能理論」(MI理論)とは、子どもたちが持つ8つ以上の異なる「知能」に着目し、それぞれの個性と才能を理解し育むための革新的な概念とアプローチです。

従来の教育では、言語力や数学的能力が「賢さ」の基準とされることが多く、学校の成績やIQスコアで子どもの能力が評価されがちでした。

しかし、アメリカの心理学者ハワード・ガードナー博士が1983年に発表したこの「多重知能理論(MI理論)」は、次のように提唱されています。

「知能は単一のものではなく、少なくとも8つの異なる知能が存在する。人はそれぞれに得意な知能を持っており、その多様性こそが人間の個性である。」


この理論に基づいた多重知能診断では、子どもの興味関心が強く、知能として優れていて才能として伸ばしていきやすい分野を明確にすることができます。

子どもがどういった分野を特に得意としているのか、逆にどの知能に苦手を感じているのかなどを知ることで、日常の中で取り組むと良いことや効果的な学習方法を分析することもできます。

親はもちろん、子ども自身がまだ認識していない得意なども見つかる可能性があります。

さらには、将来の職業選択にも活用していけるでしょう。


多重知能理論(MI理論)の「8つの知能」とは、言語的知能、論理数学的知能、空間的知能、音楽的知能、身体運動的知能、対人的知能、内省的知能、そして自然観察知能のことです。

なお、ガードナーは、後の研究で「存在論的知能」や「道徳的知能」の可能性についても言及しています。

すべての人が、それぞれ異なるバランスでこれらの知能を持っているとされています。

意識したいのは、”その子の中で”、どの知能が高いかどうかで、周りの子どもと比べたり、どの知能が「低い」ということは考えなくて大丈夫です。

それぞれの知能について以下で簡単に解説します。


言語的知能は、言葉を巧みに使いこなす能力です。

読み書きが得意で、話すこと、聞くことに敏感な子どもがこの知能を持っているとされています。

物語を作ること、冗談を言うこと、説得することも得意です。


論理数学的知能は、数や論理に関する問題を解く能力です。

計算や論理的思考が得意で、パズルや実験が好きな子どもです。


空間的知能は、空間や形、色、線を理解し、それらを頭の中で操作する能力です。

地図を読むこと、図を描くこと、建築や芸術に関心が高い子どもがこの知能を持っているとされています。

イマジネーター」タイプの人


音楽的知能は、リズムやメロディーを理解し、音楽を創造する能力です。

音楽を聴いたり、演奏したり、作曲することが得意な子どもが持っています。

リズミスト」タイプの人


身体運動的知能は、体を使って問題を解決したり、製品を作り出す能力です。

スポーツが得意で、ダンスや演劇に興味を持つ子どもがこの知能を持っています。

アスリート」タイプの人


対人的知能は、他人の気持ちを理解し、効果的にコミュニケーションを取る能力です。

友達を作るのが得意で、チームワークを重視したりリーダーシップがあるでしょう。

コミュニケーター」タイプの人


内省的知能は、自己の内面を深く理解し、自己反省する能力です。

自分の感情や動機を理解し、それに基づいて行動できる子どもがこの知能を持っています。

フィロソファー」タイプの人


自然観察知能は、自然界のパターンや生物を理解し、自然と関わる能力です。

植物や動物に興味を持ち、環境問題を解決するような分野でも活躍するでしょう。

ネイチャーラバー」タイプの人

先の8つの分類を見てみて、「うちの子はこれかな?」と思い当たるものもあったかと思います。

「多重知能理論」(MI理論)の素晴らしいところは、すべての子どもが多様な才能を持っており、それを理解し育てることで子どもたちの可能性を最大限に引き出すことができるということを強調している点です。

例えば、数学が苦手な子どもでも、人とのコミュニケーションといった全く異なる領域で際立った才能を発揮することがあります。「人とのコミュニケーション」とは、「多重知能理論」(MI理論)の観点だと「対人的知能」です。

人とのコミュニケーションや協力が得意な子どもは、友達との関わりの中で自然と社会性や共感力をメキメキと育てていくため、グループ活動やチームプロジェクトでは、この才能を活かしてリーダーシップを発揮することもあります。

「数学が苦手」というところに焦点を当てるのではなく、この子が他の領域でどのような才能を発揮するかを考えることで、「多重知能理論」(MI理論)の魅力と有効性がより明確になりますよね。

このように、「多重知能理論」(MI理論)は、何か一つの苦手なことがあっても、それぞれが適所で活躍できる才能があるのだと示しているのです。


子どもの才能を見つけることは、単に「得意なことを見つける」だけではありません。

子どもたちが特に関心を持っている活動は、彼らの才能を表していることが多いのです。

その興味・関心の対象にも注目し、その活動を通じて様々なサポートすることが、才能を見つけ、特性を豊かに育んでいく鍵となります。

「自分はこれが得意だ!」という認識は、挑戦へのモチベーションにつながりますし、成功体験が積み重なることで、「自分は価値のある存在だ」と実感できます。

こうした感覚が、今後の人生で立ちはだかるさまざまな困難を乗り越える「生きる力」へと結びつきます。

ある研究では、子どもの得意や好きなことを理解し才能を伸ばすことが「生きる力」や非認知能力を高め、子どもたちの将来の幸福度にもいい影響を及ぼすということも示されています。

「多重知能理論」(MI理論)が生きる力を伸ばす理由

🌱 自分の強みを知ることで、進むべき道が見えてくる

🌱 才能を認められる経験が、努力するエネルギーになる

🌱 得意分野を活かすことで、苦手な分野への抵抗感も減る


子どもの知能を把握することで、得意な知能を活用して日々の学びに活かしていくこともできます。

「身体・運動的知能」が高いCくん(6歳)

じっと座っているのが苦手で、外で体を動かすのが大好きです。授業中も体を動かしたくなってしまうことがあるため、学習の際にはアクティブなアプローチ(体を動かしながら学ぶ)を取り入れると、集中力が上がります。指差しで記憶するなども効果的でしょう。

「論理・数学的知能」と「自然観察(博物的)知能」が高いBちゃん(10歳)

計算が得意で、パズルやクイズも大好きです。数学的な概念を素早く理解し、論理的な問題解決を好みます。学校の勉強に加えて、プログラミングや科学教室などに挑戦するとより能力を伸ばせるでしょう。
また、2番目に高い知能として自然観察(博物的)知能がありました。日頃から動物や植物にとても興味を持っており自然界の現象にも興味関心が高いです。公園に出かけたり、動植物に関する動画を観たり身近な自然観察を通して自然への理解を深める機会を作るとよいでしょう。

多重知能理論(MI理論)は、教育だけでなく仕事やキャリア選択にも応用できる考え方です。

従来の「学歴やIQだけで評価する」基準ではなく、「個々の強みを活かす働き方」を見つけるヒントになります。

知能の種類とそれぞれの仕事/キャリアへの活用例

  • 言語・語学的知能:ライター、編集者、弁護士、教師、スピーチライター
  • 論理・数学的知能:データアナリスト、会計士、エンジニア、研究者
  • 視覚・空間的知能:建築家、デザイナー、映像クリエイター、パイロット
  • 身体・運動的知能:ダンサー、アスリート、職人、フィジカルトレーナー
  • 音楽・リズム的知能:作曲家、音楽プロデューサー、DJ、楽器演奏者
  • 対人的知能:カウンセラー、営業、リーダー職、イベントプランナー
  • 内省的知能:哲学者、作家、心理学者、起業家
  • 自然・博物学的知能:環境学者、生物学者、農業関係、動物トレーナー

では、「多重知能理論」(MI理論)を実際に日常で活用して子どもの知能を発掘するアクションをお伝えします。

たった2つのことなので意識してみてください。


まず、大人ができることは、子どもの行動をよく観察し、その中で「夢中になっていること」を見つけることです。

物事の「好き/嫌い」を判断する前には必ず夢中になっているかどうかの状態があります。

例えば、ブロックやパズルが好きなら空間知能が高かったり、歌を口ずさんだり音楽に合わせて踊ることが多いと音楽知能・身体知能が高かったりします。


「どう感じた?」「一番印象に残っていることは?」など子どもが体験したことについて、どんな些細なことでもいいので問いかけてみましょう。

子ども自身が「好きなこと」や「夢中になりたいこと」に気づく機会になります。

ただし、もし子どもが否定的な感想を言ったり、「好き」とか「楽しかった」と明確な表現をしなかったとしてもその言葉をしみじみ受け止めるようにしましょう。

大人が、勝手に子どもの体験に対する感覚を決めつけないことがポイントです。

教育業界全体が、従来の「一斉授業」から、子どもたちの多様な才能を引き出しそれぞれの強みを伸ばす方向へとシフトしている、あるいはその必要性を実感しているという方も多いのではないでしょうか。

子どもたちがどのような知能を持っているかを見極め、その才能を伸ばす機会を提供することがいかに重要か、想像しやすいと思います。

才能は誰にでもあるもの。 あとは、それに気づき、支える大人がいるかどうかです。

「多重知能理論」(MI理論)は、子どもたちが持つ多様な才能を理解し、それぞれの能力を最大限に引き出すための強力なツールなのです。

子どもたちの未来は無限に広がっており、その可能性を信じ、個々の才能を見守りながら育てていくことが、私たち大人にとって最も重要な役割の一つであることを忘れないでください。

「ギフテッド診断」では、この記事でご紹介した「多重知能理論」(「MI理論」)に基づいて、お子さんの知能がどのような状態か、また個性や才能を見つけると共に効果的な学び方もお伝えしています。