【専門家が解説】ギフテッドの4タイプ|WISC結果別の支援の考え方

“うちの子、『知的水準がとても高い』と言われたけどギフテッド?”
“ギフテッドの特徴、ネットの情報とうちの子は全然違う”
そんな風に感じたことがある親御さんも多いことでしょう。
同じ「ギフテッド」の子どもたちでも、特性は驚くほど多様です。
よくしゃべる子もいれば、ほとんど話さない子もいますし、数字に強い子もいれば、言葉の世界に没頭する子もいます。
困りごとも、学校での姿も、家での様子も、それぞれにまったく異なります。
この記事では、臨床心理士・公認心理師である筆者が臨床でよく出会うギフテッドの4つのタイプをご紹介します。
「なぜうちの子はこういう困りごとを抱えているのか」を理解するための手がかりとして、読み進めていただければと思います。
ただし、WISC-Vの結果の現れ方は非常に多岐にわたります。指標の組み合わせも複雑で、ここで紹介する4つのパターンにきれいに当てはまるとは限りません。「どれにも当てはまらない」と感じても、それは当然のことです。あくまで理解の入口として、参考程度にご覧いただければと思います。
この記事を書いた専門家

日塔 千裕 ひとう ちひろ
公認心理師・臨床心理士
発達障害や発達に心配がある子どもへの心理検査や子どもの指導、親御さん向け講座などを通して、親子をサポート。学校問題・親子関係など幅広い相談を受け、1万件を超える相談に応じる。
ギフテッドの知能の特徴に”パターン”はあるか
ギフテッドかどうかを知るのがなぜ大切なのか、それは子ども固有の知能の特徴を知るヒントになるからです。
ギフテッドの子どもに限ったことではありませんが、子どもの特徴・特性は1人ひとり異なります。
ギフテッドの子どもも当然ながら同様です。
そして私自身、15年以上の臨床経験の中で、「似た困りごとを抱える子どもたちには、似た知能の特徴がある」と感じることがあります。
全員が同じではないけれど、よく見られるパターンは確かに存在します。
パターンに当てはめることではなく、なぜパターンを知るといいかというと、「なぜこの困りごとが起きているのか」を理解するための手がかりになるからです。
ここからは、お子さんの検査結果や日常の姿を思い浮かべながら、読み進めてみていただけたらと思います。
なお、この記事での「高い」「低い」という表現について、同年齢集団との比較ではなく、お子さん自身の検査結果の中での分野ごとの差を指しています。
たとえば、「VCIが高くPSIが低い」とは、同年齢平均と比べてではなく、そのお子さん自身の分野別の指標の間で差がある状態です。
概論編もお読みいただいた方は、概論編2では、各指標の「高い場合・低い場合」を同年齢集団との比較、つまり「平均と比べてどうか」という視点でお伝えしました。
概論編2と実践編2では「高い・低い」の基準が異なりますので、あらかじめご認識をお願いします。
パターン1:言語理解突出型
知能の特徴
言語理解指標(VCI)が突出して高く、処理速度指標(PSI)やワーキングメモリー指標(WMI)が相対的に低いパターンです。
言葉で考え、言葉で表現することにおいては圧倒的な強みを持ちながら、作業のスピードや情報を保持しながら処理する力に負荷がかかりやすい特徴があります。
日常の姿
口が達者で、議論や会話を好みます。
同級生より年上との関わりを好む傾向も見られます。
- 語彙が豊かで、年齢不相応に複雑な話題を好む一方、いざ「書く」となると途端にペースが落ちる。
- ノートは少ない。書くことを嫌がる。
- 提出物は遅れがち。
「あんなによくしゃべるのに、なぜ書けないの?」と周囲から不思議がられることも少なくありません。
頭の回転が速すぎて、作業のペースを周囲に合わせることに消耗しやすいという側面もあります。
授業中に「もう考え終わっているのに待たされている」という感覚が積み重なり、やがて意欲の低下につながることもあります。
支援のポイント
「書く」という出力手段にこだわらない
口頭での発表、録音、タイピングなど、言語の強みを活かせる別の出力手段を用意することで、本来の力が発揮されやすくなります。
「書けないから能力が低い」ではなく、「出力手段が合っていない」という視点の転換が、この子たちには特に重要です。
たとえばワークなどの問題演習では、自分で書いて確認するかたちにこだわらず、口頭で答えてもらうという方法も有効です。
「書けているか」ではなく「理解できているか」に重きを置くことができるとよいでしょう。
書くことの対策も
一方で、テストなど書くことが求められる場面への対応も必要です。
普段の学習では内容の理解を優先しながら、テスト前など目的を明確にした場面に限って書く練習を取り入れるという形で区切ることで、「書く負荷」を最小限に抑えながら必要なスキルも育てていくことができます。
パターン2:流動性推理突出型
知能の特徴
流動性推理指標(FRI)が突出して高く、言語理解指標(VCI)も高い一方、処理速度指標(PSI)が低いパターンです。
パターンや法則を見つけることへの強い志向を持ち、物事の仕組みや「なぜ」を追求することに喜びを感じます。
日常の姿
「なぜ?」が止まりません。1つの疑問が10の疑問を生み、その疑問がまた枝分かれしていく。
大人が「もういいよ」と思っても、この子にとってはまだ探求の真っ只中です。
規則性への執着も強く、決まった手順や日課に強くこだわることがあります。
その手順が少し変わるだけで混乱しやすく、「なぜいつもと違うのか」が受け入れられず感情的になる場面も見られます。
「融通が利かない」と言われやすいですが、これは気質の問題ではなく、知能の特性として理解することが大切です。
支援のポイント
予測可能な環境を
1つ目は、予測可能な環境を整えることが安心感につながります。
変更がある場合は事前に伝える、理由を説明するという関わりが有効です。
なぜ?を歓迎する
好奇心の出口を確保することで、探求心が力として発揮されやすくなります。
図鑑・実験・プログラミングなど、法則や仕組みを追求できる活動は、この子たちにとって大きな安定剤なのです。
パターン3:均等高得点型
知能の特徴
全指標が高水準でまとまっており、指標間の差が小さいパターンです。
一見すると「何でもできる子」に見えます。検査結果も「良好」「バランスが良い」と評価されやすい。
場合によっては、支援者ですら全体的な知能の高さと凸凹のなさから「問題ない」と言ってしまうこともあるのが正直なところです。
ただし、子ども自身にとって、困りごと・しんどさがないわけではありません。
日常の姿
授業が退屈でたまらない。
話が合う友達がなかなかできない。
「なんでみんなこんな簡単なことがわからないのか」という感覚が積み重なり、知らず知らずのうちに孤立していく。
周囲からは「しっかりしている」「問題ない」と見られやすい分、SOSが届きにくいという難しさがあります。
子どもの内面では、ずっと「合わせ続けている」消耗があるのに、それが表面に出てこない。気づいたときには燃え尽きていた、ということが起きやすいパターンでもあります。
支援のポイント
「困っていないはず」という前提を手放すことが出発点です。
定期的に感情を言語化できる機会をつくること、知的な物足りなさへの対応として学校外の学びの場や、同じ興味を持つ仲間とつながる機会の確保が有用です。
このパターンについては、今後の記事でより詳しく扱っています。
パターン4:2E型
知能の特徴
2E(Twice-Exceptional)とは、高い知的能力と発達障害の特性を併せ持つ状態を指します。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)との併存が代表的です。
指標のパターンとしては、いくつかの組み合わせが臨床でよく見られます。
ASDの特性を併せ持つ場合
言語理解(VCI)や流動性推理(FRI)が非常に高い一方、ワーキングメモリー(WMI)や処理速度(PSI)が相対的に低いケースが多く見られます。
言葉や論理で考える力は突出しているのに、情報を素早く処理したり、複数のことを同時にこなしたりする場面で著しく負荷がかかりやすい状態です。
ADHDの特性を併せ持つ場合
流動性推理(FRI)や言語理解(VCI)が高い一方で、ワーキングメモリー(WMI)が特に低くなりやすい傾向があるという指摘があります。
アイデアは豊富で思考力も高いのに、指示を覚えておくことや、作業を順序立てて進めることに大きな困難が生じやすいパターンです。
いずれのケースも、高い知的能力が発達障害の特性を目立ちにくくさせるという共通の構造があります。
ただし、発達障害との併存ケースは個人差が非常に大きく、ここで示したパターンに一律に当てはまるわけではありません。
あくまで1つの例としてご認識いただき、お子さんの実際の状態については専門家への相談をもとに判断していただくことをお勧めします。
大切なのはその子固有の知能の特徴
いかがでしたか?4つのパターンを紹介しましたが、どれか1つにきれいに当てはまる子どもは、むしろ少ないです。
「言語理解突出型に近いけど、流動性推理突出型の要素もある」
「均等高得点型だと思っていたら2Eかもしれない」
そういうことは、私が日々接している臨床の現場でも多くあります。
親御さんが「説明を聞いたけどよくわからない」「結局どういうこと?」と感じたり、専門家でも明確に言い切ることが難しかったりするのは、それだけ複雑性をはらんでいるからです。
パターンはあくまで「入口」です。「この子はこのパターンだ」と決めるためではなく、「なぜこの困りごとが起きているのか」を考えるための手がかりとして使ってください。
どのパターンにも当てはまらなくてもいい。
当てはまらないことに、焦る必要もありません。
大切なのは、ラベルでもパターンでもなく、わが子固有の知能の特徴を理解すること。
その理解が、日常の関わりを変え、子どもの安心につながっていきます。
このように記事を書いて説明をしていますが、記事を読んだだけで「ぴったり当てはまる!」「どんぴしゃで理解できた!」という方は多くないと思います。
お子さんの本当の特性は、検査結果・日常の様子の聞き取り・お子さんとの実際の対話などを通して、見立て(予測)→すり合わせ(確認)を何度も繰り返しながら理解していくことが大切になります。

