ギフテッドの学習に活用したいブルームの教育目標分類(タキソノミー)とは
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ギフテッドの学習に活用したいブルームの教育目標分類(タキソノミー)とは

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「学校の授業が退屈すぎる」「もう答えを知っているのに、何度も同じ問題を解かせられる」

ギフテッドの傾向があるお子さんを育てていると、こうした声を耳にすることがあるのではないでしょうか。

この記事では、「ブルームの教育目標分類学(Bloom’sTaxonomy/タキソノミー)」をご紹介しつつ、この分類がなぜギフテッドの子の学びを考えるうえで重要なのか、そして家庭でどのように活かせるのかを、詳しくご紹介していきます。

「もう知ってる」で止まりやすい?ギフテッドの子ども

「先生、それもう知ってる」「同じ問題を何回もやる意味あるの?」

ギフテッドの傾向がある子どもたちからは、こうした言葉がよく聞かれます。 単純な繰り返し作業に強い拒否感を抱く背景には、知的欲求が高く、合理性や納得感を重視するというギフテッドの特性があると考えられます。

ただし、「知っている」段階で止まってしまうと、その先の学びの喜びに出会えない、という別の課題も生じてきます。知識を得るだけでは満足せず、それを使って考え、判断し、新しいものを生み出したい。ギフテッドの子どもたちが本来もっとも力を発揮するのは、まさにこの部分です。

しかし一般的な学校の授業では、その機会が十分に用意されているとは言いがたいのが現状です。

では、ギフテッドの子どもたちが求める学びを、どのように理解していけばよいのでしょうか。教育の世界で長く参照されてきた「ブルームの教育目標分類(Bloom’s Taxonomy)」が、そのヒントになります。

ブルームの教育目標分類(Bloom’sTaxonomy)とは

学習成果や到達度を体系的に整理するための理論です。教育心理学、指導法、カリキュラム研究の基盤になってきました。

現在も、学校教育の場だけでなく、企業研修や医療者教育など、およそ7つの分野で幅広く応用されている枠組みです。

シカゴ大学の教育心理学者ベンジャミン・ブルーム(BenjaminBloom)が、1956年にアメリカで発表・公開した「教育目標の分類法(TaxonomyofEducationalObjectives)」が原点です。

教育目標の3つの領域

ブルームの原案では、教育目標の分類を以下の3つの領域に整理しています。

①認知領域(CognitiveDomain)

知識・理解・思考など、頭の中で行う認知的な活動に関わる領域です。学業成果として最もよく評価される部分でもあり、後述する6段階が、この認知領域を対象としています。

②情意領域(AffectiveDomain)

価値観、態度、興味、意欲など、心のはたらきに関わる領域です。「なにを大切だと思うか」「どのような姿勢で学ぶか」といった、学習の情意的な側面をとらえます。情意領域も5段階に整理されています。

③精神運動領域(PsychomotorDomain)

身体的な技能や行動を伴う学習成果を扱う領域です。楽器の演奏、体育、実験操作など、精神運動領域のスキル形成も、学習目標のひとつとして重要と位置づけられています。

このうち、ギフテッド児の学びを考える場面で最もよく参照されるのが、①認知領域の6段階です。情意領域・精神運動領域については、記事の後半で改めて触れます。

認知領域の6段階

原版に基づいて、2001年にAnderson&Krathwohl(アンダーソン&クラスウォール)による改訂版が公開されました。

認知領域は、以下の通り6つのレベルから構成されています。

改訂版では、階層構造は保ちつつ、最上段を「創造する」に置き直しています。現在、教育現場や心理学、研究の場で参照されているのは、この改訂版が中心となっているようです。以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。

①記憶する(Remember)

事実や用語を覚えて、そのまま呼び出せる状態です。掛け算九九、歴史の年号、化学記号などを機械的に暗記する場面がこれにあたります。学びの土台にはなりますが、この段階だけで留まると、特にギフテッドの子どもの知的欲求はなかなか満たされません。

②理解する(Understand)

覚えた知識の意味を、自分の言語で説明できる状態です。「なぜそうなるのか」を他者に伝えられるようになると、この理解のレベルに達しているといえます。

③応用する(Apply)

学んだことを、別の状況で使える状態です。例えば、分数の考え方を料理のレシピに応用する、地理で学んだ地形を旅行先で観察するといった実践に近づいた状態です。

④分析する(Analyze)

情報をそれぞれの要素に分けて、要素同士の関係を見つけ出せるという状態です。例えば、「この物語の主人公はなぜこの選択をしたんだろう」といったことを、その主人公の性格や、周りの環境、さらには時代背景から読み解くような分析的な学びです。

⑤評価する(Evaluate)

情報や考えの妥当性・価値を、根拠をもって判断できる状態です。情報の解釈や、二つ以上のアイデアなどの比較を、自分の言葉で示せるレベルとも言えます。「この記事の主張は本当に正しいのか」「この2つの解決策のどちらが良さそうか」を、しっかり根拠づけて示せる段階です。

⑥創造する(Create)

既存の知識や視点を組み合わせて、新しいものを生み出せる状態です。短編を書く、独自の実験を設計する、これまでにない仕組みを提案するなど、問題解決や作成の力が総合的に発揮される、学習成果の最も高い段階と位置づけられています。

ギフテッドの子どもにこの分類が役立つ理由

このピラミッド構造は、教員養成の場や、海外のギフテッド教育カリキュラムの設計の場で長らく参照されてきました。なぜギフテッドの子どもの学びを考えるとき、この分類が特に有効なのか、以下でその理由を3つ解説します。

下位段階を速く通過する

ギフテッドの傾向があるお子さんは、①記憶する・②理解する・③応用するの下位3段階を、他の子どもよりずっと速く通過することが多くあります。

一度説明を聞いただけで理解する、初見の情報を読んだだけで自分の言葉で要約できる、といった学習の力を発揮するお子さんは少なくありません。

今の学校の授業時間の多くは、この①〜③の定着に費やされていると思います。

集団としてクラス全員の学習成果を揃えるうえでは必要かもしれません。ただ、この時間帯は、ギフテッドの子どもにとっては手持ち無沙汰で退屈で無意味な時間なのです。

上位段階に飢えている

一方で、④分析する・⑤評価する・⑥創造するの3段階には、ギフテッドの子どもは強い関心を示します。

「なぜそうなるのか」を根本から考える、「本当に正しいのか」と検証する、「別のやり方はないのか」と想像力を発揮しながら自分で組み立て直すといった思考の余地があると、学びに対するモチベーションがぐんと上がります。

過度激動(OE)のうち、知性的OEを持つお子さんは特に、この上位段階に強く惹かれる傾向があります。「もっと深く」「もっと自分で考えたい」という状態が続くからです。

通常授業とのミスマッチが起きやすい

先ほども触れましたが、一般的な学校の授業は、集団全体の学習目標を揃えるために、必然的に①〜③に多くの時間を使わざるを得ないため、ギフテッドの子どもたちが求めている④〜⑥の余白は、通常のクラスでは十分に確保されにくいのが現実です。

この状況は、「授業が退屈」「先生の話がまどろっこしい」と感じさせたり、もっと深刻になると「学校に行きたくない」「授業は意味ない」という行動として、表面化することもあります。

家庭でできる「ブルーム式の問いかけ」

とはいえ、学校ですべてを解決しようとするのは現実的ではないかもしれません。ここからは、ギフテッドの子どもが家庭のなかで上位段階の思考に触れられる時間をつくる工夫をご紹介していきます。

日常の会話のなかに、次のような問いかけを少しずつ混ぜていくだけなので、ぜひ実践してみてください。

④分析の問いかけ例

  • 「この物語で、主人公はなぜこの決断をしたと思う?」
  • 「AとBの、いちばん大きな違いはなんだろう?」
  • 「この現象の原因を、3つ挙げるとしたら?」

⑤評価の問いかけ例

  • 「この解決策と、あの解決策、どっちが優れていると思う?その理由は?」
  • 「もし自分がこの人だったら、同じ選択をしたかな?」
  • 「この記事のなかで、いちばん強く『それは違うんじゃない?』と思ったところは?」

⑥創造の問いかけ例

  • 「もしラストが違ったら、どんな展開になるかな?続きを考えてみよう」
  • 「同じ問題を、まったく別のやり方で解くとしたら、どうしたい?」
  • 「この本の作者に会えたら、どんな質問をしてみたい?」

ポイントは、お子さんの答えを評価するのではなく、「そう考えたんだね」と一度受け止めてあげることです。上位段階の思考は「安心して外に出せる場所」があってこそ、伸びていきます。正解もないので、親御さんも一緒に楽しんでやってみてください。

学校との対話にも活用できる

担任の先生にお子さんの学習面での様子を伝えるときにも、ブルームの分類を活用してみましょう。

「①〜③の学習目標はもう十分達成できている段階のようです。もしよろしければ、④以上のレベルの課題を少しだけご用意いただけると、より集中しやすくなるかもしれません」といった伝え方ができると、先生の側も具体的にサポートを考えやすくなると思います。

「こういう指導の工夫がありがたい」という枠組みでの相談は、多くの学校で受け入れやすいと思います。

情意領域・精神運動領域から見た才能の伸ばし方

ここまでは、主に認知領域の6段階の話でしたが、ブルームが提案した情意領域・精神運動領域の視点も、ギフテッドの子どもの理解には重要なので紹介しておきます。

情意領域(Affective Domain)

情意領域とは、価値観や態度、興味、意欲といった、心のはたらきに関わる学習を扱う領域です。「何を大切に感じるか」「学ぶことにどう向き合うか」といった、認知の外側にある学びを整理するために用いられます。

1964年にKrathwohlらが5段階で整理しており、「受け入れる」段階から始まり、「反応する」「価値づける」といった段階を経て、「価値観を体系立てる」「価値観にもとづいて行動する」という段階へと進んでいきます。

テストの点数では測りにくい領域ですが、学びを長く続けていくうえでは大切な位置を占めるとされています。

精神運動領域(Psychomotor Domain)

精神運動領域とは、身体を使う技能や、実技を伴う学習成果を扱う領域です。楽器の演奏、体育、実験操作、書字、絵を描くことなど、頭で理解するだけでなく、実際に体を動かしてできるようになる学びが含まれます。

一般には、「模倣する」段階から始まり、「基本の動きを覚える」「正確に行える」「なめらかに行える」といった段階を経て、「状況に応じて自然に、応用的に行える」段階へと進むとされています。

情意領域では、その子が「何を大切だと思うか」「どのような目的意識で学びに向かうか」といった価値観の形成が扱われます。ギフテッドの子どもたちは、この情意領域の発達も年齢に対して早く、独自の価値観を形成することが多くあります。「なぜ社会は不公平なのか」「なぜ人は争うのか」といった実存的な問いを幼い頃から抱くのは、この情意的な発達の一側面でもあります。

一方、精神運動領域では、頭の中の知能と、身体の技能・行動とのあいだにばらつきが見られる場合があります。高い認知的能力を持ちながら、字を書くこと・道具を扱うことに困難を抱えるお子さんは、精神運動領域の発達との落差から来る困りごとを抱えていることがあります。

まとめ

いかがでしたか?ブルームの教育目標分類学は、ギフテッドの子どもの学びを深める声かけなど日常の中でも活かせる理論です。

学校ですべてを満たすことは、現実には難しい部分もあるかもしれません。だからこそ、ご家庭で、上位段階の思考に触れる小さな時間を少しずつつくっていくことで、お子さんの学びの退屈が和らいでいくと嬉しいです。

参考文献
  • Bloom,B.S.(1956)TaxonomyofEducationalObjectives:TheClassificationofEducationalGoals.NewYork:DavidMcKay.
  • Krathwohl,D.R.,Bloom,B.S.,&Masia,B.B.(1964)TaxonomyofEducationalObjectives,HandbookII:AffectiveDomain.NewYork:DavidMcKay.
  • Anderson,L.W.,&Krathwohl,D.R.(Eds.)(2001)ATaxonomyforLearning,Teaching,andAssessing:ARevisionofBloom’sTaxonomyofEducationalObjectives.NewYork:Longman.
  • VanTassel-Baska,J.,&Stambaugh,T.(2006)ComprehensiveCurriculumforGiftedLearners.Boston:Allyn&Bacon.
  • Renzulli,J.S.(1977)TheEnrichmentTriadModel.MansfieldCenter,CT:CreativeLearningPress.
  • 石井英真(2020)『再増補版・現代アメリカにおける学力形成論の展開』東信堂.

本記事は、Gifted Gazeが国内外のギフテッド教育・カリキュラム設計に関する知見をもとに独自に整理したものです。一般的な情報提供を目的としており、特定の教育機関やカリキュラムを推奨するものではありません。お子さんの学習面でご心配がある場合には、スクールカウンセラー、担任の先生、地域の教育相談機関など、身近な専門家にご相談いただくことをおすすめします。