子どもの才能を伸ばす声かけ〜「感動する」編〜

「感動する」とは、心が大きく動いた時、その気持ちが言葉・行動・表情に表れることです。

実はこの「感動する」体験を親子で共有することが、子どもの才能開花にとって非常に重要であることが分かっています。

感動する体験ができる場面を積極的に作ること、そして親が感動した気持ちを子どもにシンプルに表現して声をかけること、これらの行為が、子どもの「学力向上」や「自発的行動の促進」、そして「人間関係構築スキルの向上」に影響を与えるというデータが増えてきています。

今回の記事では、感動体験の効果や、感動する気持ちをどう子どもにフィードバックするかなどを、具体的な事例を交えながら解説していきます。

この記事を書いた専門家

相楽 まり子


公認心理師、臨床心理士

小中学校のスクールカウンセラーとして教育現場で経験を積む。現場で子どものケアには周りの大人へのサポートが欠かせないことを痛感し、産業領域でのカウンセリングも開始。子育てと仕事を両立する働き世代へのカウンセリングを得意とする。2児の母。

まず、「感動する」とは具体的にどんな状態なのでしょうか?

感動は目に見えるものではないので、一人ひとりとらえ方が違うかもしれません。

そこで、まずはこの記事における「感動する」状態をはっきりさせておきましょう。

様々な論文を参考に、より正確に「感動する」状態を説明するとしたら、下記のような状態のことだと表現できます。

「感動する」=「複数の強い感情が生じ、心が動かされ、身体反応を伴う情動的反応」

この説明をかみ砕くと、感動には喜び、興奮、時には悲しみなど様々な感情が含まれること、そしてその感情によって心が自然と動き、同様に体にも反応が現れる、これが感動した状態だと言えそうです。

ただ、このままだと少し長くて難しいので、もう少しシンプルに、この記事における「感動する」を表現しておきましょう。

「感動する」=「ある物や出来事に触れ、心や体が大きく動かされた状態」

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幼児期の場合、何かに心を奪われ深く感動する体験は、その子どもの「感性」を育てるために重要だと言われています。感性は、外界から刺激を受けた時に、自分の中に起きた反応を正確に認識し、具現化する力です。例えば、言葉、音楽、芸術、その他様々な方法で心の動きは具現化することができますが、どの感性も生まれ持ったものというよりは、経験によって養われる才能です。

感性豊かな子に育って欲しいと願うのであれば、感動する体験をたくさん作り、保護者がその感動した気持ちを言語化し子どもと【共有】してあげることが大事です。

単純に感動体験を重ねるだけでも子どもにポジティブな影響はあると思いますが、その感動した気持ちを大人と言語化しあうことが、より子どもの才能開花に繋がります。

保護者が言語化して共有しているかいないかで、子どもの感性の増幅は大きく変わってくるでしょう。

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児童期に入ると、感動体験が更に子どもの才能・能力開発に関わってきます。

例えば、以下のような能力を伸ばす効果があることが、研究によって支持されています。

◆動機づけ:何かに向かって行動を起こさせ、その行動を持続させられる

◆対人受容:相手の気持ちになって共感的に考えられる、人間関係に臆することなく働きかけられる

◆自己肯定感:ありのままの自分をポジティブにとらえ大切にできる、自信をもって自分を表現できる

感動体験が子どもに与える影響として特に注目したいのは、自分一人ではなく、誰かと一体感を得ることができた感動経験の有無は、抑うつ傾向を低下させることが分かっている点です。

ただ一人で感動するのではなく、「感動したね」「素晴らしいね」「美しいね」など、心が動いた場面を言語化し、親子で思いを共有していくことは、その子の先々のメンタルヘルスの安定に繋がっているのです。

これは、アドラー心理学でいう「共同体感覚」を育むことに通じるものがあります。

共同体感覚とは、人が人と共にあることを感覚として持っていることです。

他者は対立する敵ではなく、互いに結びついている仲間であり、その中で自分に存在価値があると感じられている状態であり、感動した時に自分の気持ちに共感してくれた人、分かってくれた相手がいたという経験は、この共同体感覚を育んでくれるでしょう。

以上のことから、子どもと一緒に感動する体験をして、それを言葉として声がけ・共有していくことが、その子の人間形成にプラスの影響をもたらしてくれることが分かります。

青年期になり、たとえ劣等感を感じるよう壁に遭遇しても、幼少期にたくさん感動体験の共有をし、共同体感覚が育まれていれば、壁を乗り越える力を発揮することができると思います。

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ここまで、感動する体験と、その気持ちを言語化し親子で共有することの重要性についてみてきましたが、実際、感動する体験とはどうやって作ってあげたらいいのでしょうか?

実は、『自然と触れ合う体験』は子どもに大きな感動をもたらすことが分かっています。自然の中には、子どもの好奇心を刺激するものがたくさんあります。

一緒に公園に散歩に行くだけでも良いです。

親がそこで何かを教えようとするのではなく、できれば自然の中で、子どもが自由に遊びを考えるように見守ってあげてください。

ドングリを拾ったり、土遊びをしたり、お花を摘んだり、どんなことでもいいので、子どもが自発的に始めた行動に対して、「面白いね」と一緒になって楽しんであげる、これだけで十分なのです。

大自然の中での体験を求めるのであれば、キャンプに行って一緒にテントを立てたり、川で魚を釣ったり、キャンプ飯を作ったりしてもよいでしょう。多くの感動体験が詰まっています。

このような日常とは離れた特別な体験においては、「お互いがんばったね」と充実した気持ちを親子で共有しあえれば、言葉はそこまで不要なのかもしれません。

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常に自然体験ができる環境があれば一番いいのですが、都心に住んでいるとそういうわけにもいきません。

そこで、意識的に「感動する体験をさせなきゃ」と思うと、何か特別なシチュエーションを作らなくてはならないとプレッシャーに感じるかもしれません。例えば海外旅行に行ったり、芸術的に優れたものに触れるため美術館に行ったり、などです。

確かに、そういったスペシャルな経験は、子どもの感性を育てるために大いに影響を与えてくれると思います。

ただ、そこまでスペシャルなことでなくても、実は子どもは日常の中で日々たくさんの感動を経験しているのです。

子どもは大人と違って世界が未知にあふれています。例えば、初めて包丁を持たせてもらって料理をしたら、包丁の切れ味にドキドキして、うまく野菜が切れたら嬉しくなって、自分が作った料理を食べておいしかったら「やったぁ!」と感動するでしょう。

初めて掃除機をかけることを任されて、たまった埃が見事に吸い込まれたり、汚かった床がピカピカになったりするのを体験して、自分には部屋をきれいににする力があるんだと嬉しくなる子もいるでしょう。

お友達と一緒に公園で見たことがない虫を発見してみんなで捕まえたら、それはもう大興奮、大騒ぎする子もいるでしょう。

そんな日常にある子どもたちの小さな感動を、周りの大人がちゃんと言語化してあげるのです。「素敵だね」「嬉しかったね」「初めてできたね!」「感動するね!」「ワクワクするね」「ドキドキしたよね」など、あらゆる言葉を使って、子どもの心の中に起こった動きを言語化してあげてください

良い・悪いと評価する声掛けは必要ないのです。

今回は感動する声掛けがいかに子どもの人間的土台作りに影響を与えているかを見てきました。

感動体験そのものから得られる学びに加え、子どもの感動した気持ち、心の動きを親が言語化して言葉がけしてあげられると、子どもの才能は更に引き出されていきます

お金をかけてスペシャルな経験をさせてあげればそれでOK、ということではありません。

日常の中の些細な経験でも、子どもは素直に感動しています。その心の動きを見逃さず、共感して声掛けしていくことが大事だと、ぜひ覚えておいてください。

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参考文献