過度激動性(OE)とギフテッドの関係 | 発達障害の違いと特徴、刺激への対策も解説

記事

「ちょっとしたことで深く傷つく」
「考えすぎて眠れない」
「興奮すると止まらない」

ギフテッドのお子さんを育てる親御さんの多くが、こうした状態に戸惑うことがあるかもしれません。

IQ・知的能力は高いのに、生きづらそうに見える。その違和感の正体を説明する概念の一つが、過度激動(OE)です。

この記事では、過度激動(OE)について、特にDąbrowskiの肯定的分離理論や日本のギフテッド研究を参考にしつつ、親御さんがギフテッドのお子さんの日常の支援に役立てられるようわかりやすく解説します。

過度激動(Overexcitability:OE)とは、簡単にいうと刺激に対する反応が量的にも質的にも強い状態を指します。

ポーランドの精神科医・心理学者であるKazimierz Dąbrowskiが提唱した肯定的分離理論(Theory of Positive Disintegration:TPD)の中核となる概念です。

このTPDで重要なのは、OEが先天的・生理的な反応傾向として定義されている点です。

ギフテッドの子どもは、情報を多く、深く、同時に処理します。

その結果、外から見ると「感情が激しい」「疲れやすい」「扱いにくい」と見えることがあります。

以下の記事では、OEの特徴について基本的な内容をご紹介しているので合わせて読んでみてください。

多くの研究では、OEは以下の5つの領域に分類されます。

上でご紹介した記事でそれぞれのOEについて詳述していますがここでは概要をご紹介します。

スクロールできます
OEの種類主な特徴周囲から誤解されやすい点
精神運動性OEエネルギーが過剰、早口、多動、止まらない落ち着きがなく活動的/ADHDと誤認
感覚性OE音・光・匂い・触感に敏感、美など感覚への強い反応わがまま/神経質
想像性OE想像力・空想が豊か、感性が鋭い、比喩的表現、物語思考現実逃避/集中力不足
知性/知的OE「なぜ?」など質問が止まらない、知識欲が強く深い思考理屈っぽい/生意気
情動性OE感情の振れ幅が大きい、感情移入情緒不安定/弱い

多くのギフテッドは、複数のOEを併せ持つため、行動がより複雑に見える場合が多いです。

Dąbrowskiの考え方が今も大切にされている理由は、子どもが感じる不安や落ち込み、迷いといったしんどさを、成長がうまくいっていないという状態ではなく、心が大きく育とうとしている途中に起こる自然な反応として捉え直した点にあります。

多くの子どもは、成長の中で少しずつ社会にうまくなじむことを覚えていきます。

学校や家庭、集団の中で、「こういう場面ではこう振る舞う」「みんながやっていることに合わせる」といった感覚が身につくと、毎日を比較的安定して過ごせるようになります。

ところが、感受性がとても強いギフテッドの子ども、特にOE(過度激動)が強い子の場合、この”なじむ”ということが簡単ではありません。

周りが当たり前だと思っていることに、なぜか強い違和感を覚えたり、みんなに合わせて行動しているのに、心の中ではどうしても納得できなかったりします。

「それって本当に正しいの?」「意味があるの?」と、頭や心が止まらなくなってしまうこともあります。

そうすると、「周りに合わせている自分」と「本当はそう思えない自分」の間に、少しずつズレが生まれてきます。

このズレが積み重なると、不安が強くなったり、悩みが深くなったり、「自分はおかしいのかな」「どうしてこんなに苦しいんだろう」と感じるようになることがあります。

親から見ると、急に不安定になったように見えて、心配になる場面かもしれません。

Dąbrowskiは、こうした状態を、今まで当たり前だと思っていた考え方や価値観を一度バラバラにして「自分は本当は何を大切にしたいのか」を探し始めている状態だと捉えました。

言い換えると、周りから借りてきた価値観で生きる段階から、自分自身の価値観をつくろうとする段階へ進んでいる状態です。

この過程では、迷いや葛藤、自己否定、感情の揺れがどうしても起こります。

親としては、「早く落ち着いてほしい」「この苦しさがずっと続いたらどうしよう」と思ってしまうかもしれません。

子どもたちは悩みながら、「自分はどうありたいのか」「何を大切にして生きたいのか」を何度も考えることで、少しずつ、自分の軸を持った選択ができるようになっていきます。

周りに流されるのではなく、自分の気持ちや価値観を大切にしながら行動できるようになる。その姿を、Dąbrowskiは人格が成熟していく姿として説明しました。

このように見ると、ギフテッドの子どもが示す強い不安や葛藤は、その子が「より自分らしく生きよう」と心の中で組み替えを始めている兆候だと捉えることができます。

能力の高さと心のしんどさは、なぜ同時に現れるのでしょうか?

「頭がいいはずなのに、どうしてこんなに苦しそうなのだろう」

ギフテッドの生きづらさは、「性格の問題」や「心の弱さ」ではなく、特性と環境の関係性として理解するとよいでしょう。

研究や臨床観察から、ギフテッドの子どもの多くが示しているOEの状態は、

  • 情動性OE(感情の深さ・揺れの大きさ)
  • 想像性OE(頭の中で世界を広げ続ける力)
  • 知性OE(意味・真理・構造を問い続ける思考)

この3つです。

ここで重要なのは、これらが単独ではなく、同時に、相互に影響し合いながら働く場合があるという点です。

たとえば、

  1. 深く考えて(知性OE)、
  2. さまざまな可能性を思い描いて(想像性OE)、
  3. その結果に強く心が揺れる(情動性OE)。

というプロセスが、日常的に起きます。

つまりギフテッドの子どもは、考えすぎて、感じすぎて、さらに考えてしまうという循環の中に入りやすいのです。

OEはギフテッドの子どもの感情を強める?

OEの強い子どもは、もう終わったはずの出来事を何度も思い返したり、まだ起きていないことを先回りして心配したりすることが多いです。

OEが強い子どもは、

  • 失敗の意味を深く考えたり他人の感情を自分のことのように感じる
  • 将来の可能性を過剰に想像してしまうため小さな出来事が本人の中では大きな問題になる
  • 周囲が気づかない違和感を一人で抱え込む
  • 気持ちを切り替える前に思考と感情が先に走る

などという状態が起こります。これは心が深く働いているからこそ起こる現象です。

ギフテッドの精神的な不調の多くが能力そのものから生じているわけではなく、問題になりやすいのは、

  • 刺激が多すぎる環境
  • 画一的な評価基準
  • 感情や思考の深さが想定されていない指導
  • 「早く・普通に・同じように」求められる場

こうした環境と、OEをもつ子どもの特性とのミスマッチなのです。

たとえば、「そこまで考えなくていい」と言われ続けたり、感情の揺れを「面倒な子」と扱われる、また、疑問を持つことが「反抗」と解釈されるなどです。

このような状況では、子どもは次第に、

  • 自分の感じ方を否定する
  • 考えることを怖がる
  • 感情を押し込める

ようになります。結果として、不安や抑うつが強まっていくケースもあります。

ここで重要なのが、子どもが弱いのではなく、環境がその子の特性を前提に作られていないという点です。

ギフテッドの生きづらさは「能力の使い方が、安心して許されない環境で起きる問題」です。

この見方に立つと、

  • 直すべきは子どもではない
  • 抑えるべきは感情ではない
  • 問題行動の裏にある“ズレ”を調整する

という支援の方向性が見えてきますよね。

  • 今の環境が合っていない
  • 今の関わり方が噛み合っていない
  • 今の期待値がずれている

ということを周りの大人が知る、つまり環境との関係性として読み解くことができれば、ギフテッドの支援はより現実的になると思います。

子どもの落ち着きのなさや感情の揺れを見ていると、「ADHDかもしれない」「HSPなのでは」と感じる保護者は少なくありません。

実際、いくつかの研究では、ギフテッドに多く見られるOE(過度激動性)と、ADHDの特性のあいだに一定の重なりがあることが報告されています。

たとえば、興味のあることに強く没入する、気持ちの切り替えが難しい、刺激に敏感に反応するといった行動は、どちらにも見られることがあります。

ただし、行動の「見た目」だけで判断してしまうと、子どもの本来の特性を見誤ってしまう可能性がある、という指摘も重要です。

ギフテッドの子どもは、全体として実行機能が比較的高いケースが多く、強い好奇心や感受性が原因で一時的に落ち着きがなく見えているだけの場合もあります。

周囲からは多動や不注意のように見えても、本人の中では理由や意味がはっきりしていることも少なくありません。

また、HSP(とても敏感な気質)とOEや発達障害が混同されることもあります。

HSPの場合は、刺激に対する敏感さや疲れやすさが中心で、注意のコントロールや衝動性そのものに困難があるわけではないことが多い点が特徴です。

この違いを理解せずにラベルを先につけてしまうと、「だからできない」「だから仕方がない」という見方に傾きやすくなります。

好奇心の強さから来ているのか、感覚の過敏さから来ているのか、それとも注意のコントロールそのものが難しいのか、診断名やラベルそのものではなくその行動が「何から生じているのか」を丁寧に見ることが大切です。

OEは、抑えるのではなく、扱い方を学ぶことが支援の軸になります。

以下は、OE(過度激動性)を種類別に整理し、「家庭で何ができるか」が一目で分かるようにした対応表です。

今日からの関わりに落とし込みやすい視点でまとめてみました。

スクロールできます
OEの種類子どもに見られやすい様子保護者ができる具体的な関わり気をつけたいポイント
精神運動性OE落ち着きがない、よく動く、話が止まらない、興奮しやすい体を動かす時間を意識的につくる、短時間で区切る活動を取り入れる、「静かにしなさい」ではなく「今は動く時間/休む時間」と切り替えを示す行動だけを見て叱らない。エネルギーそのものを否定しない
感覚性(知覚性)OE音・光・匂い・服の感触に強く反応する、疲れやすい刺激を減らせる環境調整(静かな場所、服の素材など)、休息のタイミングを早めに取る、「しんどかったね」と感覚を言語化する「わがまま」「気にしすぎ」と切り捨てない
想像性OE空想が豊か、話が飛ぶ、現実とイメージの行き来が激しい絵・文章・ごっこ遊びなどで表現の出口を用意する、現実に戻る合図を優しく示す(時間・予定の可視化)空想を否定せず、現実との橋渡しを意識する
知性OE「なぜ?」が止まらない、納得しないと動けない一緒に考える姿勢を見せる、「今は答えが出ない問題もある」と伝える、考える時間と区切りをセットにする論破しようとしない。考えること自体を評価する
情動性OE感情の振れ幅が大きい、共感しすぎる、自己否定が強い気持ちを言葉にする手助けをする、「感じすぎても大丈夫」という安心感を伝える、安心できる人・場所を明確にする感情をコントロールさせすぎない。「気にしないで」は逆効果

OEは、才能の副作用でも欠点でもなく、深く生きるための神経構造です。

  • 大切なのはどのOEが強いかよりもどの場面で困りやすいかを知ること
  • 子ども自身が自分の特性を理解すること
  • エネルギーや感情の安全な発散経路を持つこと
  • 強い感情を調整するスキル(休息・言語化・安心感)を育てること

ただし、その特性が理解されず、環境が整わなければ、その強度は苦しさに変わってしまいます。

ギフテッドの子どもを支えるとは、能力を伸ばすこと以上に、その強度が安心して存在できる世界を用意することです。

ギフテッドやOEは、まだ日本では十分に理解が共有されている概念とは言えません。だからこそ、診断名やラベルに急いで当てはめるのではなく、「この子に今、何が起きているのか」を丁寧に見ていく視点が大切になります。

参考文献
  1. Dąbrowski, K. (1972). Psychoneurosis Is Not an Illness. London: Gryf Publications. https://psycnet.apa.org/record/1973-07945-000
  2. Dąbrowski, K. (2015). Personality Shaping Through Positive Disintegration (2nd ed.). Red Pill Press. https://www.positivedisintegration.com/
  3. Daniels, S., & Piechowski, M. M. (2008). Living with Intensity: Understanding the Sensitivity, Excitability, and Emotional Development of Gifted Children, Adolescents, and Adults. Great Potential Press. https://greatpotentialpress.com/living-with-intensity
  4. Winkler, D., & Voight, A. (2016). Giftedness and overexcitability: Investigating the relationship using meta-analysis. Gifted Child Quarterly, 60(4), 243–257. https://doi.org/10.1177/0016986216658388
  5. Bouchet, N., & Falk, R. F. (2001). The relationship among giftedness, gender, and overexcitability. Gifted Child Quarterly, 45(4), 260–267. https://doi.org/10.1177/001698620104500404
  6. Karpinski, R. I., Kinase Kolb, A. M., Tetreault, N. A., & Borowski, T. B. (2018). High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities. Intelligence, 66, 8–23. https://doi.org/10.1016/j.intell.2017.09.001
  7. Mueller, C. E., & Winsor, D. L. (2018). Depression, suicide, and giftedness: Disentangling risk factors, protective factors, and implications for optimal growth. In Handbook of Giftedness in Children. Springer. https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-77004-8_14
  8. Hartnett, D. N., Nelson, J. M., & Rinn, A. N. (2004). Gifted or ADHD? The possibilities of misdiagnosis. Roeper Review, 26(2), 73–76. https://doi.org/10.1080/02783190409554245
  9. Rinn, A. N., & Reynolds, M. J. (2012). Overexcitabilities and ADHD in the gifted: An examination. Roeper Review, 34(1), 38–45. https://doi.org/10.1080/02783193.2012.627551
  10. Gomez, R., Stavropoulos, V., Vance, A., & Griffiths, M. D. (2020). Gifted children with ADHD: How are they different from non-gifted children with ADHD? International Journal of Mental Health and Addiction, 18(6), 1467–1481. https://doi.org/10.1007/s11469-019-00125-x
  11. Renzulli, J. S. (2016). The Three-Ring Conception of Giftedness: A developmental model for creative productivity. Handbook of Gifted Education. https://gifted.uconn.edu/wp-content/uploads/sites/961/2015/01/three-ring-conception.pdf
  12. 日高 茂暢(2023) ギフテッドとOverexcitability―肯定的分離理論を通じて― LD研究, 32(4), 244–250. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jald/32/4/32_244/_pdf/-char/ja
  13. 水野 晶葉(2018) 不協和感のある才能児(GDF児)の自己理解と母親の共感を促す支援 『2E教育の理解と実践―発達障害児の才能を活かす―』金子書房 https://researchmap.jp/read0174246

わが子がギフテッド(Gifted)かもしれない、と思ったら、まずは「ギフテッド診断」テストを受けてみることもおすすめです。

「ギフテッド診断」テストでは、子どものIQ(知能指数)や行動特性、才能のバランスを多くの側面から確認することができます。

\申込みから結果までオンライン完結/

\申込みから結果までオンライン完結/