【専門家が解説】ギフテッドの子どものマスキング | 危険性チェックリスト

【専門家が解説】ギフテッドの子どものマスキング 危険性チェックリスト
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“家では突然泣き出したり、怒りが爆発したり、些細なことで崩れる。

なのに、先生からは「よくできる子」「とても頑張り屋さん」と言われることが多く、学校では落ち着いている。”

“家庭で直接目にしている我が子の様子と、外での周囲の評判の違いが大きすぎる。”

そんな、外と家のギャップに戸惑う親御さんは多くいらっしゃいます。

そして、学校の先生に家での様子を話しても、信じてもらえなかったり理解してもらえず、疲弊しているケースも少なくないでしょう。

その理由の1つに、“マスキング”と呼ばれる子どもの適応行動があります。

今回は、マスキングについてその理由や背景、家庭でできる取り組みを専門家が解説します。

特に、ギフテッドのお子さんにみられるケースについて詳しくご紹介しているのでぜひ最後まで読んでみてください。

この記事を書いた専門家

ギフテッド(Gifted)のお子さんは、知的に優れている一方で、感情や感覚が非常に繊細です。

そのため、外の環境で不安や違和感を抱えていても、それをうまく言葉にできなかったり、周囲と違う自分を悟られないように、がんばって「平気そうに見せる」ことができてしまいます。

外で見せている笑顔は、本当の余裕ではなく、”本当の自分を隠そうとする努力の結果”であることもあります。

周りから「しっかりしている」「悩みがなさそう」と評価されるほど、お子さんの内側では、言葉にならないストレスが蓄積しているかもしれません。

お子さんが、家で突然感情的になったりするのは、家庭が唯一、安全に本音を出せる場所だからです。

外では押し込めてきた感情が、安心できる家で一気に流れ出ます。

決して甘えているのでもわがままでもなく、「やっと本来の自分に戻れた」というサインでもあります。

ギフテッドの子どもがマスキングを行うのは、自分と周りの違いを自覚しているからです。

ギフテッドの子どもの特徴である、高い知的能力、鋭い感受性、強い正義感や完璧主義傾向。

これは、素晴らしい特性であると同時に、学校生活や集団の中では「周囲に合わせづらい」要因にもなります。

以下では、ギフテッドの子どもがマスキングをする理由について詳しくご紹介します。

ギフテッドの子どもは、非常に観察力が高く、他者が気にしない細かな差異にも敏感です。

自分だけ感じ方が違う、同級生が楽しめる場面で、自分はストレスを感じるなどの体験が積み重なると、

「このままでは浮いてしまう」
「本当の自分を出したら嫌われてしまう」

そんな不安を抱きやすくなりマスキングに至ります。

ギフテッドの子どもは責任感が強く、他者の気持ちに敏感です。

「先生に迷惑をかけたくない」
「友だちに嫌な思いをさせたくない」

そんな思いから、本当の感情を押し込めてしまうことがあります。

「いつも正しくありたい」「失敗したくない」という完璧主義が、マスキングを強化します。

「弱さを見せてはいけない」
「泣いてはいけない」

そんな思い込みから、自分を守るために“平気なふり”を続けてしまうのです。

ギフテッドの子どもは、評価やフィードバックに敏感で、誤解されることを恐れます。

「本当の気持ちを言っても理解されないかもしれない」

こうした経験から、徐々に本音を隠し、場に合わせた自分を演じることを覚えていきます。

以上のように、ギフテッドの子どもにとって、マスキングは生き残るための戦略なのです。

しかし、その負担は大人が想像する以上に大きなもの。

以下では、マスキングを続けることで子どもに起こる心身の反応を解説します。

マスキングは、短期的には人間関係をスムーズに保つ一助にはなりますが、長期的には心と身体にとても深い負担を与えます。

外で感情を抑えれば抑えるほど、家庭での反動は大きくなります。

些細なことで怒る・泣く・黙り込む・物に当たるなどの行動は、「心の容量がもう限界」というサインでもあります。

学校から帰ると、動けなくなる、寝込む、好きだったことに興味を失うなど、マスキングによりエネルギーが枯渇してしまうこともあります。

本当の自分を出せない生活が続くと、「自分はダメな子だ」「みんなと違う自分は問題なんだ」そんな誤った自己認識が生まれます。

腹痛・頭痛・吐き気・食欲不振・不眠などの身体症状が続くケースも少なくありません。

マスキング疲労は精神的な問題だけでなく、身体にも大きな影響を与えます。

限界を超えてしまうと、学校へ行けなくなったり、自己肯定感が大きく低下したり、強い不安や抑うつ状態に陥ることもあります。

親御さんにとって「問題行動」と感じる部分は、実は「もうがんばれない」というお子さんなりの必死のサインだと理解しておきましょう。

以下の行動や変化が複数当てはまる場合、マスキングによるストレスが高まっている可能性があります。

□ 家に帰ると極端に疲れている、ぐったりしている
□ 小さなことで怒ったり泣いたりする
□ 表情が固い、笑顔が減った
□ 朝起きられない、支度が進まない
□ 学校の話をしたがらない、または過剰に「大丈夫」と言う
□ 「失敗したくない」「みんなに合わせないと」と言う
□ 趣味・遊びへの意欲が下がる
□ 体調不良(頭痛・腹痛・吐き気)が増えた
□ 家では幼い行動(甘える・だだをこねる)を見せる
□ 家族にだけ強く反抗したり、不安定になる

これらは問題行動ではなく、本来の自分を取り戻そうとするサインです。

子どもの行動の裏にある「気持ち」を読み取るという視点が大切になります。

マスキングで疲れた子どもを守るために、親としてできることはたくさんあります。

どれだけ落ち着いて見えても、ギフテッドのお子さんは常に周囲を観察し、気を遣い、調整しています。

家庭では、その反動が必ず出るものだと理解しておくことが、まず重要です。

「どうして怒るの?」ではなく「つらかったね」「がんばってたんだね」という共感の言葉が、お子さんの心をゆるめてくれるでしょう。

泣き出したり爆発したりする行動に対して、「なぜ?」「どうして?」という問いかけは、原因追及の質問であり、お子さんは責められていると感じてしまうなど、より追い詰めることになりかねません。

親御さんとして理由を知りたい気持ちもあると思いますが、ぐっと堪えて、「頑張ったね」「しんどいね」とお子さんの気持ちを代弁するように心掛けてあげられるとよいでしょう。

「ここでは無理しなくていいよ」
「泣いても怒っても大丈夫だよ」

こうしたメッセージが、子どものマスキングの負担を軽減するでしょう。

サンドバックや大きなクッション・ぬいぐるみなど、殴ったり叩いたり投げたりしてストレスをぶつけても大丈夫な物を用意することも一つの方法です。

お子さん自身がケガをしない、親御さんやきょうだいなど他の家族もケガをしない、家が壊れないという環境的な安全確保を行った上で、発散できる方法を作ってあげられるとよいでしょう。

ギフテッドのお子さんは結果重視の環境で生きづらさを抱えがちです。

家庭では“安心して失敗できる経験”を積ませることが、心の回復力を育ててくれます。

また、プロセスを認める声掛けを意識して伝えてあげられるとよいでしょう。

お子さんがすぐに受け取れなかったとしても、伝え続けていることは、お子さんの中にしっかりと蓄積していきます。

子どもが自分を調整する手段を尊重しましょう。例えば、以下のような対応が考えられるでしょう。

  • 定期的に休息の時間をとる
  • 子どもの好きな活動の時間をたっぷりとる
  • 刺激を避ける工夫や環境調整を行う

親御さんが自分を責めてしまうと、お子さんはさらに不安を感じます。

「できる範囲で一緒に進めばいい」と考えることが、親子双方にとって健全です。

学校の先生、スクールカウンセラー、心理士など、周囲の大人のサポートも活用しましょう。

一人で抱え込む必要はありません。

ただ、正直な話、スクールカウンセラーや心理士などの専門家ですら、「外でできているなら大丈夫」「知的に高いから問題ない」などと親御さんの苦悩に理解を示してもらえないケースもゼロではありません。

その場合、「頼るべき人は、この人ではなかった」と親御さん自身の心をつぶさないために、他を探すことをお勧めします。

ギフテッドのお子さんたちは、深く感じ、強く考え、豊かな感性を持っています。

しかし、その繊細さゆえに“周囲に合わせるためのがんばり”を続けてしまい、その負担が限界を超えることもあります。

上でも述べましたが、マスキングは、生きづらさの中で身につけたその子なりの生きるための技術です。

だからこそ、親御さんがそのサインに早く気づき、安心できる場をつくることが、お子さんの心を守る何よりのサポートとなります。

Gifted Gazeでは、ギフテッドのお子さんに関するご相談を受け付けております。気になる状態があればお気軽にご相談ください。