学校は、同じカリキュラム、同じ進度、同じ評価基準。けれど実際の子どもたちは、神経発達も、理解の仕方も、困り方も、驚くほど多様ですよね。
子どもを基準に合わせるのではなく、教育を子どもに合わせて設計するという発想を取り入れたアメリカの特別支援教育における Individualized Education Program(IEP) を知っていますか?
この記事では、IEPの法的背景、作成プロセス、他の支援プランとの違い、そして2Eギフテッドへの支援関係までをご紹介します。
日本でも早急に整備が求められているギフテッド教育や”個別最適な学び”の制度化にも活かせる、アメリカのIEPの事例を詳しく解説しているのでぜひ最後まで読んでみてください。
IEPの基本概念
IEP(Individualized Education Program)は、障害のある子どもに対して作成される個別教育計画です。
その法的根拠は、Individuals with Disabilities Education Act(IDEA)にあります。
IDEAは1975年に制定され(当時はEducation for All Handicapped Children Act)、1990年に現在の名称へ改称されました。以降も改正が重ねられ、アメリカの特別支援教育の基盤となっています。
IDEAが保障している重要な原則は、主に次の2つです。
- FAPE(Free Appropriate Public Education):無償で「適切な」公教育を受ける権利
- LRE(Least Restrictive Environment):可能な限り制限の少ない環境で教育を受ける権利
ポイントは、「適切(Appropriate)」という概念です。
同じ教育を提供することが”平等”なのではなく、その子どもに合った教育を提供することが求められています。
IEPの対象となる子ども
IDEAでは、13の障害カテゴリーが定義されています。代表的なものには次のようなものがあります。
- Autism(自閉スペクトラム症)
- Other Health Impairment (OHI)(その他の健康障害)※ADHDはこのカテゴリーに含まれます
- Specific Learning Disability (SLD)(限局性学習障害)
- Intellectual Disability (ID)(知的障害)
- Emotional Disturbance (ED)(情緒障害)
- Speech or Language Impairment (SLI)(言語または音声障害)
- Developmental Delay (DD)(発達遅滞)※主に3〜9歳に適用
ここで少し興味深いのは、ADHDという診断名そのものはIDEAのカテゴリー名には存在しない点です。
制度上は、2つ目の「Other Health Impairment」という広い枠に分類されます。医学的診断名と教育制度上のカテゴリーは一致しないことがあるのです。
また、IDEAで定義された診断名があるだけでは自動的に支援対象になるわけではなく、「教育上の支援が必要であること」がIEPの重要な判断基準になります。
参考:https://www.understood.org/en/articles/conditions-covered-under-idea
IEP作成までの流れ
IEPは、次のような段階を経て作成されます。
1. 評価(Evaluation)
保護者や教師が支援の必要性を感じた場合、学校に評価を正式に依頼できます。
学校は原則として同意取得後60日以内に包括的評価を実施します。
評価は単一のテストではなく、以下を中心とする複数のデータに基づいて行われます。
- 知能検査
- 学力検査
- 行動評価
- 言語評価
- 心理評価
2. 適格性判定(Eligibility)
評価結果をもとに、IDEAの基準を満たすかどうかが判断されます。
IDEAの13カテゴリーのいずれかに該当するか、またその障害により「特別支援教育が必要か」という2段階の判断基準になります。
繰り返しになりますが、診断があっても、教育的ニーズが認められなければIEPは成立しません。
3. IEP会議(IEP Meeting)
適格と判断された場合、30日以内にIEP会議が開かれます。会議の参加者は以下です。
- 保護者(必須)
- 通常学級教師
- 特別支援教師
- 学校代表者
- 評価担当者
- 必要に応じて専門家
IEPに記載される主な内容
IEPには以下のような項目が含まれます。何十ページにも及ぶレポートが提出されます。
- 現在の学力・機能レベル(Present Levels of Performance)
- 年間目標(測定可能な目標)
- 提供される特別支援サービス
- 補助的支援・合理的配慮
- サービス提供時間・頻度・場所
- 通常学級への参加割合
- 移行支援計画(16歳以降)
ポイントとしては、2の目標は「測定可能」であることが義務付けられている点です。
例えば「読解力を向上させる」ではなく、「学年相当の文章を80%の正確率で要約できる」など、具体的な形で記載されることになります。
そして、保護者がIEPに同意すると支援プログラムが開始されます。
学校はIEPに記載された支援を法的に実行する義務があり、実行されなかった場合、法的措置の対象になります。
IEPは少なくとも年1回見直しが義務付けられており、さらに3年ごとに再評価(Triennial Reevaluation)が行われます。
IEPと504プランの違い
IEPとよく比較される制度に「504プラン」があります。
これは、Section 504 of the Rehabilitation Actに基づく制度となります。
主な違いは次の通りです。
- IEP→ 特別支援教育サービスそのものを提供(カリキュラム修正を含む)
- 504プラン→ 通常教育の枠内で合理的配慮を提供
IEPの方が、より包括的で強い教育的介入を伴うという点が大きな違いです。
| 項目 | IEP | 504プラン |
|---|---|---|
| 法的根拠 | Individuals with Disabilities Education Act(IDEA) | Section 504 of the Rehabilitation Act |
| 法律の性質 | 教育法(特別支援教育を規定) | 公民権法(差別禁止法) |
| 主な目的 | 特別支援教育サービスを提供する | 障害を理由とする差別を防ぐ |
| 対象基準 | IDEAの13カテゴリーに該当し、特別支援教育が必要 | 身体的・精神的障害が主要な生活活動を実質的に制限 |
| 医学診断との関係 | 診断だけでは不十分。教育的ニーズが必要 | 医学診断があると適用されやすい |
| 支援内容 | カリキュラム修正を含む特別支援教育 | 通常教育内での合理的配慮 |
| 教育内容の変更 | 可能(例:学習内容のレベル調整) | 原則変更しない |
| 文書の法的拘束力 | 強い(実施義務あり) | あり(差別禁止の観点から) |
| IEPチーム | 保護者・教師・専門家など法定メンバー | 柔軟(学校裁量が大きい) |
| 年次見直し | 年1回義務 | 法的義務は明確ではないが定期見直しが一般的 |
| 再評価 | 3年ごとに義務 | 定期再評価義務は明確でない |
| サービス例 | 特別支援授業、言語療法、OT、行動支援 | テスト時間延長、座席配慮、休憩許可 |
| 費用 | 公費で提供(FAPE原則) | 公費で提供 |
| 手続き保障 | デュープロセスヒアリングあり | 苦情申立制度あり(OCR) |
| 2Eとの関係 | 障害側ニーズが認められれば対象 | 高い能力は直接対象外だが配慮は可能 |
| 移行支援 | 16歳以降に義務 | 特別な規定なし |
2E(Twice-Exceptional)との関係
ギフテッドであるという事実だけでは、通常はIEPの対象にはなりません。
IDEAは「障害」に基づく法律だからです。
しかし、2E(高い能力と発達障害を併せ持つ子ども)の場合、障害側の教育的ニーズが認められれば、IEPの対象になります。
一方で、高い能力そのものはIEPの中で十分に扱われないことも多く、州によって対応には差があるようです。
IEPの強みと課題
強み
- 法的拘束力がある
- 保護者の参加権が保障されている
- 年1回の見直し義務があり子どもの成長と支援の必要性を動的に観測できる
- データに基づいて目標設定ができる
課題
- 学区間の実行の質や経済的な格差
- 「まだ様子を見ましょう」という先延ばし
- 2Eの過小評価(マスキングなど、障がいの特性が隠れている場合に必要性が分かりにくい)
- 訴訟リスクを前提とした制度構造
日本の個別最適か教育への示唆
IEPの本質は、個別最適化の権利化にあります。
教育を平均や普通、大多数に合わせるのではなく、個に合わせて設計し、そしてそれを法的に保障する。
アメリカのIEPは、その思想を制度として明文化したものです。
日本でも個別最適な学びが議論されていますが、制度としてどこまで保障するのかは、今後の重要な課題です。
教育は平等であるべきですが、”平等”とは、全員に同じものを渡すことではありません。
ギフテッドや2Eの子どもを考えるとき、この視点はさらに重要になると感じます。
困難さだけでなく、強みも含めて設計できるかどうか。日本でも、周りと違う特性をどう扱うかという選択の可能性が広がると嬉しいです。
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